LogoMark.png

情報デザイン論/2022/0706

第12回 映像情報

情報デザイン論/20222022.07.06

AGENDA

CONTENTS



> Recording

映像の歴史

映画略史

日本では

テレビ略史

パッケージメディア略史

Web動画略史

映像の技術仕様

映画の技術仕様


テレビの技術仕様

デジタル動画の技術仕様

映像編集

映画やドラマでは、街の中に見える建物の位置関係や、建物の中の部屋どうしの位置関係がなんとなくわかるのではないかと思います。平面図を見たわけでもないのになんとな く位置関係がわかるのは、個々の映像断片と、それらをつなぐ人物の移動方向が、視聴者の頭の中に架空の空間イメージを形成するからです。しかし、これは送り手が、うまく考えて編集しないと、スムーズには形成されません。一般に素人の作品には、この部分への配慮がないために、見る人が空間構造を理解できずに、「結局どういう状況なのかよくわからない」ということになってしまうのです。

作り手の頭の中にある世界の構造(空間スキーマ)は、見る側の頭の中にはありません。撮影しているあなたは、個々の被写体の位置関係を知っているけれど、 視聴者はそれをまったく知らないのです。

視聴者の頭の中に形成されるのは現実の空間構造ではなく、個々のショットから想像的につくりだされる架空の空間構造である・・この事実をおさえることがはじめの一歩です。

古典的ハリウッド

古典的ハリウッド映画(Classical Hollywood cinema)とは、1917年から1960年代にかけてのアメリカ・ハリウッド映画が培った、映画制作における表現手法(の集成)を指す用語で、現在の映画や、TVドラマにおいては、映像表現上のいわば「慣習」として制作者と視聴者との間に共有されているものです。以下の文献はそれを解説した代表的な書籍です(残念ながら邦訳はありません)。
The Classical Hollywood Cinema.
Bordwell, David; Staiger, Janet; Thompson, Kristin (1985).
New York: Columbia University Press.

以下、古典的ハリウッドにおける重要なキーワードと事例映像へのリンクです。

Shot / Scene / Sequence

Continuity Editing / Invisible Editing

物語映像では、視聴者を物語の世界に没入させるべく、編集行為自体を目立たなくすることが求められます。コンティニュイティー・エディティングとは、視聴者に編集点を感じさせない、滑らかな接続を目指す技法全般を指す言葉です。
ちなみに「絵コンテ」の「コンテ」は、コンティニュイティーのことです。


Action & Reaction / Question & Answer

物語映像の編集では、ショット間の接続は一般に「何らかのアクションと、それに対するリアクション」という関係でなされます。投げる>打つ、撃つ>倒れる、ボタンを押す>爆発する・・など、アクションとリアクションの関係が成立するようなショットを接続すると、本来は無関係の素材であっても、それらはつながって認識されます。

人は様々な物事を「因果関係」で理解したがる生き物です。2つの出来事をバラバラで記憶するより、「ああしたからこうなった」というかたちでまとめて理解する方が「経済的」に記憶できるからです。したがって、因果知覚が生じるようなショットの組み合わせであれば、別の場所で起こった、何の関係もない出来事同士であっても、見る人の意識の中には勝手に「つながり」が生じます。例えば「手を振る動作」と「爆発」をつなぐと、大半の視聴者は、「手を振る動作が原因となって爆発が引き起こされた」という解釈をします。ショット接続の大半がこの因果知覚を利用しています。

「原因と結果」を疑問形にかえると「疑問と謎解き」というかたちになります。疑問に対する答え(として妥当性のあるもの)を提示する・・というかたちで2つのショットを接続すると、本来は無関係なショットであっても、視聴者にはそれらが非常にまとまりのある情報として理解されます。
人間の脳は、内容の価値に関わらず疑問に対する答えが提示される瞬間に快感を感じます。「疑問が解決したときの快感」、逆に言えば、「疑問が解決しないことの不快感」が、人の行動を左右しています。「あの棚の上のヘンな物は何だ?」という、たった一つの台詞でも、主人公がその答えを見出すまでのプロセスで物語作品を1本つくることができます。そう考えれば「作品づくりのネタは無限にある」ということに気づくでしょう。


Parallel Editing / Cross Cutting

平行編集(クロスカッティング) とは、例えば、テロリストが爆弾を仕掛けていくシーンと、警官がその現場を探し歩くシーンを交互につなぐなど、異なる場所で同時に起きている複数の出来事それぞれのショットを交互につなぐ手法です。追うものと追われるものの緊張感を演出します。


Match Cut

ショット間に「一致」する関係をつくる手法です。特に「視線の一致」を利用した「視線つなぎ」は、編集の大半を締めるといっても過言ではありません。

Jump Cut

ひとつながりのショットを、時間を飛ばすようにつなぐ編集。違和感を演出する場合には効果がありますが、一般的には避けられる編集方法です。

180°System ( Imaginary Line ) 

869px-180_degree_rule.svg.png

180°ルールとは、例えば、二人の会話シーンを撮影する場合、二人の人物を結ぶ線のどちらか片側のエリア、つまり 180° の範囲を超えて撮影してはいけない・・という編集上の作法のことです。二人を結ぶ線のことを、イマジナリーラインと呼び、「イマジナリーラインを超えてはいけない」などと説明されます。これは、会話シーンを構成するすべてのショットにおいて、人物の左右の位置関係を保つため、またステレオ音声において話者の左右の関係を維持するため(視聴者の空間認知を混乱させないため)の配慮です。
画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:180_degree_rule.svg


Multi(-Angle) Camera / Multi Coverage

multi.jpg

マルチカメラ / マルチカバレッジ とは、複数のカメラで同時に撮影して、最終的に各カメラの映像を、時間が連続するように編集する技法です。スタジオ収録におけるスイッチングと同じで、基本的に被写体の動きの連続性が担保されるため、自然につながって見えます。カメラ・フィルムが高価であった時代には難しいことでしたが、現在では、カメラ・記録媒体ともに低価格で高画質なものなりました。iPhoneなどは周りを見渡せば同一の機種が簡単に借りられる状況です。「カメラは一台」という先入観を捨てて、贅沢に撮ってみましょう。

Establishing Shot

エスタブリッシングショットとは、シーンの全体状況を説明するショットのことで「設定ショット」ともいいます。シーンの冒頭で、全体を俯瞰した映像を見せる(つまり、「いつ」・「どこ」を説明する)ことで、見る人に、それ以後に続くショットを空間的に関係付けるための予備知識(スキーマ)を与えます。
YouTube:Establishing Shot
http://en.wikipedia.org/wiki/Establishing_shot

ちなみに「俳句」は、連歌 > 俳諧連歌 > その発句を独立させたものですが、それは、後の物語の場所と時間(季語)を概説するエスタブリッシングショットだとも言えます。

その他の手法

以下、シーン間の接続をスムーズにするために使われる手法です。シーンは混乱しないように明確に分離する必要があります。視聴者から見れば、シーンには、「昼/夜」・「 屋外/室内」といった大まかな区別しかありません。したがって、昼の室内から昼の別の室内へとシーンを変えるような場合、視聴者が混乱しないよう工夫する必要があります。シーンとシーンは基本的に時間と場所が異なるので、様々なつなぎ方が可能です。


音声・音楽について

映像にとって音は非常に影響力の大きな存在で、極端に言えば、まったく支離滅裂な素材の羅列でも、音楽がつくとそれなりに見えてしまいます(音楽に依存しすぎないよう注意が必要)。

映像は自由なタイミングで切ってつなぐことが可能ですが、音声・音楽はもともと時間軸上に成立する情報なのでそれができません。つまり場合によっては、音を優先させなければなりません。後から適当に音をつけるという発想もありますが、一つの楽曲に合わせることが前提であれば、まず全体の尺を音楽に合わせること。そして曲のリズム と映像の動き・編集のタイミングを(シンクロする場合もあえてはずす場合も)調整することが必要です。

付記1:他動詞と自動詞

アクションとリアクションは、他動詞(目的語を要する動詞)と自動詞(目的語を必要としない動詞)の関係で考えることができます。以下の例のように、言葉の上でも、他動詞→自動詞の順に接続された場合に、2つの動作につながり(因果関係)を感じます。

付記2:映像と小説

認識レベルの接続は「小説の書き方」にも通じます。

少女は見上げた。空には白い雲

と書けば、主述関係を明示しなくても「少女が白い雲を見た」と解釈されます。
 
一方、知覚レベルの接続の問題は「小説」では問題にならない映像特有のものです。例えば、2人の会話で、「どちらが右にいるか」や「何色の服を着ているか」は小説では問題になりませんが、映像では「一致」させる必要があります。



映像の特質

映像一般の特質

映像にはできない表現

映像には、そもそも「接続詞」がありません。「しかし」、「または」、「なぜなら」といった意味でショット間をつなぐのは不可能で、また、言語では可能な以下のような表現も、映像で表現することは不可能です。

Signifiant / Signifie (能記 / 所記)|F.ソシュール

ソシュールによれば、言語とは、観念を表現する記号のシステムであり、身振り、文字、さまざまな象徴、道路標識や軍隊の信号など、意味を生み出す記号のシステムです。そして、それぞれの記号は他のすべての記号と「差異」と「対比の関係」によって結ばれながら「記号のシステム」を形成するといい、シニフィアンとシニフィエという2つの鍵概念を提唱しました。

Denotaion / Connotation(外示 / 伴示)|R.バルト

これはロラン・バルトによる概念区分で、簡単にいうと、デノテーションとは字義どおりの意味の伝達。コノテーションは、潜在的な、あるいは字義どおりの意味を超えたところにある意味の伝達のことです。

クレショフ効果

ソビエトの映画作家・映画理論家のレフ・クレショフが行った実験では、編集によってショットそのものには無い「第三の意味(R.バルト)」が生まれることが示されました。




参考文献等





PAGES

GUIDE

TOOL

DATA


*1 文字どおりコンテナであり、任意のコーデックでエンコードされた動画や音声を格納できるのが前提です。したがって、拡張子がAVIであるからといってすべてのAVIが同じプレーヤで再生できるとは限りません。
*2 DVDのみならず、デジタルBS、CS、IPを利用したネットワーク配信など多くの分野で使用されています。
*3 ちなみに、こうした個別動作をアップで撮影して編集できるのは、野球というスポーツの大きな特徴で、他のスポーツと比べて野球中継の視聴率が高いのも、野球が映像編集に適しているからです。
Last-modified: 2022-07-06 (水) 14:07:29