生活記録に関する研究

提供: JSSD5th2019
2019年11月7日 (木) 16:27時点における佐藤亮介 (トーク | 投稿記録)による版 (記録項目の抽出結果)
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- 生活時間の観点から -


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佐藤亮介 / 九州大学大学院芸術工学府デザインストラテジー専攻
Ryosuke SATO / Graduate School of Design, Kyushu University
田村良一 / 九州大学大学院芸術工学研究院デザインストラテジー部門
Ryoichi TAMURA / Faculty of Design, Kyushu University
Keywords: Schedule of a day, app, Hayashi's quantification methods 3


Abstract
Schedule of a day can be used in various ways and can be easily recorded by wearable devices. Since improvement of lifestyle habits is regarded as important in Japan, this study focused on schedule of a day recording apps and grasped the characteristics. After collecting 20 apps on the website, extracting the functions of each, and implementing Hayashi's quantification methods 3. As a result, apps could be classified into three groups, and the app's position in the current market and features installed functions could be grasped.



編集メモ

字数5500
Abstract未編集
アイテムカテゴリの記述
○目的=高齢者向けの生活習慣の改善を促す生活時間記録ツールの提案、その端緒として高齢者の生活記録による生活習慣への意識変化の実験のための一般的な項目(公的調査から)、計測方法(アプリから)を明らかにする
○実例(公的、継続した記録ではない)=項目や内容の抽出、アプリ(非公的、継続した記録)=計測方法、出力方法とするか
○アプリの抽出、機能の抽出…選定方法を明確に記述



目的と背景

 人々の生活を把握する指標として生活時間が挙げられる。時間の使われ方を通して計量的に把握することができ、生活状態を把握するための手段だけでなく、経済ならびに社会的な政策決定の基礎的資料としても活用されてきた[1]
 また、近年では生活時間だけでなく、歩数や心拍数など生活上のあらゆる情報がライフログ[2]として記録されるようになっており、記録デバイスとしてスマートウォッチなどのウェアラブル端末が商品化されている。ウェアラブル端末が普及したことによって、ライフログの記録や提示が身近に行われるようになった。
 さらに、「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針[3]」では、国民の健康増進を形成する基本要素となる栄養・食生活、身体活動・運動などの生活習慣の改善が重要であるとされている。
 そこで本研究では、生活習慣を改善する一つの方策として生活のセルフマネジメント、特に生活時間に着目し、高齢者向けの生活習慣の改善を促す生活時間記録ツールの提案の端緒として、記録項目と記録方法のあり方について、既存の事例やアプリケーション(以下、アプリと呼ぶ)の調査から明らかにすることを目的とする。



生活時間調査の事例からみた記録項目

目的

 国内外で行われている生活時間調査の事例から記録方法などを抽出し、公的に行われている生活時間の記録項目を明らかにする。


調査実例の選定

 国内外で実施されている生活時間調査であるHETUS、平成28年社会生活基本調査、2015年国民生活時間調査を対象とした。


HETUS
 HETUS(Harmonised European Time Use Survey)はヨーロッパ15ヵ国の国民の生活時間の記録を実施しており、生活時間記録の国際的なガイドラインを提唱している[4]。生活時間の研究において最重要機関であるといえる。
 生活記録の調査は1960年代から関心が高まり、国際比較研究や調査の統一化が行われた。1992年にはEurostat(EU統計局)主導でヨーロッパ諸国の生活時間調査の統一プロジェクトHETUSが設立された[5]


平成28年社会生活基本調査
 平成28年社会生活基本調査(以降、社会調とする。)では総務省統計局による生活時間の記録が行われている[6]
 日本独自の計測方法や項目を用いているが、HETUSのガイドラインを基準に、国際比較にも過去の日本の記録との比較にも用いることができるように設計されている。


2015年国民生活時間調査
 2015年にNHK放送文化研究所が生活実態にそった放送を行うのに役立てることを目的として実施した生活時間調査[7]


記録項目の有無

 記録項目を抽出するにあたり、各調査で記録項目が設定されているか、記録項目の有無の確認を行ったところ、記録項目が既に設定されているプリコード方式、記録項目が設定されておらず、回答者自身で記入し、集計の段階で定められた記録項目を与えるアフターコード方式の二種類の記録方式がとられていた。


記録項目の抽出結果

 図表1に記録項目調査の一例としてHETUSの記録項目の一部を示す。

図表1.HETUSの記録項目(一部)

HETUS
アフターコード方式が用いられており、記録項目は大分類10種類、中分類32種類、小分類170種類に分類されていた。15ヵ国における調査のため、様々なライフスタイルに対応する必要があり170種類もの項目に分類されていた。


平成28年社会生活基本調査
プリコード方式、アフターコード方式の両方の手法が用いられており、プリコード方式では20種類、アフターコード方式では大分類6種類、中分類22種類、小分類90種類に分類されていた。プリコード方式の20種類は、アフターコード方式の中分類22種類を大方そのまま用いており、回答者が選択しやすいようにアフターコード方式を縮小し項目数を少なくしたことが考えられる。


2015年国民生活時間調査
プリコード方式が用いられており、記録項目は大分類4種類、中分類15種類、小分類29種類に分類されていた。放送局であるNHKが実施している調査のため、中分類「マスメディア接触」に含まれる小分類の数が最も多く、「テレビ」や「ラジオ」などの媒体を選択するように設計されていた。



考察

アフターコード方式とプリコード方式の二種類の手法が用いられていることがわかった。また、プリコード方式は記入や内容審査・分類格付け等の事務が少ないことから調査結果の早期公表ができ、アフターコード方式は分類区分を細かく設定できることから生活行動の詳細な把握ができる特性がある。記録項目の数からも分かるとおり、アフターコード方式は90種類や170種類と膨大な数の記録項目がある一方で、プリコード方式では20種類程度の記録項目で簡易的に記録が行われている。本研究が高齢者の生活時間記録を行うことを考慮するにあたり、九州大学基幹教育院の岸本裕歩准教授は、高齢者は毎週の行動はほぼ不変であり、行動の種類は限られている。また、高齢者の場合は特に、入力が複雑であると間違いが多くなる可能性があると述べており、高齢者を対象とするなら項目を高齢者向けに絞り込み、簡単な入力方法を採用すべきであると助言をいただいた。そこで本研究ではプリコード方式を採用し、平成28年社会生活基本調査のプリコード方式版と2015年国民生活時間調査の記録項目を参考に今後の研究を行う。

生活時間記録アプリの調査

目的

 本研究が対象とする、個人が継続的に生活時間を記録する機会と合致している生活時間を記録するアプリの機能の観点からみた特徴の把握を行い、現行市場におけるアプリの位置づけや導入されている機能などの特徴を把握する。


アプリの選定

 2018年5月~6月の期間、Web上のThe App StoreとGoogle Playの2つのアプリケーションダウンロードサイトにて「ライフログ」と「タイムログ」の単語をキーワードとして検索した。アプリ購入画面の紹介画像や説明文から本研究が対象とする条件「日常の行動時間を記録するもの」「入力を手動でするもの」「プリコード方式のもの」「不定期に何度でも記録できるもの」に当てはまるアプリ20個を選定した。


機能の抽出

図表2.アプリと機能の関係

 選定した20個のアプリを実際に使用し、機能の抽出と分類を行った。
 一週間程度アプリを利用した大学生5名でアプリに見受けられた機能を報告し、KJ法を用いて精査を行った。その結果、挙げられた機能は以下の3種類に分類することができた。

  • 項目 … 睡眠、食事などの時間記録を行う際に選択する項目について

並び替え、色付け、グループ化の可否など

  • 入力 … 生活時間記録を行う際の機能

記録の修正、重複記録の可否、計測方法など

  • 出力 … 記録した生活時間を閲覧する際の機能

記録結果の提示形式、表示される期間
 アプリと機能の関係を図表2に示す。








アプリの特徴の把握

 アプリと機能との関係について分析を行った。アイテムを選定したアプリ20個、カテゴリを抽出した機能16個として実施した数量化理論Ⅲ類の結果をもとに固有値の変化から3軸までを捉えることにした。アプリに付与された値をもとにクラスター分析を行った結果、3グループに分けることができた。また、機能についてもポジショニングマップを作成し、アプリのポジショニングマップと比較、考察を行った。


図表3.アプリ散布図
図表4.機能散布図

 アプリ散布図を図表3、機能散布図を図表4に示す。アプリ散布図において、赤枠で囲んだ「タイムログ」「Swipetimes Time Tracker」「Time Tracker」「Atracker」「Time Logger」「Clockwork Tomato」「Awesome Time Logger」「Time Meter Time Tracker」「Easy Time Tracker」「Timesheet 時間記録」「Hours - 時間追跡」「Time Tracker by DualHalf」「Freework」の13個、青枠で囲んだ「超じぶん管理」「時間ノート〜 time time」「IFS Time Tracker」「Smarter Time」「Lifelog」の5個、緑枠で囲んだ「みんチャレ」「Webatar」の2個の3グループに分けることができた。
 アプリ散布図と機能の散布図を比較する。まず、アプリ散布図において成分1から3の原点に位置しているのが赤枠で囲んだ13個のアプリで構成されるグループであり、このグループがライフログ計測アプリとして主流であるグループといえる。それに付随して機能散布図では多くの機能が原点に集中している。
 続いて、アプリ散布図の青枠で囲んだ5個のアプリで構成されるグループは、成分2、3においては0に近いが、成分1においては正方向に位置している。機能散布図を見ると、成分1において「開始時刻と終了時刻を入力」の計測方法であることや記録の修正が可能であること、自動入力の機能を有することが作用していることが成分1の正方向に位置しており、これらの機能を有することにより、主流である赤枠のグループに含まれなかったことが考えられる。
 最後に、アプリ散布図の緑枠で囲んだ「みんチャレ」と「Webatar」のグループは、特に成分1、2、3にて正方向に位置している。機能散布図において同位置には、画像などの時間以外の記録ができる機能や、重複して複数の行動を記録できる機能が位置しており、これらの有することで他の生活記録アプリケーションと大きく差があることが考えられる。



まとめ

 本研究では生活時間記録に着目し、生活時間調査の実例と生活時間記録アプリの調査を実施した。生活時間調査の実例ではプリコード方式とアフターコード方式の2種類の記録方法があることや生活時間以外の調査内容、記録期間や調査対象の年齢など、生活時間調査における一般的な条件を把握することができた。生活時間記録アプリの調査では、現行市場におけるアプリの位置づけや導入されている機能などの特徴を把握することができた。今後は高齢者をターゲットとし、ユーザーが必要とする機能をインタビュー調査で明らかにし、生活習慣の改善を促す生活時間記録ツールの提案を目標に研究を進める。



謝辞

アプリの調査にあたっては、九州大学大学院芸術工学府デザインストラテジー専攻修士課程1年(当時)の欧紹焜くん、同大学芸術工学部工業設計学科4年生(当時)の小原拓也くん、新谷航平くん、宗雲友志くんの協力を得ました。ここに記して謝意を表します。



脚注

  1. 矢野真和,1976,生活時間研究―その適用と展望―,教育社会学研究第31集,p.142-152,日本教育社会学会
  2. 利用者のネット内外の活動記録(行動履歴)が、パソコンや携帯端末等を通じて取得・蓄積された情報(総務省ワーキンググループより)
  3. 厚生労働省,国民の健康の促進の総合的な推進を図るための基本的な方針,https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf,2019年10月23日閲覧
  4. HETUS – Harmonised European Time Use Survey – Start page, http://www.tus.scb.se/,2019年7月7日閲覧
  5. 水野谷武志,2010,ヨーロッパ統一生活時間調査(HETUS)の動向と「社会生活基本調査」,日本統計研究所報,39号,p.19-25,法政大学日本統計研究所
  6. 総務省統計局,2016,平成28年社会生活基本調査
  7. NHK放送文化研究所,2016,2015年国民生活時間調査報告書


参考文献・参考サイト

  • ◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
  • ◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
  • ◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院