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PrimitiveMusic

音楽の起源

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太古の昔、人が出会ったであろう「音楽」あるいは「音」を、ここでは以下の四つに分けて考察してみたいと思います。すなわち、人や動物の音声、雨や風などの自然の音、人の道具がつくりだす音、そして幻聴という当人にしか聴こえない内的な音の四つです。

音声(動物・人間)

動物の音声を、単純に外敵の存在を知らせる音、あるいは食料の存在を知らせる音と見なせば、それはヒトという生物の個体維持のためのシグナルに止まるもので、そのレベルのものは音楽の起源とは考えられません。しかし、人間がこれを「真似る」となると話は変わってきます。なぜならば「真似る」という行為は「複製する」ということであり、それは「反復」という音楽的なものへと発展する前段階と考えられるからです。

反復される音声は一定のリズムや音程を伴うことで十分音楽となり得えます。「ワンワン・・」「ケロケロ・・」など、擬声語の反復がそのまま歌詞となる例は多く、それを子供たちが好んで口ずさむ様子をみれば、動物の声態模写が音楽の起源と深く関わっていたであろうことが想像できます。

人をとりまく環境に存在する様々な音声は、反復によってそのゲシュタルトが意識化され、言語表現の素材となります。人の脳がリズムを意識する最初の体験は、そうした音声の反復だったのかもしれません。

自然の音

風・水・火・木・金属・土。人や動物の音声以外の自然の音は、通常は単なるノイズとして無視されるものですが、特に夜間など視覚刺激の少ない時間になると、様々な感情を呼び覚ますものとして意識されてきます。

風は空気の動きであり、樹間・建物のすき間・あらゆるものの空洞で直接的に突発的な音を発生させます。

火は空気を対流させてゴーという持続的な音をだすとともに、ときにパチパチという薪の音、ガサッという炭のはぜる音を出します。

水は雨音・川の流れの音・波の音として持続的・周期的な音をつくります。

木は風や水や火の力で間接的に音をつくります。雨に打たれる葉は打楽器、幹や枝の空洞は管楽器、長い蔓は弦楽器とその表現は多彩です。

金属の音、土(土器)の音は自然界には存在しない・・という事実は重要です。鐘の音、土鈴の音というのは人類がはじめてつくった人工的な音です。例えば、銅鐸の音は、当時の人々にとっては初めて耳にする人工的な音でした。鐘を鳴らして人民をコントロールする。それは一定の権力をもった為政者にのみできることであったと考えられます。

その他、カミナリ(神鳴り)の音は、稲妻という言葉に表出しているとおり、「稲」を豊かに実らせる「妻」と考えられていました。

ちなみに「日」には連想させる音がなく、「月」は「音がないこと:静寂」を連想させます。TVなどでは、月の映像と犬の遠吠えのセット表現が定番です。

風の神、水の神、火の神、あるいはまた神の宿る樹木が登場する神話は世界中いたるところに存在します。おそらく原始の人々にとっては、太陽や月と同様にそれらは重要な意味をもつ存在であり、その奏でる音は神秘的な感情をともなって人々の耳に届いていたものと思われます。

道具がつくりだす音

人が使いはじめた道具は、本来の使用目的以外に、音を発する遊びや祭礼の道具とすることができました。それらは本来の機能を除外することで、そのまま現代の楽器の原型となります。すなわち‥

これらの発明は、原始の音楽の発展にとっては非常に大きな出来事であったと思われます。なぜなら、一定の音程(周波数)で音が鳴る楽器、すなわち「楽音」を発生させることのできる楽器を扱うには、まず「チューニング」という周波数を同定する能力が必要であり、さらに音程の差から組み立てられる「音階」というものを成立させるには、聴覚がそれなりの分解能をもつ必要があるからです。太鼓と音声によるリズムだけの音楽に加え、より深化した能力や知識・技術がここで必要になるのです。幼児の音楽能力の発達を観察すればわかるように、まずリズム感、そして音程感の順にその能力は明瞭になってきます。管楽器や弦楽器の誕生の背景には、飛躍的な聴覚系の変化があったと考えられます。

ちなみに、人類遺跡の発掘調査から、楽器は3〜4万年前にはすでに存在していたと考えられています。

幻聴(怪音)・内なる音

幻聴(幻覚)とは、物理的に空間に音響が存在しないにも関わらず、本人の耳には「もの音」が聴こえるという現象です(音は「聴こえてくる」ものでもあるため、本人が幻聴と気付いていない場合も多い)。

科学の時代に生きる現代人は「幻」というものを、非合理的なもの、精神的な病のなせるものとして意識下に封じこめているようですが、「神々との交流」が生活の大きな部分を占めていた太古の人々の世界観では、この「幻聴」も音楽的行為の契機となり得る重要な音であったと思われます。現代においても、アルコール、薬物、あるいは激しい舞踏などによるトリップによって、意識下から自動的に湧き上がってくる言葉やメロディーを拾いあげる作業が時と場所によっては当然のごとく行われています。人の創造活動を語る際にはこの「意識下からわき上がる音」も無視できないものなのです。

また、聴覚以外の他の感覚器官(たとえば視覚)から感じとる「内なる音」・「内なるリズム」というものも存在します。例えば柱が林立する寺院の中を、一点を見つめたまま歩いてみます。空間に並んだ複数の柱が見る者の移動に伴って一斉にその相対的位置関係を変えます。その時視覚は、まさに音楽的なリズムを感じます。ゲーテが「建築とは凍れる音楽である」と言ったように、空間的・視覚的な秩序は、それを見る者の動きによって、時間的なリズムすなわち音楽となるのです。



音に関する覚書






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Last-modified: 2020-05-13 (水) 10:18:13