「日中若年層における国内観光アプリの比較研究」の版間の差分
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| − | ; | + | ; 張翼 九州大学 芸術工学府デザインストラテジー専攻 |
: ZHANG Yi / Graduate School of Design, Kyushu University | : ZHANG Yi / Graduate School of Design, Kyushu University | ||
| − | ; | + | ; 都甲康至 九州大学 芸術工学府デザインストラテジー専攻 |
: TOGO Yasushi / Graduate School of Design, Kyushu University | : TOGO Yasushi / Graduate School of Design, Kyushu University | ||
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; Abstract | ; Abstract | ||
| − | : | + | : The purpose of this study is to clarify the travel conditions and app usage behavior of young people in Japan and China, and to clarify the similarities and differences regarding the functions and contents of apps used by young people. Through user research, it was found that young people in Japan and China have a large difference in "reservation of accommodation, food , tickets, etc." , and that the functions and contents are also different between Japanese version and Chinese version of the same app. |
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| + | ==研究の背景と目的== | ||
| + | 日本観光庁の「旅行・観光消費動向調査（2019）」と中国統計局の「2019年国民経済と社会発展統計公報」によると、2019年に、日本と中国の国内延べ旅行者数の増加とともに、国内消費額も増加した2)。大きな流れでは、国内観光旅行への意欲は衰えていないと思われていた。2020年に、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国境閉鎖や国際線フライトの運航停止を行い、海外旅行より、まずは国内旅行から需要が少しずつ回復すると予想されていた。 | ||
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| + | また、観光デジタル化（JTB総合研究所,2019）がここ数年で日進月歩の発展を遂げた。新しい技術やサービスの広がりとともに、旅行スタイルも変化していった。インターネットを活用し、観光のウェブサイトやアプリなどを通じ、情報収集や情報発信手段にさまざまな可能性があった。JTB総合研究所の「進化し領域を拡大する日本人の国内旅行（2019）」によると、若い世代が上の世代により、スマートフォンを通じ、旅行先の情報を得られるようになったという比率は１３％高かった。 | ||
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| + | 本研究では、現在の若年層（20歳〜25歳）の国内旅行と観光アプリ（以下、アプリ）利用に注目し、彼らの旅行実態やアプリの使用実態を明らかにすることと、彼らが利用するアプリの機能とコンテンツに関する共通点と相違点を明らかにすることを研究の目的とした。 | ||
| − | == | + | ==調査方法== |
| − | + | 研究の目的を達成するために２つの調査を行った。 | |
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| + | 調査1としては、若年層の旅行やアプリの使用実態を明らかにするために、アンケート調査とインタービュー調査を行った（ユーザー調査）。 | ||
| − | + | 前者のアンケート調査については、日本24人と中国人52人を対象にインターネットアンケート調査を実施した。調査内容については、国内と海外に行った回数、情報収集手段、旅行に利用したアプリ名と利用目的などであった。後者のインタビュー調査については、日本人3人と中国人8人を対象に半構造化インタービュー調査を実施し、観光アプリ利用に関する問題点を旅行の段階ごとに整理した。調査内容については、よく使っている観光アプリとその利用頻度、使い始めたきっかけ、利用シナリオ、使いやすいところと使いにくいとこるなどであった。 | |
| − | + | [[ファイル:張翼 調査２.jpg|thumb|right|600px|図1：アプリの分析]] | |
| + | 調査2としては、若年層が利用するアプリの機能とコンテンツに関する共通点と相違点を明らかにするために、調査１の分析結果から得られた観光アプリの一つを対象に、デスクリサーチを行った。 | ||
| − | + | 研究対象アプリとして、トリップアドバイザーを選定した。2019年、トリップアドバイザーは日本「旅行・交通カテゴリないウェブサイトのスマートフォンからの閲覧者数」ランキングに第四位に並んでおり、強みであるリアルなクチコミに加え、旅行系メディアとの提携なども加わり、幅広い地域情報も網羅したオンラインの旅行情報プラットフォームへと変貌していた。 | |
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| − | + | トリップアドバイザースマホ用の日本版と中国版の違いをまず確認し、トリップアドバイザーを「アプリ機能とコンテンツの比較」、「機能とコンテンツの相違点の整理」、「相違点のまとめ」の三つのステップを踏んで比較した。(図1) | |
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| + | 1.調査結果1（アンケート調査結果） | ||
| + | [[ファイル:張翼 アプリリスト1.png|thumb|right|800px|表1：アンケート調査結果：使用したアプリの統計]] | ||
| + | アンケート調査結果から、日本人と中国人若年層の旅行実態については、以下のような結果が分かった。日本人若年層が中国人若年層より、国内旅行に行った回数が多い、海外旅行に行った回数が少なかった。日本人調査対象者が、2019年に年間国内旅行に行った平均回数は3.7回になり、海外旅行に行った平均回数は0.4回となった。それに対して、中国人調査対象者が、2019年に年間国内旅行に行った平均回数は2.5回になり、海外旅行に行った平均回数は1.1回となった。 | ||
| − | + | 旅行を計画した時に利用した情報収集手段については、中国人若年層がスマホなどのアプリを利用した割合が高かったという結果が分かった。日本人若年層が「旅行会社や旅行先のホームページを利用した」の割合と「スマホなどのアプリを利用した」の割合はほぼ同じ、3割以上に占めした。中国人若年層が、「旅行会社や旅行先のホームページを利用した」の割合は３割超え、「スマホなどのアプリを利用した」の割合は6割以上に占めした。 | |
| + | アプリの使用実態については、観光の各段階における、調査対象者が使用したアプリを表1に示した。日本人若年層と中国人若年層が、観光旅行の各段階によく使用した共通アプリとしては、booking.com、tripadvisor、agodaがあることが分かった。 | ||
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| + | 2. 調査結果1（インタビュー調査結果） | ||
| − | + | 旅行前の段階に関しては、アプリより、ブラウザを利用した日本調査者が多い、情報収集にアプリを利用した中国調査者が多いことが違うところであった。また、旅行計画を立てるために複数のアプリを利用していることは両者の一致した点であった。旅行中の段階に関しては、両国の若年層は交通機関や宿泊施設の同時予約を希望することと料金を比較するために複数のアプリを利用することが同じところであった。しかし、予約、確認と決済3つの段階における方法と流れについて、飲食や宿泊やチケットなどのアプリにおいて日中の違いが見られた。そして旅行中の情報検索については、日本人対象者が交通アプリを利用した割合は非常に高い、それに対して、中国対象者が総合アプリを利用する割合が高かった。旅行後の段階に関しては、両国の若年層旅行者は自分自身の情報発信をしたくないことが多かった。 | |
| − | + | インタービュー調査結果から、国内観光旅行のプロセスの中で、一番差が大きいのは「宿泊、飲食、チケットなどの予約」行動であった。そしてアンケート調査結果から、日本人と中国人若年層の旅行段階ごとに、よく使用する観光アプリとして、日本のじゃらん、ブッキング、トリップアドバイザー；中国の大衆点評、Agoda、Airbnb、トリップアドバイザーなどがあることがわかった。その中で、日本人と中国人ともに、「トリップアドバイザー」というアプリが最も使われていることがわかった。そこで本稿では、「宿泊、飲食、チケットなどの予約」行動における、「トリップアドバイザー」の日本版アプリと中国版アプリについて、機能とコンテンツを比較分析した。 | |
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| + | 3. 調査結果2（「トリップアドバイザー」の機能とコンテンツに関する比較分析） | ||
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| + | 「トリップアドバイザー」の日本版と中国版について機能とコンテンツを比較分析し、共通点と相違点を表2に示した。機能に関する共通点としては、投稿及び周辺の観光スポットの勧め方、プロフィールの編集などがあった。コンテンツに関する共通点としては、旅リスト、個人情報などがあった。 | ||
| − | + | 機能に関する相違点としては、目的地の選び・分類方法、支払い・確認方法などがあった。コンテンツに関する相違点としては、各国ごとの特別編集内容、ホテルの絞り出す条件、おすすめの投稿及び観光スポット内容などがあった。 | |
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==考察== | ==考察== | ||
| − | + | 1.日本人と中国人の若年層の旅行実態を比べると、日本人若年層が国内旅行に行った回数が多い、情報収集にアプリとウェブサイトを使用した割合が高かった。一方、中国人若年層が海外旅行に行った回数が多い、情報収集にスマホアプリを使用した割合が他の手段より高かった。 | |
| − | + | 2.アプリの使用実態については、差が見られるのは「飲食や宿泊やチケット」行動であった。日本人若年層がアプリより、電話で予約・確認する調査対象者が多い、中国人調査対象者がアプリだけで予約が完了できた。 | |
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| − | == | + | 3.日本版と中国版のトリップアドバイザーを比較してみると、次のようなことがわかった。 |
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| + | 日本版のトリップアドバイザーは、予約機能を一番重視し、ホームページでおすすめなどの内容を中心としてユーザーに展示した。支払い方法について、支払い方法を選ばずに、デフォルト支払い方法（クレジットカードのみ）の情報を入力し、予約内容を確認して予約を完了できた。それに対して、中国版のトリップアドバイザーはアプリの内容を重視し、アワード受賞・評価ランキング及びUGC（ユーザー生成コンテンツ）を中心として運営していた。支払い方法について、中国はWechatpay、Alipay及び店頭払いの三つの支払い方法が利用できた。 | ||
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| + | ==結論== | ||
| + | 本研究を通して、日中若年層が国内観光に利用するアプリの現状を把握し、利用特徴を抽出した。若年層が利用するアプリの中からトリップアドバイザーを具体的な例をとして、アプリの相違点と共通点をアプリの機能とコンテンツの面から比較した。同じアプリの日本版と中国版を比べ、機能とコンテンツも違うという結果が分かったが、違いが生まれる原因について、今後まだ引き続き調査を深く行きたいと考えた。 | ||
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| + | アプリは日本或いは中国市場へ進出する際に、国ごとのターゲットユーザーのニーズとプロダクトの目標、どのような価値を届ける、ユーザーが抱えている課題を理解するにはリサーチと分析は不可欠だと思った。アプリプロダクトのローカライズは言語を通訳だけではない、市場に加え、ユーザーとプロダクトを理解した上で、世界ための戦略を立て、より一層リーチできるようになると思われていた。日本・中国ユーザー向けて、利用者の特徴に合わせ、サイト・アプリの機能や使いやすさを引き続き向上することは、アプリの一つの課題と考えていた。 | ||
==参考文献・参考サイト== | ==参考文献・参考サイト== | ||
| − | *観光庁 旅行・観光消費動向調・2019年年間値(確報) | + | *1.観光庁 旅行・観光消費動向調・2019年年間値(確報) |
| − | *中国統計局 「2019年国民経済と社会発展統計公報」 | + | *2.中国統計局 「2019年国民経済と社会発展統計公報」 |
| − | *JTB総合研究所 進化し領域を拡大する日本人の国内旅行（2019） | + | *3.JTB総合研究所 進化し領域を拡大する日本人の国内旅行（2019） |
| − | *傅翔ら「AI ご当地観光ナビアプリの研究開発」（2019） | + | *4.傅翔ら「AI ご当地観光ナビアプリの研究開発」（2019） |
| − | *観光政策審議会 「今後の観光政策の基本的な方向について」（答申第39号、1995年6月2日）」 | + | *5.観光政策審議会 「今後の観光政策の基本的な方向について」（答申第39号、1995年6月2日）」 |
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| − | [[Category: | + | [[Category:その他のデザイン]] |
2020年10月24日 (土) 17:43時点における最新版
- A Study on Japan-China Comparison of Information Applications Used by Young People for Domestic Tourism -
- 張翼 九州大学 芸術工学府デザインストラテジー専攻
- ZHANG Yi / Graduate School of Design, Kyushu University
- 都甲康至 九州大学 芸術工学府デザインストラテジー専攻
- TOGO Yasushi / Graduate School of Design, Kyushu University
Keywords: Service Design, Information Design, Travel Application
- Abstract
- The purpose of this study is to clarify the travel conditions and app usage behavior of young people in Japan and China, and to clarify the similarities and differences regarding the functions and contents of apps used by young people. Through user research, it was found that young people in Japan and China have a large difference in "reservation of accommodation, food , tickets, etc." , and that the functions and contents are also different between Japanese version and Chinese version of the same app.
研究の背景と目的
日本観光庁の「旅行・観光消費動向調査（2019）」と中国統計局の「2019年国民経済と社会発展統計公報」によると、2019年に、日本と中国の国内延べ旅行者数の増加とともに、国内消費額も増加した2)。大きな流れでは、国内観光旅行への意欲は衰えていないと思われていた。2020年に、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国境閉鎖や国際線フライトの運航停止を行い、海外旅行より、まずは国内旅行から需要が少しずつ回復すると予想されていた。
また、観光デジタル化（JTB総合研究所,2019）がここ数年で日進月歩の発展を遂げた。新しい技術やサービスの広がりとともに、旅行スタイルも変化していった。インターネットを活用し、観光のウェブサイトやアプリなどを通じ、情報収集や情報発信手段にさまざまな可能性があった。JTB総合研究所の「進化し領域を拡大する日本人の国内旅行（2019）」によると、若い世代が上の世代により、スマートフォンを通じ、旅行先の情報を得られるようになったという比率は１３％高かった。
本研究では、現在の若年層（20歳〜25歳）の国内旅行と観光アプリ（以下、アプリ）利用に注目し、彼らの旅行実態やアプリの使用実態を明らかにすることと、彼らが利用するアプリの機能とコンテンツに関する共通点と相違点を明らかにすることを研究の目的とした。
調査方法
研究の目的を達成するために２つの調査を行った。
調査1としては、若年層の旅行やアプリの使用実態を明らかにするために、アンケート調査とインタービュー調査を行った（ユーザー調査）。
前者のアンケート調査については、日本24人と中国人52人を対象にインターネットアンケート調査を実施した。調査内容については、国内と海外に行った回数、情報収集手段、旅行に利用したアプリ名と利用目的などであった。後者のインタビュー調査については、日本人3人と中国人8人を対象に半構造化インタービュー調査を実施し、観光アプリ利用に関する問題点を旅行の段階ごとに整理した。調査内容については、よく使っている観光アプリとその利用頻度、使い始めたきっかけ、利用シナリオ、使いやすいところと使いにくいとこるなどであった。
調査2としては、若年層が利用するアプリの機能とコンテンツに関する共通点と相違点を明らかにするために、調査１の分析結果から得られた観光アプリの一つを対象に、デスクリサーチを行った。
研究対象アプリとして、トリップアドバイザーを選定した。2019年、トリップアドバイザーは日本「旅行・交通カテゴリないウェブサイトのスマートフォンからの閲覧者数」ランキングに第四位に並んでおり、強みであるリアルなクチコミに加え、旅行系メディアとの提携なども加わり、幅広い地域情報も網羅したオンラインの旅行情報プラットフォームへと変貌していた。
トリップアドバイザースマホ用の日本版と中国版の違いをまず確認し、トリップアドバイザーを「アプリ機能とコンテンツの比較」、「機能とコンテンツの相違点の整理」、「相違点のまとめ」の三つのステップを踏んで比較した。(図1)
調査結果
1.調査結果1（アンケート調査結果）
アンケート調査結果から、日本人と中国人若年層の旅行実態については、以下のような結果が分かった。日本人若年層が中国人若年層より、国内旅行に行った回数が多い、海外旅行に行った回数が少なかった。日本人調査対象者が、2019年に年間国内旅行に行った平均回数は3.7回になり、海外旅行に行った平均回数は0.4回となった。それに対して、中国人調査対象者が、2019年に年間国内旅行に行った平均回数は2.5回になり、海外旅行に行った平均回数は1.1回となった。
旅行を計画した時に利用した情報収集手段については、中国人若年層がスマホなどのアプリを利用した割合が高かったという結果が分かった。日本人若年層が「旅行会社や旅行先のホームページを利用した」の割合と「スマホなどのアプリを利用した」の割合はほぼ同じ、3割以上に占めした。中国人若年層が、「旅行会社や旅行先のホームページを利用した」の割合は３割超え、「スマホなどのアプリを利用した」の割合は6割以上に占めした。
アプリの使用実態については、観光の各段階における、調査対象者が使用したアプリを表1に示した。日本人若年層と中国人若年層が、観光旅行の各段階によく使用した共通アプリとしては、booking.com、tripadvisor、agodaがあることが分かった。
2. 調査結果1（インタビュー調査結果）
旅行前の段階に関しては、アプリより、ブラウザを利用した日本調査者が多い、情報収集にアプリを利用した中国調査者が多いことが違うところであった。また、旅行計画を立てるために複数のアプリを利用していることは両者の一致した点であった。旅行中の段階に関しては、両国の若年層は交通機関や宿泊施設の同時予約を希望することと料金を比較するために複数のアプリを利用することが同じところであった。しかし、予約、確認と決済3つの段階における方法と流れについて、飲食や宿泊やチケットなどのアプリにおいて日中の違いが見られた。そして旅行中の情報検索については、日本人対象者が交通アプリを利用した割合は非常に高い、それに対して、中国対象者が総合アプリを利用する割合が高かった。旅行後の段階に関しては、両国の若年層旅行者は自分自身の情報発信をしたくないことが多かった。
インタービュー調査結果から、国内観光旅行のプロセスの中で、一番差が大きいのは「宿泊、飲食、チケットなどの予約」行動であった。そしてアンケート調査結果から、日本人と中国人若年層の旅行段階ごとに、よく使用する観光アプリとして、日本のじゃらん、ブッキング、トリップアドバイザー；中国の大衆点評、Agoda、Airbnb、トリップアドバイザーなどがあることがわかった。その中で、日本人と中国人ともに、「トリップアドバイザー」というアプリが最も使われていることがわかった。そこで本稿では、「宿泊、飲食、チケットなどの予約」行動における、「トリップアドバイザー」の日本版アプリと中国版アプリについて、機能とコンテンツを比較分析した。
3. 調査結果2（「トリップアドバイザー」の機能とコンテンツに関する比較分析） 「トリップアドバイザー」の日本版と中国版について機能とコンテンツを比較分析し、共通点と相違点を表2に示した。機能に関する共通点としては、投稿及び周辺の観光スポットの勧め方、プロフィールの編集などがあった。コンテンツに関する共通点としては、旅リスト、個人情報などがあった。
機能に関する相違点としては、目的地の選び・分類方法、支払い・確認方法などがあった。コンテンツに関する相違点としては、各国ごとの特別編集内容、ホテルの絞り出す条件、おすすめの投稿及び観光スポット内容などがあった。
考察
1.日本人と中国人の若年層の旅行実態を比べると、日本人若年層が国内旅行に行った回数が多い、情報収集にアプリとウェブサイトを使用した割合が高かった。一方、中国人若年層が海外旅行に行った回数が多い、情報収集にスマホアプリを使用した割合が他の手段より高かった。
2.アプリの使用実態については、差が見られるのは「飲食や宿泊やチケット」行動であった。日本人若年層がアプリより、電話で予約・確認する調査対象者が多い、中国人調査対象者がアプリだけで予約が完了できた。
3.日本版と中国版のトリップアドバイザーを比較してみると、次のようなことがわかった。
日本版のトリップアドバイザーは、予約機能を一番重視し、ホームページでおすすめなどの内容を中心としてユーザーに展示した。支払い方法について、支払い方法を選ばずに、デフォルト支払い方法（クレジットカードのみ）の情報を入力し、予約内容を確認して予約を完了できた。それに対して、中国版のトリップアドバイザーはアプリの内容を重視し、アワード受賞・評価ランキング及びUGC（ユーザー生成コンテンツ）を中心として運営していた。支払い方法について、中国はWechatpay、Alipay及び店頭払いの三つの支払い方法が利用できた。
結論
本研究を通して、日中若年層が国内観光に利用するアプリの現状を把握し、利用特徴を抽出した。若年層が利用するアプリの中からトリップアドバイザーを具体的な例をとして、アプリの相違点と共通点をアプリの機能とコンテンツの面から比較した。同じアプリの日本版と中国版を比べ、機能とコンテンツも違うという結果が分かったが、違いが生まれる原因について、今後まだ引き続き調査を深く行きたいと考えた。
アプリは日本或いは中国市場へ進出する際に、国ごとのターゲットユーザーのニーズとプロダクトの目標、どのような価値を届ける、ユーザーが抱えている課題を理解するにはリサーチと分析は不可欠だと思った。アプリプロダクトのローカライズは言語を通訳だけではない、市場に加え、ユーザーとプロダクトを理解した上で、世界ための戦略を立て、より一層リーチできるようになると思われていた。日本・中国ユーザー向けて、利用者の特徴に合わせ、サイト・アプリの機能や使いやすさを引き続き向上することは、アプリの一つの課題と考えていた。
参考文献・参考サイト
- 1.観光庁 旅行・観光消費動向調・2019年年間値(確報)
- 2.中国統計局 「2019年国民経済と社会発展統計公報」
- 3.JTB総合研究所 進化し領域を拡大する日本人の国内旅行（2019）
- 4.傅翔ら「AI ご当地観光ナビアプリの研究開発」（2019）
- 5.観光政策審議会 「今後の観光政策の基本的な方向について」（答申第39号、1995年6月2日）」
