「昆虫食を日常に取り込むデザイン的アプローチ」の版間の差分

提供: JSSD5th2020
Jump to navigation Jump to search
(昆虫食の現状)
(「昆虫食を日常に取り込むデザイン的アプローチ」を保護しました ([編集=管理者のみ許可] (無期限) [移動=管理者のみ許可] (無期限)))
 
(4人の利用者による、間の48版が非表示)
1行目: 1行目:
 
- 身体的支援機能・知的支援機能・精神的支援機能・技術的支援機能の観点から -
 
- 身体的支援機能・知的支援機能・精神的支援機能・技術的支援機能の観点から -
  
; 加治幸樹 / 九州大学 芸術工学部 
 
; 山野和磨 / 九州大学 芸術工学部 
 
  
''Keywords: Speculative Design, Insect Food'' 
+
; 加治 幸樹 / 九州大学 芸術工学部 
 +
; 山野 和磨 / 九州大学 芸術工学部 
 +
 
 +
''Keywords: Insect Food, Speculative Design'' 
 +
 
  
  
 
==背景と目的==
 
==背景と目的==
[[File:HanakoKyusanFig01.jpg|thumb|right|200px|図1.◯◯◯◯]]
+
 サービスは、レシーバー(サービスの需要者)の「状態変化」を引き起こすことであり、コンテンツ(内容)およびチャネル(方法)はその実現手段といえる<ref>下村芳樹,原辰徳,渡辺健太郎,坂尾知彦,新井民夫,富山哲男:サービス工学の提案(第 1 報,サービス工学のためのサービスのモデル化技法),日本機械学會論文集C編,Vol.71,No.702,pp.669-676, 2005</ref>。また、実現手段の方向性として、身体的支援・知的支援・精神的支援・技術的支援の4つの支援機能に分けて考えることができる<ref>亀岡秋男:サービス・製品・技術イノベーションを融合・創出・俯瞰する統合型戦略ロードマッピング,オペレーション・リサーチ経営の科学,Vol.51,No.9,pp.573-578,2006</ref>。そこで本研究では、既存のモノが提供する機能のありようについて、4つの支援機能の観点から整理し、「新たな付加価値を持つモノ」を提案することを目的とする。
 サービスは、レシーバー(サービスの需要者)の「状態変化」を引き起こすことであり、コンテンツ(内容)およびチャネル(方法)はその実現手段といえる<ref>下村芳樹,原辰徳,渡辺健太郎,坂尾知彦,新井民夫,富山哲男:サービス工学の提案(第 1 報,サービス工学のためのサービスのモデル化技法),日本機械学會論文集C編,Vol.71,No.702,pp.669-676, 2005</ref>。また、実現手段の方向性として、身体的支援・知的支援・精神的支援・技術的支援の4つの支援機能に分けて考えることができる<ref>亀岡秋男:サービス・製品・技術イノベーションを融合・創出・俯瞰する統合型戦略ロードマッピング,オペレーション・リサーチ経営の科学,Vol.51,No.9,pp.573-578,2006</ref>
 
  
 本研究では、既存のモノが提供する機能のありようについて、4つの支援機能の観点から整理し、「新たな付加価値を持つモノ」を提案することを目的とする。
+
 なお、本発表は、九州大学芸術工学工業設計学科4年前期に開設される「工業設計プロジェクト研究」のプロセスおよび成果の一端を報告するものである。
 
  {{clear}}
 
  {{clear}}
 
<br>
 
<br>
  
==4つの支援機能による既存の製品の分類==
+
==現状の把握とテーマの選定==
[[File:mushi2.png|thumb|right|200px|図1.身の回りの製品を分類]]
+
===用具に関わる支援機能の調査===
 +
[[File:mushi2.png|thumb|right|200px|図1. 身の回りの製品の分類]]
  
 身の回りの製品やサービスを4つの支援機能の観点から分類した(図1)。ここから虫の捕獲器や昆虫食に関する製品には精神的支援、知的支援がほとんど施されていないのではないかと考えた。
+
 身の回りの製品やサービスを4つの支援機能の観点から分類した(図1)。40程度のサンプルを収集する際に、用具を含めることを意識した。それらの中で、子どもが触れることが多い虫の捕獲器には、用具であることから精神的支援、知的支援がほとんど施されていないことが知られた。
 +
{{clear}}
 
<br>
 
<br>
 そこでこれらの分類の中から我々は昆虫食に関わる製品やデザインに注目した。現存する昆虫食に関わる製品やサービスを調査した結果、精神的支援が施された事例が少ないことが分かった。これらの昆虫食に関わる事例に精神的支援を付加することで新たな価値が生まれるのではないかと考えた。
+
 
 +
===用具による捕獲対象の昆虫への対象の展開===
 +
 捕獲器だけでは対象が広がり難いことから、捕獲の対象である昆虫を起点として遊撃的にデザイン提案の対象を広げた。現代生活では、一部のペット的飼育や蒐集目的以外では害虫として駆除される対象である昆虫の積極的利活用に目を向け、昆虫食に関わる製品やデザインに注目することとし、現存する昆虫食に関わる製品やサービスを調査した。
 
  {{clear}}
 
  {{clear}}
 
<br>
 
<br>
  
==昆虫食の現状==
+
==昆虫食の現状とアイデアの検討・提案==
1.昆虫食の背景
+
===昆虫食を取り巻く現状===
 +
 世界で有⽤なバイオマス、タンパク源として昆⾍⾷に関⼼が向いている。しかし戦後、政策によって作り上げられてきた「害⾍観」と⾷の多様化とによって、昆⾍を⾷として捉えることが難しくなっている。
 +
 
 +
 昆虫食について調査<ref>水野壮:昆虫食の科学と実践 昆虫を食べる!,洋泉社,2016</ref>した結果、鶏肉と牛肉ではそれぞれタンパク質を100グラム中52%、56%の割合で含むのに対して、コオロギとトノサマバッタではそれぞれタンパク質を100グラム中64%、67%の割合で含むということが分かった。また他の脂質やビタミン量などでも同様に他の肉類と遜色が無く、昆虫が他の肉類などの代替食品となる可能性があると言われていることがわかった。また、飼育に必要となる餌や水分などの持続可能性の観点からみると他の食用動物と比べてはるかに優っている。それにもかかわらず、現在日本の市場に常用食として出回ることは少なく、伝統⾷品、嗜好品、趣味として捉えられており、⽇常の⾷事範囲からは疎外されているといえる。これにおいて、昆虫食に対するサービスには精神的支援が不可欠であると結論した。
 +
{{clear}}
 
<br>
 
<br>
世界で有⽤なバイオマス、タンパク源として昆⾍⾷に関⼼が向いている。しかし戦後、政策によって作り上げられてきた「害⾍観」と、⾷の 多様化によって⾷として昆⾍を捉えることが難しくなっている。
+
 
 +
===最終提案===
 +
 昆虫食を日常的に社会に取り込む様子をデザインフィクションを用いて表現した。
 +
それにより思索を促し、食として昆虫食を捉えてもらう機会づくりを行うスペキュラティブデザインである。
 +
{{clear}}
 
<br>
 
<br>
 +
 +
 +
 +
==脚注==
 +
<references />
 
<br>
 
<br>
2.昆虫食についての調査
 
<br>
 
その結果、鶏肉と牛肉がそれぞれタンパク質を100グラム中52%、56%含むのに対して、コオロギとトノサマバッタが100グラム中64%、67%タンパク質を含むということが分かった。また他の脂質やビタミン量などでも同様に他の肉製品と遜色が無く、これらの代替食品となる可能性があると考えた。また、飼育に必要となる餌や水分などの持続可能性の観点に関しては他の食用動物と比べてはるかに優っている。それにもかかわらず、現在日本の市場に常用食として出回ることは少なく、伝統⾷品、嗜好品、趣味として捉えられており、⽇常の⾷事範囲からは疎外されているのが現状である。
 
 
<br>
 
<br>
 +
 +
==参考文献・参考サイト==
 +
*水野壮(2016):昆虫食の科学と実践 昆虫を食べる!,洋泉社
 +
*三橋淳(2012):虫を食べる人びと,平凡社
 
<br>
 
<br>
3.方法
 
 
<br>
 
<br>
 未来における⽇常⾷としての昆⾍のあり⽅を提⽰する。その結果、社会に昆⾍⾷を⽇常に取り込むアプローチを各々で模索してもらうことで、次のスペキュレーション(説明がいる)が産まれる。この思索プロセスを踏んでもらうことで、⾷として昆⾍を捉えてもらうことを目的とする未来像を以下に示す。
 
  
{{clear}}
 
<br>
 
  
==アイデア展開==
 
  
 
 
 
{{clear}}
 
<br>
 
  
==外部リンク==
+
==プレゼンテーション動画==
* プロジェクト紹介サイト https://www.example.com
+
{{#ev:youtube|Xeg-zyoEPjY|640}}
 
<br>
 
<br>
 
<br>
 
<br>
==脚注==
+
 
<references />
+
[[Category:その他のデザイン]]
<br>
 
<br>
 
[[Category:未設定]]
 

2020年10月16日 (金) 20:52時点における最新版

- 身体的支援機能・知的支援機能・精神的支援機能・技術的支援機能の観点から -


加治 幸樹 / 九州大学 芸術工学部 
山野 和磨 / 九州大学 芸術工学部 

Keywords: Insect Food, Speculative Design 


背景と目的

 サービスは、レシーバー(サービスの需要者)の「状態変化」を引き起こすことであり、コンテンツ(内容)およびチャネル(方法)はその実現手段といえる[1]。また、実現手段の方向性として、身体的支援・知的支援・精神的支援・技術的支援の4つの支援機能に分けて考えることができる[2]。そこで本研究では、既存のモノが提供する機能のありようについて、4つの支援機能の観点から整理し、「新たな付加価値を持つモノ」を提案することを目的とする。

 なお、本発表は、九州大学芸術工学工業設計学科4年前期に開設される「工業設計プロジェクト研究」のプロセスおよび成果の一端を報告するものである。



現状の把握とテーマの選定

用具に関わる支援機能の調査

図1. 身の回りの製品の分類

 身の回りの製品やサービスを4つの支援機能の観点から分類した(図1)。40程度のサンプルを収集する際に、用具を含めることを意識した。それらの中で、子どもが触れることが多い虫の捕獲器には、用具であることから精神的支援、知的支援がほとんど施されていないことが知られた。



用具による捕獲対象の昆虫への対象の展開

 捕獲器だけでは対象が広がり難いことから、捕獲の対象である昆虫を起点として遊撃的にデザイン提案の対象を広げた。現代生活では、一部のペット的飼育や蒐集目的以外では害虫として駆除される対象である昆虫の積極的利活用に目を向け、昆虫食に関わる製品やデザインに注目することとし、現存する昆虫食に関わる製品やサービスを調査した。



昆虫食の現状とアイデアの検討・提案

昆虫食を取り巻く現状

 世界で有⽤なバイオマス、タンパク源として昆⾍⾷に関⼼が向いている。しかし戦後、政策によって作り上げられてきた「害⾍観」と⾷の多様化とによって、昆⾍を⾷として捉えることが難しくなっている。

 昆虫食について調査[3]した結果、鶏肉と牛肉ではそれぞれタンパク質を100グラム中52%、56%の割合で含むのに対して、コオロギとトノサマバッタではそれぞれタンパク質を100グラム中64%、67%の割合で含むということが分かった。また他の脂質やビタミン量などでも同様に他の肉類と遜色が無く、昆虫が他の肉類などの代替食品となる可能性があると言われていることがわかった。また、飼育に必要となる餌や水分などの持続可能性の観点からみると他の食用動物と比べてはるかに優っている。それにもかかわらず、現在日本の市場に常用食として出回ることは少なく、伝統⾷品、嗜好品、趣味として捉えられており、⽇常の⾷事範囲からは疎外されているといえる。これにおいて、昆虫食に対するサービスには精神的支援が不可欠であると結論した。



最終提案

 昆虫食を日常的に社会に取り込む様子をデザインフィクションを用いて表現した。 それにより思索を促し、食として昆虫食を捉えてもらう機会づくりを行うスペキュラティブデザインである。




脚注

  1. 下村芳樹,原辰徳,渡辺健太郎,坂尾知彦,新井民夫,富山哲男:サービス工学の提案(第 1 報,サービス工学のためのサービスのモデル化技法),日本機械学會論文集C編,Vol.71,No.702,pp.669-676, 2005
  2. 亀岡秋男:サービス・製品・技術イノベーションを融合・創出・俯瞰する統合型戦略ロードマッピング,オペレーション・リサーチ経営の科学,Vol.51,No.9,pp.573-578,2006
  3. 水野壮:昆虫食の科学と実践 昆虫を食べる!,洋泉社,2016



参考文献・参考サイト

  • 水野壮(2016):昆虫食の科学と実践 昆虫を食べる!,洋泉社
  • 三橋淳(2012):虫を食べる人びと,平凡社




プレゼンテーション動画