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視聴覚情報論/2020/0520

第4回 ホモ・サピエンス

視聴覚情報論/2020 2020.05.20

前回の講義:視聴覚情報論/2020/0513

第4回目の展開と要件


以下、目次を見て本日の講義の全体像を把握してから、順に読み進めて下さい。



本日のメニュー


はじめに

第4回 コメント雛形 の準備

今回も、受講生のみなさんに今回の講義テーマに関するコメントを求めます。
講義の文章を読む前に、特設サイト上に第4回用の「節」を作って下さい。
記事追加については、最新の(第4回)の記事が一番上になるように掲載して下さい。Webでは、最新の情報が、ページの先頭です。

==第4回 HomoSapiens|2020.05.20==
===現代人と初期人類との違い===
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===ヒトとチンパンジーの違い===
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講義の学際性について

この講義で言及する内容は多岐に渡ります。「視聴覚情報」について総合的な理解を促すために、歴史・心理・工学的知識など、様々な領域を横断的に結んでお話ししていますので、受講生の方にとっては、整理がつきにくいかもしれませんが、新たな価値の創出に関わる学問は本来「学際的」なもの・・ということで、この機会に、学問の領域分類を再確認していただき、あなた自身の授業科目選択のバランスについてご確認ください。以下、参考までに、学問領域の一般的な分類です。

1. Homo Sapiens

人間の視聴覚を理解する前提として、生物としてのホモ・サピエンスについて概観します。

ニホンザルもチンパンジーも含めて「サル」と一括されることがあるので、多くの方が、ヒトとサルの間に大きな隔たりがあるかのような印象を持ちがちですが、遺伝子レベルでみると、ニホンザルとチンパンジーの間に大きな差があるのに対し、人とチンパンジーでは 98.4%程度一致していて、わずかな差しかありません。

遺伝子レベルの差異と、表現型の差異とはまったく別です。表現型は人間の視覚がとらえた差異にすぎません

私たちホモ・サピエンスは、コモンチンパンジー、ピグミーチンパンジー(ボノボ)と並ぶ、第3のチンパンジーなのです。

ヒトを「万物の霊長」などと言って傲り高ぶった態度をとっていると、自然界から大きなしっぺ返しを食らうことになります。生物界におけるホモ・サピエンスのポジションを見直し、もっと謙虚になることが必要です。

私たち、ホモ・サピエンスは、ホモ属(ヒト属)の最後の生き残りです。

参考1:ホモ属

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参考2:人類の拡散
GoogleImage:人類拡散のルート




2. 人類略史

垂直軸(時間軸)におけるヒトの理解

以下、ヒト上科の分岐から最近までの人類の歴史を概観したものです。個人的な趣味に基づく項目が多分に含まれていますので、あくまでも「ヒトについて考えるヒント」・・という程度で眺めて下さい。

私たち個体が生きている時間はわずかです。長いスパンで歴史を振り返ると、人類は、進化の過程で何度も絶滅の危機に遭遇してきたことがわかります。
 氷期の到来、火山の破局的噴火、新種のウイルスとの遭遇・・持続可能な未来のデザインには、もっと長大なスケールで物事を考える必要があります。

3. ヒトとチンパンジー

水平軸(空間軸)におけるヒトの理解

視線を垂直に時間軸を遡って過去から現在を眺めたあとは、視線を水平にして、現在の地球上で共存する他の生物との比較をしてみたいと思います。比較の相手は、進化の隣人であるチンパンジーです。

直立二足歩行

これには、当然のごとく諸説あります。石や棒を持つのに都合がよい(実際、ヒト以外の猿も、何かを持った状態ではふつうに2足歩行します)、直立は日光に当たる面積を多くする(体温調節)、大きく見える(威嚇)、採集行動に都合がいい、樹間の移動に効率がいい、水中生活に合う・・などなど。有力なのは「物を運ぶため」というものですが、「水辺」での生活・・というのも興味深い話です。

魚貝類の採集生活・・これは確かにヒトの特徴かもしれません。アフリカに住むチンパンジーで、魚を食べたという報告はないようですし、一般に、チンパンジーは泳ぐことができず、水を避ける傾向があります。そもそもチンパンジーの体脂肪率では水に浮くことができません。

ヒトは進化の過程で水にもぐったのではないか。映画「ACRI」(石井竜也監督)に登場するホモ・アクアレリウスというのは、「人魚」のお話ですが、確かに「体毛が無い」というのは 水棲哺乳類(カバ、ジュゴン、クジラなど)の特徴です。

食物

果物、野菜、肉・・雑食であることは同じですが、決定的な違いは当然ですが「加熱したものを食べているかどうか」です。
非加熱のデンプンと、加熱後のデンプンの違いで、虫歯の悪玉菌繁殖力が変わります。野生のチンパンジーに虫歯はありません。

肉食という点については、先述した魚介類を食べるか否かのちがい、またヒトの狩猟対象が有蹄類(偶蹄:牛、奇蹄:馬、長鼻:象)であるのに対し、チンパンジーの狩猟対象は霊長類が多いという違いがあるようです。

移動と定住

ヒトもチンパンジーも大型動物であり、基本的には「移動」生活が前提です。

しかし、人類は約1万年前に「定住する」という戦略を採用しました。

巣をつくって定住する小さな動物は、排泄のコントロールが上手ですが、移動する大型動物は所構わず・・という状況。犬・猫・うさぎなどのトイレの躾は簡単ですが、チンパンジーにはおむつが必要・・と同様に、ヒトの赤ちゃんのトイレットトレーニングには長い時間を要します。ヒトも基本的には「移動生活」をする生き物であることがわかります。

定住の歴史はわずか1万年。人類の歴史のスケールからみると、現在の我々の日常(定住)は異常な状況にある・・という認識は重要です。

短期記憶

目の前のパターンを瞬時に記憶する短期記憶能力について、ヒトはチンパンジーよりも能力が劣るといわれます。ヒトはその能力を犠牲にして、他の能力(長期記憶? 言語?)の開発に脳を使うことを選んだと考えられます。

京都大学霊長類研究所 動画DB

イメージ認知能力

チンパンジーなどの大型類人猿は、鏡による自己確認や写真の認知が可能で、またペンを使った落書き行為もします(ニホンザルなど旧世界ザルは落書きはしません)。人間の描く絵との違いは何か? 以下参考例です。


音楽を認知する能力

チンパンジーも「音のリズムに自分の動きを合わせる」ということを自然にします。音程を分けてコントロールできるか(音痴でないか)は不明ですが、時間軸上の秩序を認知するリズム感については、ヒトとチンパンジーに共通に備わった能力と言えそうです。

道具活用能力

智恵というレベルでは、チンパンジーも意外に優秀です。「パイプの底に落ちたピーナツを取る」という課題に対しては、子供のチンパンジーでも「水を流し込んで浮かせて取る」ということをやります。人間の場合は8歳以上でないと正解できません。

しかし、道具を使って道具を作ること(二次製作、例えば石斧を使って弓矢を作る)となると、難しくなりますし、もちろんコンピュータのような「形式的な知識」を要する機器操作は人間に軍配が上がります。

付記:道具の起源
道具には「武器」としての起源があります。素手では無理でも、武器を持てば、体格的弱者が強者に勝つこともできる。これは、生物一般の社会秩序と人間の社会秩序の違いを生んだひとつの要因といえます。

凶暴性

一般に動物のオス同士の戦いでは、相手が腹を見せるなりの降参の姿勢を見せると、それ以上の攻撃はしませんが、霊長類は凶暴です。チンパンジーの子殺しは頻繁に観察されているものですし(親近感のあるキャラクターですがチンパンジーは「猛獣」です)、またインドに生息する多妻型のハヌマンラングールの雄の場合、ハーレムを勝ち取る際に、雄に攻撃を仕掛けるだけでなく、その群れの雌が抱えている乳児を全て食い殺すという現象も観察されています。

ヒトの場合はどうでしょうか? 全体をおしなべてみれば「共生戦略」をとることで平和的に繁栄した生物のようにも見えますが、1万年変わらぬ暮らしをしているアマゾンのヤノマミ族では、民族内部の戦争状態が断続的に続いているし、先進国といわれる国々でも、戦争も含め、殺人は横行しています。

凶暴な性質を持つという点について、ヒトと類人猿を分ける境界は明瞭ではないのかもしれませんが、ヒトが行う「殺し」は「食べる」という行為とは一般に結びつかないこと、また、自身の肉体が傷つけられることよりも「自尊心」という「幻想」を傷つけられたときの方が怒り狂って凶暴になることなど、類人猿とは凶暴性のメカニズムが異なっているといえます。

計画性

ゴリラは、餌場へ向かう際に、餌をとるための道具を持参するという計画的行動をします。ただし14時間以内。長期的な先読みはできないようです。

協力

ヒトは幼児でも無条件に人に協力しますが(たとえば大人が落としたものをサッと拾って渡してくれます)、チンパンジーは見返りがなければ協力しません(自分に利益があることが必要条件です)。「見返りのない協力」「共通の目標に向かって協力」・・これはチンパンジーにはない、ヒトの特徴です。

…ところが、最近の研究で「見返りのない協力」も行うことがわかりました。


シンボル操作

チンパンジーは、死体を埋葬する(墓づくり)のような、高度なシンボル操作に関わることはありません。また下の例でもそうですが、指差し、つまり指という記号が指し示すもの、を理解・活用することは難しいようです。以下のような実験事例があります。

2つのカップのいずれかに、中身が見えないように、また臭いで気付かれないように餌をいれ、実験者がヒントを与えるかたちで、どちらのカップを選択するかを試したところ、二択実験では・・

つまり、チンパンジーは「指差し」を理解しない。実験者が餌の位置を教えているとは想像しない・・ということです。

ただ、こんなこと(指示出し)をするキツネザルもいます。
https://www.youtube.com/watch?v=WXM8tUnSJ3o

言語

音声によるコミュニケーションは、もちろんチンパンジーも行います。しかし、ヒトが用いる音声言語の最も重要な特徴は「二重分節」つまり、音素という音の単位の組合せで単語という意味の単位が構成されているという点です。

ユニット単体には意味はなく、その組合せで情報ができる。これは5音階、7音階といった音階を用いてメロディーをつくる音楽も同じです。この「二重分節」が、取り扱える情報量を無限大にしたという事実が、最も大きな差であると考えられます。

奴隷体質

子供たちを集め、目標を定めて「よーいドン」。みな無邪気に競争に参加します。かけっこ、クラスマッチ、数値目標。なぜ競争しなければならないのか。一番になって何が偉いのか・・ヒトはそんな疑問を抱くことなく「競争」する生き物だといえます。

最大の報酬は金でも名誉でもなく、脳が感じる快感。ヒトは脳活動のほんの数パーセントしか意識化することができません。目標達成の快感を知った脳は、「なぜ」という問いを意識化させることなく、ヒトをあらゆる競争に積極的に参加させる。

積極的に奴隷になる(自己家畜化する)生き物はヒトだけです。

学習方略の違い

箱の中から飴(報酬)を取る・・その手順をどう学習するかについて、人(子供)とチンパンジーとを比較した実験事例があります。

ブラックボックス(内部の仕組みが見えない箱)と、ホワイトボックス(内部の仕組みが見える箱)の2つのケースで、いずれも、実験者が「飴を取り出し方についてのお手本」しめします。その際、実験者は 「箱の上を1回たたいて、次に横を2回たたく。次に蓋を開けて飴を取り出す」といったような無意味な手順を踏んで飴を取り出すこととします。
実際には、蓋を開けるだけで飴は取り出すことができます。

つまり、ヒトは「形式を学ぶ」という学習方法をとるのです。なぜそんな無駄なことをするのか不思議になりますが、この学習方法のちがいが文明の発展に寄与したと考えると、「形式を重んじる」ということも、決して無意味なことではないと推察されます。現代人は、宗教儀式や祈りの行為を「形式的なもの、無駄な行為」と考えがちですが、人間だけがそういう行為をする、その差がヒトとチンパンジーの差を生んだのだと考えると、そこには大切な何かがある・・・とも考えられます。

チンパンジーは運動能力と短期記憶において人間よりも優位です。一方、ヒトは、言葉・複雑な道具(二次製作)、協力、そして「形式」「関係」の重視という特性をもちます。ヒトが捨てた戦略を訓練する試み(例えば短期記憶能力を訓練する)は、ヒトの進化のベクトルから考えれば、成功するとは考えにくいでしょう。チンパンジーから枝分かれしたときに、何を捨て、何を選んだのか…ヒトの未来のデザインを考えるときには、その再確認が必要です。



4. 特設サイトにコメント

本日の最初に、書き込み用の雛形をつくっていただきました。以下の事項について、あなたなりのコメントをお願いします。

留意事項

6. 参考

参考書籍

付記
昔と違って、今はAmazon があり、また書店も大規模化したため、「選択肢が多すぎて、どれを読んだらいいのかわからない」と迷うことが多いと思います。そんなときは、以下のように考えてみるのもいいでしょう。

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以上、第4回目の授業、これにて終了とします。お疲れ様でした。




APPENDIX

第5回について

遠隔授業が長期化しています。次回も同様に、授業開始前に、ページを更新・アップするので、授業時間を中心に、同様に読む・考える・書く・・を行なって下さい。




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DATA

Last-modified: 2020-05-20 (水) 13:54:53