一般生活者に向けた配色サービスツールのデザイン研究

提供: JSSD5th2019
2019年11月8日 (金) 15:16時点における王曦 (トーク | 投稿記録)による版 (参考文献・参考サイト)
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王曦 / 九州大学大学院芸術工学府
WANG, Xi / Graduate School of Design, Kyushu University
池田美奈子 / 九州大学大学院芸術工学研究院
IKEDA, Minako/ Faculty of Design, Kyushu University 
Keywords: color harmony, service tool , design


Abstract
Lorem まだです



背景と目的

図1.配色ウェブサイトAdobe Color

 配色構成は、人間生活のさまざまな機能、情緒の意味表現において単色で見られない数多くの効果が期待される[1]。例えば、多くの人がプレゼンテーションを行う機会があり、発表の内容が聴衆に伝わるため、その内容に加えて文字の大きさや色の見やすさなどの視覚的な要素が大きく影響する。そこで、色の見やすさについて、大島(1953)[2]は黄色と紫など明度差の大きな色の組み合わせが視認性が高くなっていると指摘している 。しかし、明度差などの色彩知識を理解するためには一定の学力が前提となる。同時に、配色をするとか配色がよいとか、その原因のひとつに実践経験を積むことが重要である。よって色の基本がわかるが、手軽に最適な配色を決まることは簡単ではないと考える。

 近年、Adobe colorのような配色作成、配色提案を提供する配色ウェブサイトが一般化している(図1)。これらの配色サービスツールを使うことで、色の組み合わせを考える時間が節約でき、色彩のインスピレーションも得られるメリットがある。しかし、ウェブサイト分析ツール「SimilarWeb」を通して、それらの配色ウェブサイトは主に美術やデザイン関係者に向けたものである。

 一方、一般生活者にとって暮らしの様々な場面で配色を自ら考える。例えば、手持ちの服の違った配色の可能性を見つけることや、仕事で配色を考慮してプレゼン資料の内容をより伝わりやすくすることなど。よって配色ニーズは美術やデザインなどの専門者だけのものではなく、配色サービスツールも同様に一般生活者にも必要ではないだろうか。

 したがって、本研究は一般生活者にとって配色サービスツールが必要であることを踏まえて、既存の配色サービスツールを一つのプロセスとしてそれらのコンテンツや機能の調査・分析を行い、現行の配色サービスツールと一般生活者の配色ニーズにおける問題点を明らかにすることが目的である。

研究の方法

 本研究は、まず事例調査を通して、既存の配色サービスツールの種類及びそれぞれのコンテンツ・機能を把握し、配色サービスツールとしての役割を明らかにする。次に、配色ウェブサイトをケーススタディとして、既存の配色サービスを提供する側がどのような配色機能を備えているか、一般生活者にとって効果をあげられているかを明らかにする。最後、アンケート調査を行い、一般生活者が実生活であった配色の困ることと、配色のニーズを抽出する。既存の配色サービスツールが提供している機能と照らし合わせた上で、どのような齟齬が生じているかを確かめる。

先行研究と考察

 色彩が消費者の生活がどのような関係性があるのかに着目する研究では、“Why People Buy: Motivation Research and its Successful Application”(Cheskin,L. 1959)などがあり、これらの研究では主にマーケティングの視点から色彩の多様性がどのように消費者の生活に影響を与える研究である。

 実生活で消費者が色彩に大きな影響を与えて、なぜ配色知識や配色能力に関心があるのかに着目する先行研究では管見の限り見当たらないが、渋川、高橋(1983)は一般生活者に向けた『配色事典』を出版し、当時のベストセラーとなった。これにより、一般生活者は自分から色彩を用いたコーディネートを行い、従来はデザイナーなどの専門家が学んでいた色彩の知識に対するニーズが増えたことが分かった。 配色サービスツールのデザイン研究に関する研究では、「色の組み合わせを学ぶためのスフと開発に向けた基礎理論の研究」(内田、大岩,2017)などが挙げられ、これらの研究では主に美術やデザイン専門の関係者を対象に、一定の配色技法の経験を持つ上で、より勉強しやすく、調和的な配色システムを提案するためのデザイン研究である。

 全体として、1950年代から市場で大量のカラフルな商品を増やすことで、一般生活者にとって色彩の選択肢がより広がっている。この状況で、色彩が消費者の生活に大きな影響を与えて、それにともなって消費者が色彩を触れる機会も多くになっている。そのため、生活者が色彩知識や配色能力に関心があり、色彩を上手く活用する希望があるからこそ、『配色事典』のような配色サービスツールが登場している。しかし、既存の配色サービスツールに関する調査・分析を行ったものは管見の限り見当たらない。よって本研究の独自性は、既存の配色サービスツールのコンテンツ、機能を明らかにしながら、美術やデザイン専門者だけのものに留まらず、一般生活者のニーズも踏まえて、新たな配色サービスツールの可能性を検討することである。

配色サービスツールの現状調査と考察

表1.配色サービスツールの現状調査

 現行の配色サービスツールが果たしている役割を明確するため、既存の配色サービスツールとしての配色カード、配色の参考書、配色ウェブサイト、配色アプリケーションの調査対象を抽出し、それぞれの使用対象、機能、コンテンツなどに対する調査を行った。調査結果は以下の表1にまとめた。    既存の配色サービスツールのうち、配色カードの利用者は主に色の専門家である。配色カードが果たしている役割は「正確な色に伝える」と「カラートレニーング」のことが分かった。配色の参考書は様々な切り口で「色彩と関わる知識」を解釈し、「具体的な配色提案」を提供する役割が大きい。配色ウェブサイトと配色アプリケーションの利用者は主にプロフェッショナルクリエターに向けたものであり、「配色の作成」と「配色提案」など実用性が高い機能が働いている。

 調査結果から見ると、一般生活者のレベルに応じるサービスツールは配色の参考書であるが、配色ウェブサイトや配色アプリケーションは多くの実用的な機能が提供している。例えば、写真から色の抽出の利便性が高い、さらに技術で実現できる可能性も広いので、配色ウェブサイトをケーススタディとして深く調査すると考える。

配色ウェブサイトの調査・分析と考察

 Google検索エンジンを用い、「配色に困る」、「配色サービス」、「配色サービツール」をキーワードとして検索した35のサイトを網羅してリストアップした。それぞれのサイトを実際に使い、「配色カラーパレットの作成」、「配色カラーパレットの提案」、「配色カラーパレットカラーコードの掲載とコピー」、「配色カラーパレットの保存とダンロード」、「意見投票(良いね、シェアなど)」大きく6つの機能を抽出した。また、それぞれの特徴性から、主に「配色作成の方法」と「配色カラーパレットの見せ方」が差別化されていることが分かった。

 非専門者にとって一定の配色知識が持たないと、既存の配色ウェブサイトは「専門性が高い」イメージが持たれている。また、例えばAdobe colorのような配色ウェブサイトで取集された配色のアイデアは主にデザイン作品やイラスト作品を中心として、一般生活者の「使用情景と離れってしまっている」ことも、既存の配色ウェブサイトは一般向けにはうまく機能していないのではないかと考える。

おわりに

 まだです

脚注

  1. [1]朝倉邦造(1991).『色彩学事典』.朝倉書店,pp. 196
  2. [2]大島正光:色彩の生理・心理,色彩調節,pp. 93-97, 技術堂(1953).


参考文献・参考サイト

  • “Why People Buy: Motivation Research and its Successful Application”(1959)Louis Cheskin Liveright Publishing Corporation
  • ウェブサイト分析ツールSimilarWeb:https://www.similarweb.com/ja (2019年11月6日 閲覧)
  • 配色WebサイトAdobe color:https://color.adobe.com/ja/create (2019年11月6日 閲覧)