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GraphicDesign

グラフィックデザイン


グラフィックデザインとは、主としてポスター、広告、チラシ(リーフレット、フライヤー)、商品パッケージ、ロゴマークなど、文字や画像を主な素材として、それらを平面上に構成する作業のことを言います。現在では、PC上で作業が完結するDTP(デスクトップパブリッシング)が一般化したため、より多くの人にその実践の機会が与えられるようになりました。

デザインにはセンスも大切ですが、論理的な思考も大切です。以下、文章ばかりですが、自分にはセンスがない、経験がないからわからない・・と思っている人でも、理屈を学べば、出来上がりはガラリと変わります。




情報の設計

誰のためのグラフィック(目的)

初心者の多くが、見た目をカッコよく作ろうとします。で、それ違います。
カッコよくつくっても読者は喜びません。うれしいのは作った本人だけです。
読者視点で「情報がいかに見やすく、わかりやすいか」ということを最優先に考える。プロとアマの違いは、この意識の違いです。読者にとって見やすい・・ということが、結果的に「情報としての美しさ」を生み出すのです。まず、それに気づくことで出来栄えは大きく変わります。

情報の洗い出し(現状分析)

ポスターにせよ、フライヤーにせよ、はじめに掲載すべき情報をすべて洗い出すということが大切です。クライアント(発注者)がいる場合は、十分な聞き取り調査が必要です。あとになって「やっぱり◯◯を加えて欲しい」とかなると、そこでバランスの見直しとなって、それまでのレイアウト作業がすべて台無しになります。

以下のように、5W2Hがきちんと含まれているか、確かめてください。
どれかが抜けると「ポスターらしさ」がなくなります。

Illustratorなどで作業する場合は、情報要素をひとつづつ入力しながら配置を考える・・というのではなく、これらの文字情報と画像をとにかく全部先に入力して、ワークエリアにばらまいてください。掲載するすべての情報を置いてから、最適な配置を考える・・というのが賢明です。

5W2Hの役割と表示の仕方




ビジュアルデザイン

さて、ここからようやくビジュアル(見た目)の話です。

構図を意識する

よくできたポスターというのは、全体の構図がしっかりしていて、ポスターをサムネイルサイズにまで小さくしても、その絵柄がはっきりわかります。

基本的に「見るところはひとつ」、読者の視点を最も強くひきつけるものを置いて下さい。紙面の中に見るところが2つ、3つとあると、全体がバラけてしまいます。一枚のグラフィックとして、まとまりが感じられることが必要です。

この2つを、ブラウザの画面をどんどん縮小して見比べてみてください。Firefoxなどでは、[command]+[-] でコンテンツが縮小します( [command]+[0] でリセット)。小さくすると、その差が歴然とすると思います。縮小したときに、ごちゃごちゃと見えるのは、構図があまり意識されていない証拠です。

補足:構図の良し悪しは理屈で見極められる
Googleイメージ検索では、なぜ綺麗な画像が優先的に出るのか(中学生の交通安全ポスターも比較的いいものが上位に出ます)。ひとつはページランクを元に、ランクの高いサイトにある画像をセレクトすることで、結果的に質の高い画像が選ばれるということが言えます。もうひとつ、構図がしっかりしているかどうかというのは、それが低い空間周波数成分をもつか(画面の中に大きくしっかりとした明暗の波があるか)という観点からもある程度判定可能で、Googleがそれを利用しているかは不明ですが、人間の感性に頼らずとも計算によって判断できることを意味します。構図の良し悪しは理屈である程度見極められるのです。

構図上のNG

以下、たいへんざっくりした話ですが、構図上のNGといわれるものです。念のためご留意ください。

視覚要素を揃える

まずは、紙面に置かれる視覚要素について用語の確認から・・。

これらの要素について、様々な観点で「揃える」ということを意識すると、全体に統一感がもたらされ、美しいレイアウトに仕上がります。


レイアウトグリッドを使う

上記の「揃える」という作業において、最も威力を発揮するのがレイアウトグリッドです。きれいにレイアウトできるのはもちろん、「もうちょい上」とか「もうちょい左」とか迷うことなく、「ここに置けばいい」ということになるので、作業効率も大幅にアップします。

紙面の基調は本文文字サイズと行間です。画面全体の基本的な空間リズムは、本文文字のサイズと行間設定によって決まると考えるとよいでしょう。本文が画面全体を埋め尽くす状態をベースに、そのリズムを崩さないように他の要素を配置する。この考えをカタチにしたのがレイアウトグリッドです。

こちらをご覧下さい > fileSample.pdf
このサンプルは 本文8.5pt、行送り15ptを前提としています。

本文の文字サイズを最小単位に、最適な一行文字数×数行分の矩形を1ブロックとして、紙面を分割しています。ブロック同士の間隔は、横方向では本文2文字分あるいは3文字分、縦方向では本文が複数ブロックに連続しても整うように、行間+文字高+行間の分だけ空けます。

繰り返しますが、重要なのは本文の文字サイズと行間です。

はじめにグリッド線をひくのではありません。まず、 紙面を構成する基本単位である、文字の大きさと行送り(あるいは行間)を決め*1、そして、その本文記事が紙面を埋め尽くすイメージをつくって、例えば、18文字×5行分で1ブロックとか、22文字×4行分で1ブロックなどとなるように、線を引くのです。

よくある間違いが、上のようなフォームを下敷きにして、「本文12pt、行送り18pt」の記事を割り付ける・・・という類のものです。あくまで「本文8.5pt、行送り15pt」となる記事でなければ、グリッドには合いません。グリッドが成立する根拠をふまえなければ、グリッドを使う意味がないのです。

くりかえします。自分で独自のグリッドを作るときは、線を先に引くのではなく、読者にとって読みやすい本文文字サイズと行間を先に決める。はじめに読みやすい本文の設計ありきということです。

レイアウトグリッドを意識した文字のジャンプ率

紙面にはふつう数種類のサイズの文字が載ります。情報要素によっていろんなサイズを使いたくなるものですが、それをすると画面全体の統一感が損なわれてしまうので、その種類は、キャッチ、リード、見出し、本文、キャプションの5つ程度にします。

使用する文字間のサイズ比をジャンプ率といいますが、基準となるのは、本文の文字サイズや行送りです。

注意:「行間」と「行送り」とは異なる用語です。

例えば、「文字高+行間+文字高 - α」サイズのタイトル文字は、2行分相当の文字高で、ベースグリッドに載せやすいサイズです。また例えば、本文の行送りが15ptの場合、行送り10ptの詳細説明文は、本文に対して3:2という簡単な整数比になるので、ベースグリットとの親和性が高くなります。

異なる文字サイズを選択するときは、常に、それがベースグリッドにうまく調和するかどうかを考える・・ということです。

文字をうまく使うコツ

文字サイズの種類を少なくして、様々な要素の差別化(もちろんそれが必要な場合の話ですが)をするにはどうするか。

一部を目立たせる=文字を大きくする、と単純に考えるのではなく、文字のウエイト(太さ)や色を変える・・と考えれば、ベースグリッドのリズムは崩さずに済みます。
 まずは、サイズを変えずにウエイト(太さ)だけ変える・・ということを検討してみて下さい。数種類のウエイトが用意されたフォント(ファミリー)があれば、これを変えることで、強弱をつけることが可能です。
 また、初心者の方は「文字色=黒」を疑わないものですが、黒は絶対ではありません。例えば、本文文字を70%グレーとすれば、見出し文字を黒にするだけで、見出しと本文を差別化できます。文字の大きさは本文と変わらないので、ベースグリッドのリズムを乱しません。

音楽と同じです。リズムが狂うと音楽として成立しなくなりますが、要素の音量や音色を変えるということには問題はありません。キック(バスドラム)とベースは、ほぼ同じリズムを刻んでいますが、音量や音色は自由に変えられます。

フォントはできるだけいいものを

プロとアマの避けられない制作環境の差。それがフォントです。本格的な仕事に使えるきれいな文字をというのは非常に高価で、学生さんがそこに投資するのは難しいでしょう。ただ、普通のPC環境でも使える文字とそうでない文字があるので、その違いを知って作業すれば、結果には差がでます。
 Light, Medium, Boldなどのウエイトが選べるものを使いましょう。Macであれば、標準のヒラギノにW6とW3の違いがあります。Windowsの場合、新しい Yu Gothic UI はウエイトを選べます。古い標準フォントには、ウエイトがなく、太字というのも単に輪郭を太らせるだけなので使えません。

メインビジュアルは必須

メインビジュアル(キービジュアル)とは、紙面・画面上の視覚要素の主役となるイラスト、写真、絵などの画像を意味します。初心者の方は主役級の要素を紙面内に複数配置してしまうことがあるようですが、原則、見るところはひとつ。はっきり差別化してひとつに絞りましょう。

さて、メインビジュアルの選び方ですが、画像であれば何でも使える・・というわけではありません。使いやすいものとそうでないものの差は歴然としています。以下の2つを見比べてみて下さい。

ポスター全面に画像を使用する場合、「文字が上に載る」ということに注意が必要です。通常はある程度完成イメージを意識して、撮影(あるいはイラストを依頼)する段階で「このへんに文字が載るから、左上の方が空になるように・・」ということをカメラマンと共有します。

メインビジュアルには様々な使い方がある

風景、人物、商品など、画像の使い方は以下のように整理できます。

どれが最も適した使い方か?ということについては、目的によって異なります。

といったぐあいです。

よく、料理の写真等で、皿全体をフレーム内に入れたものがありますが、見せたいのが料理であれば、皿はフレームからはみ出しても構いません。このように、何を見せたいかによって、画像の使い方は変わります。

メインビジュアルは必要に応じて加工する

画像処理他、ツールを使いこなす技術が必要になりますが、以下のような手法で様々な演出が可能になります。

メインビジュアル内の要素の向きに注意

メインビジュアル内の要素が持つ「方向」は、レイアウトに大きく影響します。
例えば、人物の顔写真がある場合、その視線は読者の視点を誘導する効果があるので「視線の先に、キャッチコピーの先頭を持ってくる」といった手法がよく使われます。逆にいうと、これに気付かないと、読むのにギクシャクした印象を与えてしまいます。文字要素は単に空いている場所に置くのではなく、これらビジュアル内の要素が持つ力をうまく利用しましょう。

余白について

最後になりましたが、余白(マージン)について。情報を見やすくするために余白は必須の要素です。以下、要点をまとめます。



以上、たいへんざっくりしたお話でした。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。




参考

関連リンク

書籍紹介

データ入稿について

最近では、インターネットでデータ入稿するケースも多くなりました。
ネット印刷のサイトにある、入稿手順に関する記事は、
実際に印刷データを入稿する際のデータのまとめ方の参考になります。

APPENDIX

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DATA


*1 文字サイズと行間はターゲットとなる年齢層にとっての読みやすさを考慮して決めます。子供や高齢者の場合は大きめの文字サイズと行間をベースにします。
Last-modified: 2021-08-21 (土) 09:11:46