日本での中国人留学生の日本医療の利便性をあげる研究

提供: JSSD5th2020
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- 九州大学大橋キャンパスにおける中国人留学生を対象として -


王沁 / 九州大学 芸術工学府
Qin WANG / Kyushu University
杉本美貴 / 九州大学 芸術工学府
oshitaka SUGIMOTO / Kyushu University

Keywords: サービス デザイン,ユニバーサル デザイン,留学生医療問題


Abstract
This study investigates the current state of awareness of Japanese medical care and medical practices among Chinese students on the Ohashi campus of Kyushu University and identifies issues. From the issues, we will consider the Japanese medical support system and the current state of medical care for foreign students in Japan, and derive new requirements for ways to improve the medical practices of Chinese students in Japan. Based on the requirements, we plan to test and verify a service proposal.



研究の背景及び目的

  現在の日本社会は経済のグローバル化の中で、毎年多くの外国人が就学や就労のために来日している。外国人が日本で生活をする際には、言語、文化、人種および宗教などの違いから困難を伴うことが知られているが、医療の現場でも例外ではない。異国での生活には、異なる文化背景から様々な健康問題が生じやすい。外国人留学生のヘルスリテラシーに対するサポートとして、大学や自治体、NPO等が多言語による保健・医療サービス情報を提供しているが、十分浸透しているとは言えない。外国人留学生の増加に伴い、今後も健康課題を抱える外国人留学生が増加することが予測される。

  本研究は九州大学大橋キャンパスにおける中国留学生を対象として、日本医療についての認知現状と医療行為を調査し、課題を整理する。課題から在日留学生のための日本医療支援制度と医療現状を考察し、在日中国留学生の医療行為の改善方法について新しい要件を導き出すことを目的とする。さらに要件をもとにサービス提案を試作し、検証を行う予定である。

研究方法

  文献調査により、外国人に向ける医療現状と問題点を調査する。外国人に向ける医療についての既往研究と先行事例の調査を行う。文献調査から、プレ調査で必要な項目を抽出する。プレ調査については、九州大学大橋キャンパスにおける中国留学生を調査対象として研究を進める。中国留学生に聞き取り調査とアンケート調査を行い、課題を抽出する。考察として、大橋キャンパスの周りと天神での病院への現地調査と病院スタッフへのインタビュー調査を行う。それらの調査と先行事例を元に現状の分析を行い、在日中国留学生の医療行為の改善方法の要件を抽出する。最後にデザイン提案を作成し、検証と評価を行う。

文献調査

  健康障害が生じたときに,迅速な受診行動をとることは医学的にも医療費抑制の点からも重要なことである。しかし,在日外国人は,自分の健康状態について自覚した時,直ちに受診行動をとるとは限らない。定住外国人の医療に関わる要因としてコミュニケーション問題,病気を含む医療に関する情報不足,経済的問題, 入管に対する恐れなどの原因で、「我慢病」一医療機関を受診すべきだと本人が考える疾病に罹患していながら,実際には医療機関を受診しなかった病気一に陥ってしまい,受診をあきらめるケースが少なくないと思われる。

  独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「平成29年度私費外国人留学生生活実態調査概要」によると、大学・学校に入学してからの病気経験がある私費外国人留学生は、病気について対処仕方について答えは、「病院にも薬局にも行かないで、我慢した」が659人(18.7%)となっている。

  ある国立大学に在籍する外国人留学生に向ける調査によると、病気経験者の約2割が受診せずに我慢し、6割が受診を躊躇したことがあると回答していた。その理由として経済的負担以外に言語の問題やどこに受診すればよいかわからないといった回答も見られ、複数の要因が影響していることが明らかとなった。


アンケート調査

調査対象

  大橋キャンパスの中国留学生へ、日本での医療現状、医療行為とその原因について、41人へのアンケート調査を行った。

調査方法

  テンセント調査というオンライン調査プラットフォームを使ってオンラインアンケート調査を作成して、九州大学中国留学生のみのウィーチャットグループでリンクをシェアした。

調査内容

  ①日本語レベルと基本の医療経験②病院行く前の課題③日本病院での受診流れとそれについての課題④「我慢病」経験の有無とその時の対処の仕方⑤保険についての課題。

調査結果

  ①今回調査を行った留学生の日本語レベルについては、「バイトでのコミュニケーションは大丈夫」が16人(39.0%)と最も多く、次いで、「日常生活でのコミュニケーションは大丈夫」が 10人(24.4%) となっている。

  ②「医療機関を受診すべきだと本人が考える病気があっても、 実際には医療機関を受診しなかった経験の有無」について、「あり」が23人(55.6%)となっている。

  ③「あり」と答えた23人中、「受診行動を取らなかった理由(複数回答設問)」について、「病気の状況を伝えるのが難しい」が17 人(73.9%)と最も多く、次いで、「まだ我慢できると症状を自己診断できる」が 15 人(65.2%)となっている。

  ④「あり」と答えた23人中、「とった解決策(複数回答設問)」について、「日本で薬を買う」が 14 人(48.3%)と最も多く、次いで、「単純に我慢する」が 13 人(44.8%)となっている。

  ⑤「あり」と答えた23人中、「とった解決策に不満がある」について、「中国の医療相談プラットフォームを使用に不満がある」が 5/8人(62.5%)と最も多く、次いで、「単純に我慢する」が 4/9 人(66.7%)となっている。

  プレ調査によって、「我慢病」がある留学生は半数以上がある、病院へ行く以外色々の解決策をとったが、それに不満がある、問題は完全に解決されない気がする方が多いです。留学生の日本病院での受診意欲をあがる必要がある。

  プレ調査の「外国人患者としての日本病院へ行く前の困り(複数回答設問)」「外国人患者としての日本病院での受診への不満(複数回答設問)」「外国人留学生としての日本医療現状への不満(複数回答設問)」の答えによると、外国人留学生は医療機関受診に必要な情報(特に診療科や所在地、診療時間等)をタイムリーに提供することと日本語通訳についての応援は、医療機関へのアクセスの心理的負担を軽減させるに重要であると考える。


インタビュー調査

調査対象

  留学生のセルフメディケーション行為と意識を改善できる医療サービスの新しい要件や形を抽出するために、大橋キャンパスでの在日留学生を対象としてインタビュー調査を行った。

調査内容

  ①日本語レベルと基本の医療経験②「我慢病」経験の有無とその時の対処仕方③日常セルフメディケーション④日本医療と医薬品について常識⑤体調不良時の課題など。

調査結果

  インタビューによって、中国人留学生の医療問題を医薬品情報、医療常識、日本語交流三つの部分に分けた。

医薬品情報

  1.日常的な薬を中国から持ってくる留学生が多いですけど、日本の医薬品持ち込み制限がわかる人はほとんどいない

  2.日常的な薬を日本で買いたい留学生が多いですけど、薬のブランドや副作用情報についての認知度は低い

  3.日本語能力が高い留学生でも、多くは外国語での医薬品情報の提供を求めている

医療常識

  1.国による医療や保険制度の違いところが多いです

  2.中国での私立病院は医療資源が不足ので私立病院に信頼感がない留学生が多い

  3.中国での大規模病院は大体24時間ので日本病院の営業時間に困っている留学生も多いです

  4.中国で救急車呼ぶのはお金かかるので救急車呼ぶかどうかに困っている

日本語交流

  1.多言語シールや表紙より、診断過程中の言語支援は大事

  2.多くの病院は子供用日本語支援品を外国人へ提供しているが、子供用日本語支援品に理解できない外国人が多い

  3.医者さんの態度は良くない時、診断への信頼感も低くなる


考察

  留学生の日本病院での受診意欲をあげる、セルフメディケーション意識を改善する必要がある。外国人留学生に日本医療常識と日常的な医薬品情報の提供することと健康管理についての応援は、医療機関へのアクセスの心理的負担を軽減させて健康問題を改善するに重要であると考える。   留学生日本病院での受診意欲をあげるために、病院マップ、日本医療常識、診療支援などのサービスの提供は重要です。留学生セルフメディケーション意識を改善するために、医薬品情報、軽症自己診断支援などのサービスの提供は重要です。


まとめ

  留学生の医療行為と日本の医療現状についての調査から、留学生が求めている医療サービスを考察した。今後も、大橋キャンパスの留学生のために、 留学生のセルフメディケーション行為と意識を改善できる医療サービスの要件を抽出して、医療情報ガイドを試作して、検証します。


参考文献・参考サイト

  • 福岡県の国際化の現状〔データブック〕2017年9月
  • 平 野(小 原)裕子「在日外国人の身体的 ・精神的健康 一保健学・看護学的視点から一 」『福岡醫學雜誌』 94 (8),2003.08, p.243
  • 小寺さやか、上谷真由美、中島英、千場直美「日本の大学に在籍する外国人留学生の保健行動と関連要因に関するパイロットスタディ」『Journal of International Health 』Vol.33 No.4 2018



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