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視聴覚情報論

視聴覚情報論

芸術学部 2年次科目| 前期 水曜4限 15102教室
デザイン学科 ビジュアルデザイン論A 対応科目

科目概要

我々をとりまく「情報」の大半は「視覚情報」と「聴覚情報」に大別することができます。本授業では、視覚と聴覚という切り口から、画像情報と音響情報、光と音の比較、視覚の心理と聴覚の心理、さらに映像と音楽の相互作用など、情報デザインの基礎となる様々な周辺知識を総合的に紹介します。
 情報の発信・伝達・受信・記録と、情報伝達の一連のプロセスを追いながら情報デザインの可能性を探します。


はじめに

視覚と聴覚に関する様々な議論  1

人はなぜ絵を描くのか  2

人はなぜ歌を歌うのか

HomoSapiens  3

I. 視覚と聴覚

視覚と聴覚に関する心理学的理解

視覚の心理1  4

視覚の心理2  5

聴覚の心理  6

認知心理学と脳科学  7

II. 画像と音響

光と音 / 記録 / 生成 / 処理・・・画像と音響についての工学的理解

光と音の物理  8,9

画像・動画の入力と記録(メディアの「目」)

音声・音楽の入力と記録(メディアの「耳」)

画像・動画の生成処理  10,11

音声・音楽の生成処理

III. 視聴覚情報

視聴覚情報の編集とデザイン

写真  12

映像  13

音楽  14

インタラクションデザイン  15

この講義を受講するにあたって

この講義の目的は、みなさんが視覚と聴覚について「考える」きっかけを提供することです。講義で話したことを「覚える」必要はありません。調べればわかることを覚える必要はありません。「その情報がどこにあるか」がわかっていればそれでOKです。

何が問題で、それをデザインの力でどう解決するか…。現実の問題は試験問題と違って答えが一つではありません。TVのニュース・解説、専門家の言う事、学説、意見というものは実に多様ですし、何が「正しいのか」ということも、その人の価値観・モノサシによって変われります。もちろん、私の話も「ひとつの考え方」を紹介しているにすぎません。大人の話を鵜呑みにせず、様々な考え方に触れた上で「自分の考え」を築き上げて下さい。

ノートをとるときは、「講義の内容をメモする」ということよりも、「講義を聴いて自分が考えたことをメモする」ということを心がけて下さい。あなた自身の考えを整理することが大切です。

「あたりまえのこと」に疑問を感じてください。「あたりまえのこと」には理由があります。その理由を見出すことができれば、人が関わるあらゆるデザインに応用できます。



講義の情報源について

この講義では、Web上の資源へのリンクを多く使用します。

Web検索は、物事の概要をいち早く掴むには非常に有効です。目的の情報にいかに早く辿りつけるか、積極的に活用して検索に関する経験値を上げて下さい。ただし、その情報の正確性については、書籍に劣るかも知れません。リンクを辿るだけでは、出現する意見の傾向にムラが生じることもあるので、他の観点から異なる考え方がないか、再検索することも必要です。

テレビ・ラジオでは、今まで検索してみようとも思わなかった、未知の話題が飛び込んでくることがあります。知見を広めるという意味では非常に重要なメディアです。ただし、テレビにはスポンサーというものがついていて、情報にバイアスがかかっているので、それをふまえることも必要です。

書籍は、知の全体像を把握するのに重要です。例えば図書の分類を知ることで、世の中の知というものがどのように分類整理されるのかを知ることができます。時を経ても色あせない「名著」といわれるものがあります。是非、積極的に読むようにしてください。一方、変化の激しい領域では、記載内容が古く現在の状況に適用できない可能性もあります。書籍を選ぶ際は発行年月日などもチェックするようにしましょう。




「理論」について

この科目には「論」という文字がついています。「理論」のことです。
辞書によれば、以下のように記載されています(引用:goo辞書)。

ちなみに、対義語は、「実験」です。

さて、簡単に(乱暴に)言えば、理論というものは、ほとんどの場合、「ああすればこうなる」とか「ああであればこうである」というかたちで、何らかの法則を述べたものになります。何かと何かの「関係」( 因果関係・相関関係)を説明する知識、あるいはその解釈のことを「理論」というわけです。

世の中には「○○理論」といわれる「理論」がたくさんあって、視覚や聴覚に関連するものとしては、美学の世界の理論もあれば、心理学の世界の理論、また工学分野の理論も含まれます。そうした関連理論の集大成が「視聴覚情報論」だとお考え下さい。

むずかしく考えないで楽しみましょう。ここでは、視聴覚情報のかたちで現れるデザインについて、こう描くとこう見える、こう組み合わせるとこう見える、といった「ああすればこうなる」話をいろいろ紹介したいと考えています。

私は、人間と他の動物との大きな違いは、「予見と計画」ができるかできないかの差であると考えています。つまり、「先のことを考えて、今やるべきことを計画する」、これができるかどうかの差ではないかと・・・。 そして、デザインとは、まさにその「予見にもとづく計画」であり、人間特有の頭脳をつかって実現するものなのです。

予見と計画

p ・J・ウイルソン(1983)の有名な言葉を紹介しましょう。
「最も巧みな蜜蜂と最も無能な建築家の違いは、
 建築家が設計図にもとづいて仕事をすることである。」
『人間―約束するサル』佐藤俊訳

ですから、世の中にある様々な「ああすればこうなる」 法則を知っていることが重要です。「理論」を知ることで様々な「予測」や「制御」が可能になるのです。この講義で紹介する様々な知見が、みなさんの思考の糧になれば幸いです。


「哲学」について

この科目の受講生の方から「哲学」というものについての質問をよく受けます。おそらくデザインという言葉自体に哲学的なものを感じるからでしょう。

では、「哲学とは何か?」・・・
辞書やネットで調べるといろいろ書いてあります。 Google: 哲学とは
それらを読むと「難解なもの」という印象を受けるかもしれません。

で、私はもっとふつうに考えるようにしています。

「人生哲学」という言葉を聞いたことがあると思います。それは要するに「いかに生きるか」ということについての個々人の「考え方」のことです。まずはそこからで十分だと思います。

「人は何のために生きているのか、幸福とは何か、人はどこからきて、どこへ向かおうとしているのか・・・」 哲学とは、そうした根本的な疑問に総合的に立ち向かう学問であり、あらゆる学問の根底に位置するものである・・私はそう考えています。

教科書に掲載された「哲学」がやたら難解なものに見えるせいもあって、「哲学」を縁のないものとして遠ざけてしまう方も多くいるようですが、実際には、人生について、あーだ、こーだと考えるのは、もう立派な哲学であって、その意味では、誰もが普通にやっていることなのです。

しかし、この国の教育制度の下では、まともに「哲学」する時間がありません*1。授業を素直に聞いて教科書を丸暗記しなければ受験戦争を突破できない。「美とは何か?」などと自分で考える暇もなく、「考える時間がもったいないので、早く模範解答を教えて下さい・・」という感覚で「お勉強」だけをこなす。結果として、「考えない」こと(思考停止)が習慣化してしまう。

しかし、哲学抜きに知識や技術だけを身につけても、常に「何かしっくりこない」という違和感を抱いたまま一生を送ることになります。自分がやっていることに、自分の本当の気持ちが納得していないからです。

もっと楽しく、気持ちよく、充実した日々が送れないものか・・と悩むとき、山積する世界の問題に立ち向かおうとするとき、その答えの方向性を決めるのは、あなた自身の「哲学」です。人生について、幸福について、人類の未来について考えること・・大学生である今が、最もそれに適した時期です。

哲学するのにお金はいりません。お金で気持ちが満たされるわけではないことは、みなさんうすうす感じていると思いますが、人間の脳は、そんなものよりも「頭をつかって考える」ということに快感を覚えるようにできています。

本当の楽しみは「考える」ということにあるのです。だからデザインは面白いし、デザインに関わることができるというだけで、人生が豊かになるのです。

学んだことは誰にも奪われません。学生のうちに、たくさん「哲学」して下さい。

P.S.
この国には、デザインというカタカナに代わる言葉として「芸術工学」という言葉がありますが、それは日本学術会議の分類上、やはり「哲学」に位置づけられています。




学びのスタンスについて

学問の可能性

「相手の気持ちを思いやりましょう、いじめはやめましょう」*2という「お説教」をするだけでは、人は自らの愚かな行為には気づきません。

しかし「いじめはなぜ起こるのか」と一歩引いて、俯瞰的な視点に立つことができた人は、そういう愚かな行為に加担することはなくなります。同様に「人はなぜ人を殺すのか」、「人はなぜ戦争をするのか」と、自身の感情をも含めて人(ホモ・サピエンス)という種の性質を俯瞰することを覚えた人は、愚かな行為には加担しなくなります。学問をするとは、そういうことだと思います。

One child, one teacher, one pen and one book can change the world.
Education is the only solution. Education First.
Malala Yousafzai 2013.07.12

Think Globally, Act Locally.

科学的思考は「俯瞰的視点(神の視点)」で、アートやデザインは「地に足をつけて(自分自身の現場視点)」で。



論文について

「論文」というのは、皆さんが思っているほど難しいものではありません。また、その分量についても、要件が整っていれば1ページでも立派な論文になります。

おおよそ、以下のような流れで書きます(太字は特に重要)。

1) 表題(Title)
 通常2~30文字で簡潔に記載します。必要に応じて副題(Subtitle)を添えます。
2) 要約(Abstract)
 論文の内容全体をまとめたもの(論文の紹介などに利用されます)
3) 目的と背景(Introduction) 
 何を問題にするのか、何を解決したいのか、
 動機・目的を明確にするとともに、「ああすればこうなる」、
 「ああであればこうである」といった「仮説」を述べます。
 また「先行研究(既知の知見)」についてもふれます。
4) 方法(Materials and Methods)
 実験や調査の方法など、第三者が再検証できるように詳細に記述します。
5) 結果(Results)
 実験や調査の結果、明らかになった事実を記載します。
 主観的な感想は含まれてはいけません。
6) 考察(Discussion)
 結果をもとに、当初の「仮説」を検証します。
 ここには主観的な考えが含まれて構いません。
7) まとめ(Conclusion)
 考察の結果として結論を書きます。
8) 謝辞(Acknowledgements)
 実験に協力してくれた方、アドバイスをくれた方、また研究資金を
 提供してくれた方などへのお礼を書きます。
9) 引用文献(References)
 本文中でふれた文献等について、著者、書名(雑誌名)、発行所、発行年、
 (記載箇所)を明記します。項目の順番は、学会等のルールに従います。

実際には、投稿する学会等によって、ルールや慣習がありますので、それに即して整えることになります。

論文は、自分のために書くのではなく、読者のために書くものです。常に第三者の視点で読み返し、「正しく伝わる」文章になるよう心がけて下さい。

論文の書き方の参考に:日本心理学会 執筆投稿の手引き



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GUIDE

DATA


*1 西欧から学問を輸入した際、「生き方」の基本にある「哲学」と「神学」は除外され、教育勅語という短い文章が当時の「生き方」の基本として教育されたという経緯があります。
*2 参考:中学校学習指導要領解説 道徳
添付ファイル: filereport.pdf 198件 [詳細]
Last-modified: 2020-03-04 (水) 17:11:46