ロジスティック曲線
成長というものについて考える
概要
いわゆる「成長曲線」のひとつとして知られるロジスティック曲線は、ロジスティック方程式から導かれます。
ロジスティック方程式
生物の個体数の変化の様子を表す数理モデルの一種です。ベルギーの数学者ピエール=フランソワ・フェルフルスト(Pierre-François Verhulst)が1838年に発案したもので、単一種の生物が一定の環境内で増殖する場合に、その生物の個体数(個体群サイズ)の変動を予測する微分方程式です。
- N :個体数、
- t :時間、
- dN/dt :個体数の増加率を意味する。
- r :内的自然増加率、
- K :環境収容力
この式は、個体数が増えて環境収容力に近づくほど、個体数増加率が減っていくことを意味します。
ある生物の定着が成功するには大きな r を持つことが重要で、絶滅の回避には大きな K を持つことが重要だと言われます。ちなみにそれぞれが原因で淘汰されることを r淘汰、K淘汰と言います。
ロジスティック曲線
ロジスティック方程式の解(個体数と時間の関係)は、以下の関数式となり、右図のようなS字型の曲線を描きます。グラフは、r=1, K=100, N0=1の場合です。

「成長」について考える
成績の伸び方
- はじめのうちはがんばってもあまり成績は上がらない
- あるタイミングから伸び始め、7割あたりまではグングン伸びる
- しかし、90点あたりから先はなかなか伸びず、100点を取るには相当な学習時間が必要になる
で、受験対策では、80点取れる科目をさらに伸ばすより、今30点台の苦手科目を伸ばすことを考える方が、短時間で総合点を上げることができる・・という発想になるわけです。
数値目標ってどうなんでしょう
世の中なんでもかんでも「数値目標を掲げろ!」と言われますが、毎年これを続けていると、最終的には100%を目指すことになってしまいます。これは巨視的に見ると弊害が多いので注意が必要です。
- 人事評価
個人が自己評価を上げるために猛進すると、自分の評価とは関係のない仕事には目を向けなくなります。特に80点から100点へ・・となるとなおさら自分のことだけに専念するようになる。
「あなたの成績は80点で十分です。あとは伸び悩んでいる人の仕事を手伝って下さい」という組織の方が、全体のパフォーマンスが上がります。個別評価を競争させると、全体のパフォーマンスが下がるというのは既知の事実です。
- 組織評価
組織単位(モジュール)ごとの評価でも同じです。組織のクラッシュというのは、モジュールとモジュールの間で起きることが多い。他のモジュールへの目配せができない孤立したモジュールの集合体では、いつか大きな破綻が生じます。「なんでここに誰も気づかなかったのか」という大事故が増えています。そしてみんながこう答えます「それはうちの管轄ではなかった」。組織モジュールごとの熾烈な競争が招いた結果です。
- 社会の問題解決
100人いれば悪い事をするのが2〜3人はいる。問題を0にしようとすると
・追加の法律が必要になる
・追加の人的資源が必要になる
問題の発生を未然に防ぐためのアンケート調査や報告業務が増える
責任回避のためのアリバイづくりの業務が増える
・恒常的な組織や「箱物」が必要になる
これら、すべて社会の負担になります。結果、被害額よりも大きな予算が必要になるだけでなく、問題のない人にまで余計な縛りが発生して世の中どんどん息苦しくなります。想定される被害の大きさと、それを防ぐのに必要なコストとのバランスを考える必要があります。
- 収穫
100%の収穫を目指して肥料や農薬を撒く、鳥や虫を排除する・・そんなことを続けていると、やがて環境が悲鳴をあげます。
- 除菌
極端ですが、本当に100%除菌したら生物界は破綻します。分解者としての菌の存在に感謝する気持ちも必要です。死滅させるのではなく、上手に棲み分けるというのが正解でしょう。
やめときまひょ、か、7割でええわな という生き方
- 土台づくりには時間がかかる
- 基礎ができると、そこから一気に形ができあがっていく
- しかし完璧を目指そうとすると、いくらでも時間がかかる
めんどくさそうなら、はじめから手をつけない。
成果がでても、まあ7割ぐらいでええわな・・あとは自由時間にしましょう。
というのが人と社会にとって、賢い選択ではないでしょうか?
人生、楽しむ程度に賢ければいい・・と師匠が言ってました。