サスティナブルデザイン
Sustainableとは、「持続可能な」という意味です。「世界の人々が今後何世代にもわたって人間らしい生活を長く続けてゆくことができる、サスティナブルな社会の実現」( Declaration on Sustainable Design )を目指すデザイン行為を総称して、サスティナブルデザインといいます。
日本にはサスティナブルの思想を反映する「常若(とこわか)」という言葉があります。
サステナブルデザイン宣言
2006年12月15日に開催されたサステナブルデザイン国際会議 "Destination 2006-2026" で採択された「サステナブルデザイン宣言」には、以下のようなことが、デザイナーの使命として掲げられています。
- 製品、施設、サービス、システム等のライフサイクルを通じて資源・エネルギーの消費を極力抑え、可能な限り環境に負荷を与えることがないようデザインする。
- 公平と公正を重んじ、本当に必要なものを可能な限り多くの人々が利用できるようにデザインする。
- 人々の歴史や風土を背景とする様々な価値観を認めあい、文化的多様性を尊重してデザインする。
- サステナブルな社会の姿を具体的な形として描き出し、デザインによって人々の心に働きかけることでその実現を目指す。
キーワード
関連するキーワードについて随時書き加えています。
中には結局のところ営利目的のマーケティング用語であったり、単なる流行語であったりというものもありますが、まあ、それはそれとして…何かを考えはじめるきっかけとしては、いずれも大事なキーワードだと思います。
- 4R
- DesignThinking
- ECO
- ISO14000
- LOHAS
- Small is Beautiful
- 環境効率
- 企業の論理 / 自然の道理
- 里山
- サバイバル
- 信頼されるシステムの要件
- スローライフ
- ゼロ・ウェイスト
- Tiny House
- 足るを知る(100%を目指さない)
- 地産地消
- バイオミミクリー
- ハーマンデイリーの三原則
- パーマカルチャー
- 「便利」≠「豊か」
4R
環境負荷の小さい順に4つの「R」を紹介します。
- Refuze 何もしない。やめる。根本から考え直す。> イノベーション
- Reduce 発生抑制 少なくする。減らす。> ゼロ・ウェイスト
- Reuse 再利用 > ロングライフ
- Recycle 再資源化 ※ただし再資源化しやすい物質に限る
DesignThinking
「どんな形にするか」という表層の作業ではなく、「いかに人の生活を豊かにするか」を根本から問い直す。デザインを行う過程でデザイナーが用いている思考活動を体系化したものです。いくつかのキーワードセットがあります。
1)洞察(Insight)、観察(Observation)、共感(Empathy)
2)着想(Inspiration)、発案(Ideation)、実現(Implementation)
3)分析(Analysis)と総合(Synthesis)
- Open Architecture Network http://openarchitecturenetwork.org/
デザインのソリューションを公開し、共有・改良する参加型のアプローチ - 東京大学 i.school http://ischool.t.u-tokyo.ac.jp/
デザインとイノベーションを、「かけ算」で学ぶ - IDEO http://www.ideo.com/
発想する会社|デザインコンサルタント - ISO13407 人間中心設計 http://ja.wikipedia.org/wiki/ISO_13407
ECO
ECO : Environment COnscious あるいは ECOlogy
ISO14000
環境マネジメントシステム(EMS: Environmental Management Systems)に関する国際規格。
LOHAS
- LOHAS|健康と持続可能性のためのライフスタイル
もともとマーケティング用語なので、少し引いて眺めた方がいいかもしれませんが、
Lifestyles of Health and Sustainability という言葉どおりに考えること自体は
別に悪いことではないという印象を持っています。
Small is Beautiful
科学・技術の方法や道具は、
- 安くてほとんどだれでも手に入れられ、
- 小さな規模で応用でき、
- 人間の創造力を発揮させるような、
ものでなくてはならない。
1973 E.F.Schumacher
環境効率
製品の環境効率は以下の式で表されます。
環境効率 = 性能・サービス価値(performance) / 環境負荷(impact)
「性能・サービスが大きいほど、また環境負荷が小さいほど環境効率は良い」
ということになります。
情報レベルでの付加価値を高め、物質やエネルギー資源の消費を少なくする…
そんな製品が望まれます。
企業の論理 / 自然の道理
20世紀の企業の論理(企業人の価値観)は「経済発展」をもたらしました。
確かに暮らしは豊かになりました。しかし…
- 人間は幸せになったのでしょうか
- 世界の人々は今後何世代にもわたって人間らしい生活を続けていけるのでしょうか
企業の論理と自然の道理は異なります。
19世紀の暮らしの中のゴミは自然の肥しになり、すべては循環していました。しかし、20世紀の企業活動の果てに大量に排出されるゴミには行き場がありません。
私も含めて大人の価値観は20世紀型の発想にどっぷり浸かってしまっています。ですから、大人の話を鵜呑みにしないこと。
大人に説教されたら、まず疑って下さい。
「その考え方は自然の道理に矛盾しないのか?」と…、
「その発想で世界は持続可能なのか」と・・・、
学生さんはもっと自分の直感を信じていいと思います。
大人に騙されないようにして下さい。
里山
- 関連記事
日本の唯一の資源ともいえる山林・水源が外資によって水面下で買収されています。
サバイバル
震災などの過酷な状況下でどう生き延びるか?「サバイバル術」には、身の回りのモノ、限りある資源を有効活用するアイデアがたくさんあります。
信頼されるシステムの要件
川上浩司氏による、J.Lee, N.Morayの論文「人に信頼されるシステムの要件」の要約。
- 基礎 自然界を支配する法則や社会の秩序に合致していること
- 能力 終始一貫して安定的かつ望ましい行動や性能が期待できること
- 方法 行動を実現するための方法、アルゴリズム、ルールが理解できること
- 目的 上記の背後にある意図、動機が納得できること
スローライフ
ゼロ・ウェイスト
燃やして埋めるごみ処理から、ごみの発生自体を減らす政策への転換をめざす考え方です。キャンベラの取り組みをきっかけに世界に広がっています。日本では徳島県・上勝町(2003年)、町田市(2006年)、福岡県・大木町(2008年)、その他がこの種の取り組みをスタートしています。
- ゼロ・ウェイスト政策の4L
- Local 地域・住民主義
- Low Cost 低コスト
- Low Technology 地域で対応可能な技術
- Low Impact 低環境負荷
- 関連リンク
Tiny House
足るを知る(100%を目指さない)
自然界は「持ちつ持たれつ」で成り立っています。
自分だけが100%の収穫を…と考えて行動すれば、他が生きません。
農薬を撒けば一時的に収穫は上がりますが、持続可能性がなくなります。
魚も同じ、獲り尽くしてしまえば後がありません。
土の中のバクテリアも植物も動物も、すべてが絶妙なバランスを保っていて、
どこが壊れても明日はないのです。
足るを知る。必要以上の富の蓄積をしない。
人間以外の生き物はみなそうやって世界を持続させてきたのです。
余談ですが… 試験は「70点で合格」で十分だと思います。
100点を取ろうと思うと、その何倍もの時間と努力が必要になります。
そしておそらくその結果は自己満足にはなりますが、誰のためにもなりません。
そんな暇があったら別のことを学んで視野を広げてほしい…。
「試験」などというものは、所詮大人が勝手につくった問題に過ぎません。
本当の「問題」はみなさんの身の回りに山積しています。
地産地消
物資の移動に関わるエネルギー消費を抑えるとともに、食の安全性、地域の第一次産業の活性化など、様々なメリットがあります。
バイオミミクリー
人間が行うイノベーションが正しいか否かを評価するのはむずかしい。
しかし、ここに一つの知恵があります。
「自然からヒントを得たデザイン」
それは、必要以上のエネルギーを必要とせず、
環境に調和し、長持ちする可能性があります。
ハーマンデイリーの三原則
持続可能な社会にするための指針。
- 再生可能な資源の持続可能な利用の速度は、その供給源の再生速度を超えてはならない
- 再生不可能な資源の持続可能な利用の速度は、持続可能なペースで利用する再生可能な資源へ転換する速度を越えてはならない
- 汚染物質の持続可能な排出速度は、環境がそうした汚染物質を循環し、吸収し、無害化できる速度を越えてはならない
成長の限界 人類の選択 Herman Daly
パーマカルチャー
ビル・モリソンによる造語で、持続可能な環境を作り出すためのデザイン思考のことです。パーマネント(永久な)+アグリカルチャ-(農業)で、その目的を「地球を森で覆い尽くす」こと
「便利」≠「豊か」
「便利なもの」が必ずしも「豊かな社会・生活」をもたらすわけではない
現代社会にあふれる「便利なもの」の大半は
- ブラックボックス化していて、中身が見えない。
- だから、「しくみを知ろう」という学習意欲が湧かない。
- ユーザが自分で修理することができない。
- 壊れたとき、修理するより買い換える方が安い。
- せいぜい5年の付き合いが前提。
人とモノのこのような関係は、決して「豊かな」関係とはいえません。
システムは閉じていない
自然を含む我々の生態系は閉じたものではなく、すべてがつながっています。
「便利なもの」は、実験室という閉じたシステムの中で生まれるので、
システムが開いている現実世界に持ち込むと想定外の問題が生じます。
- 例えば自動車は、それ自体は完結して便利なものですが、
排気ガスが大気を汚染する、人身事故を起こす…といった問題が生じます。 - また例えば、農薬はその年の収穫高を向上させますが、
周囲の生態系を破壊する、土壌が変質する…といった問題を起こします。
我々の住む世界(システム)はすべてつながっています。
「今・ここ」の便利を追求することが、その周囲(空間)や未来(時間)に
どう影響するのか… デザイナーはその事に配慮しなくてはなりません。
書籍紹介 : 「不便から生まれるデザイン」川上浩司著
環境問題のむずかしさ
環境問題は複雑で、単純な○×で答えを出すことはできない…という難しさがあります。
例:在宅勤務の推進
+ 通勤という移動にともなうエネルギーの消費を抑えることができる。
ー 人は「通勤に便利な都心」から解放され、郊外に自宅を構えるようになる。
環境破壊がおこると同時に、移動の長距離化で結局多くのエネルギーを消費する。
このように、いいアイデアだと思えることでも、それに関連して発生する現象にまで目を向ければ、100%の問題解決にはなっていない…ということがたくさんあるのです。
ローカルに見ればOKでも、グローバルに見ればダメ。
今は良くても、将来を考えると疑問。
空間的にも、時間的にも、視点を変えれば良し悪しの判断も変わってくる…。
ですから、人の話は鵜呑みにせず、必ずその逆はないか疑ってかかりましょう。
最終的にすべての人にとって100点満点のアイデアというのはまずあり得ないので、提案の際には、最もリスクが少なくなるように、様々な事柄に配慮した条件設定やマニュアルづくりが必要になります。
「環境問題は単純ではない」…ということを認識することが重要です。
「エコ替え」ってどうなんでしょうか?
数年前にTVで大々的に流れた日本を代表する自動車メーカーのCM。 どっちがいいのか、評価の方法がごちゃごちゃしていて、正直私にはよくわかりません。でも、もし言葉どおりに「そうだ」と思っていた方は、とりあえず、賛否あることを知ることが大切だと思います。
- メーカーの主張:http://ecogae.jp/
- ネット上での話題:Google: エコ替え
ちなみに私の場合、単純に「もったいない」と思う気持ちと「カタチが好き」ということで、古い車(皆さんと同じ年くらい)に乗っています。他から見れば環境にやさしくない車なのかもしれません。20年以上前の車なので、最近税金上げられてびっくりしました。古いものは環境に良くないからさっさと捨てろ・・・ということか?。でも実際、この国で捨てられた車も、ちゃんと走るのであれば、他の国に売られて、そこでまたガソリン使うんですよね。だったら動かなくなるまで自分が乗る。今のところは、そんな風に考えています。