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情報デザイン概論/2021/1025

第7回 情報環境

情報デザイン概論/20212021.10.25

AGENDA



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CONTENTS


はじめに

当科目の学期末レポートについて

初回のガイダンスでお知らせしたとおり、この授業は学期末筆記試験はありません。毎回のみなさんのコメントと学期末レポートをもって単位を認定します。学期末レポートのテーマについては、次回第8回でお知らせします。

前回分、受講生の方のコメント

私たちにとっての「環境」とは

私の身体に対する外部、屋内空間に対する屋外、地域共同体とその外部、国家に対する世界、世界に対する地球環境。環境は「内部」に対する「外部」として、同心円状にイメージすることができます。

共同幻想としての環境

私たちには「環境」がちゃんと見えているわけではありません。私たちが見ている世界は言語によって再構築された「共同幻想(擬似現実)」です。

はじめにモノがあってそれに名前がついた(素朴実在論)わけではなく、言葉の「存在喚起能力」によって、対象はそれとして認識されています。
参考:サピア=ウォーフの仮説(言語的相対論)

ヒトは、感覚器が捉えた連続的な外界刺激を、離散的な言葉に置き換えて捉えています。例えば連続分布する電磁波を、赤 / 橙 / 黄 / 緑・・と色名に区切る(離散化する)のは「恣意的」な行為であって、どこで区切るかは言語圏(文化圏)によって異なります。これは抽象的な概念でも同じで、例えば「もったいない」という言葉は、他の言語圏には該当する語が存在せず "Mottainai" という綴りで広まりました*1。つまり私たちが認識しているのは言語化された「擬似現実」であって、世界の見え方は使っている言語によって異なるのです(完全な翻訳というのはもともと不可能です)。

そもそも、どんな生物も自身の持つ感覚器官を通してしか外界を捉えることができません。例えばヒトの視覚が捉える電磁波は 380nm 〜 780nm の範囲のに過ぎず、ガンマ線、X線、紫外線、また赤外線、通信用の電波は環境中に存在しても見えません。さらに言えば、今日までの科学では捉え切れていない物理的な存在の可能性もあります(電磁波の発見も19世紀)。要するに、あらゆる生物にとって「環境」とは、それが捉えうる範囲のものに過ぎないということです。

環境(世界)を制御できると思っているのはホモ・サピエンスだけです。生の自然を言語化(情報化)しつくすことはできず、したがって自然を制御しようとする「技術」には限界があります。「危機管理」という言葉がありますが、危機は想定外のところからやってくるものなので、管理できるという前提で行う準備には限界があります。人間は自然環境に対してもっと謙虚になるべきでしょう。

社会的共通資本としての環境

現代社会では、土地を含む多くのモノ・コトが市場経済の原理にもとづいて売買され、私的(排他的)に所有されていますが、すべての人の共通資産として社会的に管理・運営されるべきものものもあります。そうしたものを「社会的共通資本」といいます。経済学者宇沢弘文氏はこれを「広い意味での環境」として、以下の3つに分類しています。

内部環境と外部環境

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右の図は生物のホメオスタシス(恒常性)を説明する概念図です。内部環境と外部環境を「膜」で隔てたシンブルな概念モデルですが、生物個体から生物群、地域社会、地球環境まで、様々な「定常開放系」の理解に役立ちます。

一般に「内部」は「外部」から資源・エネルギーを取り込み、不要になったものを「外部」に廃棄することによって、その恒常性(ホメオスタシス)を保っています。個体レベルでは「食事と排泄」、人間社会では「エネルギー資源の取り込みとゴミの廃棄」です。生命体・建築・都市・地球・・、規模は異なりますが、外部環境と対峙される内部は、いずれも同様の仕組みをもった「システム=定常開放系」と考えることができます。

内部にあるものは、外部(環境)に押し出されたとたんにゴミ(忌避されるもの)になります。環境問題を考えるときは、今は内部にあるものでも、時間が経過すれはゴミになる・・ということを意識する必要があります。

内部環境が恒常的に維持されている状態が「生」、内外の区別がなくなる状態を「死」と考えます。死は「膜」が破壊されるか、あるいは、内部の拡大によって外部がなくなる場合に訪れます。

ちなみに内部は「異物」を排除するだけでなく、それを取り込むことによって変化(進化・多様化)を促す仕組みを持っています。

文化的環境と文明的環境

異文化という言葉はありますが、異文明という言葉はありません。つまり、文化には多様性が想定されていますが、文明はグローバルな標準化が前提となっています。文明的な環境は「拡大・成長」しつづけます。歯止めのない成長は癌細胞と同様に、最後には自分自身を滅ぼすということを忘れてはなりません。


情報環境とは

情報環境はリアルな物質によって構成される「現実空間(フィジカル空間)」と情報のみで構成される「仮想空間(サイバー空間)」、そしてそれらを融合した中間的な空間である「拡張現実空間」に分類できます。

現実空間(フィジカル空間)

リアルな物質環境の中にリアルな身体を持った「私」が存在する空間

付記:現実空間における「私」
「私」は「他者」との関係調整において「自我(あるいはセルフイメージ)」を形成しますが、他者からの「承認の供給不足*2」の状態にある今日、「私」という存在は不安定なものになり、結果「環境」との境界もあいまいになり、「環境」というものの存在を相対化できなくなる・・という状況になりつつあります。ちなみに、多くの動物は「私」を意識化することなく環境と一体となって生きています。


拡張現実空間(AR空間)

リアルな環境の中にリアルな「私」が存在するとともに、スマートフォンやスマートグラス等の端末上の視聴覚情報が拡張的に「上書き」された空間


仮想空間(サイバー空間)

仮想環境の中に身体をもたない別人格としての「私」が存在する空間

付記:仮想空間における「私」
仮想空間においても「私」は「アバター」や「アカウント」として自我を持っていて、仮想空間内における他者とのコミュニケーションによって、現実空間とは別の「私」が形成されます。仮想空間における「私」の最大の特徴は、死んでも蘇ることができる・・ということです。
 ネット上での誹謗中傷など、仮想空間内で生じている新たな問題は、仮想空間における「別人格としての私」と他者との関係に起因する問題です。



情報環境のデザイン

屋外空間(現実空間)

都市空間では「安全・便利」を実現すべく、ここはどこか◯◯へ行くにはどうすればいいか がわかりやすくデザインされていることが必要です。

屋内空間(現実空間)

屋内空間は「快適・便利」を実現すべく、様々な情報との接点が体系的に整理されることが重要です。

拡張現実空間

現実空間における情報は、物質的な基盤の存在を前提としたものが多いのが現状ですが、資源・エネルギーを使って標識やサインといった構造物やモノを作る行為は、結果的に廃棄物を生み出すことになります。資源・エネルギーの活用から、電子的な情報(ゴミを出さない)の活用による環境デザインへのシフトが求められます。その意味では、現実空間に電子的な情報を上書きするARの手法には大きな可能性があると言えるでしょう。

仮想空間

仮想空間への「入り口」は現実空間の中に存在します。歴史的に最も古いものから並べると、絵画(洞窟壁画)、文字(物語)、写真、音声電話、映画、ラジオ、テレビ、ビデオ、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤ、パーソナルコンピュータ、家庭用ゲーム機、携帯電話、スマートフォン・・

現実空間との最大の違いは「距離」を超越するということ、また「時間」を超越するということです。「私」は、映画、テレビ、ゲーム、Web、小説等、様々な情報コンテンツが描きだす「時空間」に没入するかたちで環境を体験します。

APPENDIX

関連ページ

文献紹介






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*1 Tsunami、Manga、Kawaii なども、日本語が輸出されて世界で使われるようになった言葉です。
*2 現代の若年層は、他者とのコミュニケーションによって他人から承認された経験に乏しい。各家族化した家庭内、地域社会、学校、そのいずれにおいても、人から「ありがとう」「あなたのおかげで助かった」と言われることがほとんどない。そうした状況下では、1) 周囲の期待に過剰適応する(良い子になる)、2) ひきこもる、3) 社会から離脱する・・のいずれかのパタンになる(宮台真司, 2005, よのなかのルール, ちくま文庫)。
Last-modified: 2021-10-25 (月) 19:26:19