「カンボジアのプノンペンにおける美術教育に関する研究」の版間の差分
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− | モチーフであるアンコール・ワットの造形、色彩という2つの面から分析を行った。造形面ではアンコール・ワットの塔の数をいくつ描いているか、色彩面ではカラー成分測定を行った。アンコール・ワットは平面的には5つの塔があるが、国旗には正面から見える3つの塔として描かれている。図1から、全学年を通して3つとして描いた子供が最も多く、次いで5つが多いことが分かった。[[File:Fig.1.png|right|200px|図1.全学年における塔の数の割合]] | + | モチーフであるアンコール・ワットの造形、色彩という2つの面から分析を行った。造形面ではアンコール・ワットの塔の数をいくつ描いているか、色彩面ではカラー成分測定を行った。アンコール・ワットは平面的には5つの塔があるが、国旗には正面から見える3つの塔として描かれている。図1から、全学年を通して3つとして描いた子供が最も多く、次いで5つが多いことが分かった。[[File:Fig.1.png|thumb|right|200px|図1.全学年における塔の数の割合]] |
− | カラー成分測定では、色をスペクトル別に赤色系、橙色系、黄色系、緑色系、青色系、紫色系の6色と無彩色の7つに分類し、その割合を算出した。1年生50人、2年生27人、3年生40人、4年生45人、5年生38人、6年生40人の学年別割合及び全体の割合を算出したところ、3学年は橙色に次いで黄色、残り3学年は黄色に次いで橙色をもっとも多く使用していたという結果であった。図2から図7に1年生から6年生における色の割合、及び図8に全学年における色の割合を示す。[[File:Fig.2.png|right|200px|図2.1年生における色の割合]][[File:Fig.3.png|right|200px|図3.2年生における色の割合]][[File:Fig.4.png|right|200px|図4.3年生における色の割合]][[File:Fig.5.png|right|200px|図5.4年生における色の割合]][[File:Fig.6.png||right|200px|図6.5年生における色の割合]][[File:Fig7.png|right|200px|図7.6年生における色の割合]][[File:Fig.8.png|right|200px|図8.全学年における色の割合]] | + | カラー成分測定では、色をスペクトル別に赤色系、橙色系、黄色系、緑色系、青色系、紫色系の6色と無彩色の7つに分類し、その割合を算出した。1年生50人、2年生27人、3年生40人、4年生45人、5年生38人、6年生40人の学年別割合及び全体の割合を算出したところ、3学年は橙色に次いで黄色、残り3学年は黄色に次いで橙色をもっとも多く使用していたという結果であった。図2から図7に1年生から6年生における色の割合、及び図8に全学年における色の割合を示す。[[File:Fig.2.png|thumb|right|200px|図2.1年生における色の割合]][[File:Fig.3.png|thumb|right|200px|図3.2年生における色の割合]][[File:Fig.4.png|thumb|right|200px|図4.3年生における色の割合]][[File:Fig.5.png|thumb|right|200px|図5.4年生における色の割合]][[File:Fig.6.png|thumb|right|200px|図6.5年生における色の割合]][[File:Fig7.png|thumb|right|200px|図7.6年生における色の割合]][[File:Fig.8.png|thumb|right|200px|図8.全学年における色の割合]] |
==インタビュー調査== | ==インタビュー調査== |
2019年11月8日 (金) 10:19時点における版
- ソムブール小学校で行った授業をケーススタディとして -
注)
- この雛形は、研究発表(口頭・ポスター)に適用されます。
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- 清水淳史 / 九州大学大学院統合新領域学府ユーザー感性学専攻
- SHIMIZU ATSUSHI / Kyushu University
- Keywords: Color, Education, Identity, Cambodia
- Abstract
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目的と背景
一昨年前から「失われたクメール美術復活プロジェクト」に携わり、今年コンポンスプー州にあるソムブール小学校で美術の授業を実施した。協力して頂いた山田アートスクールは、カンボジアで70年代後半に起こった内戦以来、公立小学校では美術の授業を実施していないという背景を受けて首都プノンペンに日本人が開校した美術学校である。本研究では、カンボジアの美術教育の現状及びケーススタディの現代的意義を明らかにし、考察することを目的とする。
研究の方法
2019年8月13日にソムブール小学校で行った美術の授業をケーススタディとして、そこで描かれた絵を造形と色彩の面から分析することで子供側の視点、そして教育側の視点から絵の特性を明らかにする。また、同年8月31日と9月1日に行った山田アートスクールでのインタビュー調査を通して、ケーススタディが現代の美術教育の中でどのように位置づけられるかを明らかにする。これらを元にカンボジアの美術教育の現状及びケーススタディの現代的意義を考察する。
ケーススタディ
対象となる240名の生徒が描くのは「私の思い描くアンコール・ワット」という共通のモチーフであり、朝礼でアンコール・ワットを見たことがある人という校長先生の質問に対して手を挙げた生徒は半数以下であった。使った画材は1、2年生にはクレヨンと赤色、青色、緑色、黃色、紫色、橙色、水色、ピンク色の水彩絵具で、混色不可とした。3年生以上は色鉛筆と同じ8色の水彩絵具で混色可とした。朝礼の後各学年教室に分かれ、6名1グループほどで机を固め画材を用意し、クレヨンや色鉛筆を用いて下書きをした後、絵の具を使って色を付けるよう促した。
分析と結果
モチーフであるアンコール・ワットの造形、色彩という2つの面から分析を行った。造形面ではアンコール・ワットの塔の数をいくつ描いているか、色彩面ではカラー成分測定を行った。アンコール・ワットは平面的には5つの塔があるが、国旗には正面から見える3つの塔として描かれている。図1から、全学年を通して3つとして描いた子供が最も多く、次いで5つが多いことが分かった。
カラー成分測定では、色をスペクトル別に赤色系、橙色系、黄色系、緑色系、青色系、紫色系の6色と無彩色の7つに分類し、その割合を算出した。1年生50人、2年生27人、3年生40人、4年生45人、5年生38人、6年生40人の学年別割合及び全体の割合を算出したところ、3学年は橙色に次いで黄色、残り3学年は黄色に次いで橙色をもっとも多く使用していたという結果であった。図2から図7に1年生から6年生における色の割合、及び図8に全学年における色の割合を示す。
インタビュー調査
山田アートスクールは2011年に美術学校として開講し、現在では日本語学校及びアニメーションのスタジオを備え、300名ほどの学生が在籍しており、その殆どが金銭的に余裕のあるインターナショナルスクールの生徒たちである。教育面では美術講師を同校の優秀な学生や近隣の大学から雇用することで教育者としての仕事の環境を提供するだけでなく、展覧会の企画も行うなどアーティストとして活躍できる場も創出している。美術面では、教育能力を持った学生は講師として生徒に美術教育を提供し、作画能力を備えたアニメーションスタジオのスタッフは法人や海外からの仕事を受注することで経営資源を山田アートスクールに還元している。また、日本語講師は王立プノンペン大学の学生や先生であり、幼稚園児や小学校低学年といった生徒に美術の楽しさを伝える役割も担っている。
考察
ケーススタディにおける分析の結果、造形面では、アンコールワットの塔の数は3つが最も多かった理由として、国旗に採用されているデザインであり、直接見たことがない子どもが半数以上ということからも、国旗のデザインをそのまま描く子供が多かったということが言える。色彩面では、橙色と黄色を使用する傾向が高かった理由として、低緯度地域では暖色系の色が知覚的に鮮やかに映ることが考えられる。一方、6学年中5学年が橙色、黄色の2色を合計した割合が全体の半分を超えていたにも関わらず、同じ暖色である赤色の割合は学年が上がるにつれて減少する傾向にあった。この理由として、赤色は70年代後半に国民の3分の1を虐殺したクメール・ルージュの思想を表現するものであるという教育が、学年が上がるとともに浸透しているのではないかと考えられる。また、黄色はヒンドゥー教と仏教の中で最も尊ばれる色であり、街中の宗教建築にも多く見られることから、造形的に類似したそれらの色を国旗では白色で描かれているアンコール・ワットの色として表現したと考えられる。インタビュー調査の結果からは、今回行った美術の授業はケーススタディとしてだけでなく、現地の美術学校とそこに在籍するカンボジア人の日本語教師が介入することによって、当日のファシリテーションを円滑に進めることができ、持続可能性のある途上国支援であると言える。また山田アートスクールとしても、現在はローカルの生徒は数少ないが今後の継続的な活動によってローカルに対する認知度の向上が見込め、それに伴う美術教育の地位向上が期待できると考えられる。
まとめ
形に関しては国旗や宗教建築のデザインから共通性を見出すことができたが、色に関しては地理的、宗教的観点から共通性を説明できる一方で、教育という観点から見れば色が歴史上の特定のイデオロギーを表現するという事実が、現代を生きる子どもたちにとっても影響を及ぼしていることが明らかになった。また、今回のケーススタディは持続可能性を秘めるとともに、山田アートスクール及び美術そのものの認知度向上に繋がるものであると位置づけることができた。
脚注
参考文献・参考サイト
- ◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
- ◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
- ◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院
- ◯◯◯◯◯ https://www.example.com (◯年◯月◯日 閲覧)