「PTPシートにおける気持ち悪さが印象に与える影響」の版間の差分
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5種類のPTPシートに対する気持ち悪さの評価では幼児と成人で同様な傾向が見られた(F[4,76]=.96,p>0.05)。具体的には、T2、T3、T4の印象評価の平均が最も高く、次にT5、T1の順であった[図2]。それに対して、好き嫌いの評価では[図3]、幼児と成人の間で統計的に有意な差が見られた(F[4,76]=16.61,p<0.01)。具体的には、T3では成人の方が、T4、T5では幼児の方の印象評価の平均が有意に高った(p<0.01)。一方、欲しくないと選んだ2種類のPTPシートの結果において、幼児ではT4が32.5%で最も高く、次がT2とT5(両方27.5%)、T3(12.5%)であった[図4]。その理由を見ると[表1]、「ぶつぶつが嫌」、「苦そう」の順で回答数が多かった。連想イメージでは、「まる」、「お薬」、「四角」などが多かった。それに対して、T3では「ドーナツ」、「ラムネ」と回答した。一方、成人ではT2、、T4、T3、T5、T1の順で回答数が多かった[図4]。その理由を見ると[表2]、「集合体が嫌」、「ぶつぶつが嫌」が多かった。連想イメージは、「蜂の巣」、「怪獣の目」、「ハンコ注射」、「サイコロ」などであった。 | 5種類のPTPシートに対する気持ち悪さの評価では幼児と成人で同様な傾向が見られた(F[4,76]=.96,p>0.05)。具体的には、T2、T3、T4の印象評価の平均が最も高く、次にT5、T1の順であった[図2]。それに対して、好き嫌いの評価では[図3]、幼児と成人の間で統計的に有意な差が見られた(F[4,76]=16.61,p<0.01)。具体的には、T3では成人の方が、T4、T5では幼児の方の印象評価の平均が有意に高った(p<0.01)。一方、欲しくないと選んだ2種類のPTPシートの結果において、幼児ではT4が32.5%で最も高く、次がT2とT5(両方27.5%)、T3(12.5%)であった[図4]。その理由を見ると[表1]、「ぶつぶつが嫌」、「苦そう」の順で回答数が多かった。連想イメージでは、「まる」、「お薬」、「四角」などが多かった。それに対して、T3では「ドーナツ」、「ラムネ」と回答した。一方、成人ではT2、、T4、T3、T5、T1の順で回答数が多かった[図4]。その理由を見ると[表2]、「集合体が嫌」、「ぶつぶつが嫌」が多かった。連想イメージは、「蜂の巣」、「怪獣の目」、「ハンコ注射」、「サイコロ」などであった。 | ||
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2020年9月29日 (火) 09:43時点における版
- 李志炯 / 第一工業大学 工学部
- Lee Jihyeong / Daiichi Institute of Technology
Keywords: Press Thought Pack,Circle-aggregate Shapes,Impression
- Abstract
- In this study, we created a PTP sheet that incorporates a circular aggregate shape that gives discomfort to prevent accidental ingestion of drugs related to PTP sheets by infants, and examined its effect. At that time, we examined the infants and adults, and considered the design of the PTP sheet with the shape of a circular aggregate, which has a small burden on adults and a large burden on infants.
目的と背景
近年、幼児によるPTPシート関連の医薬品誤飲事故の増加が報告されており、その事故の原因として挙げられたのが興味である。PTPシートのデザインが美味しそうに見えたり、PTPシートのデザインが菓子のデザインと類似していたりすることにより、PTPシートに対する好印象を持ち、それが興味につながったと考えられる[1]。そのため、医薬品誤飲事故から幼児を守るためには、幼児に好印象を持ったないようにPTPシートのデザインを改善する必要がある。また、上記のようにPTPシートから連想するイメージが好印象につながる場合もあるため、その関係についても考慮する必要がある。このような背景を踏まえてPTPシートのデザインを考える際に取り入れ可能なのが円形集合体形状である。川口の研究(2018)によると[2]、幼児はトライポフォビックな円形集合体形状に気持ち悪さを感じることが明らかになっている。それは生存本能としての反応であることが示唆されているため、円形集合体形状を取り入れることは有効な手段になると考えられる。そこで、本研究では、PTPシートに円形集合体形状を加えたデザイン案を作成し、その特徴による印象の変化について検討した。また、前述したように連想イメージによる印象の変化も予想されるため、その関係についても検討した。一方、PTPシートは幼児だけでなく、あらゆる年齢層が使用するものなので、他の年齢層におけるPTPシートに対する印象も重要である。こういうことで、本研究では、幼児および20代の成人を対象に上記の検討を行い、成人には負担が少なく、幼児には負担が大きい円形集合体形状を加えたPTPシートのデザインについて考察することを目的とした。
研究の方法
本研究の対象は幼児20名(男児10名、女児10名、平均年齢4年6ヶ月)と20代の男女30名(男性15名、女性15名、平均年齢19.4歳)であった。
本研究では、実験刺激として基本形のポケットの上部に円形集合体形状を無作為形、六角形、四角形、菱形に加えたものを作成した[図1]。
実験では、5種類のPTPシートをランダムに1種類ずつ提示し、触りながら印象評価をしてもらった。印象評価は気持ち悪さ(6段階のSD法)、好き嫌い(6段階のSD法)の2項目であった。気持ち悪さは「1:気持ち悪くない、2:わずかに、3:やや、4:なかなか、5:かなり、6:非常に」にした。成人は評価スケール、幼児はフェイススケールを見ながら口頭で回答した。最後に、5種類のPTPシートの中で欲しくないPTPシート2種類を選び、その理由を回答した。
結果
5種類のPTPシートに対する気持ち悪さの評価では幼児と成人で同様な傾向が見られた(F[4,76]=.96,p>0.05)。具体的には、T2、T3、T4の印象評価の平均が最も高く、次にT5、T1の順であった[図2]。それに対して、好き嫌いの評価では[図3]、幼児と成人の間で統計的に有意な差が見られた(F[4,76]=16.61,p<0.01)。具体的には、T3では成人の方が、T4、T5では幼児の方の印象評価の平均が有意に高った(p<0.01)。一方、欲しくないと選んだ2種類のPTPシートの結果において、幼児ではT4が32.5%で最も高く、次がT2とT5(両方27.5%)、T3(12.5%)であった[図4]。その理由を見ると[表1]、「ぶつぶつが嫌」、「苦そう」の順で回答数が多かった。連想イメージでは、「まる」、「お薬」、「四角」などが多かった。それに対して、T3では「ドーナツ」、「ラムネ」と回答した。一方、成人ではT2、、T4、T3、T5、T1の順で回答数が多かった[図4]。その理由を見ると[表2]、「集合体が嫌」、「ぶつぶつが嫌」が多かった。連想イメージは、「蜂の巣」、「怪獣の目」、「ハンコ注射」、「サイコロ」などであった。
考察
本研究の結果では、幼児と成人の間で5種類のPTPシートに対する気持ち悪さの評価の差はほとんどなかった。すなわち、円形集合体形状の特徴から感じられる気持ち悪さはほぼ同様であり、円形が多いほどより気持ち悪さを感じることが明らかになった。しかし、好き嫌いの評価では差が見られ、T3では幼児は好きと評価したが、成人は嫌いと評価した。それに対して、T5では幼児は嫌いと評価したが、成人は好きと評価した。これらの結果を欲しくないと選んだ理由と連想イメージから考察すると、幼児の場合、T3は選んだ回数が少なく、その理由を明確に答えられなかった。また、連想イメージはドーナツとラムネなどの美味しくて幼児の好みの食べ物が多かった。それに対して、T5は選んだ回数が多く、嫌いな理由を明確に答えた。連想イメージも苦いお薬などと答えた。一方、成人の場合、T3は選んだ回数が多く、連想イメージも蜂の巣など好印象につながりにくいものの答えが多かった。それに対して、T5は選んだ回数が少なく、連想イメージもサイコロと中性的なイメージのものであった。これらの結果により、円形集合体形状による気持ち悪さが感じられても、好印象のイメージが連想されれば、円形集合体形状に対する好き嫌いの印象は変化する可能性があることが考えられる。
まとめ
本研究では、成人には負担が少なく、幼児には負担が大きい円形集合体形状を加えたPTPシートのデザインについて考察することを目的とした。その結果、幼児と成人において気持ち悪さが多少感じられるものの、その連想イメージにより好き嫌いの評価が分かれるT5のようなデザインを取り入れるとPTPシートの医薬品誤飲事故の防止につながると考えられる。
脚注
参考文献・参考サイト
[1]消費者庁(2015).消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事項等原因調査報告書-子供による医薬品誤飲事故-平成27年12月18日<https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_007/>(2020年8月7日)
[2]川口めぐみ:ネガティブ感情を喚起する形態特徴―青年と幼児を対象として検討―,日本感性工学会論文誌,17(5),pp.557-560,2018