第2回 情報とは何か
情報デザイン概論/2022|2022.10.03
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2022情報デザイン概論(後期月5)井上 貢一
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CONTENTS
情報とは何か
情報という言葉について
情報とは、何らかの媒体を通じて発信者から、受信者に伝達される意味内容のことです。人間同士の会話、紙に記された文字、モニターに表示される映像、音楽、さらには、ネットワークを行き交う信号など、様々な様態があります。
- 情報という言葉は、それを扱う視点・学問分野において様々な説明がなされていています。辞書的な意味は、以下のように検索するとわかります。
Google:情報 Wikipedia:情報 Wikipedia:information - information n, inform v
1.教育する、訓練する 2.形づくる、生み出す 3.知識を授ける、教える
4. …の特徴を与える;魂を吹き込む 5. 人に…を知らせる
- 物質・エネルギー・情報という3大抽象概念のうち、「情報」は科学の対象としては歴史的に最も新しい概念です。
物質(紀元前) > エネルギー(16世紀) > 情報(19世紀)
- 数学者 N.ウイナー(Norbert Wiener)によれば・・
物質・エネルギーが存在する様態、すなわち、 時間的・空間的、定性的・定量的なパターンが「情報」である
- 物質・エネルギー・情報を並べてみると、情報媒体(物質・エネルギー)と 情報(時間的・空間的パターン)という、物事を総合的に理解するための2つのキーワードを手に入れることができます。
- 物質として存在する情報媒体は空間に拘束されるとともに、時間の流れに逆らうことができませんが、情報は、空間・時間を超越します。
情報を捉える視点
- 情報は主に「視覚情報」「聴覚情報」(「触覚情報」)に分類できる
これらは光・電波・音波・力といった物理的な存在であり、電気・電子的な情報として様々な媒体によって転送・蓄積することができます。「味覚情報」「嗅覚情報」も情報ではありますが、これらは化学的なもので、その発生・転送・蓄積・再生に関する技術は発展途上にあります。
- 情報は、「情報源」から発生し「情報媒体」に載って移動する
- 聴覚情報:情報は「音源」から発せられる
- 視覚情報:情報は「二次光源」上にある(「光源」がそれを照らす)
- 情報にはアナログ(類似・連続的)とデジタル(数値・離散的)がある
- アナログは情報と媒体が一体となっている(フィルム、アナログレコード)
- デジタルは情報と媒体が独立している(USB、ネットワークドライブ・・)
- 情報はハードとソフトの区別でいえばソフトにあたる
- ハード(モノ)は劣化してやがてゴミになる
- ソフト(情報)はバージョンアップするとともに半永久的に利用が可能
- 情報は「有限の要素」の配列として編集される
文字は有限の要素の集合で、個々の文字にはコードが割り当てられている
参考:文字コードの確認
- 情報は複製される
- 情報は物質ではないため複製コストがかからない(限界費用0)
- 複製・共有されない情報は情報として機能しない
- 情報は「生産完成品」ではない(送り手側だけで成立するものではない)
- 工場で生産される「製品」の大半は「生産完成品」
- 文学・映像・音楽・・いずれも「受け手」の状態が関与する
情報量
情報の「量」は「数量化」が可能で、私たちは日常的にそれを使っています。
情報量の計算
- データ転送速度を表す ◯◯◯bps ( bit / seconds ) の b:ビット やUSBの記憶容量 ◯GB ( Giga Byte ) というときの B:バイト *1は情報の量の単位です。
- 基本的なものとして、以下の2つの計算方法があります。
- 情報量 = ーlog2P (bit) P:生起確率
- 情報量 = log2N (bit) N:可能性の数
- P:生起確率 で考える情報量
- Pが小さい、つまり、めったに起こらないことが起こった → 情報量大
- Pが1に近い、つまり、ふつうに起こることが起こった → 情報量小
- 例)ニュースの情報量
- 小学生が司法試験に合格! → 情報量大
- 明日の最高気温も今日と同じでしょう → 情報量小
- N:可能性の数 で考える情報量
- Nが大きい、つまり、様々な候補の中の1つが知らされる → 情報量大
- Nが小さい、つまり、候補が限られる場合の1つ → 情報量小
- 例)ルーレットにおける「天使の囁き」の情報量
- 「25が出るよ」:候補は 00 - 36 の37通り → 情報量大
- 「偶数が出るよ」:候補は2通り → 情報量小
- 厳密な議論を抜きにすれば、上記の2つの表現は、結果的には同じことを違うかたちで述べたものと考えて差し支えありません。
- N個すべての事象の出現確率が均等に 1/Nであれば・・
ーlog2(1/N) (bit) = log2N (bit) となるので、話を簡単にして、
情報量 = log2 ( 可能性の数 ) (bit) と覚えるといいでしょう。
参考:対数について
-
\(\log_{2}8 = 3\)
とは「2を3乗したら8になる」という関係を意味します。
つまり \(\log_{2}8 = \) は「2を何乗すれば8になるか?」という問いです。 - で、例題、
\(\log_{2}256 = 8\)
となります。
参考:関数電卓での2を底とした対数の計算方法
例えば、 \(\log_{2}256\) を計算したい場合は、以下のように入力します。
log(256,2)
https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?TOOLS
参考:なぜ対数を使うのか
- 刺激・情報に対する人間の感覚は、物理量の対数に近い・・
例えば人間の耳は、物理的な圧力(単位 Pa)ではなく、音圧(単位 db :10を底とする対数)で音量を感じています。
Google: y = log2 x
GoogleImage:ポット Aカーブ Bカーブ 音量調整にはAカーブ
- 文字列の場合、表現可能なパターンの数の対数をとると「桁数」と比例する。「情報量は文字の桁数に比例する」と考える方が直感的に理解しやすい。
2進数8桁 > 2の8乗=256通り > 2を底とする256 の対数は 8(bit)
- 情報量についてもう少し詳しく学びたい方は以下のページをご覧下さい。
情報量を考える事例
- 穴埋めクイズの難しさ比較
- ”水[ ] ” という単語の[ ]の部分をあてるクイズでは・・
- ”q[ ]・・” という英単語の[ ]の部分をあてるクイズでは・・
→ 候補は u のみなので、回答がもたらす情報量は log21 = 0 bit です。
要するに「当然の話」は情報量0、説教には意味がないことがわかります。
- パソコンの英字キーボード「1文字」の情報量は?
ヒント:英字、数字、特殊記号、半角カタカナ・・全部で200種類ほどの記号
- 様々な「情報」の情報量を比較してみましょう。
- 身近な「情報」の情報量を上げるには?
- 言葉の順序を変える 「地球の [ 水 ] 」 → 「水の [ 地球 ] 」
- 物事を「斜め」につなぐ、異なる地平にあるものをつなぐ
参考
- ノーバート・ウィーナー(1894 - 1964):サイバネティクス
- フォン・ノイマン(1903 - 1957):計算機科学・ストアドプログラム
- クロード・シャノン(1916 - 2001):情報理論・情報量(エントロピー)
情報量と編集
情報量の要点確認
- 生起確率と情報量( ーlog2P (bit) P:生起確率 )
- 生起確率の低い現象が起こる:その「知らせ」は情報量大
- 生起確率の高い現象が起こる:その「知らせ」は情報量小
- 情報量と「面白さ」
- 情報量が小さすぎる:単調 退屈 おもしろくない
- 情報量が適度に大きい:なるほど! 面白い!
- 情報量が大きすぎる:複雑 難解 不快感
「面白い!」を生み出す「編集」
新規性のあるアイデアやイノベーションは、既存のモノ・コトの「意外な編集」による「情報量の拡大」を契機に生まれます。人は単なる「消費者」ではありません。人は自分自身で「編集」できるものに「面白い!」を感じます。
- 逆転する
- 言葉の順序を入れ替える
地球 の 水 → 水 の 地球 - 配置、考え方を逆転する
縦を横に、倒れそうなものははじめから倒しておく
何を持つかではなく、何を持たないかを考える
- 言葉の順序を入れ替える
- 組み合わせる
- 異質な言葉同士を接続する
参考:ひらがな を 洗う バカリズムの発想法 - 写真と文字を組み合わせる
参考:投稿サイト bokete - 身近にあるものを組み合わせる
- 異質な言葉同士を接続する
- 異なる文脈(環境)に置く(見立てる) 5
- 既製品 Ready Made の活用 マルセル・デュシャンの発想
- 井戸茶碗 雑器が国宝になった例
APPENDIX
IDEA WORKSHOP
私たちの思考回路には「常識」のバイアス(情報量が小さくなるようにまとめようとする傾向)がかかっているので、例えば、「ひらがな を ◯◯◯ 」という文における ◯◯◯ の部分には、「ひらがな を 書く」、「ひらがな を 覚える」、「ひらがな を 漢字に変換する」のような、ふつうにつながる言葉しか思い浮かばないようになっています。
ということは、意識的にこれを排除して、ありえない言葉を接続する、たとえば、「ひらがな を 洗う」のような異質な接続をすれば、今までにない発想が生まれる・・ということになります。
ひらがな| で…|に…|を…|は …|が…|も…|へ…|
- 単語をつなぐ
2つの単語を非常識な関係で接続してみる。- ひらがな が 歩く
- ひらがな で 滑る
- ひらがな を 焼く
- 発想を広げる
2つの単語の関係から思いつく、物語・構造物・商品・イベント等を発想。- ひらがなを主人公にした物語・アニメーション作品をつくる。
- ひらがなの形をした遊具(滑り台、ブランコ・・)をデザインする。
- ひらがなの形をしたパンを商品化する(アルファベットチョコの発想)。
過去のWorkshopより
- いろはす で 奏でる
- ペットボトル製のパーカッションで演奏会
- 画家 を 飼う
- 部屋に飾れる画家のミニチュアフィギア
- ある日ひとりの画家が訪ねてきた。・・飼う事になった。
- 傘 が 予約する
- 雨が降る日に、持ち手が光って利用者に持参を促す
- 消しゴム が しゃべる
- 消しゴム型のミニチュアロボット
- ふでばこ で 寝る
- 筆箱的な収納スペースを持つベッド
- 筆箱、財布、スマホ・・日用品の絵柄がプリントされた寝袋
- 本 を 飲む
- ペットボトルのラベルに小説をプリント
- 警察官 を 食べる
- ペロペロチョコ「働く人」シリーズ
- 野菜 に 食べられる
-
野菜の形をモチーフとした掃除機、ゴミ箱、回収ボックス・・
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野菜の形をモチーフとした掃除機、ゴミ箱、回収ボックス・・
要点の確認
- ひとつの主語に出現確率の低い述語をつなぐと、情報量の大きな(新規性の高い)表現ができる。
- ひらがなを切る、ひらがなを洗う、ひらがなを食べる・・などと、出現確率の低い単語をつなぐことで、「ひらがな」を活用するアイデアは拡大する。
- 要素と要素を「斜めに」つなぐ、異なる地平にあるものをつなぐ
> アイデアは「切って」「つなぐ」、という「編集」によって生まれる。
価値は所与のものではない
モノ・コトの価値はそれ単体では決まるわけではありません。価値を生み出すのは「関係」です。
- 「紙幣」自体はただの紙。そこに価値を生み出すのは「社会」です。
- 「綺麗な色」があるのではない。色の価値は他の色との関係で決まります。
- 「優れた人」がいるのではない。人間関係が人の価値を生み出すのです。
- つまり、どんなモノ・コトでも、その諸関係を再・編集することによって、新たな価値を産みだすことができるのです。
*所与のものではない:はじめから備わっているものではないという意味です。