第11回 音声・音楽情報
情報デザイン概論/2020|地域共創学部|2020.12.07|対面
情報共有シート|特設サイト
AGENDA
- 以下名簿が表示されます。ご自身の「出席欄」にチェックをつけて下さい。
情報共有シート - 本日は音声・音楽情報をテーマにお話します。
- 実習室PCを立ち上げて関連情報を検索しつつ聴講して下さい。
本日は以下の内容で講義を行います。
本日のメニュー
はじめに
レポート提出について(再確認)
- テーマ「◯◯の可能性」〜情報デザインにできること〜
- 形式:A4サイズ 1枚(文字+図版、手書き不可)> PDFでメール添付
割り付け参考イメージ:report.pdf
- 提出先は、inoue.ko※ip.kyusan-u.ac.jp ※→@
- 提出締切:12月23日(水) 授業最終日
- 詳細は第8回のページ > 情報デザイン概論/2020/1109
今後の授業について
- 第12回 12月14日 遠隔
- 第13回 12月21日 対面
- 第14回 12月23日 遠隔(水曜ですが月曜の時間割です)
今回は音声・音楽がテーマです
我々ホモ・サピエンスにとって、文字よりも歴史が古く、最も身近に存在して、人と人をつないでいる情報、それが「音楽」です。これを機会に、音楽との関わりを深めていただければ幸いです。
- 以下、実際に音が出ます。説明の確認用にお使いください
1. 楽音
1.1. ピッチと周波数
まずは基本の確認ですが、周波数というのは、単位時間(1秒)当たりに繰り返される振動回数のことで、その単位としてはHz(ヘルツ)を用います。
音楽における音の高さ(ピッチ)というのは、音の基本周波数のことで、例えば A4(ラ)の音は 440Hz。一秒間に440回 空気を振動(縦波)させています。
1.2. 基音・倍音
楽器の奏でる音の大半は、単一の周波数(基本周波数)だけではなく、その2倍、3倍、4倍・・・様々な「倍音」を含んでいて、その混ざりぐあいで、同じ「ラ(A4)」の音でも、これはバイオリン、これはサックス・・・といった「音色の違い」を生んでいます。ちなみに、基本周波数だけで倍音を含まない音を「純音」といいます。
1.3. 楽音と非楽音
一般に基本周波数とその整数次倍音からなる音は、基本周波数のピッチを感じさせるもので、そうした音は、はっきりとしたメロディーや和声をつくることができます。これを「楽音」といいます。
逆に、整数次の倍音以外の周波数成分を含むと、ピッチを感じづらくなります。振動に一定の規則性がない打撃音や太鼓の膜の振動音などがその典型で、これを「非楽音(噪音)」といって楽音とは区別します。ラップスタイルの歌声は、音高を特定しずらく、楽譜にメロディとして記述するのは難しいという意味では、こちらに属します。
2. 音程と周波数
2.1. 1オクターブとは
基本周波数の比が 1:2 となる音程間隔を1オクターブといいます。 ギターでは、弦長のちょうど半分(中央)の位置に12フレットがあって、そこで開放弦の音程の2倍の周波数の音が出ます。管楽器の場合は気柱管の長さを半分にすると1オクターブ上の音が出ます。
リコーダー(縦笛)などの実際の管楽器では、気柱管の長さというより、音孔(トーンホール)の大きさ、音孔の位置、管の内部の形状(メンズール)の3つが密接に関係するので、押さえ方が複雑になります。
ちなみに、人間の耳に音として聞こえる周波数帯は 約 20Hz - 20,000Hzです。20Hz の1オクターブ上は 40Hz その1オクターブ上は 80Hz その上は160Hzというぐあいに2倍、2倍・・・されていくので、10オクターブ(2の10乗=1024)で約1,000倍の 20,000Hz に達します。これはつまり、人間の耳にはせいぜい10オクターブしか聞こえない とうことを意味しています。
2.2. 音程の基本単位 半音=100セント
我々の身近にある楽器は大半が 12音階、ギターでいうと 12 のフレットで1オクターブを区切る音階の各音が出せるようになっています。
1オクターブすなわち2倍、これを 12 に区切る際には、等差ではなく、等比で(周波数比が一定になるように)区切ります。つまり、各フレット間の(半音の)音程が、どこでも同じ周波数比になるように区切るのです。このように各音を調整した楽器を「平均律楽器」といいます。代表的なものがギターです。
では、半音の周波数比とはいくつになるのでしょうか?
半音の周波数比をPとすると・・12 段上がったところでちょうど 2倍 ですから
p x p x p x p x p x p xp x p x p x p x p x p = 2 となる値、
すなわち 2の12乗根で、 pの値は約 1.059 となります。
つまり半音上げるというのは、周波数で言うと 1.059 倍することを意味します。
半音の音程を100セントといい、1オクターブは1,200セントになります。
セントという単位を使うと、さらに変則的な音程も扱えることになります。
補足:微分音
半音よりさらに細かく分けられた音程として、微分音(びぶんおん)という概念があります。一般的な商業音楽には無理かと・・。Wikipedia:微分音
2.3. 音律
音律(おんりつ)とは、音程の相対的な関係を規定するルールのことです。先に触れたように、私たちの身の回りの大半の音楽は、音程の周波数比について、ギターに代表されるような12階の等比を用いる「平均律」を用いていますが、音程の選び方は、等比ばかりではありません。
代表的なものにピタゴラス音律があります。音楽科学の祖、ピタゴラス Pythagoras(紀元前 582-496年)は、「万物は数である」と考え、心地よく響く和音の音程が、簡単な整数比で表されることを発見しました。現在の「ドレミファソラシド」にあたる音階のはじはりは、このピタゴラス音律(Pythagorean tuning)にあります。大学における自由七科に音楽があるのは、それが数学的存在であり、幾何学と同様の学問の対象であったからです。
- ピタゴラス音律
音階の全ての音を周波数比 3:2 の完全五度の連鎖から導く音律
- 純正律
オクターブ内の音の周波数比が簡単な整数比になるよう、ピタゴラス音律を修正したもの。ドミソの和音が 4:5:6になります。
- 平均律
1オクターブに含まれる12の半音程をすべて均等な比率で導く音律。和音は若干濁りますが、間隔が均等であることから、転調がしやすくなります。
- 参考:音楽と数学
3. 音名と階名
3.1. 音名
音名とは、絶対的な音の高さ、つまり物理的周波数が対応するものです。
- アメリカ・イギリス式
C (スィー) D (ディー) E (イー) F (エフ) G (ジー) A (エイ) B (ビー)
- ドイツ式
C (ツェー) D (デー) E (エー) F (エフ) G (ゲー) A (アー) H (ハー)
- 日本式
ハ ニ ホ へ ト イ ロ
- イタリア式
Do (ド) Re (レ) Mi (ミ) Fa (ファ) Sol (ソ) La (ラ) Si (シ)
1オクターブ上のものには、同じ名称が与えられますが、例えば、ピアノの中央ドは C4、その1オクターブ上は C5 などと区別します。ピアノの中央ド(C4)の上のラの音が、A4 = 440Hz で、調律に使う音叉はこの 440Hz が一般的です。
3.2. 階名
主音に対する相対的な高さを意味するもので、日本では、イタリア式音名をそのまま階名として使っています(「移動ド」といいます)。
Do (ド) Re (レ) Mi (ミ) Fa (ファ) Sol (ソ) La (ラ) Si (シ)
主音がC(音名)ならC-D-Eがド-レ-ミ、主音がG(音名)ならG-A-Bがド-レ-ミということになります。
主音(root音)とは、音階(scale)の最初の基準音で、一般的に楽曲のメロディーは主音で終わることで終止感が得られます。 つまり、ドレミで歌えば、大半の楽曲は「ド」の音で終わります。
3.3. 楽器のキーについて
ピアノの「ド」と、アルトリコーダーの「ド」は違います。ピアノの「ド」は音名では(物理的には)C、アルトリコーダーの「ド」は音名では(物理的には)F です。このような違いを説明するために、一般に「アルトリコーダーのキーは F である」、「アルトリコーダーは F管である」などと言います。
したがって、アルトリコーダーで ド-レ-ミ・・とやるときは、ピアノは ファ-ソ-ラ(音名で F-G-A・・・)と弾かないと合いません。
同様に、アルトサックスのキーは E♭、ソプラノサックスやテナーサックスのキーは B♭ です。同じド-レ-ミ(階名)でも、出ている音名(物理的な周波数)は異なっているのです。
4. 音階(Scale)について
ここからは、別窓で musictheory.net の Pop-up Piano を開いて、実際に音を出して確認すると。理解がスムーズになります。
4.1. メジャーダイアトニックスケール
現在我々の身近にある音楽の大半は、ドレミファソラシ、つまり基音から順に、
全音 - 全音 - 半音 - 全音 - 全音 - 全音 - 半音 という間隔の音階(スケール)を使って作られています。これをメジャーのダイアトニックスケールといいます。ピアノはまさにこのステップを視覚的に表現したもので、以下のように「ミとファの間」と「シとドの間」は半音(黒鍵が無い)になっています。
ギターでは1フレット分が「半音」にあたるので、任意のフレットを基準(ド)として、そこから、 - 2Flet - 2Flet - 1Flet - 2Flet - 2Flet - 2Flet - 1Flet と進めていくと、メジャーダイアトニック、つまりドレミファソラシドと聞こえる音階が得られます。模式図で書くと以下のようになります。
|◯|ー|◯|ー|◯|◯|ー|◯|ー|◯|ー|◯|◯|
◯が押さえて弾くところ、ーは弾かない。
ダイアトニックスケール上の音は「ハモる」、つまり、「各音の整数次倍音に共通要素が含まれる」という物理的な性質を持っています。だからこそ、それが耳にも気持ちよく、世界中でこれだけ普及しているわけですが、しかし、音楽を楽しむのにそれが大前提・・・というわけではありません。音と音がハモる「和声」を前提としない音楽であれば、どんな音を使っても構いません。幼少期からピアノや5線譜を基準に音楽教育を受けたために、私たちはそれを特別視してしまいがちですが、本来はもっと自由なものである・・と考える方が理解がスムーズになります。
4.2. クロマチックスケール
ギターのような弦楽器には1オクターブ、つまり例えば「ド」から上の「ド」までの間に 12個のフレットがあります。これを全部使う音階、12音階のことをクロマチックスケールといいます。すべての間隔が半音なので、そのステップには「はじまり」や「おわり」がありません。こういうのを「調性が無い(無調)」といいます。
で、ダイアトニックスケールよりは、この12音階の方が、よりプレーンなものと考えることができます。というのは、音楽の大半は、基本この12音の中からいくつかの音をセレクトして作った音階セットを使っているからです。
4.3. 様々なスケール
12の音からどれを選んでどうに並べるかによって様々なスケールが成立します。
以下、そのいくつかの例を示します。
- イオニアンスケール(=メジャーダイアトニックスケール)
階名で ド - レ - ミ ファ - ソ - ラ - シ ド
弦楽器 ◯ー◯ー◯◯ー◯ー◯ー◯◯
- ドリアンスケール(メジャーダイアトニックの音をレから並べる)
階名で レ - ミ ファ - ソ - ラ - シ ド - レ
弦楽器 ◯ー◯◯ー◯ー◯ー◯◯ー◯
- ブルーノート・ペンタトニックスケール(ロックでよく用いられる)
階名で ド - ミ♭ - ファ - ソ - シ♭ - ド
弦楽器 ◯ーー◯ー◯ー◯ーー◯ー◯
- 沖縄の音階
階名で ド - ミ - ファ - ソ - シ - ド(ニ六抜き5音階)
弦楽器 ◯ーー◯ー◯ー◯ーー◯ー◯
- 演歌の音階
階名で ド - レ - ミ - ソ - ラ - ド(四七抜き5音階)
弦楽器 ◯ー◯ー◯ーー◯ー◯ーー◯
つまり、12種類の音の中から、いくつかを選んで、音のセットをつくると、そのセットごとに、雰囲気(ジャンル)のまったく異なる音楽をつくることができる・・・ということです。
完全にオリジナルな音楽を作りたいときは、まずは、12の中から「これとこれとこれ・・・」と決めて、その音だけを使えば、他には無い新規性の高い曲が作れる・・・ということです。もちろん、それがダイアトニックスケールほど多くの人に受け入れられるかどうかは別ですが・・・
- 参考:Wikipedia:音階
- 参考:四七抜き音階
- この音階は、ドから単純に5度上をたどることで作ることができます。
ド>ソ>レ>ラ>ミ
蛍の光、AmazingGrace 、let It be のギターソロ部分・・。シンプルな原理であるため、世界的にもヨナ抜きはよく使われています。日本におけるヨナ抜きの普及には、伊沢修二(音楽の和洋折衷)が関わっています。
- この音階は、ドから単純に5度上をたどることで作ることができます。
- 参考:日本の4つの音階:民謡音階 / 都節音階 / 律音階 / 沖縄音階
5. コード
コードとは高さが異なる複数の音を重ねた「和音」のことです。ポピュラーミュージックでは、歌詞の上に「C」とか「G」といったコードだけを書き込んだ「コード譜」がよく用いられます。この音楽の教科書では隅の方に追いやられているので馴染みの無い方も多いようですが、音楽を気軽に楽しむには非常に便利なものです。
以下、代表的なパターンを紹介します。
5.1. Major Triad
◯ーーー◯ーー◯
例えば、コード譜で C と書いてあった場合
CーーーEーーG という3つの音を鳴らせばいい・・ということです。
EーーGーーーーC でもいいし、 GーーーーCーーーE でも構いません。
これらは「転回形」といいます。
で、さらに例えば、コード譜で Eb と書いてあった場合は
E♭ーーーGーーB♭ という3つの音を鳴らせばいい・・
要するに、コードネームにある音名を根音として、
同じ音程関係にある3つの音を鳴らせばいい…というわけです。
したがって、C, C#, D, D#, E・・B まで、12種類のMajorTriadコードはすべて
間隔を保ったまま位置をずらすだけ。 本当はとても簡単な話なのです。
ピアノの場合、白鍵と黒鍵という本来物理的に同等のもの*1を不平等に配列しているので、白鍵だけでまとまる C, F, G のような和音と、白鍵と黒鍵が入り交じる C#のような和音とでは、ずいぶん難易度が異なりますが、ギターのような楽器の場合は、弦間の音程関係はどのフレットでも同じなので、開放弦を使わない押さえ方の場合は、例えば、F と F# とは、押さえ方は同じで、1フレットずらすだけです。 どの弦に根音をあてるかによって押さえ方の形は数種類ありますが、要するに覚える必要があるのはその数種類の形だけで、あとは位置をずらすだけです。
5.2. Minor Triad
◯ーー◯ーーー◯
例えば、コード譜で Cm と書いてあった場合
CーーE♭ーーーG という3つの音の構成です。あとは、上記の話と同じです。
5.3. Diminished Triad
◯ーー◯ーー◯
5.4. Augment Triad
◯ーーー◯ーーー◯
5.5. Sevens Chord
◯ーーー◯ーー◯ーー◯ 7 ◯ーーー◯ーー◯ーーー◯ M7 ◯ーー◯ーーー◯ーー◯ m7 ◯ーー◯ーー◯ーーー◯ m7-5
5.6. Nines Chord
◯ーーー◯ーー◯ーー◯ーーー◯ 9
5.7. その他の和音
- Suspended Forth(sus4)
◯ーーーー◯ー◯
ルートから4番目のファ(階名)を加えます。4度の音は不安定で、3度への下降を強く示唆します。
- 6
◯ーーー◯ーー◯ー◯
- add9
◯ーーー◯ーー◯ーーーーーー◯
和音の物理的根拠
音と音が調和する(俗にハモる)とはどういうことか? それは、音と音の周波数比が単純な整数比になる・・つまり、それぞれの倍音に共通成分が存在するという物理的な根拠によるものです。
例えば、完全5度の音程、つまり「ドとソ」や「レとラ」の間には、周波数比で 2:3 というきれいな整数比の関係があって、ドの音の3倍音は、ソの音の2倍音と等しくなります。同様に、ド・ミ・ソ、ファ・ラ・ド、ソ・シ・レといった3和音は、いずれも4:5:6という周波数比になります。これがハモるということの物理的な理由です。
完全5度 | ドとソ | 2:3 | ※ドの3倍音とソの2倍音が等しい |
完全4度 | ドとファ | 3:4 | ※完全5度と裏返しの関係です |
長3度 | ドとミ | 4:5 | ※ドの4倍音とミの5倍音が等しい |
長2度 | ドとレ | 8:9 | |
オクターブ | ドと上のド | 1:2 |
補足
周波数の比が単純な整数比になる…というルールで規定される音律を純正律(Just Intonation)といって、例えば、Cを基準とした場合、純正完全5度(2:3)と純正長3度(4:5)を用いて、「Cの3度上がE、5度上がG」、「次にGの3度上がB、5度上がD」、さらに「Cの5度下がF、Fの3度上がA」といったぐあいに音を調整して1オクターブを構成します。平均律とは異なり、物理的にきれいな調和した響きが得られます。
一方、12ステップを単純に等比間隔で作っている平均律(ギターはその代表)では、和音を構成する音程間隔がきれいな整数比にならないので、きれいな響きは得られません。特に長3度の周波数比などは、4:5 からかなりズレていているので、響きは汚くなります。これは平均律楽器の宿命です。
参考
- Wikipedia:和音
- コード譜検索サイト・楽器.me
コードのしくみがわかると、鍵盤上の赤丸がすべて説明できます。つまり、しくみがわかれば、コード名を見ただけで、押さえ方がわかる・・・ということになります。
6. コード進行
私たちに馴染み深いポピュラーミュージックでは、旋律を包み込むフレームとしてのコード(和音)が、一小節あるいは半小節を基本的な時間単位として変化していきます。
6.1. 和音の機能
ダイアトニックスケール上にできる和音は、基本的に以下の7種類。
I IIm IIIm IV V VIm VIIm-5
似た構成音を持つものを進行上の役割でグルーピングすると、結果的に以下の3+1種類となります。
- Tonic I(VI)
「落ち着き」「弛緩」「解放」「解決」「終止」といった印象を与える中心的存在です。楽曲の最後はTonoicで終わります。
- Dominant V(IIIm7 VIIm-5)
Tonicの5度上の和音(V)であり、V に第7音を加えて V7の和音で現れることが多く、「緊張」した印象を与えます。その「緊張」はTonicへ移行することで「解決」されます。
- SubDominant IV(IIm7)
Tonicのトニカの4度上の和音(V)であり、Dominantの次に「緊張」した印象を与えます。Dominantに移行するか、Tonicに移行して解決します。
- SubDominant Minor IVm
SubDominantの代理的な存在で、短調ではSubDominantよりも一般的です。長調のSubDominant Minorはスケール上にない音を含む関係から、不思議な響きになります。
6.2. コード進行の定番パターン
コード進行には、ある程度音楽的な必然性があって、結果として、いくつかのパターンに集約されます。例えば、1-6-2-5進行(I-VIm7-IIm7-V7)や、カノン進行(I-V-VIm7-IIIm-IV-I-IV-V)など、私たちがよく耳にする音楽には、よく用いられる典型的なパターンがあります。
- カノン進行 | C | G | Am | Em | F | C | F | G |
| C | G/B | Am | Em/G | ベースラインが順次下降
- 1-6-2-5進行 | C | Am | Dm7 | G |
- 4-5-3-6進行 | FM7 | G7 | Em7 | Am | 王道(J-POP)進行
- 2-5-3-6進行 | Dm7 | G | Em | Am |
- 4-3-2-1進行 | FM7 | Em7 | Dm7 | CM7 |
- バラード |C G/B|Am G|F Em|Dm Em|
コード進行パターンそれ自体は著作権の対象となるものではありませんので、はじめて作曲にチャレンジする場合などは、まず典型的なコード進行をまねてみる…というところからスタートするのもひとつの方法です。
- コード進行マスター
https://www.chord-master.com/ - Free Guitar Backing Tracks
https://myguitarpal.com/jam-station-guitar-backing-tracks/
参考:12Bar Blues
ジャズやロックでブルースと呼ばれる楽曲は、ブルース進行と呼ばれる一定のコード進行に従っています。曲の流れが決まっているので、例えば、初対面のミュージシャン同時でも「Aのブルースで・・」と決めて、リズムのきっかけをつくれば、あとは適当、いきなりセッションを始めることができます。
- YouTube: 12bar Blues
- YouTube: johnny be good 12bar blues
- Garageband:12bar Blues
参考:コード進行しない?楽曲
Miles Davisの「So What」という曲は、「モード奏法」の代表的なもので、コードとしては Dm7 ひとつ(正確にはEm7→Dm7の繰り返しで、転調もあり)だけで私達が耳慣れている J-Pop のようなコード進行はありません。
したがって、Dのドリアンスケール上の音(レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ)のみを使うという制約にしたがって即興的に演奏することができます。
ふつうのJ-Popでは、適当に音を拾うだけでは即興的に曲に合わせるのは無理ですが、この曲の場合、「Dのドリアンスケール上の音」であれば、どのタイミングでどの音を鳴らしても無理なく聞こえます(もちろんリズムには乗る必要があります)。「Dのドリアンスケール上の音」…というと難しく聞こえますが、要するに、普通のドレミを「レ」を基準にするだけなので、ピアノで言えば、白鍵ならすべてOKという、極めて簡単な話になります。
実際の楽曲は変化をつけるために転調する部分がありますが、ピアノの白鍵に指を置いてお試し下さい。
- YouTube: Miles Davis So What
- GoogleImage: So What score
- Garageband:So What
Digital Audio Workstation
デジタル・オーディオ・ワークステーション(略称DAW)とは、音声の録音、編集、ミキシングなどの一連の作業を担うソフトウエアのことです。音声情報(Wave)と演奏情報(MIDI)の両方を同時に制御できるものが一般的です。
DTM(DeskTopMusic)に必要なもの
現在では、PCやタブレット上にソフトウエアキーボードが表示されるので、PC,タブレット,スマホなどの本体とDAW(ソフトウエア)があれば作曲が可能ですが、外付けのハードウエアがあることで、より本格的に環境が整います。
- 音声情報の入力機器 → PCの音声入力端子 / USB端子 / Bluetooth
- マイクロフォン
- マイクロフォンミキサー、LINEミキサー
- 演奏情報の入力機器 → (MIDIアダプター) → USB端子
- MIDIキーボード
- MIDI信号を出力できるウインドシンセ、ギター、ドラム
- 音楽の編集
- PC / タブレット 等の本体
- DAW (基幹ソフト)
- 音源
- ソフトウエア音源(一般にDAWに同梱 ・ プログラム的に波形を生成)
- 音源ユニット(MIDI信号を受けて音を出すハードウエア音源)
- 音源ボード(PCにオンボードされたハードウエア音源)
- 音の出力 ← PCの音声出力端子 / USB端子 / Bluetooth
- スピーカ
- ヘッドフォン
- 接続ケーブル
DAWの例
- Ardour オープンソース Win Mac Linux
- Cakewalk by BandLab Free Win
- GarageBand Mac標準
- CUBASE 商用 Win Mac
- SONAR 商用 Win
音声情報と演奏情報
DAWでは、大きく2種類のデータを扱います。
- 音声情報
音声データ(PCM)とは音のアナログ波形を時間経過と電気信号レベルでデジタル化して記録したものです。例えば、サンプリング周波数44.1KHz、量子化16ビットであれば、音声波形の一秒間を44,100箇所、各箇所を0〜65535段階のレンジで数値化した情報を記録します。
GarageBandでは、リアル音源(Vocal)とギタートラックが扱うデータがこれにあたります。
- 演奏情報
演奏情報(MIDIデータ)とは、どんな楽器を使って、いつ、どの高さの音を、どれぐらいの音量で鳴らすか・・・つまり譜面上のひとつひとつの音情報をデジタル化したものです。具体的な波形データを持つわけではないので、同じ1小節分でも、記録に必要な情報量は非常に小さくなります。
GarageBandでは、ソフトウエア音源(piano、base、brassなど)のトラックに記録されるのが、この演奏情報です。
参考リンク
付録|音の波形について
音の物理にさらに興味のある方は、以下もご参考下さい。
振動を数式で理解する
A sin( 2πf t + φ)
これは振動を描く基本的な式です。
t すなわち時刻をパラメータとした式で、
- Aは振幅 → 音の大きさ
- fは周波数 → 音の高さ
- φは位相差
ちなみにこの式は「純音」で、音色を特徴づける要素は存在しません。
さて、2πf t という表現ですが、これは例えば f = 1 の場合、
t = 0 〜 1 で 値が 0〜 2π、つまり、1秒間で1回振動することを意味します。
右上のグラフは、1Hzの波形ということになります。
SIN関数は弧度法を使います。半径1の円の弧の長さを角度に見立てたもので、2πでちょうど一周分、つまり360°を意味します。式の括弧内の「2πf t 」は、「一秒間で f 回転」を表現するためのものです。
参考:SINだけでなぜ振動する > 単位円による三角関数の定義
参考:三角関数を使って円を描くプログラム
倍音合成
周波数 f を基準として、その2倍の周波数 2f をもった音を2倍音といいます。また同様に3倍音・4倍音・・も考えられます。
楽器の音(シングルノート)は、基本周波数の f に加えて複数の倍音が同時に鳴ることで、その楽器特有の音色をつくっています。倍音の混ざり方で音色がかわることを波形で見てみましょう。以下、Googleのグラフ機能を使ったものです。表示倍率がそれぞれ異なっていますが、横軸xの値が 0〜1 の間でちょうど1回振動、つまり基本周波数は1であることがわかると思います。
数式からGoogleグラフへもリンクしています。数字を変えて再検索すると、波形が変化する様を直感的に確認できます。
A sin(2πft) + 0.5A sin(2π2ft)
2倍音を半分の振幅で
重ね合わせたものです。
A sin(2πft) + 0.5A sin(2π3ft)
3倍音を半分の振幅で
重ね合わせたものです。
A sin(2πft) + 0.6A sin(2π2ft) + 0.3A sin(2π3ft)
2倍音を60%、3倍音を30%の振幅で
重ね合わせたものです。
音のハモり
ハモるとは、物理的には、高さ(基本周波数)の異なる複数の音で、その整数次倍音に共通の周波数が含まれる場合に成立します。別の言い方をすれば、それらの周波数比が簡単な整数比になることを意味します。
例えば、5度の音程「ド」と「ソ」では、「ド」の3倍音と「ソ」の2倍音が同じ周波数の音になります。言い換えれば、ドとソの基本周波数の比は2:3という簡単な整数比になっています。
また例えば、長3度の音程「ド」と「ミ」の周波数比は4:5なので、いわゆるメジャートライアド「ド」「ミ」「ソ」は、4:5:6という比率になり、可聴周波数帯の範囲に複数の共通する倍音を持つことになります。
A sin(2π4ft) + A sin(2π5ft) + A sin(2π6ft)
周波数比4:5:6の3音の重ね合わせ。
音に周期性が見られます。
A sin(2π4ft) + A sin(2π5.1ft) + A sin(2π7.7ft)
複雑な比率の音の組み合わせ。
当然ですが、周期性がなくなります。
ちなみに完全8度、すなわち1オクターブの音程は1:2ですから、「ド」の音を3倍して1オクターブ下げれば「ソ」の音が得られ、その「ソ」を3倍して1オクターブ下げれば「レ」が得られます。このようにして得られた音程調律は「純正律」と呼ばれるもので、倍音のうなりを伴わない、きれいな和音が得られます。一方、1オクターブを単純に等比的に分解する調律を「平均律」といいますが、平均律の楽器(ギターが典型、現代のピアノも)は厳密にはきれいにハモりません。