「郷土玩具の文化継承を目的とした地域コミュニティの構築」の版間の差分
(→報告) |
|||
(2人の利用者による、間の25版が非表示) | |||
1行目: | 1行目: | ||
− | |||
− | + | ; 西口 顕一 / 大分県立芸術文化短期大学美術科 | |
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
+ | ''Keywords: Visual Design,Product Design, Social Design,Community Design'' | ||
− | |||
− | |||
− | + | ==「浜の市」「一文人形」について== | |
+ | [[File:ichimon_1.jpg|thumb|right|200px|図1.柞原八幡宮(仮宮)]] | ||
+ | [[File:ichimon_3.jpg|thumb|right|200px|図2.豊泉堂で造られる一文人形]] | ||
+ | 大分市西大分地区には、柞原八幡宮の仲秋祭「浜の市」という伝統行事があり、鎌倉時代に始まり江戸時代には「西日本三大市」と称されたが、現在は担い手不足等により縮小・衰退傾向にある。その浜の市で江戸時代より販売されていた郷土玩具「一文人形」 は、大正時代に一度途絶えている。戦後復元され、現在は一軒(別府 豊泉堂)のみが製造しているが、需要が減退し製造中止の危機にある。(図1)(図2) | ||
+ | {{clear}} | ||
+ | ==研究と取り組み == | ||
+ | [[File:ichimon_7.jpg|thumb|right|200px|図3.ワークショップ告知ビジュアル]] | ||
+ | 本研究は、①地域資源として「浜の市・一文人形」の文化継承 ②「一文人形」の歴史と造形における各調査 ③「一文人形」をモチーフとしたデザイン的施策による文化財存続の模索を目的とする。 今回は上記①を課題として、浜の市にて「一文人形の絵付け体験ワークショップ」を実施した。(図3) | ||
+ | {{clear}} | ||
− | == | + | ==ワークショップについて == |
− | + | 2019年9月16日 (月・祝) 12〜14 時に、境内の神楽殿にて実施。柞原八幡社・禰宜永沢氏による講話と、宮脇氏(人形作家)が手掛けた素焼きを土台として絵付け体験を実施。 事前予約制で定員20名程度募集し、17名が参加した。作家からは、既存のデザインに捉われず自由に絵付けをして欲しいとの希望があったため、年齢を問わず各人各様の表現、 描き方で制作した。 | |
− | |||
− | |||
− | == | + | ==ワークショップの成果 == |
− | + | [[File:ichimon_5.jpg|thumb|right|200px|図4.ワークショップの様子]] | |
+ | [[File:ichimon_6.jpg|thumb|right|200px|図5.絵付けを体験する参加者]] | ||
− | + | <家族層の声>「子どもに地域の文化を体験させる機会ができて嬉しい」「いろいろな色で自由に描けて古いイメージが変わった」<br> | |
− | + | <年配層の声>「昔から見ていたので懐かしい」「作る行程を知ることができて興味深い」<br> | |
+ | <祭の主催者・自治体の声>「イベントが地域住民の出し物に偏るなか、祭にまつわる企画で意義がある」「来年も開催して欲しい」<br> | ||
+ | 参加者に対するヒヤリングの結果上記の声があり、 地域住民が自分の住む町の伝統文化に触れ、郷土愛を育むきっかけになったのではないかと推測する。(図4)(図5) | ||
+ | {{clear}} | ||
− | == | + | ==今後の展開== |
− | + | ①地域資源として「浜の市・一文人形」の文化継承について <br> | |
− | + | ワークショップの募集及び実施方法を改善し、ワークショップ・展示等を主催者と共に継続して実施する。 <br> | |
− | |||
− | |||
− | + | ②「一文人形」の歴史と造形に関する調査について<br> | |
− | + | 大分市歴史資料館と連携し、大正時代以前のものについて、 誰が何をモチーフにしていたか、素材・造形の特徴等を調査 し、「浜の市・一文人形」の定義を明らかにする。 <br> | |
− | |||
− | + | ③「一文人形」をモチーフとしたデザイン的施策による文化財的存続の模索について<br> | |
− | + | ②の調査から「一文人形」が地域のアイコンやお土産等のビジュアルモチーフに成り得ないかを検証・企画提案する<br> | |
− | |||
− | |||
− | |||
+ | ==参考文献・参考サイト == | ||
+ | 神さまの森国指定重要文化財の建造物豊後一宮柞原八幡宮(2013) 柞原八幡宮奉賛会<br> | ||
+ | 日本全国郷土玩具バーチャルミュージアム民芸館-大分県篇・第1回-(1999)http://www.asahi-net.or.jp/~SA9S-HND/agal-978-10.html 草の根工房・菜根庵<br> | ||
+ | 続々よみがえる郷土玩具 別府の工房「豊泉堂」(2019)https://www.asahi.com/articles/ASM935QZLM93TPJB00W.html 朝日新聞 | ||
{{clear}} | {{clear}} | ||
51行目: | 52行目: | ||
==外部リンク== | ==外部リンク== | ||
− | + | '''プロジェクト紹介サイト''' https://www.oita-pjc.ac.jp/archives/2019/vd_ichimon.html | |
<br> | <br> | ||
<br> | <br> | ||
− | [[Category: | + | [[Category:その他のデザイン]] |
2020年10月16日 (金) 20:47時点における最新版
- 西口 顕一 / 大分県立芸術文化短期大学美術科
Keywords: Visual Design,Product Design, Social Design,Community Design
「浜の市」「一文人形」について
大分市西大分地区には、柞原八幡宮の仲秋祭「浜の市」という伝統行事があり、鎌倉時代に始まり江戸時代には「西日本三大市」と称されたが、現在は担い手不足等により縮小・衰退傾向にある。その浜の市で江戸時代より販売されていた郷土玩具「一文人形」 は、大正時代に一度途絶えている。戦後復元され、現在は一軒(別府 豊泉堂)のみが製造しているが、需要が減退し製造中止の危機にある。(図1)(図2)
研究と取り組み
本研究は、①地域資源として「浜の市・一文人形」の文化継承 ②「一文人形」の歴史と造形における各調査 ③「一文人形」をモチーフとしたデザイン的施策による文化財存続の模索を目的とする。 今回は上記①を課題として、浜の市にて「一文人形の絵付け体験ワークショップ」を実施した。(図3)
ワークショップについて
2019年9月16日 (月・祝) 12〜14 時に、境内の神楽殿にて実施。柞原八幡社・禰宜永沢氏による講話と、宮脇氏(人形作家)が手掛けた素焼きを土台として絵付け体験を実施。 事前予約制で定員20名程度募集し、17名が参加した。作家からは、既存のデザインに捉われず自由に絵付けをして欲しいとの希望があったため、年齢を問わず各人各様の表現、 描き方で制作した。
ワークショップの成果
<家族層の声>「子どもに地域の文化を体験させる機会ができて嬉しい」「いろいろな色で自由に描けて古いイメージが変わった」
<年配層の声>「昔から見ていたので懐かしい」「作る行程を知ることができて興味深い」
<祭の主催者・自治体の声>「イベントが地域住民の出し物に偏るなか、祭にまつわる企画で意義がある」「来年も開催して欲しい」
参加者に対するヒヤリングの結果上記の声があり、 地域住民が自分の住む町の伝統文化に触れ、郷土愛を育むきっかけになったのではないかと推測する。(図4)(図5)
今後の展開
①地域資源として「浜の市・一文人形」の文化継承について
ワークショップの募集及び実施方法を改善し、ワークショップ・展示等を主催者と共に継続して実施する。
②「一文人形」の歴史と造形に関する調査について
大分市歴史資料館と連携し、大正時代以前のものについて、 誰が何をモチーフにしていたか、素材・造形の特徴等を調査 し、「浜の市・一文人形」の定義を明らかにする。
③「一文人形」をモチーフとしたデザイン的施策による文化財的存続の模索について
②の調査から「一文人形」が地域のアイコンやお土産等のビジュアルモチーフに成り得ないかを検証・企画提案する
参考文献・参考サイト
神さまの森国指定重要文化財の建造物豊後一宮柞原八幡宮(2013) 柞原八幡宮奉賛会
日本全国郷土玩具バーチャルミュージアム民芸館-大分県篇・第1回-(1999)http://www.asahi-net.or.jp/~SA9S-HND/agal-978-10.html 草の根工房・菜根庵
続々よみがえる郷土玩具 別府の工房「豊泉堂」(2019)https://www.asahi.com/articles/ASM935QZLM93TPJB00W.html 朝日新聞
外部リンク
プロジェクト紹介サイト https://www.oita-pjc.ac.jp/archives/2019/vd_ichimon.html