「中国における宅配便の包装廃棄物回収の現状と消費者の意識についての研究」の版間の差分

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;金楽琦/九州大学芸術工学府
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金楽琦/九州大学芸術工学府<br>
 
JIN leqi / Graduate School of Design, Kyushu University<br>
 
池田美奈子/九州大学芸術工学研究院<br>
 
IKEDA Minako / Faculty of Design, Kyushu University<br>
 
 
''Keywords: Reverse logistics, Consumer conscious and behavior, Express packaging waste''
 
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; Abstract
 
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==背景と目的==
 
==背景と目的==
 宅配便は流通と消費の増加を促し、現代のサービス産業の中で重要な位置を占めている。近年、特に中国においてはeコマースの急速な発展とともに、宅配便のニーズが高まっている。中国の郵便局からの報告を見ると、2010年の宅配便の件数は23.4億件だったが、2019年には600億件に伸びている。さらに、中国における「独身の日」という24期間限定のショッピングフェスティバルやCOVID-19下の特別な状況においては、特にネット通販商品の大量生産、包装材料の大量使用と廃棄が発生する。中国環境保護協会の『2018年中国の宅配便包装廃棄物の特徴と管理現状の報告』<sup>[1]</sup>によると、中国の宅配便包装廃棄物の排出量は2010年の61万トンから2018年の1303万ンに増えた。宅配便包装材料廃棄による炭素排出量の割合は、埋め立て処分段階での排出が9.79%で、焼却処分段階での排出が6.68%である。また処分段階でかかる費用も増え、138.13万トンの宅配便包装廃棄物を埋め立てるためにかかった費用は9.74億元に上っている。環境汚染と処理費用の増大を前に宅配便の包装廃棄物の問題は深刻である。この問題を解決するためには、拡大生産者責任を課す政策や法律が2016年から次々と施行されている。しかし、2019年中国の郵便局<sup>[2]</sup>による宅配便サービス満足度の調査では、32.6%の消費者が包装廃棄物を普通のゴミとして廃棄していることが示されている。また、10.9%の消費者はリサイクル包装材料を使用しておらず、包装材料がリサイクルできることも知らない。すなわち、フォワードロジスティクスにおいては多くの政策と法律を通して企業の生産プロセスを変える試みがなされているものの、リバースロジスティクスにおいては、主要な対象者である消費者の宅配便包装材料の回収に対する理解が不足し行動に結びついていない現状がある。<br>
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 宅配便は流通と消費の増加を促し、現代のサービス産業の中で重要な位置を占めている。近年、特に中国においてはeコマースの急速な発展とともに、宅配便のニーズが高まっている。中国の郵便局からの報告を見ると、2010年の宅配便の件数は23.4億件だったが、2019年には600億件に伸びている。さらに、中国における「独身の日」という24時間期間限定のショッピングフェスティバルやCOVID-19下の特別な状況においては、特にネット通販商品の大量生産、包装材料の大量使用と廃棄が発生する。中国環境保護協会の『2018年中国の宅配便包装廃棄物の特徴と管理現状の報告』<sup>[1]</sup>によると、中国の宅配便包装廃棄物の排出量は2010年の61万トンから2018年の1303万ンに増えた。宅配便包装材料廃棄による炭素排出量の割合は、埋め立て処分段階での排出が9.79%で、焼却処分段階での排出が6.68%である。また処分段階でかかる費用も増え、138.13万トンの宅配便包装廃棄物を埋め立てるためにかかった費用は9.74億元に上っている。環境汚染と処理費用の増大を前に宅配便の包装廃棄物の問題は深刻である。この問題を解決するためには、拡大生産者責任を課す政策や法律が2016年から次々と施行されている。しかし、2019年中国の郵便局<sup>[2]</sup>による宅配便サービス満足度の調査では、32.6%の消費者が包装廃棄物を普通のゴミとして廃棄していることが示されている。また、10.9%の消費者はリサイクル包装材料を使用しておらず、包装材がリサイクルできることも知らない。すなわち、フォワードロジスティクスにおいては多くの政策と法律を通して企業の生産プロセスを変える試みがなされているものの、リバースロジスティクスにおいては、主要な対象者である消費者の宅配便包装材の回収に対する理解が不足し行動に結びついていない現状がある。<br>
 
 以上の背景を踏まえて、本研究ではリバースロジスティクスの性質と消費者の宅配便包装廃棄物の回収意識・行動を研究対象として、フォワードとリバースの両方のロジスティクスの両面から包装廃棄物回収における関係性を調査し課題を抽出する。課題を分析し、消費者の回収意識や行動を向上さる有効な方策を提示することを研究全体の目的とする。
 
 以上の背景を踏まえて、本研究ではリバースロジスティクスの性質と消費者の宅配便包装廃棄物の回収意識・行動を研究対象として、フォワードとリバースの両方のロジスティクスの両面から包装廃棄物回収における関係性を調査し課題を抽出する。課題を分析し、消費者の回収意識や行動を向上さる有効な方策を提示することを研究全体の目的とする。
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==研究の方法==
 
==研究の方法==
  国内外の既往研究、文献により、リバースロジスティクスのモデルと性質を調査し、リバースロジスティクスに含まれる要素と課題を整理する。次に、宅配便包装廃棄物を対象として、リバースロジスティクスの視点から分析する。次に、宅配便包装廃棄物回収に関わる消費者の行動、心理、意欲、環境意識に関する文献調査を行い、消費者のニーズ、態度を整理し、仮説をたてる。さらに、 リバースロジスティクスの性質と消費者の回収意識・行動の観点から、アンケート調査を通じて包装廃棄物回収における両者の関係を明らかにする。<br>
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 国内外の既往研究、文献により、リバースロジスティクスのモデルと性質を調査し、リバースロジスティクスに含まれる要素と課題を整理する。次に、宅配便包装廃棄物を対象として、リバースロジスティクスの視点から分析する。次に、宅配便包装廃棄物回収に関わる消費者の行動、心理、意欲、環境意識に関する文献調査を行い、消費者のニーズ、態度を整理し、仮説をたてる。さらに、 リバースロジスティクスの性質と消費者の回収意識・行動の観点から、アンケート調査を通じて包装廃棄物回収における両者の関係を明らかにする。以上の調査に基づいて、消費者の回収意識や行動を向上させるために有効な方策を提示するのが研究の目的である。
 以上の調査に基づいて、消費者の回収意識や行動を向上させるために有効な方策を提示する。
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 本発表では、リバースロジスティクスに関する文献調査によりその性質を明らかにし、得られた視点を提示する。
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==調査結果==
 
==調査結果==
リバースロジスティクスについて<br>
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 リバースロジスティクスは、元々は商品の返品のために存在するロジスティクスだったが、現在は宅配便包装廃棄物の回収にも使われている。リバースロジスティクスの特徴として、Rogers&Tibben-Lembke<sup>[3]</sup>は、「Gatekeeping」「処理プロセス時間の制御」「情報システム」「Centralized Return Centers」「ゼロリターン」「 Remanufacture とRefurbishment」「AssetRecovery」「交渉」「ファイナンシャル・マネジメント」「アウトソーシング」を挙げている。尹<sup>[4]</sup>は「短中距離の輸送が多いこと」「小さい輸送ロット」「時間的に急がない物流」「リサイクルなどの処理施設への集中型の輸送形態」「販売のための物流と異なり営業上の秘密が少ないこと」「欠品問題がある」「リードタイムの制約がない」の7つの特性を挙げた。表現は異なるが、両者の内容はほぼ一致していることから、本研究では「輸送」「時間」「情報」「価値」の4つのキーワードを抽出し、それぞれの特徴に着目し、消費者の回収意識・行動と宅配便包装廃棄物の性質を分析する。<br>
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=== リバースロジスティクスについて ===
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==== リバースロジスティクの概念とモデル ====
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 2000年以前、中国のネットショッピングがまだ普及していなかった時、リバースロジスティクスの主要な機能は返品である。図1に示すように、返品に用いるリバースロジスティクスと宅配便輸送のフォワードロジスティクスは輸送路線に変化がない。なお、国民は宅配便包装廃棄物回収に対する意識がまだ高くない。しかし、2000年からeコマースの急速な発展とともに、ネットショッピングが活躍になった。中国は環境汚染に対する深刻く意識する。もちろん、宅配便包装廃棄物処理による汚染も含まれている。したがって、図2に示すように、回収業者はリバースロジスティクスに比重が大きくなる。廃棄物はリサイクル前に鑑別が必要なため、いくつの特性が現れた。<br>
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==== リバースロジスティクの特徴 ====
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 これらは収集の分散性、価値の逓減性、タイムリーな回収、企業間の協調の複雑性、情報伝達の逓減性という五つ特徴である。分散性については、回収業者が宅配便包装廃棄物を回収している時に、出所の分散のため、回収場所と回収時間を確定しにくい問題を直面する。さらに、タイムリー 性に関しては、リバースロジスティクスの流れが多くて複雑であることから(例えば、包装材料の回収できる数量、品質及び相応の 回収処理方法、再生産の可能性、生産された製品の行方 などの問題の確定が難しい)、フォワードロジスティクスよりも回収に時間がかかる。処理スピードが速ければ廃棄物の回収価値の逓減がコントロールできるが、時間がかかれば難しくなる。また、リバースロジスティクスは複数の対象に関連するため、効果的なインタラクションシステムを構築し、情報伝達を正確に実施する必要がある。<br>
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[[ファイル:2000年前のRLシステム.png|400px|サムネイル|右|図12000年前のRLシステム]]<br>
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=== 消費者のプレ調査について ===
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==== プレ調査の目的 ====
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 現代消費者のネットショッピング行動・消費意識と環境意識をうまく把握するために、消費者行動意識に関する既往研究と事例調査に基づき、要因を抽出し、プレ調査を施行した。<br>
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==== プレ調査の問題方向 ====
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 アンケート調査方向は3方面(消費者のフェイスシート、消費者の行動、消費者の意識)から作成した。消費者のフェイスシートは年齢、性別、学歴、職業、今の住所を含める。消費者の行動については毎月のネットショッピングの平均回数、主なショッピングサイト、主な買い物、主に受け取った宅配包装材料、宅配便の開け方、包装廃棄物の処理方法、宅配便の包装廃棄物回収活動の了解程度、自主的にリサイクル活動に参加するの可能性を含める。消費者の意識については宅配便包装廃棄物を捨てると資源の浪費や環境汚染の意識、リサイクルを行う宅配便の包装物が受け入れられる新古度、現在のゴミの分別回収/回収方法には悩むのところ、回収時のプライバシーについての配慮、宅配便包装材の再利用をサポートする理由、消費者にとっては本当に価値のあるサービスの考えを含める。<br>
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==== プレ調査の結果 ====
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 アンケート調査は、2020年10月13日(日)から10月14日(日)の期間に、中国の全国国民をターゲットとして、Webアンケート調査を実施した。図3に示すように、アンケート調査の結果、女性は28人、男性は16人、回収率は100%である。<br>
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==== プレ調査のまとめ ====
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 中国宅配便包装材において95%以上のは段ボールです。消費者は宅配便を手に入れた後、ほとんど道具を使ってきちんときれいに包装を取り外す。つまり、段ボール類の包装材料は初めて使った後、完全性を保つ。つまり、リサイクルの可能性が高いです。しかし、ただ30%の消費者が間接的または直接的に包装材をリサイクルします。文献調査によって、政府はグーリン包装材の大量使用を呼びかけていますが、60%の消費者がまだ受け取っていないあるいは全く気づかなかった。また、消費者の環境意識について、95%のは積極的な態度を持っているが、回収行為をする時には様々な悩みがある(例えばどの程度の包装廃棄物が回収されるのか、どのような回収サービスがあるのか、回収する時に個人情報が漏れるかどうか、回収場所がないです)。<br>
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宅配便包装廃棄物について<br>
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[[ファイル:消費者行動・意識のプレ調査.png|400px|サムネイル|右|図3消費者フェイスシートのプレ調査]]
 まず「静脈資源」の定義を示す。細田<sup>[5]</sup>は、使用済みの製品・部品・素材などのモノを静脈資源とし、あらゆる資源,あらゆる製品・部品・素材は多かれ少なかれ資源性と潜在汚染性という性質を持ち合わせており、グッズ性とべッズ性という経済的な性質があると述べた。静脈資源の性質をは、消費者や廃棄物処理業者のようなステークホルダーによってある程度決められる。宅配便包装廃棄物にも静脈資源としての性質が当てはまる。廃棄物処理業者に比べて、消費者は政策や法律の制約が少ないため、宅配便包装廃棄物の行先は消費者の自発的な行動に左右されるところが大きい。したがって、消費者の宅配便包装廃棄物問題の回収とリサイクルに対する認識が重要となる。<br>
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==今回の発表の結論==
消費者について<br>
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  文献 、事例、アンケート調査によると、宅配便包装廃棄物において、政府は関連するeコマースや物流企業に対して各種の政策制約を行っているが、結局はほとんどFLに大きく工夫し(輸送コストの減る、輸送時の炭素排出の減少、包装材料の制限など)、消費者の行動や意識に関する研究が少ない。これはフォワードとリバースの両方のロジスティクスに効果的な循環を形成することがうまくできない。
 消費者は宅配便の最終利用者であり、リバースロジスティクスにおける宅配便廃棄物の行き先の最初の決定者であるため、彼らの廃棄物回収意識・行動を調査する必要がある。西尾<sup>[6]</sup>は、「資源循環を推進するために、法律や規制によって排出/利用主体に制約を与えるだけでなく、消費者の価値観やライフスタイルを環境保全・資源循環型へと変化させることが不可欠である」とした。なお、太田ら<sup>[7]</sup>は、「消費者の環境意識は非常に高いが、その意識の高さが実際の消費者の行動に結びついていない」と結論づけた。すなわち、一般の製品利用者は、環境問題に対する具体的行動についての知識が乏しく、環境意識よりも経済性や手間を解消意識を優先している可能性がある。これが研究の背景にある中国の消費者の行動力の低下の原因となっている可能性がある。これらの要因を探ることが今後のアンケート調査の目的となる。<br>
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だから、宅配便包装廃棄物を回収するためにFLの性質・要素とRLの消費者の意識・行動を結びつけながら考えて設計する必要がある。
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==調査結果と今後の展望==
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==今後の展望==
 リバースロジスティクスのモデルの調査から、「輸送」、「時間」、「情報」、「価値」という4つの視点を抽出した。しかし、リバースロジスティクスは複雑なモデルであり、宅配便廃棄物回収の有効なモデルを検討するためにはさらなる文献調査が必要である。今後は、追加の調査を経て宅配便回収廃棄物回収に有効なモデルの仮説を提示し、宅配便包装廃棄物に対する消費者の回収行為と意識についてのアンケート調査を実施して、モデルを検証する。
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  現在のリバースロジスティクスシステムの研究はまだ基礎認識にあって、宅配便包装廃棄物回収の有効なモデルを検討するために、今後はこれらのリバースロジスティクスシステムの仕組みの機能、責任、相互関係、及び消費者との関係を深く調査を続ける。そして、消費者の回収行動・意識につながて設計要件を抽出し、宅配便包装廃棄物回収に有効なモデルの仮説を提示し、宅配便包装廃棄物に対する消費者の回収行為と意識についてのアンケート調査とインフラを併用して実施し、モデルを検証する。
  
  
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[1]中国環境保護協会、2018年中国の宅配便包装廃棄物の特徴と管理現状の報告、2018<br>
 
[1]中国環境保護協会、2018年中国の宅配便包装廃棄物の特徴と管理現状の報告、2018<br>
 
[2]中国郵便局、2019年中国における宅配便の満足度アンケート、2019<br>
 
[2]中国郵便局、2019年中国における宅配便の満足度アンケート、2019<br>
[3]Rogers D.S. and Tibben-Lembke R.“An examination of reverse logistics practices”, Journal of Business Logistics, Vol.22, No.2, pp.129-148. 2001<br>
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[4]尹鍾進、静脈物流に関する研究の動向と課題、Vol.12 No.3 2009<br>
 
[5]細田衛士、循環型社会における適正な静脈物流の構築、廃棄物資源循環学会誌,Vol.21, No.4, pp.205-214, 2010<br>
 
[6]西尾チヅル、消費者の環境認知とコミュニケーション、オフィス・オートメーション Vol.24,No.2、2003<br>
 
[7]太田賢祐、前田剛志、田浦俊春、消費者の価値創造行動に着目した循環型社会形成、pp.33-36、2003<br>
 
  
 
==参考文献・参考サイト==
 
==参考文献・参考サイト==
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[[Category:その他のデザイン]]

2020年10月24日 (土) 16:52時点における最新版


金楽琦/九州大学芸術工学府
JIN leqi / Graduate School of Design, Kyushu University
池田美奈子/九州大学芸術工学研究院
IKEDA Minako / Faculty of Design, Kyushu University


Keywords: Reverse logistics, Consumer conscious and behavior, Express packaging waste


Abstract
With the development of e-commerce, online shopping has become more frequent. Mass production of commodities, mass consumption and mass waste of materials have become social issues in this world. Especially China. This research improves consumers' recycling behavior through research on reverse logistics and consumers' environmental protection and recycling consciousness.



背景と目的

 宅配便は流通と消費の増加を促し、現代のサービス産業の中で重要な位置を占めている。近年、特に中国においてはeコマースの急速な発展とともに、宅配便のニーズが高まっている。中国の郵便局からの報告を見ると、2010年の宅配便の件数は23.4億件だったが、2019年には600億件に伸びている。さらに、中国における「独身の日」という24時間期間限定のショッピングフェスティバルやCOVID-19下の特別な状況においては、特にネット通販商品の大量生産、包装材料の大量使用と廃棄が発生する。中国環境保護協会の『2018年中国の宅配便包装廃棄物の特徴と管理現状の報告』[1]によると、中国の宅配便包装廃棄物の排出量は2010年の61万トンから2018年の1303万ンに増えた。宅配便包装材料廃棄による炭素排出量の割合は、埋め立て処分段階での排出が9.79%で、焼却処分段階での排出が6.68%である。また処分段階でかかる費用も増え、138.13万トンの宅配便包装廃棄物を埋め立てるためにかかった費用は9.74億元に上っている。環境汚染と処理費用の増大を前に宅配便の包装廃棄物の問題は深刻である。この問題を解決するためには、拡大生産者責任を課す政策や法律が2016年から次々と施行されている。しかし、2019年中国の郵便局[2]による宅配便サービス満足度の調査では、32.6%の消費者が包装廃棄物を普通のゴミとして廃棄していることが示されている。また、10.9%の消費者はリサイクル包装材料を使用しておらず、包装材がリサイクルできることも知らない。すなわち、フォワードロジスティクスにおいては多くの政策と法律を通して企業の生産プロセスを変える試みがなされているものの、リバースロジスティクスにおいては、主要な対象者である消費者の宅配便包装材の回収に対する理解が不足し行動に結びついていない現状がある。
 以上の背景を踏まえて、本研究ではリバースロジスティクスの性質と消費者の宅配便包装廃棄物の回収意識・行動を研究対象として、フォワードとリバースの両方のロジスティクスの両面から包装廃棄物回収における関係性を調査し課題を抽出する。課題を分析し、消費者の回収意識や行動を向上さる有効な方策を提示することを研究全体の目的とする。


研究の方法

 国内外の既往研究、文献により、リバースロジスティクスのモデルと性質を調査し、リバースロジスティクスに含まれる要素と課題を整理する。次に、宅配便包装廃棄物を対象として、リバースロジスティクスの視点から分析する。次に、宅配便包装廃棄物回収に関わる消費者の行動、心理、意欲、環境意識に関する文献調査を行い、消費者のニーズ、態度を整理し、仮説をたてる。さらに、 リバースロジスティクスの性質と消費者の回収意識・行動の観点から、アンケート調査を通じて包装廃棄物回収における両者の関係を明らかにする。以上の調査に基づいて、消費者の回収意識や行動を向上させるために有効な方策を提示するのが研究の目的である。  本発表では、リバースロジスティクスに関する文献調査によりその性質を明らかにし、得られた視点を提示する。


調査結果

リバースロジスティクスについて


リバースロジスティクの概念とモデル

 2000年以前、中国のネットショッピングがまだ普及していなかった時、リバースロジスティクスの主要な機能は返品である。図1に示すように、返品に用いるリバースロジスティクスと宅配便輸送のフォワードロジスティクスは輸送路線に変化がない。なお、国民は宅配便包装廃棄物回収に対する意識がまだ高くない。しかし、2000年からeコマースの急速な発展とともに、ネットショッピングが活躍になった。中国は環境汚染に対する深刻く意識する。もちろん、宅配便包装廃棄物処理による汚染も含まれている。したがって、図2に示すように、回収業者はリバースロジスティクスに比重が大きくなる。廃棄物はリサイクル前に鑑別が必要なため、いくつの特性が現れた。

リバースロジスティクの特徴

 これらは収集の分散性、価値の逓減性、タイムリーな回収、企業間の協調の複雑性、情報伝達の逓減性という五つ特徴である。分散性については、回収業者が宅配便包装廃棄物を回収している時に、出所の分散のため、回収場所と回収時間を確定しにくい問題を直面する。さらに、タイムリー 性に関しては、リバースロジスティクスの流れが多くて複雑であることから(例えば、包装材料の回収できる数量、品質及び相応の 回収処理方法、再生産の可能性、生産された製品の行方 などの問題の確定が難しい)、フォワードロジスティクスよりも回収に時間がかかる。処理スピードが速ければ廃棄物の回収価値の逓減がコントロールできるが、時間がかかれば難しくなる。また、リバースロジスティクスは複数の対象に関連するため、効果的なインタラクションシステムを構築し、情報伝達を正確に実施する必要がある。

図12000年前のRLシステム


図22000年以後のRLシステム




消費者のプレ調査について


プレ調査の目的

 現代消費者のネットショッピング行動・消費意識と環境意識をうまく把握するために、消費者行動意識に関する既往研究と事例調査に基づき、要因を抽出し、プレ調査を施行した。

プレ調査の問題方向

 アンケート調査方向は3方面(消費者のフェイスシート、消費者の行動、消費者の意識)から作成した。消費者のフェイスシートは年齢、性別、学歴、職業、今の住所を含める。消費者の行動については毎月のネットショッピングの平均回数、主なショッピングサイト、主な買い物、主に受け取った宅配包装材料、宅配便の開け方、包装廃棄物の処理方法、宅配便の包装廃棄物回収活動の了解程度、自主的にリサイクル活動に参加するの可能性を含める。消費者の意識については宅配便包装廃棄物を捨てると資源の浪費や環境汚染の意識、リサイクルを行う宅配便の包装物が受け入れられる新古度、現在のゴミの分別回収/回収方法には悩むのところ、回収時のプライバシーについての配慮、宅配便包装材の再利用をサポートする理由、消費者にとっては本当に価値のあるサービスの考えを含める。

プレ調査の結果

 アンケート調査は、2020年10月13日(日)から10月14日(日)の期間に、中国の全国国民をターゲットとして、Webアンケート調査を実施した。図3に示すように、アンケート調査の結果、女性は28人、男性は16人、回収率は100%である。

プレ調査のまとめ

 中国宅配便包装材において95%以上のは段ボールです。消費者は宅配便を手に入れた後、ほとんど道具を使ってきちんときれいに包装を取り外す。つまり、段ボール類の包装材料は初めて使った後、完全性を保つ。つまり、リサイクルの可能性が高いです。しかし、ただ30%の消費者が間接的または直接的に包装材をリサイクルします。文献調査によって、政府はグーリン包装材の大量使用を呼びかけていますが、60%の消費者がまだ受け取っていないあるいは全く気づかなかった。また、消費者の環境意識について、95%のは積極的な態度を持っているが、回収行為をする時には様々な悩みがある(例えばどの程度の包装廃棄物が回収されるのか、どのような回収サービスがあるのか、回収する時に個人情報が漏れるかどうか、回収場所がないです)。


図3消費者フェイスシートのプレ調査


今回の発表の結論

  文献 、事例、アンケート調査によると、宅配便包装廃棄物において、政府は関連するeコマースや物流企業に対して各種の政策制約を行っているが、結局はほとんどFLに大きく工夫し(輸送コストの減る、輸送時の炭素排出の減少、包装材料の制限など)、消費者の行動や意識に関する研究が少ない。これはフォワードとリバースの両方のロジスティクスに効果的な循環を形成することがうまくできない。 だから、宅配便包装廃棄物を回収するためにFLの性質・要素とRLの消費者の意識・行動を結びつけながら考えて設計する必要がある。


今後の展望

  現在のリバースロジスティクスシステムの研究はまだ基礎認識にあって、宅配便包装廃棄物回収の有効なモデルを検討するために、今後はこれらのリバースロジスティクスシステムの仕組みの機能、責任、相互関係、及び消費者との関係を深く調査を続ける。そして、消費者の回収行動・意識につながて設計要件を抽出し、宅配便包装廃棄物回収に有効なモデルの仮説を提示し、宅配便包装廃棄物に対する消費者の回収行為と意識についてのアンケート調査とインフラを併用して実施し、モデルを検証する。


脚注

[1]中国環境保護協会、2018年中国の宅配便包装廃棄物の特徴と管理現状の報告、2018
[2]中国郵便局、2019年中国における宅配便の満足度アンケート、2019


参考文献・参考サイト