「デザイン概念の概念デザイン」の版間の差分

提供: JSSD5th2020
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デザインが、デザイン・コンセプトが発生する<場>そのものは、如何にして存在するのか、そのコンテクスト生成(文脈編成)の可能性を抽出したい。社会的ニーズ(与件)に応えることを目的とした従来の「行為としてのデザイン」は、より大局的な観点から、その在り方・見え方(存在認識/認識存在)を変えることになるだろう。<br><br>
 
デザインが、デザイン・コンセプトが発生する<場>そのものは、如何にして存在するのか、そのコンテクスト生成(文脈編成)の可能性を抽出したい。社会的ニーズ(与件)に応えることを目的とした従来の「行為としてのデザイン」は、より大局的な観点から、その在り方・見え方(存在認識/認識存在)を変えることになるだろう。<br><br>
 
述者の活動領域キーワードは、「情報デザイン」「メディア表現」「デザイン振興」である。
 
述者の活動領域キーワードは、「情報デザイン」「メディア表現」「デザイン振興」である。
現在は大学教員として研究・教育・社会事業に携わっているが、前職は「公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)」<ref>公益財団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)公式サイト, https://www.jagda.or.jp,  2020年10月5日閲覧</ref>本部事務局において、グラフィックデザインを通じて社会に貢献することを目的とする「公益事業」(主に、日本におけるグラフィックデザインのデジタル化・情報化推進、デザインによる地域振興、国際交流事業、等)に携わってきた。とりわけ1990年から1999年までの間、日本におけるグラフィックデザインのデジタル化・情報化推進のための諸事業に携わった経験とそれへの反省から、ブロードバンド化しユビキタス化したインターネット環境が普及し尽くした感のある現在のコミュニケーション環境を振り返る時、次のような感慨を懐かざるを得ない:情報化の進展、高度化・複雑化の進展には「キリがない」、という実感とともに、わたしたちが推し進めてきたことは、はたして「これで良かったのか?」、こういう「世界」を望んでいたのか、という思いを懐かざるを得ないのである。そこから本研究では、情報デザインにおける根源的「最小構成原理」をモデル化し、提示することを試みる。「吾唯知足」<ref>龍安寺公式サイト②「吾唯知足」つくばい, http://www.ryoanji.jp/smph/guide/grounds.html,  2020年10月5日閲覧</ref>と古人は述べたが、現代のわたしたちは、際限なく高度化・複雑化する社会と世界の在りようを、どのように捉え理解し、デザインすることができるだろうか。
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現在は大学教員として研究・教育・社会事業に携わっているが、前職は「公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)」<ref>公益財団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)公式サイト, https://www.jagda.or.jp,  2020年10月5日閲覧</ref>本部事務局において、グラフィックデザインを通じて社会に貢献することを目的とする「公益事業」(主に、日本におけるグラフィックデザインのデジタル化・情報化推進、デザインによる地域振興、国際交流事業、等)に携わってきた。とりわけ1990年から1999年までの間、日本におけるグラフィックデザインのデジタル化・情報化推進のための諸事業に携わった経験とそれへの反省から、ブロードバンド化しユビキタス化したインターネット環境が普及し尽くした感のある現在のコミュニケーション環境を振り返る時、次のような感慨を懐かざるを得ない:情報化の進展、高度化・複雑化の進展には「キリがない」、という実感とともに、わたしたちが推し進めてきたことは、はたして「これで良かったのか?」、こういう「世界」を望んでいたのか、という思いを懐かざるを得ないのである。そこから本研究では、情報デザインにおける根源的「最小構成原理」をモデル化し、提示することを試みる。「吾唯知足」<ref>龍安寺公式サイト②「吾唯知足」, http://www.ryoanji.jp/smph/guide/grounds.html,  2020年10月5日閲覧</ref>と古人は述べたが、現代のわたしたちは、際限なく高度化・複雑化する社会と世界の在りようを、どのように捉え理解し、デザインすることができるだろうか。
  
 
==研究の方法==
 
==研究の方法==

2020年10月5日 (月) 08:53時点における版

ー情報デザインの地平を開く(1)

宝珠山 徹 / 西日本工業大学 デザイン学部
HOSHUYAMA Toru / Nishinippon Institute of Technology, Faculty of Design

Keywords: concept of design, design concept, concept designing, contextual designing, information design, design informatics, philosophy, phenomenology, theory of design

Abstract
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図1.◯◯◯◯


目的と背景

What is design?
デザインとはなにか、デザイン概念をあらためて捉え直すことを通して、新たなデザインの捉え方(概念)をデザインし、未来のデザイン振興に資することを、本研究は目的としている。まだニーズのないところにデザイン存在の地平をひらく可能性、そのような存在認識/認識存在を生成・展開すること。社会的与件(予め与えられた前提条件)から始めるのではなく、「それ以前」から始まる、与件が引き出されるに至った構造形成の動的過程(プロセスの生成、デザイン・プロセス)そのものを捉える視点の生起、すなわちわたしたちの生存環境である「世界」生成過程の理解と、あらたなデザイン生成をうながすための「contextual designing」(文脈編成)について、自己生成的に言及するものである。
デザインが、デザイン・コンセプトが発生する<場>そのものは、如何にして存在するのか、そのコンテクスト生成(文脈編成)の可能性を抽出したい。社会的ニーズ(与件)に応えることを目的とした従来の「行為としてのデザイン」は、より大局的な観点から、その在り方・見え方(存在認識/認識存在)を変えることになるだろう。

述者の活動領域キーワードは、「情報デザイン」「メディア表現」「デザイン振興」である。 現在は大学教員として研究・教育・社会事業に携わっているが、前職は「公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)」[1]本部事務局において、グラフィックデザインを通じて社会に貢献することを目的とする「公益事業」(主に、日本におけるグラフィックデザインのデジタル化・情報化推進、デザインによる地域振興、国際交流事業、等)に携わってきた。とりわけ1990年から1999年までの間、日本におけるグラフィックデザインのデジタル化・情報化推進のための諸事業に携わった経験とそれへの反省から、ブロードバンド化しユビキタス化したインターネット環境が普及し尽くした感のある現在のコミュニケーション環境を振り返る時、次のような感慨を懐かざるを得ない:情報化の進展、高度化・複雑化の進展には「キリがない」、という実感とともに、わたしたちが推し進めてきたことは、はたして「これで良かったのか?」、こういう「世界」を望んでいたのか、という思いを懐かざるを得ないのである。そこから本研究では、情報デザインにおける根源的「最小構成原理」をモデル化し、提示することを試みる。「吾唯知足」[2]と古人は述べたが、現代のわたしたちは、際限なく高度化・複雑化する社会と世界の在りようを、どのように捉え理解し、デザインすることができるだろうか。

研究の方法

生成しシリーズ化する論文構成として、デザイン論を展開し、デザインの「メタ・コンテクスト」を提示する。本稿はその序論である。
また、次稿において、情報デザインにおける根源的「最小構成原理」(アルゴリズム)をモデル化し、提示する予定である。


語源的考察

「区別」としての<design>

<design>の語源に近い、古いラテン語である<designare>(デジニャーレ)の英訳(Notre Dame University[3],Latin-English Dictionary)を引くと、次のように表現されている: 英訳では、mark; point/mark/trace out, outline/describe; indicate/designate/denote
和訳すると、マークする、指示、なぞる、アウトライン、説明、表示、指定する、示す、となる。

designare [4]
design.are V 1 1 PRES ACTIVE INF 0 X
design.are V 1 1 PRES PASSIVE IND 2 S Early
design.are V 1 1 PRES PASSIVE IMP 2 S
designo, designare, designavi, designatus V TRANS [XXXBO]
mark; point/mark/trace out, outline/describe; indicate/designate/denote;
earmark/choose; appoint, elect (magistrate); order/plan; scheme. perpetrate;
Syncope r => v.r
Syncopated perfect often drops the 'v' and contracts vowel
designav.ere V 1 1 PERF ACTIVE IND 3 P
designo, designare, designavi, designatus V TRANS [XXXBO]
mark; point/mark/trace out, outline/describe; indicate/designate/denote;
earmark/choose; appoint, elect (magistrate); order/plan; scheme. perpetrate;
(以上、出典 Notre Dame University Latin-English Dictionary)

Google Translateによる<designare>の英訳は<designate>にあたり、またその和訳は「指定する」とされる。
Goole Translate: (Latin)designare, (English)designate https://translate.google.com/?hl=en#la/en/designare

「デザイン」を「区別」し直す

<designare>は、イタリア語のdisegno、フランス語のdessin、英語のdesignate、designに連なる語である。
<design>をその語源から見てくると、元々「デザイン」という日本語訳での「計画・設計・意匠」というような限定的な意味内容にとどまらず、むしろ広く「デッサン」(しるしを付けアタリをとる)や<designate>(境界を区別し、指定する)と近い概念であることが理解される。このような理解からは、拡張するデザイン領域の広がりに応じて、これまで「デザイン」という日本語で流通してきた「デザイン概念」の意味解釈の範囲を拡張し、可能なかぎり英語の<design><designate>という、本来の用法に近い仕方で理解し直すこと、「デザイン概念の概念デザイン」を「区別」し直し、再びリデザインすることが要請されるのである。

「中動態」とは違う仕方で

本稿では充分触れることができないが、今後の展開としては「情報デザイン論」を経由し、流行中の「中動態」とは異なる方法で、デザインによる「世界」制作/生成の存在認識/認識存在の地平をひらく論考を。次の項目において、順次展開していく予定である。

汎デザイン論

「この世の存在者は全てデザイン・プロセスである」という、「人工」「自然」の二項対立を止揚するデザイン論。

複眼構成法[5]

二項対立的存在者の在り方を「デザインの解釈学」と「顕現せざるものの現象学」の重ね合わせにおいて表現する、デザイン制作/生成(ポイエーシス/オートポイエーシス)過程の理解・表現方法を提案する。

「絶対矛盾的自己同一」

西田幾多郎による概念表現である「絶対矛盾的自己同一」とはどのような事態か、を契機として、東西哲学思想に通底する「叡智的概念」について考察する。

まとめ

デザインとはなにか、語源に遡り、デザイン概念をあらためて捉え直すことを通して、新たなデザインの捉え方(概念)をデザインする可能性について提示した。そこでは、デザイン存在の地平をひらき、わたしたちの生存環境である「世界」生成過程の理解と、あらたなデザイン生成をうながす「contextual designing」(文脈編成)について、自己生成的に言及した。これまで「デザイン」という日本語で流通してきた「デザイン概念」の意味解釈の範囲を拡張し、可能なかぎり英語の<design><designate>という、本来の用法に近い仕方で理解し直すことから、「デザイン概念の概念デザイン」を「区別」し直し、再びリデザインすることで、デザイン可能性を拡張し得ることを示した。
引き続き「情報デザイン論」を経由して、「中動態」とは異なる仕方で、デザインによる世界生成の在り方について、論考を展開していく。

脚注

  1. 公益財団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)公式サイト, https://www.jagda.or.jp, 2020年10月5日閲覧
  2. 龍安寺公式サイト②「吾唯知足」, http://www.ryoanji.jp/smph/guide/grounds.html, 2020年10月5日閲覧
  3. Notre Dame University, https://www.nd.edu, 2020年10月4日閲覧
  4. "designare", Latin-English Dictionary,Notre Dame University, http://archives.nd.edu/cgi-bin/wordz.pl?keyword=designare, 2020年10月4日閲覧
  5. 宝珠山徹「情報デザインにおける複眼的構成法」(CiNii論文), https://ci.nii.ac.jp/naid/130005453940, 2020年10月5日閲覧


参考文献

  • 中動態・地平・竈 ーハイデガーの存在の思索をめぐる精神史的現象学(2018) 小田切建太郎 法政大学出版局
  • <概念工学>宣言!ー哲学×心理学による知のエンジニアリング(2019) 戸田山和久・唐沢かおり褊 名古屋大学出版会