「昆虫食を日常に取り込むデザイン的アプローチ」の版間の差分
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2020年10月16日 (金) 15:20時点における版
- 身体的支援機能・知的支援機能・精神的支援機能・技術的支援機能の観点から -
- 加治 幸樹 / 九州大学 芸術工学部
- 山野 和磨 / 九州大学 芸術工学部
Keywords: Insect Food, Speculative Design
目次
背景と目的
サービスは、レシーバー(サービスの需要者)の「状態変化」を引き起こすことであり、コンテンツ(内容)およびチャネル(方法)はその実現手段といえる[1]。また、実現手段の方向性として、身体的支援・知的支援・精神的支援・技術的支援の4つの支援機能に分けて考えることができる[2]。そこで本研究では、既存のモノが提供する機能のありようについて、4つの支援機能の観点から整理し、「新たな付加価値を持つモノ」を提案することを目的とする。
なお、本発表は、九州大学芸術工学工業設計学科4年前期に開設される「工業設計プロジェクト研究」のプロセスおよび成果の一端を報告するものである。
現状の把握とテーマの選定
用具に関わる支援機能の調査
身の回りの製品やサービスを4つの支援機能の観点から分類した(図1)。40程度のサンプルを収集する際に、用具を含めることを意識した。それらの中で、子どもが触れることが多い虫の捕獲器には、用具であることから精神的支援、知的支援がほとんど施されていないことが知られた。
用具による捕獲対象の昆虫への対象の展開
捕獲器だけでは対象が広がり難いことから、捕獲の対象である昆虫を起点として遊撃的にデザイン提案の対象を広げた。現代生活では、一部のペット的飼育や蒐集目的以外では害虫として駆除される対象である昆虫の積極的利活用に目を向け、昆虫食に関わる製品やデザインに注目することとし、現存する昆虫食に関わる製品やサービスを調査した。
昆虫食の現状とアイデアの検討・提案
昆虫食を取り巻く現状
世界で有⽤なバイオマス、タンパク源として昆⾍⾷に関⼼が向いている。しかし戦後、政策によって作り上げられてきた「害⾍観」と⾷の多様化とによって、昆⾍を⾷として捉えることが難しくなっている。
昆虫食について調査[3]した結果、鶏肉と牛肉ではそれぞれタンパク質を100グラム中52%、56%の割合で含むのに対して、コオロギとトノサマバッタではそれぞれタンパク質を100グラム中64%、67%の割合で含むということが分かった。また他の脂質やビタミン量などでも同様に他の肉類と遜色が無く、昆虫が他の肉類などの代替食品となる可能性があると言われていることがわかった。また、飼育に必要となる餌や水分などの持続可能性の観点からみると他の食用動物と比べてはるかに優っている。それにもかかわらず、現在日本の市場に常用食として出回ることは少なく、伝統⾷品、嗜好品、趣味として捉えられており、⽇常の⾷事範囲からは疎外されているといえる。これにおいて、昆虫食に対するサービスには精神的支援が不可欠であると結論した。
最終提案
昆虫食を日常的に社会に取り込む様子をデザインフィクションを用いて表現した。 それにより思索を促し、食として昆虫食を捉えてもらう機会づくりを行うスペキュラティブデザインである。
プレゼンテーション動画
脚注
参考文献・参考サイト
- 水野壮(2016):昆虫食の科学と実践 昆虫を食べる!,洋泉社
- 三橋淳(2012):虫を食べる人びと,平凡社
外部リンク