日本のグラフィックス
日本という国、あるいは日本人は非常に特殊な存在です。例えば、国境が海上にあって外国が見えないこと。水に困っていないこと。漢字・ひらがな・カタカナ・・・複数種の文字が文面に混在すること。地理的にも歴史的にも不思議が多い日本では、そのグラフィックスにも様々な特殊性が現れています。
日本のグラフィックスの特徴を知ることで、日本の特殊性を再認識することができます。国際社会で活動するには、まず自分の存在を相対化する視点を持つことが必要です。
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技法・画家
- 富岡鉄斎(1837〜1924)
- 竹内栖鳳(1864〜1942)
- 横山大観(1868〜1958)
- 山元春挙(1872〜1933)
- 下村観山(1873〜1930)
- 川合玉堂(1873〜1957)
- 上村松篁(1875〜1949)
- 鏑木清方(1878〜1972)
- 竹久夢二(1884〜1934)
- 前田青邨(1885〜1977)
- 菱田春草(1887〜1911)
- 速水御舟(1894〜1935)
- 伊東深水(1898〜1972)
- 伊東深水(1898〜1972)
- 片岡球子(1905〜2008)
- 東山魁夷(1908〜1999)
- 加山又造(1927〜2004)
- 平山郁夫(1930〜2009)
日本のグラフィックと日本人の視覚
絵巻物
- 段落式構図と連続式構図
右から左へと展開(前者は詞書と絵が順に繰り返される)
- 視点の移動1
時間軸に沿って移動する視点(登場人物は反復描写される)
- 視点の移動2
近づいたり遠ざかったりする視点(遠近感の変動)
- 俯瞰描写と斜線描法
吹抜屋台 順勝手(右上→左下)と逆勝手のリズム
- 場面転換
山・川・霞・空白・襖・杉戸などによる場面転換
水墨画・山水画
- 上下遠近法
上の方から遠景→中景→前景
- 観賞スタイルとしての臥遊
見る者が画中に分身を送り込んで歩きまわる
浮世絵
- 組作品
東海道沿いを旅の時間に沿って構成する等の発想
- 不完全な透視遠近法
多数の消点と遠近感(多視点)が存在する風景
- 切りつなぐ発想
一度バラバラにした部品(目鼻)を再編集した役者絵
- 遠景・近景の接続
地平線・水辺の線・霞などによる場面接続
- その他の特徴
無理に切りつないだ構図 線で表された雨 大きな落款
視覚と世界観
- 西洋人の視覚:
視点を固定(透視遠近) 明確な自我 時間の凍結(一瞬を永遠に)
- 日本人の視覚:
視点の流動(空間的歪の容認) あいまいな自我 時間の流れ(無常観)
日本文化と日本人
日本文化を考えるキーワード
- 侘び・数寄・いき・風流 / 絶対性の放棄 未完の美 流動的な美
- 自然美と芸術美の包括 軽微な平衡破却 流動するスタイルの容認
- 作り手の内側にない要素を取り入れる発想
- 間・空洞(うつぼ)
- 切り・つなぐ を前提とした間 あいまいな境界
- 目的のない中空構造 異界との交流
- ことば・音楽・舞・・ 情報の構成要素は未完のまま 間 を介して接続される
- ヤオヨロズの神(VS 一神教)
- 木の建築(VS 石の建築)
- 風呂敷(VS トランク)
- 再生し続ける音楽(VS凍れる音楽)
- 「小さく・ゆっくり」(VS 「大きく・速く」)
- 「俳句」 - 世界最小の文学
- 絶対的なものを想定しない
- 多様性と"手続き"の重視
- 完結・永遠に対する諦め
- 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」(平家物語)
- 「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」(方丈記)
日本を相対化してみる
多くの外国人が日本の文化や日本人の人柄を高く評価していて、私自身もこの国の文化に強い関心を持っています。確かに、日本は治安が良く住みやすい・・・。しかし、今この国の現実は危機的な状況にあるといわざるをえません。外部からの視点で日本を眺め(空間的相対化)、また歴史を省みる(時間的相対化)ことで、「そもそもなぜこんな状況になっているのか?」ということを問う必要があります。(以下メモ)
- 西欧では学問のコアに「哲学」と「神学」がある / 日本には無い
- 日本人には信仰心がない?
- 日本人のモラルを支えているのは「美意識」?
- 日本人は「思考停止」状態?
- 思考停止とは、文字どおり「考えるのをやめること」、あるいは、
自分の判断を放棄して、既成の判断を無批判に受け入れること。 - 日本人は「考えない」?「ひとまかせ」?
- 政治を他人事のように客観視する日本人
- 「国」が責任を取る・・・とは?
- 「考えない」・「疑問を持たない」ようにプログラムされた戦後日本の教育
- GoogleImage:授業 生徒 GoogleImage:classroom students
- 思考停止とは、文字どおり「考えるのをやめること」、あるいは、
- 精神分裂病としての日本近代
- 日本人は国境を意識することがない
- 周囲を海に囲まれている日本では、「柵の向こうは外国」という他の多くの国とは根本的に生活感覚が異なる
- 日本の家屋には「鍵」の存在が希薄。空間は鍵のない襖で仕切られ、家屋自体に「鍵をかける」のも近代以降
- 現代日本の書類には漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベットと4種類もの文字が使われている(アルファベットだけの欧米とは大きな違い)。「漢字が読めない幼少期には子供用の本しか読めない」「文書の入力に変換の手間がいる」など様々なハンディを負わされている(だからといってそれを放棄するのは問題があるが・・)。
日本人の気質:脳科学の仮説
- 弱気で神経質(?)
日本人は一般に不安を感じやすく、弱気で神経質だと言われています。
これには「弱気」遺伝子(セロトニン・トランスポータSS型)が関与していて、 その型の存在する率はアメリカでは20%弱ですが、日本人は70%近くになると言われます。セロトニンは幸福感と関連の深い脳内物質で、それが回収されや す い(常態としてセロトニン不足になる)日本人は、弱気で諦めがはやい(よく 言えば、優しくて慎重、気が細やか)タイプと言われます。
- 新奇追求性の欠如(?)
日本人は新奇追求性に欠けると言われています。脳科学の知見によれば、 ドーパミン受容体D4遺伝子が長い(DRD4-7R*1)ほど、新奇追求性が高くなります。そして、長いD4受容体 の人は欧米人の50%以上に対し、日本人では数%しかいません。
- ネオテニー
日本人は平均身長に対して脳が大きい(相対脳重が大きい)ようです。
理由は「ネオテニー」つまり幼形成熟だと言われます。一般に、厳しい環境でネオテニー 化することが多いと言われ、日本人の主な源流である北方系モンゴロイドでは、 シベリアという厳しい環境に適応すべく、ネオテニー化が進んだと考えられています。
- 特殊な日本語
世界中の言葉は、共通祖先のような原始言語から派生していますが、日本語は 主たる系統からは遠く離れた末端に位置します。「脳レベルでも日本語の特殊性 が現れていて、たとえば、漢字用の脳領域とカナ用の脳領域が別々に作られた りする。こんなことは他の言語ではない」(澤口) さらに角田(1981)によれば、日本語は母音の頻度が高く(欧米の言語は子音 中心)、母音と質を同じくする楽器の音や虫の声など、多種多様な音声が左脳 で処理されているといいます。音楽も自然の音も言語と渾然一体となって処理されているという点で特殊な状況にあると言えるでしょう。
日本文化論:文献紹介
- 「甘え」の構造 土居健郎
- 「いき」の構造 九鬼周造
- 菊と刀 ベネディクト
- タテ社会の人間関係 中根千枝
- 中空構造日本の深層 河合隼雄
- 日本人のイメージ構造 岡田晋 ← 私の師匠です。
- 日本人とユダヤ人 ベンダサン
- 日本人の本質 澤口俊之
- 日本文化論 石田英一郎
- 日本らしさの再発見 浜口恵俊
- 日本流 松岡正剛
- 風土 和辻哲郎
- 文明の生態史観 梅棹忠夫
- 右脳と左脳 角田忠信
その他、講談社現代新書には、日本人・日本文化に関するものが多数あります。
余談
江戸時代
- 江戸時代の生活には学ぶべきことがたくさんあります。
俳句と映像
- 古池や 蛙飛びこむ 水の音 芭蕉
エスタブリッシング|アクション|リアクション
- 朝顔に 釣瓶とられて もらい水 加賀の千代女
エスタブリッシング(C.U.)|アクション|リアクション
対象|対象(間接的に人物の視線・問題発生)|(人物の)問題解決
- 俳句は音楽、リズムは8ビート
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