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情報デザイン概論/2020/1221

第13回 情報と心理

情報デザイン概論/2020|地域共創学部|2020.12.13対面
情報共有シート|特設サイト

AGENDA


本日は以下の内容で講義を行います。



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はじめに

今回は、情報を捉える視覚・聴覚の心理についてお話します。また後半では、視覚・聴覚といった既知のセンサー以外のもの、すなわち「超心理学」についてもお話します。

レポート提出をお忘れなく(再確認)

こちらのシートで提出済みの方に「◯」をつけています。





感覚・知覚・認知

はじめに、感覚(Sensation)・知覚(Perception)・認知(Cognition)の3つの段階について概説します。

感覚

「感覚」とは、外部(あるいは体内)からの刺激に対する対象性のはっきりしない「感じ」のことです。聴覚で言うと音の大きさ・高さなど、視覚で言うと明るさ・色などがそれにあたります。この感覚については一般に、1次元刺激(音の大きさ・明るさなど)について、7±2 段階程度の弁別能力があるといわれ、また感覚の大きさは刺激の物理強度の対数に比例する(R = C log S)ということが知られています。

このような、物事を物理量で捉えるレベルの問題では、「機械の視聴覚」であるセンサーは非常に優秀です。我々は通常、「明るさ」を測ったり、「音の大きさ」を測ったりするときに、測定機器に頼ります。1次元刺激の弁別・評価に関して、正確さを必要とする場面では、人間は常にそれを機械に委ねています。

知覚

「知覚」とは、受けつけた感覚刺激により構成される対象性のはっきりした経験です。聴覚でいうと時間的な刺激の配列関係である「旋律」や「リズム」が、視覚でいうと空間的な刺激の配列関係である「形」がその対象です。知覚は、刺激の関係性によって対象化されるので、物理量に変化があったとしても関係が同じならば同一のものとみなされます。例えば「キーが変わっても同じ曲に聞こえる」とか「長方形は斜めから見ても長方形とわかる」とか「明るさが変わっても一つの部屋を見間違うことはない」といったことなどが、それにあたります。

認知

「認知」というのは、受けつけた知覚対象を記憶に照合して、自分の世界像における位置づけを行う、つまり「意味を付与する」段階です。感覚・知覚までは、他の生物でも見られる比較的低次のプロセスですが、認知のレベルは、「言語」や「文化」といった知識ベースも関与する人間特有の非常に高度なプロセスです。このレベルの処理は、他の生物や人工知能を持たない通常の機械には難しいものとなります。



情報への「構え」

ボトムアップとトップダウン

情報処理に際し、刺激情報が目から脳へと上がっていくプロセスをボトムアッププロセス(データ駆動型処理)といい、逆に脳の知識ベースを利用して刺激を待ち受ける、つまり、上から下へ降りてくるプロセスをトップダウンプロセス(概念駆動型処理)といいます。

私たち「人」が情報の読み取りを行う場合は、ボトムアップがすべてではなく、自分の知識ベースを手がかりに「こちらから予測をつけながら情報を迎えにいく」というトップダウンが大きく関わっていると考えられます。

例えば、多義的に解釈可能な図形(ルビンの壷など)でも、人は「情報への構え」のありかたしだいで、無意識的に一つの「読み」を選択し、他の解釈を捨てます。また例えば、話を聞くという場合も、風景を見るという場合も、私たちは日常的な経験から、時間的に次にくる「音」や、空間的にその周囲に見えるはずの「形」を事前に予測できるのが普通であり、送られてくる情報を「こちらから迎えにいく」というかたちでスムーズに(ある意味では惰性的に)処理することができるのです。

カクテルパーティー効果という言葉があります。多くの人が会話する中でも、意識を向けた特定の人の声を聞き取ることができる・・というものです。これにもトップダウンプロセスが強く効いています。

さらに、遠くで会話する2人を双眼鏡でクローズアップして見ると、声まで聞こえる(正確には聞こえやすくなる)という例があります。視覚からの情報がトップダウン的に聴覚に作用して、話者の音声が分離しやすくなった結果と考えられます。

幼少期の知覚や、新しい環境での知覚では、ボトムアップ処理が必要になりますが、我々大人の日常生活においてはトップダウン処理が効くことによって、世界とのスムーズな関わりが実現されています(ちなみにトップダウン処理に大きく寄与しているのは「言語」)。足元をほとんど確認することなく、階段を登り降りできるのは、階段の段差への対応をトップダウン的に行っているからです。

参考: Typoglycemia

以下の文章を(すばやく)読んでみて下さい。

こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。
この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の 
けゅきんう の けっか にんんげ は もじ を にしんき する とき 
その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば じばんゅん は 
めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて
わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。

註)ケンブリッジ大学における研究という話は事実ではありません。

多分、意味は理解できたのではないかと思いますが、よく見て下さい。間違いだらけの文章です。私たちの脳は、視覚情報を正確に処理していません(ボトムアップ処理に関して手を抜いています)。トップダウン処理を機能させることで、全体を「惰性的」に読んでいるのです。

単語の語中の文字をバラバラにしたものは、文章を理解できる読者の
読解能力にほとんど、あるいは全く影響を及ぼさない。
実際に速読が可能な読者は、単語中の文字位置をバラバラにした文章を
A4サイズ1ページ提示されたとしても、4,5個の間違いにしか気づかない

G.Rawlinson,1976, The significance of letter position in word recognition
単語認識における文字の位置の重要性

文章を惰性的に読む大人はこの誤字に気づきにくく、逆に、文字を覚えたての子供たちは、すぐに間違いに気づきます。


文脈効果

文脈効果とは「刺激の知覚過程いおいて、前後の刺激の影響で、対象となる刺激の知覚が変化する現象のこと」をいいます。人間は刺激の認知において、情報量が小さく、認知的負荷が少なくなる解釈を選択します。

視覚と聴覚

視覚の心理学

VisualPsychology

聴覚の心理学

AuditoryPsychology



ESP  Extra-Sensory Perception

そんなものあるの?

日本語では「超感覚的知覚」。現状の結論から先にいうと、実験の結果は再現性に乏しく、実用的なレベルではないようです。しかし、多くの科学的実験が、実験群と対照群の間に統計的に有意な差が生じることを認めている*1・・というのもまた事実です。

かつて米国陸軍が本気で研究をしていましたが、実際のスパイ活動等を考えた場合、その正答率が実用性に欠けること、また冷戦が終結して、多額の予算を投じる政治的必要性がなくなったために、その研究は終了を余儀なくされたといわれています。

人間は視覚と聴覚に頼り切っているがゆえに、視聴覚的に捉えられる世界がすべてであると思い込んでしまいがちですが、他のセンサーの存在も否定できません(無いことを証明するのは難しい)。

例えば、魚の内耳は頭に埋まっていて外見には現れません。センサーは必ずしも、目に見える場所にあるとは限らないのです。

鯨はカバと同様の哺乳類(鯨偶蹄目)であるし、タラバガニはカニではなくヤドカリです。視覚的な「表現型」だけにたよっていると世界の本質は見えません。DNAという新たな概念の誕生が、生物の見え方を変えたのと同様、また別の概念の誕生が、世界の見え方を変える可能性は十分にあります。

五感では捉えられないものの存在

近代になって電磁力の存在が発見されました。それは物理的な世界の分析や制御に使えます。しかし、私たちには可視光線以外の電磁波を検知するセンサーを持ちません。その理由は、電磁波が食料の検知にさほど有効ではなかった、また、それを使って私たちを捕食する生物もいなかった、言い換えれば、視覚・聴覚・触覚などがあれば、生存には十分であったため・・と言えます。

つまり、生物のセンサーは、実用的なレベルで進化したのであって、その他の「力」が存在しないことを意味するものではないということです。

電磁力の発見は「人間のセンサーでは捉えられない力」の存在を証明したという点で非常に画期的なことであったと言えます。

外部センサーと内部センサー

生物のセンサーは、体外からの刺激を検知するものと、体内に生じていることを検知するためのものに分けることができます。

私たち人間についていえば、体外からの刺激を検知するのが、いわゆる5感。いずれも意識することができます。一般に外部へ向けられたセンサーは、捕食、天敵の検知、異性の検知といった目的から進化したものですが、ESPは5感を超えるものとして、やはり体外からやってくる(と思われる)刺激に対応するものとして考えられています。

一方、体内現象を検知するためのセンサーの存在については、それを「意識」することはありません。呼吸、血液の循環、消化活動・・いずれも煩雑な現象のセンシングが物理・化学的に行なわれていて、私たちはそれを意識することはないのですが、我々が今日まで生き延びたのには、その貢献度は偉大です。

ESPを無意識的なセンサー、体内的なセンサーに位置付けるという視点をもつと、何か新しい知見が得られるのかもしれません。



PK  Psychokinesis

そんなものあるの?

日本語では「念力」。事例としては存在を否定できないものも多いようですが、実験における再現性は低く、科学的に実証できないのが現状です。ユリ・ゲラーのスプーン曲げも、結局手品であったというのが通説ですが、ESPの能力が科学論文で公開された事実があるなど、真偽は定かではありません。

明治大学の石川幹人氏によると、PKの存在を仮定した場合、それを考えるキーワードは「無意識」と「社会性」であるといいます。

例えば、ポルターガイスト現象は、霊の力というより、その現場に関わる「人物(子供が多いそうです)」によるPK現象と考えることもできる。その人物が無意識的に抱えている問題が解消されると同時に、現象も無くなる(本人には自覚はなく、それを怖がっていた)・・という事例があるようです。

こっくりさんも同様、3人のうちの誰かの無意識が働いているのではないかと考えられています。本人には自覚がなく、場合によっては集団ヒステリー状態に陥る可能性がある点で「危険な遊び」なので、試さないのが賢明です。

TVや雑誌を賑わすポルターガイストの正体

現象の大半は、説明がついています。もちろん多くは報告者の自作自演、イタズラです。そうでない場合も、例えばラップ音などは、建物・配管の熱膨張・収縮、またガタガタ揺れる現象などは、人間の耳には音として聞こえない7Hz程度の低周波による共振現象として説明がついています。風もなく、音もないのに物が揺れるので、住人は不安になるのですが、低周波は発生源が様々あるのに対し、人間にはそれが感知できないため、物が共振を起こしてはじめて気づく・・多くの場合は、その振動の発生源が特定されています。

鉄筋コンクリートの集合住宅は意外に振動が伝わりやすいようで、1階の住人の洗濯機の回転振動が上層階の特定の部屋にのみ伝わるようなことも起こります。その際、周波数によってフィルタリングが起これば、元の音とは似て非なる振動音となります。

公益社団法人 日本騒音制御工学会には、そうした「不思議音」を解明し、住民の不安を解消すべく「不思議音分科会 」があり、建物で生じる様々な異音の解明に取り組んでいます。建物は基本的に音を発しないと思われがちですが、様々な要因でいくらでも異音は生じ得る・・と考えて生活することが賢明です。



無意識の世界

超心理現象には、人間の無意識が大きく関わっていると考えられています。人間の脳活動のうち「意識」は氷山の一角にすぎず、意識下ではもっと大きな情報処理が行われていると考えられます。例えば体を動かす(走る、自転車に乗る、楽器を弾く)ことは、初期学習を終えるとほぼ自動化され、無意識に委ねられます。また例えば、催眠術というのも、まさにその意識下に働きかけるものです。

リアルな夢、夢の中で問題が解ける・・など、無意識領域には膨大なスケールのデータと処理機構があると思われます。それを司る器官は「脳」ですが、これだけ脳科学が進んでも、未知の領域の方が圧倒的に大きいのです。



思考実験

PKが実用レベルで可能だとしたら社会はどうなる?

手を触れずに物を動かす・・これが個人の意識によってできるとしたら、世の中は激しく混乱するでしょう。極端な例でいえば「証拠を残さずに殺人が実行できる」ことになり、その捜査や裁判は混迷を極めることになります。

PKは、多くの人の前ではできないが、一人になれば、あるいは非公開の場であればできる・・という事例が多いようです(だから疑われるのですが)。「このような能力が公衆の面前で実行できるとなると人間社会が混乱する」ということから、ホモサピエンスという種の保存のために、何らかのブレーキが効いているのではないか・・とも考えられます(完全に個人の感想です)。

進化の観点からいえること

もし、私たちの感覚では察知できない能力(PK)を使うことができる生物(スペックホルダー)がいたとすれば、私たちはすでに淘汰され、それを察知できるセンサー(ESP)を持つ生物だけが生存競争を生き残っていたはずです。そして、生き残った生物はそうしたセンサーの存在を視覚や聴覚のように、自身の感覚のひとつに数えていたでしょう。しかし、一部の「見える」と主張する人を除き、私たちの多くは、そのようセンサーの存在を自覚できていません。ということは、それを使う天敵あるいは社会的な敵は存在していなかったか、ごく少数であったのだと考えられます*2

ESPにしてもPKにしても、それが他の生物との生存競争に大きく影響するほどの「目に見える」実用的な効果は持っていなかった・・と言えそうです。

ただ、センサーは「意識」的に現象を捉えるとは限りません。典型的なのは、体内に向けられた内部センサーです。捕食者は我々よりも大きいとは限らず、体内に侵入するタイプのものもあります。私たちの体内センサーは、これらに無意識レベルで対処しています。

私たちは、生命現象の一部しか知り得ていません。無意識の世界、体内で自律的に行われていること、それらについて創造的な思考をめぐらすには

など、「意識」がつくった様々な先入観を捨てる必要があります。
否定できないのであれば、可能性を考える。
超心理学には、そんな面白さがあります。




参考

参考書籍 等


関連リンク

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GUIDE

DATA


*1 覚醒時よりも睡眠時あるいは夢見に近い状態(無意識領域の活性が高い)の方が正答率が上がるようです。
*2 幽霊や呪いに人が殺せる・・それが実用レベルで起こるのだとすれば、我々はすでに滅んでいたか、あるいは、我々にそれに対処すべきセンサーが備わっていたはずです
*3 REM睡眠状態、つまり夢を見ている状態では、覚醒時と同様に活発な脳活動がありますが、運動能力の方はそれが機能しないようにスイッチが切られています。夢見の状態で体を動かせば怪我をする危険があるからでしょう。そのあたりは個体の生命を維持するための自然なプログラムであるといえます。
Last-modified: 2020-11-09 (月) 09:58:03