「観光客の満足度構造研究」の版間の差分
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+ | : Ryoichi TAMURA / Faculty of Design, Kyushu University | ||
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+ | =目的と背景= | ||
+ | 近年、訪日外国人観光客数が急上昇しており[注]、観光地では競争優位を確保するため、日本人観光客だけではなく、外国人観光客に対しても集客しなければいけない状況にある。観光客を獲得するためには、観光客の満足度の構造を把握し、満足度を追求することが重要な課題といえる。 | ||
+ | そこで、本研究では、福岡県糸島市を事例として、日本人観光客と中国人観光客を調査対象として、観光地に対する評価と満足度を調査し、両者の満足度の構造の違いを検討した。 | ||
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+ | =糸島市の概要= | ||
+ | 糸島市は、中国の歴史書「魏志倭人伝」に記されている「伊都国」があった地であり、福岡県西部の糸島半島に位置し、市北側には玄界灘に面した美しい海岸線が広がり、また、市南側には脊振山系の山々が連なっている[注]。平成29年版糸島市統計白書によると、観光業界の振興は糸島市の基本目標「地域資源を生かした産業創出のまちづくり」の一部分として、重要な課題になる[注]。 | ||
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− | + | =研究の方法= | |
− | + | ==既往研究と事例の調査== | |
+ | アンケート調査項目を作成するため、観光客満足度に関する研究と論文、既存の満足度調査の事例を調査した。 | ||
+ | 2007年から日本経済産業省とサービス産業生産性協議会が米国版顧客満足度指数(ACSI:American Customer Satisfaction Index)を原型として、日本版顧客満足度(JCSI:Japanese Customer Satisfaction Index )を開発した[注]。「顧客期待」「知覚品質」「知覚価値」「顧客満足」「推薦意向」「ロイヤルティ」の6つの調査項目から、満足度の構造を構築した。項目間の因果関係の強弱から、企業比較を実施し、企業のマーケティングへの戦略的示唆を導ことである[注]。 | ||
+ | しかし、観光地は飲食、交通、宿泊、物販、観光スポットなどの複数のサービス産業から形成されているため、単一企業を対象としたJCSIの質問内容が適切ではないと考えられる。 | ||
+ | 才原清一郎(2016)は、観光客を対象とする満足度の構成要素を着目し、「宿泊施設」「観光施設」「飲食施設」「物販施設」の4つの満足度の形成要素を提示し、それぞれの評価と満足度間の関係の有無を検証した[注]。そして、山田雄一(2014)は、日本の観光地に適したモデルを考察し、観光地での観光客の基本的な行動、見る、泊まる、遊ぶ、食べる、買うに対応ように、知覚品質を提示した[注]。両方とも、観光地と企業の違いを示し、調査項目の作成に参考価値があると考えた。 | ||
+ | ==アンケート調査項目の作成== | ||
+ | 今回の調査では、満足度の形成要因を着目するため、上記の既往研究や文献、調査事例を参考し、観光地に適した知覚品質の項目を調査項目として抽出した。さらに、糸島市の現状を配慮し、糸島市観光協会の専門家の助言を参考に「①自然や街並みなど、景観や雰囲気の良さ・心地よさ」「②部屋の質、食事の質など、宿泊施設の快適性・心地よさ」「③施設・体験の種類や数、内容など、観光・文化施設の楽しさ・充実度」「④食事の種類や数、内容など、食事のおいしさ・楽しさ」「⑤土産物・商品の種類や数、内容など、買い物の楽しさ・充実度」「⑥従業員や地域住民のおもてなし」「⑦イベントや祭り」「⑧地域内での移動」「⑨現地での各種情報の量や入手しやすさ」「⑩治安」の10個の項目を作成し、「大変良かった=7~大変悪かった=1」の7段階の評価を設定した。また、総合満足度について、「とても満足=7~とても不満=1」の7段階の評価を設定した。 | ||
− | == | + | ==アンケート調査方法== |
− | + | アンケート調査は、2019年8月25日(日)から10月6日(日)の期間に、糸島市への日本人観光客と中国人観光客をターゲットとして、紙調査票(調査票を配布し、回答記入後に回収する方法)とWeb調査票(調査票のページにアクセスできるQRコードを配布する方法)を併用し、実施した。 | |
− | + | ==分析の方法== | |
+ | 本調査では、国別差による満足度の構造の違いを把握するために、中国人の回答と日本人の回答を分類した上で、重回帰文化を通じて、観光地に対しする観光客の評価と満足度の因果関係を検討する。重回帰係数と検定のそれぞれの結果から、観光客満足度構造の差異を検討し、比較分析を行った。 | ||
− | = | + | =満足度の構造= |
− | + | 表1に示すように、アンケート調査の結果、日本人観光客143名(男性43、女性100)、中国人観光客73名(男性27、女性46)から回答が得られた。 | |
− | + | ==日本人観光客== | |
+ | 表2に示すように、日本人観光客では重相関係数R=0.802、決定係数R2=0.643となり、重相関係数および決定係数ともに値が高く、「⑩治安」「①自然や街並みなど、景観や雰囲気の良さ・心地よさ」「③施設・体験の種類や数、内容など、観光・文化施設の楽しさ・充実度」の順番にこれらの項目は総合満足度のプラス得点に主に影響していることがわかった。 | ||
+ | ==中国人観光客== | ||
+ | 表3に示すように、中国人観光客では重相関係数R=0.536、決定係数R2=0.288となり、重相関係数および決定係数ともに値が高くないが、「①自然や街並みなど、景観や雰囲気の良さ・心地よさ」「⑧地域内での移動」の順番にこれらの項目は総合満足度のプラス得点に主に影響していることがわかった。 | ||
− | == | + | ==考察(日本人観光客と中国人観光客の比較)== |
− | + | 表2と表3の下段に示す重回帰式の当てはまりの結果を比較すると、「①自然や街並みなど、景観や雰囲気の良さ・心地よさ」については、国別差に関わらず、総合満足度のプラス評価に主に影響しているが、「③施設・体験の種類や数、内容など、観光・文化施設の楽しさ・充実度」「⑧地域内での移動」「⑩治安」については、日本人観光客ではプラスの数値となったが、中国人観光客では相関性が強くないマイナスの数値となり、「⑥従業員や地域住民のおもてなし」「⑨現地での各種情報の量や入手しやすさ」については、中国人観光客では強い相関性が見られるが、日本人観光客では総合満足度にあまり影響していないことがわかった。 | |
+ | さらに、同様の分析を国別の上で男女に分けて重回帰分析を行ったところ、日本人男女性と中国人男女性のそれぞれの総合満足度に影響している観光地の項目の順番が見られる結果となった。「③施設・体験の種類や数、内容など、観光・文化施設の楽しさ・充実度」についしては男性観光客の国別差が見られたが、女性観光客の方は明確ではなかった。同様に、「⑥従業員や地域住民のおもてなし」「⑧地域内での移動」「⑩治安」についしては女性観光客の方に国別差が見られたが、男性の方はほぼ同じ傾向を示した。「⑨現地での各種情報の量や入手しやすさ」については男女性観光客両方ともに国別の差が見られ、総合満足度の得点に主に影響していることがわかった。 | ||
+ | 以上のように、国別差が観光客の満足度の形成要因に影響している方面は、「⑨現地での各種情報の量や入手しやすさ」という情報提供の要素、「⑧地域内での移動」という交通の要素、「⑥従業員や地域住民のおもてなし」「⑩治安」というイメージの要素、「③施設・体験の種類や数、内容など、観光・文化施設の楽しさ・充実度」という文化系の観光スポットの要素であることがわかった。これらの結果から、糸島市が集客のターゲットの違いにより、それぞれの項目から参考し、課題を抽出することが効果的だと考える。 | ||
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+ | =まとめ= | ||
+ | 本研究では、糸島市を事例として、国別の差による観光客満足度の形成要因について調査し、日本人観光客と中国人観光客間の共通点と相違点を明確した。しかし、調査時間の制限により、回答の数が少ないであり、調査期間のシーズンの要素も影響している。今後は、研究の精確度を高めるため、より多い国籍、数の観光客の調査を異なるシーズン帯にしていく。さらに、観光客のロイヤルティや推薦意向などを含む満足度の構造全体を今後の課題として進める。 | ||
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+ | =謝辞= | ||
+ | 本研究では、糸島市観光協会の協力を得て実施した。ここに記して謝意を表します。 | ||
2019年11月7日 (木) 15:32時点における版
- 糸島市を事例として -
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- 欧紹焜 / 九州大学大学院芸術工学府デザインストラテジー専攻
- Shaokun OU / Graduate School of Design, Kyushu University
- 田村良一 / 九州大学大学院芸術工学研究院デザインストラテジー部門
- Ryoichi TAMURA / Faculty of Design, Kyushu University
- Keywords: Tourist Attributes, Satisfaction, Causal relationship
- Abstract
- Xxxxxxxx.
目次
目的と背景
近年、訪日外国人観光客数が急上昇しており[注]、観光地では競争優位を確保するため、日本人観光客だけではなく、外国人観光客に対しても集客しなければいけない状況にある。観光客を獲得するためには、観光客の満足度の構造を把握し、満足度を追求することが重要な課題といえる。 そこで、本研究では、福岡県糸島市を事例として、日本人観光客と中国人観光客を調査対象として、観光地に対する評価と満足度を調査し、両者の満足度の構造の違いを検討した。
糸島市の概要
糸島市は、中国の歴史書「魏志倭人伝」に記されている「伊都国」があった地であり、福岡県西部の糸島半島に位置し、市北側には玄界灘に面した美しい海岸線が広がり、また、市南側には脊振山系の山々が連なっている[注]。平成29年版糸島市統計白書によると、観光業界の振興は糸島市の基本目標「地域資源を生かした産業創出のまちづくり」の一部分として、重要な課題になる[注]。
研究の方法
既往研究と事例の調査
アンケート調査項目を作成するため、観光客満足度に関する研究と論文、既存の満足度調査の事例を調査した。 2007年から日本経済産業省とサービス産業生産性協議会が米国版顧客満足度指数(ACSI:American Customer Satisfaction Index)を原型として、日本版顧客満足度(JCSI:Japanese Customer Satisfaction Index )を開発した[注]。「顧客期待」「知覚品質」「知覚価値」「顧客満足」「推薦意向」「ロイヤルティ」の6つの調査項目から、満足度の構造を構築した。項目間の因果関係の強弱から、企業比較を実施し、企業のマーケティングへの戦略的示唆を導ことである[注]。 しかし、観光地は飲食、交通、宿泊、物販、観光スポットなどの複数のサービス産業から形成されているため、単一企業を対象としたJCSIの質問内容が適切ではないと考えられる。 才原清一郎(2016)は、観光客を対象とする満足度の構成要素を着目し、「宿泊施設」「観光施設」「飲食施設」「物販施設」の4つの満足度の形成要素を提示し、それぞれの評価と満足度間の関係の有無を検証した[注]。そして、山田雄一(2014)は、日本の観光地に適したモデルを考察し、観光地での観光客の基本的な行動、見る、泊まる、遊ぶ、食べる、買うに対応ように、知覚品質を提示した[注]。両方とも、観光地と企業の違いを示し、調査項目の作成に参考価値があると考えた。
アンケート調査項目の作成
今回の調査では、満足度の形成要因を着目するため、上記の既往研究や文献、調査事例を参考し、観光地に適した知覚品質の項目を調査項目として抽出した。さらに、糸島市の現状を配慮し、糸島市観光協会の専門家の助言を参考に「①自然や街並みなど、景観や雰囲気の良さ・心地よさ」「②部屋の質、食事の質など、宿泊施設の快適性・心地よさ」「③施設・体験の種類や数、内容など、観光・文化施設の楽しさ・充実度」「④食事の種類や数、内容など、食事のおいしさ・楽しさ」「⑤土産物・商品の種類や数、内容など、買い物の楽しさ・充実度」「⑥従業員や地域住民のおもてなし」「⑦イベントや祭り」「⑧地域内での移動」「⑨現地での各種情報の量や入手しやすさ」「⑩治安」の10個の項目を作成し、「大変良かった=7~大変悪かった=1」の7段階の評価を設定した。また、総合満足度について、「とても満足=7~とても不満=1」の7段階の評価を設定した。
アンケート調査方法
アンケート調査は、2019年8月25日(日)から10月6日(日)の期間に、糸島市への日本人観光客と中国人観光客をターゲットとして、紙調査票(調査票を配布し、回答記入後に回収する方法)とWeb調査票(調査票のページにアクセスできるQRコードを配布する方法)を併用し、実施した。
分析の方法
本調査では、国別差による満足度の構造の違いを把握するために、中国人の回答と日本人の回答を分類した上で、重回帰文化を通じて、観光地に対しする観光客の評価と満足度の因果関係を検討する。重回帰係数と検定のそれぞれの結果から、観光客満足度構造の差異を検討し、比較分析を行った。
満足度の構造
表1に示すように、アンケート調査の結果、日本人観光客143名(男性43、女性100)、中国人観光客73名(男性27、女性46)から回答が得られた。
日本人観光客
表2に示すように、日本人観光客では重相関係数R=0.802、決定係数R2=0.643となり、重相関係数および決定係数ともに値が高く、「⑩治安」「①自然や街並みなど、景観や雰囲気の良さ・心地よさ」「③施設・体験の種類や数、内容など、観光・文化施設の楽しさ・充実度」の順番にこれらの項目は総合満足度のプラス得点に主に影響していることがわかった。
中国人観光客
表3に示すように、中国人観光客では重相関係数R=0.536、決定係数R2=0.288となり、重相関係数および決定係数ともに値が高くないが、「①自然や街並みなど、景観や雰囲気の良さ・心地よさ」「⑧地域内での移動」の順番にこれらの項目は総合満足度のプラス得点に主に影響していることがわかった。
考察(日本人観光客と中国人観光客の比較)
表2と表3の下段に示す重回帰式の当てはまりの結果を比較すると、「①自然や街並みなど、景観や雰囲気の良さ・心地よさ」については、国別差に関わらず、総合満足度のプラス評価に主に影響しているが、「③施設・体験の種類や数、内容など、観光・文化施設の楽しさ・充実度」「⑧地域内での移動」「⑩治安」については、日本人観光客ではプラスの数値となったが、中国人観光客では相関性が強くないマイナスの数値となり、「⑥従業員や地域住民のおもてなし」「⑨現地での各種情報の量や入手しやすさ」については、中国人観光客では強い相関性が見られるが、日本人観光客では総合満足度にあまり影響していないことがわかった。 さらに、同様の分析を国別の上で男女に分けて重回帰分析を行ったところ、日本人男女性と中国人男女性のそれぞれの総合満足度に影響している観光地の項目の順番が見られる結果となった。「③施設・体験の種類や数、内容など、観光・文化施設の楽しさ・充実度」についしては男性観光客の国別差が見られたが、女性観光客の方は明確ではなかった。同様に、「⑥従業員や地域住民のおもてなし」「⑧地域内での移動」「⑩治安」についしては女性観光客の方に国別差が見られたが、男性の方はほぼ同じ傾向を示した。「⑨現地での各種情報の量や入手しやすさ」については男女性観光客両方ともに国別の差が見られ、総合満足度の得点に主に影響していることがわかった。 以上のように、国別差が観光客の満足度の形成要因に影響している方面は、「⑨現地での各種情報の量や入手しやすさ」という情報提供の要素、「⑧地域内での移動」という交通の要素、「⑥従業員や地域住民のおもてなし」「⑩治安」というイメージの要素、「③施設・体験の種類や数、内容など、観光・文化施設の楽しさ・充実度」という文化系の観光スポットの要素であることがわかった。これらの結果から、糸島市が集客のターゲットの違いにより、それぞれの項目から参考し、課題を抽出することが効果的だと考える。
まとめ
本研究では、糸島市を事例として、国別の差による観光客満足度の形成要因について調査し、日本人観光客と中国人観光客間の共通点と相違点を明確した。しかし、調査時間の制限により、回答の数が少ないであり、調査期間のシーズンの要素も影響している。今後は、研究の精確度を高めるため、より多い国籍、数の観光客の調査を異なるシーズン帯にしていく。さらに、観光客のロイヤルティや推薦意向などを含む満足度の構造全体を今後の課題として進める。
謝辞
本研究では、糸島市観光協会の協力を得て実施した。ここに記して謝意を表します。
脚注
参考文献・参考サイト
- ◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
- ◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
- ◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院
- ◯◯◯◯◯ https://www.example.com (◯年◯月◯日 閲覧)