第3回 アイデア創出
AGENDA
- 以下名簿が表示されます。出欠確認・座席記録をお願いします。
出欠確認・座席記録
- 授業形態について
- 対面出席の方は、デジタルラボ 504(17号5F)に出席して下さい。
- 遠隔参加の方は、以下からご参加下さい。
Zoomミーティングに参加する - ミーティングID: 920 3873 6700
- パスコード: 801254
- リアルタイム参加と受講生プレゼンが前提のため、録画は行いません。
- 学科サイトに進捗記録を記載 受講生一覧
CONTENTS
はじめに
進捗記録 の確認
- 受講生の方の先週分の記録を確認します(全員の発表は時間的に難しいのでので、前回未発表の方から順に時間の許す限り発表していただきます)。
- テーマ、現状調査、解決すべき課題 について語って下さい。
解決すべき課題について
- プロジェクトを実現するための課題は複数あると思います。例えば、公開方法、ネーミング、何分x何本作るのか、素材ネタ、構成、制作技法・・それぞれにアイデアを考える必要があります。
アイデア創出について
アイデア創出(Ideate)は、定義された目的や方向性を実現するためのアイデアを量産する段階です。この段階では、ブレインストーミングや、アイデア創出技法を活用して、質よりも量を重視して、考え得るさまざまなアイデアを書き出してみます。
解決すべき複数の課題について、どれからでも構いません。着手しやすいものからアイデア創出を行なって下さい。何かひとつが決まると、そこから別の課題の方向性も自ずと絞り込まれていきます。
以下、アイデア創出に関わる一般的な知見、手法について紹介します。
アイデアが生まれる環境
以下、複数のメンバーでアイデア創出を行う場合の話です。この授業では、一人プロジェクトが大半なので、あくまでも一般論としてお読み下さい。
- People:一般にステークホルダー(利害関係者)と呼ばれる「関係者」に一緒に参加してもらい、様々な意見をもらいます。
- Place:アイデア創出は、複数の関係者が集まれるミーティングルームなどで行います。テーブルや椅子のセッティング、BGM、スナック・ソフトドリンクの提供など、参加者をリラックスさせる環境づくりが重要です。
- Time:アイデア創出には、人が集中できる時間(45分程度)を一区切りとして、適度な休憩や、アイスブレーキングが必要です。また、メンバー間の緊張をほぐす意味で、最初に簡単な自己紹介などをするのが一般的です。
- Observation:アイデアはユーザーの観察から生まれます。
IDEO(アイディオ)が行った地下鉄駅の自動販売機売り上げアップに関するプロジェクトでは、「地下鉄の駅においてユーザーを観察する」ことを重視しました。結果、時間を気にしている客が多いことがわかったため、自動販売機の上に時計を置くことで、その売上をアップさせました。
その他、ドリンク自販機では、下段の左端に注目が集まる(>そこに主力商品を配置する)、利用者が冷たいドリンクをカバンに入れる(カバンの中が濡れてしまう)のに苦労している(>常温の商品を配置する)。など、利用者の観察から様々なアイデアが生まれています。
HMW
HMW(How Might We)という表現は、IDEOが提唱したアイデア創出の手法で、How Might We Questions と言われています。アイデア創出にあたっては、「私たちはどのようにしたら◯◯◯ができるのか」という質問を投げかけます。
以下、スタンフォード大学の d.school の記事にある有名な事例です。アイデアが出やすい「問いの作り方」の参考にして下さい。
- HMW create a cone to eat ice cream without dripping?
どうしたら、アイスをたらさないですむコーンを作ることができるか?
> これは、アイスクリームをたらさない手法を考える・・という1点に思考が集中してしまいます(視野が狭すぎる)。
- HMW redesign dessert?
どのようにして、デザートを新しくデザインするか?
> これは、デザートの種類が定義されていないために、思考を集中させることが難しくなります(視野が広すぎる)。
- HMW redesign ice cream to be more portable?
どうしたら、持ち運びしやすいアイスを新たにデザインすることができるのか
> 問いの方向性が明確であると同時に、様々な可能性が模索できる(◯)。
ブレーンストーミング
ブレインストーミング(BS法: brainstorming)は、アレックス・F・オズボーンによって考案された会議方式のひとつで、みんなでアイデアを出し合う際に、相互の連鎖反応や発想を誘発する技法です。
みんなが自由な発言の機会を得られるよう、ブレストを行う人数は、5 - 7名程度が望ましく、人数が多い場合は小グループに分けて、それぞれの成果を持ち寄る・・といったケースもあります。
ブレストには、一般に以下のような原則があります。
- 他者の発言を批判しない
批判はメンバーの発言意欲を減退させます。どんなアイデアも、批判せずに聞くことで、自由に思ったことを言える空気感をつくります。 - 判断・結論を出さない
判断や結論は次の段階の話として、個々のアイデアに判断を下すことを慎む - 荒削りな考えを歓迎する
奇抜、斬新、ユニークなアイデアを重視。細かいことにツッコミは入れない - 質より量を重んじる
質を上げるのは次の段階として、とりあえず思いつくアイデアを量産する。 - アイディアを編集して発展させる
複数のアイデアを「編集」することで新たなアイデアを生み出す。
個人のオリジナリティーにこだわることなく、他人の意見をうまく利用することも推奨されます。
KJ法
文化人類学者の川喜田二郎氏がデータをまとめるために考案した手法で、そのアルファベット頭文字をとって KJ法。
ポストイットとマーカー、そしてホワイトボードを使って、以下のように情報を整理していく手法で、おそらくみなさんも総合学習の時間等で経験したことがあるかと思います。
- ポストイット1枚に対して絵や字で1つのアイデアを書く
- たくさんのポストイット=アイデアをホワイトボードに貼る
- 全体を眺めながら、それを貼り替えて、グルーピング
- アイデアのカテゴリーや方向性を絞り込んでいく・・
演習
進捗報告の枠組みを準備
以下の雛形を 学科サイトの個人ページ に、コピー&ペーストするかたちで、進捗報告を記載する枠組み用意して下さい。
以下の雛形は、テーマが「レシピ動画」の場合の事例です。各自のToDo項目に合わせて、項目ごと書き換えて下さい。
**2022.04.25 アイデアの量産 > 絞り込み ~ ***動画の公開方法 -◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯ -◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯ ~ ***動画の形式(分量とサイズ) -◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯ -◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯ ~ ***動画の内容(素材ネタ) -◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯ -◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯ ~ ***動画のネーミング -◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯ -◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯ ~ ***動画の構成 -◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯ -◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯ ~ ***動画の制作環境と方法 -◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯ -◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯ ~ ~
アイデアの量産
ToDoに明記した個々の「課題」について アイデアを量産して下さい。とりあえず「思いついたことをすべて書く」・・です。
プロジェクトの概要を更新
アイデアの絞り込みができた時点で、「プロジェクトの概要」の部分を、最新の状態に更新してください。
MainVisual を更新
プロジェクトの雰囲気が伝わる何らかの画像を用意して、ページの体裁を整えて下さい。
#image(XXXX.jpg)
プロジェクト管理の更新
- ToDo の部分について
前回までの ToDo「 ◯◯について決める」・・は終了したはずです。取り消し線をつけて、終了したことを明記してください。取り消しは以下の書式です。%%動画の形式(分量とサイズ)を決める%%
動画の形式(分量とサイズ)を決める
新たな ToDo としてプロトタイプの制作 を加えましょう。
今週はこれで終了です。次週はプロトタイピングについて演習します。
APPENDIX
発想法
私たちの思考回路には「常識」のバイアスがかかっているので、例えば、
「ひらがな を ◯◯◯ 」という文における ◯◯◯ の部分には、
ひらがな を 書く ひらがな を 覚える ひらがな を 漢字に変換する
のような、ふつうにつながる言葉しか思い浮かばないようになっています。
ということは、意識的にこれを排除して、通常の日本語表現ではありえない接続を行えば、今までにない発想が生まれる・・ということになります。
猫・ネズミ が モノを投げる > ディズニーのアニメーション
情報デザイン論でお話した内容 > IdeaWorkshop
言葉は存在を喚起する
はじめに事物があってそれに名前がつくのではなく、言葉をつくること、すなわち「名付け」によって切り取られた事物が私たちの世界に立ち現れる。言語学におけるこの知見は、「名」がいかに重要なものであるかを教えてくれます。名付けること、名を知ること、名を変えること、複数の名をもつこと、いずれも私たちの社会生活において、非常に大きな意味を持ちます。
- 名付けること = この世にその存在を誕生させること
UFOが世界各所で次々に目撃されるようになったのは、Flying Saucer(空飛ぶ円盤)という言葉が新聞に登場した1947年以後です。Flying Saucer という言葉が、私たちの心の中にその存在を喚起したのです。
- 名付けること = 見えないものの存在を喚起すること
「風」や「愛」といった言葉は、歌詞によく用いられるます。目に見えないものの存在が言葉によって喚起される。それらは、読むたびに、聴くたびに、その文脈において意味を変容させる魅力があります。
「机」や「椅子」は、実体として目に見えている点で、「風」や「愛」とは位相が異なりますが、例えば「机」というものも所与の実体ではありません。「箱の上に板をおいたもの」は、そのままでは「箱と板」ですが、誰かが「机です」と名付けてはじめて「机」として認知されるようになる。。「机」という言葉が、その存在を喚起するのです。
- 存在を喚起するには「名付ける」という行為を行えばよい
その発想でできたのが、芸術学部の ArtSpace+50 です。ただのコンクリートの壁面に Art Space No.14 という名前をつける。それだけで、新しいギャラリーが誕生するのです。
- 名を変えること = 自分の存在を社会的に消滅・新規登録する
文明社会においては、原則名前を勝手に変えることはできませんが、アマゾンのジャングルで1万年変わらない暮らしをしているヤノマミの村では、「今日からオレは◯◯◯だ」というふうに名前を変えることができるそうです。
- 別の名を持つこと= もうひとりの私
ハンドルネームを持つこと、別名のアカウントを追加すること、バーチャルなネットワークの世界では、リアル社会における実名とは異なる名前で人と関わることができます。仮面と同様、そこにはまったく別の人格が存在します。
- 余談ですが、
Designの語源はラテン語の designare = 印を付ける、区分して描く
また、Designate = 示す、指示する、任命する、名付ける、呼ぶ
つまり、Design には、存在を喚起する・・という意味もあるのです。