第3回 デザインとは何か
情報デザイン概論/2022|2022.10.17
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CONTENTS
デザインとは何か
Designという言葉
- Designという語を辞書でひくと
設計、計画、立案、企て、予定、図案・・・ - 日本デザイン学会におけるアンケート 1959
「Designを日本語にすると?」 > 「計画・設計」が多数
- Designの語源
- designare(ラテン語) = 印を付ける、区分して描く
- designate = 示す、指示する、任命する、名付ける、呼ぶ
- DESIGN = de+sign
Designの語源のラテン語Designareは、de+signであり… 記号を表出する行為、表出された記号自体、 対象や意味を明確に示す行為、 他との境界を限定して形状をはっきり示す行為、 対象や意味に相当する代理物を用意すること、 複写や記述、表示する要素の選択、 特定の対象や意味に他者の注意を向ける作為、 感覚器官で捉えられうる刺激の集合によって対象や意味を代替えする行為、 をさす。 「記号学大辞典」
- 日本の学校教科書では、デザインは「美術」に含まれていますが…
- アートを扱うのは文部科学省 / デザインを扱うのは経済産業省
- 世界的にはデザインは「国」あるいは「企業」のトップレベルの課題
- 「日本デザイン学会」の学術研究領域は「総合工学」
- 「芸術工学会」の学術研究領域は「哲学」
人類とデザイン
ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」には、認知革命>農業革命>科学革命という3つのタームとともに、「人は幸せになったのか?」という視点で、人類史を語っています。「計画する人」は、以下のような大きな転換点を超えて現在に至っています。
- 認知革命:言語による「虚構」の構築
- 定住革命:約1万5千年前(縄文)
- 農業革命:約1万年前
- 第一次産業革命:綿織物と蒸気機関が手作業を肩代わりする
- 第二次産業革命:電気と石油による大量生産
- 第三次産業革命:マイクロエレクトロニクス(ME)と情報技術(IT)による、ビジネス・システムの構造的な変化
- 第四次産業革命:AIとIoTによる、より高度情報革命(日本は周回遅れ)
- 第五次産業革命:?
https://data.wingarc.com/5th-industrial-revolution-24123
Good と Bad
Art & Design
アートとデザインは何が違うのか?
意見交換
以下、自由にボードに書き込んでみて下さい。
OpenJamboard ← 誰でも書き込める仕様です。
- 赤(マゼンタ)の付箋:アートに該当すると思うモノ・コト
- 青(シアン)の付箋:デザインに該当すると思うモノ・コト
Google JamBoardの記録
デザインの領域|空間 / プロダクト / 情報
Environment Design 「環境・空間」のデザイン
環境、景観、造園、都市計画、建築、インテリア、照明、ディスプレイ
Landscape Architecture Interior DisplayDesign
Product Design 「もの」のデザイン
家電、家具、楽器、食器、クラフト、工芸、雑貨、ファッション、車、バイク
Products Instruments Craft Package Fashion
Communication Design 「視聴覚情報」のデザイン
サイン、グラフィックス、Web、映像、ゲーム、音楽、音声、テキスト
Infographics Map GraphicDesign WebDesign GameDesign
> 「情報デザインとは」については、次回の講義でお話します。
デザイン研究の現在
Design Thinking
デザイン思考|Design Thinking という言葉は1990年代にIDEOのデビッド・M・ケリー、ティム・ブラウンらが提唱したもので、デザイナーの思考のプロセスを体系的に言い表したものです。
デザイン思考を説明する文献やWebサイトは数多く存在します。
まずは図解で確認しましょう。 > GoogleImage:デザイン思考
一般的なプロセス
- 1) 共感(Empathize)
- 2) 定義(Define)
- 3) アイデア創出(Ideate)
- 4) プロトタイピング(Prototyping)
- 5) 検証(Test)
- 6) 実装(Implement)
以下、個々のキーワードについて概説します。
共感(DesignThinking/Empathize)
まず「現場」の調査を行い、ユーザー(現地の方)が何を感じるかについて、知識を深めます。例えば地域デザインでは、現地のさまざまな人たちと会話し、今何が問題なのか、何が求められているのかを体験的に把握します。
問題そのものに共感が得られない事象については、全体を同じルールでデザインするのではなく「棲み分け」を考える・・という選択が賢明です。
文化は多様で価値観も様々です。人間集団は大きくなると、うまくいきません。基本的に、デザイン行為は問題意識や希望を共有できる小さな規模の集団を対象に実践するのが賢明だと感じています。 Think Globally, Act Locally.
定義(DesignThinking/Define)
共感が得られた問題・要望について、これらを整理し、何が問題なのか、何をすべきなのか、問題と課題を明確にします。
ちなみに、問題(problem)と課題(issue)は違います。問題とは、あるべき姿と現状のギャップで、そのギャップを埋める方法が課題です。
例えば
「村が孤立して住民が困っている」というのは「問題」。
「物資を届ける」「住民を移動させる」「橋を架ける」などは「課題」。
一般にひとつの「問題」に対して、いくつもの「課題」が設定できます。
アイデア創出(DesignThinking/Ideate)
まずブレインストーミングなどを行って、様々なアイデアを出します。このとき、批判はいけません。どんな荒唐無稽なアイデアでも、そこから突破口が見出せることもあります。自由に発想することが大切です。
プロトタイピング(DesignThinking/Prototyping)
いくつかのアイデアを、実際にさわれるカタチ、あるいは運用できる状態にします。プロダクトの場合は模型、実寸模型、Webサイトなどの場合は、内容はダミーで、インターフェイスを中心にサンプルをつくります。
検証(DesignThinking/Test)
プロトタイプをユーザー(現地の方)に試してもらいます。プロトタイプは、即OKとなることは稀です。そこで生じる問題を洗い出し、プロトタイプに修正を加える・・この作業をくりかえします。
実装(DesignThinking/Implement)
試行錯誤を重ねたプロトタイプを現場に実装します。これで終わりではありません。その後の経緯を追跡し、運用後に新たな問題が生じていないか注意深く見守る必要があります。その結果は次のプロジェクトに応用されることになります。
SustainableDesign
Sustainableとは、「持続可能な」という意味です。「世界の人々が今後何世代にもわたって人間らしい生活を長く続けてゆくことができる、サスティナブルな社会の実現」( Declaration on Sustainable Design )を目指すデザイン行為を総称して、サスティナブルデザインといいます。
日本にはサスティナブルの思想を反映する「常若(とこわか)」という言葉があります。
サステナブルデザイン宣言
2006年12月15日に開催されたサステナブルデザイン国際会議 "Destination 2006-2026" で採択された「サステナブルデザイン宣言」には、以下のようなことが、デザイナーの使命として掲げられています。
- 製品、施設、サービス、システム等のライフサイクルを通じて資源・エネルギーの消費を極力抑え、可能な限り環境に負荷を与えることがないようデザインする。
- 公平と公正を重んじ、本当に必要なものを可能な限り多くの人々が利用できるようにデザインする。
- 人々の歴史や風土を背景とする様々な価値観を認めあい、文化的多様性を尊重してデザインする。
- サステナブルな社会の姿を具体的な形として描き出し、デザインによって人々の心に働きかけることでその実現を目指す。
世界が抱える問題
私たちの身の回りには様々な「問題」が山積しています。持続可能な未来を実現するには、全体を俯瞰して、問題解決のための総合的なアイデアをカタチにすることが求められています。
- 戦争の危機
- エネルギー
- 食料
- 森林資源
- 鉱物資源
- 水
- 大気 汚染 二酸化炭素濃度 酸素濃度
- 環境放射線 同・原子力規制委員会 全国の放射線情報
- パンデミック 鳥インフルエンザ
- 人口 日本の人口推移
- 日本人の死因 厚生労働省のページ
- 不慮の事故 子どもたちのまわりにある危険
- 自殺 働く世代にのしかかるもの
- 疾病 そもそも人はなぜ肥満になる? 文明と炭水化物
- SNSの功罪 メディアは人をつなげたのか?
- NHKスペシャル「2030 未来への分岐点」
https://www.nhk-ondemand.jp/program/P202000230600000/
補足
私たちは「創造」という言葉を日常的に使っていますが、歴史を遡れば「創造」は神にのみ属する至高の営みでした。産業革命以後、科学技術が世界を変えてゆく様子に、人は自分たちが創造主であるかのような「勘違い」をしていますが、地球の自然を人間にコントロールできるとはとても思えません。「創造」という言葉を使うときは、謙虚にならなくては・・と思います。
APPENDIX
Words & Books
- 人は誰でもデザイナーである。ほとんどどんなときでも、われわれのすることはすべてデザインだ。デザインは人間の活動の基礎だからである。ある行為を、望ましい予知できる目標へ向けて計画し、整えるということが、デザインのプロセスの本質である。
生きのびるためのデザイン|V.Papanek|1971
→ Google: Design for the Real World PDF
- 何か問題があるとしたら、それはあなたのせいではなく、おそらくはデザインの問題なのだ。
誰のためのデザイン|D.A.ノーマン|1988
- 橋をデザインするのではなく、川をどう渡るかをデザインするのだ
PHILIPSのデザイン部門に掲げられた言葉
- Design is not just what it looks like and feels like. Design is how it works.
Steven Paul "Steve" Jobs
Apple Steven Paul "Steve" Jobs
- Think Globally, Act Locally.
- Less is more, more is less
Mies van der Rohe|1886~1969
- One child, one teacher, one pen and one book can change the world.
Education is the only solution. Education First.
Malala Yousafzai 2013.07.12
- 科学・技術の方法や道具は、
安くてほとんどだれでも手に入れられ、
小さな規模で応用でき、
人間の創造力を発揮させるようなものでなくてはならない。
Small is Beautiful|E.F. シューマッハ|1973