「遠隔における対人行動の特徴に関する研究」の版間の差分
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2020年10月14日 (水) 16:15時点における版
- 宗雲友志 / 九州大学 大学院芸術工学府
- SOGUMO Yushi / Graduate School of Design, Kyushu University
- 田村良一 / 九州大学 大学院芸術工学研究院
- TAMURA Ryoichi / Faculty of Design, Kyushu University
Keywords: Remote, Interpersonal Behaviors
- Abstract
- In recent years, remote interpersonal behaviors attracts attention.However,there are many performed things about the example of the interpersonal action in maintenance, the remoteness carried out rapidly now without preparations being done enough.
- In this study, I limited a study subject to a university student and chose the article about the main action in the remoteness of the university student. I extracted end-point from there and classified it and grasped the characteristic of each action.
背景と目的
近年、物理的に人物と接触することで行う作業についてICTなどを媒介として行う、遠隔における対人行動に注目が集まっている。その分野は様々で、内閣府による多様な働き方に関する実態調査[1]や、文部科学省による遠隔学習についてのアンケート調査[2]が実施されるなど、遠隔による対人行動を推進する機運が高まっている。 一方、遠隔会議によるストレスの発現[3]や、遠隔授業による教育格差の発生[4]など、行動を遠隔で行うがゆえの様々な問題点についても言及されている。また、遠隔による行動についての調査・研究において、行動の分野ごとに進捗の差があり、メリット・デメリットについて十分に整理されていない。
また、近頃、COVID-19に対応した働き方や教育における改革が行われており、これを契機に経済・社会ともにデジタル化が大きく進展すると予想されている[5]。しかしながら、現在急速に整備・実施されている遠隔における対人行動の事例について、十分に準備がなされないまま行われているものが多くある。多くの企業や学校が遠隔での対人行動を行っている状況下で、この問題を解決することは喫緊の課題といえる。
そこで本研究では、遠隔における対人行動における特徴や課題を把握することで、今後の遠隔コミュニケーションを提供するサービスの検討において資する資料を得ることを目的とする。なお、本研究での遠隔における対人行動とは、本来、物理的に人物と接触することで行う作業を、ICTなどを媒介として間接的に行い、本来と同様の効果を得ようとすること、と定義して研究を進めることとする。
研究の方法
研究プロセス
1.調査対象者として大学生を選定し、行動分類表[6]を参考に、主行動として「授業」、「飲み会」、「就職活動」を選定した。
2.Google検索により「遠隔 飲み会」等の各行為の遠隔事例の特徴として評価項目を得られるよう、検索した。その中で調査の意に沿う記事上位50件を研究対象資料として選定した。
3.対象記事から評価項目を抽出し、明らかに内容が重複する項目を省いて整理した。
4.各評価項目の内容を確認し、項目の分類を行った。
分類基準
分類基準として次の項目を用いた。 立場…行為の運営者となるか、参加者となるか。
人数…2人、複数、不特定多数の3段階で評価する。
親密度…交流相手との関係性。行為ごとに相対的に低、高の2段階で評価する。
双方向性…コミュニケーションが相互に行われているか。
タイミング…ここでは前(準備や移動)、中(行為の最中)、後(帰宅や後片付け)の3段階で評価する。
同時性…非同期(リアルタイムでない)、同期(リアルタイム)の2段階で評価する。
方法…遠隔、対面、併用(一部は対面で交流しており、一部は遠隔で交流する)の3段階で評価する。
種類…行動の分野の内容を見て分類するため、行為ごとに下位分類が変化する。
結果
全体に共通する評価項目として、「移動にかかる時間、費用の削減」、「空気感が掴めないが故の会話のぎこちなさ」、「自宅でリラックスできる」といった項目が挙げられた。
飲み会
評価項目として468件を抽出した。そのうち重複項目を省いた340件を今後の対象項目とした。分類基準ごとの該当項目数の結果を表に示す。内容を確認したところ、種類の分類は出来なかった。「タイミング」の基準以外でばらつきがあまり見られなかった。独特な評価項目として、「自身で飲食物を用意する」、「終電を気に得ずそのまま寝られる」、「普段見られない様子が見られる」、などが得られた。
授業
評価項目として485件を抽出した。そのうち重複項目を省いた461件を今後の対象項目とした。分類基準ごとの該当項目数の結果を表に示す。分類基準ごとの該当項目数の結果を表に示す。「種類」の分類は6項目となったが、ほとんどが講義に関するものであった。「立場」の基準で特にばらつきがあり、教師、学生のどちらの観点においても多くの項目が分類できた。独特な評価項目として、「自宅にいることによる怠惰」、「資料の見やすさ、声の聴きやすさ」、「評価の難しさ」などが得られた。
就職活動
評価項目として581件を抽出した。そのうち重複項目を省いた438件を今後の対象項目とした。分類基準ごとの該当項目数の結果を表に示す。「種類」の分類は3項目であり、「面接」に該当するものがほとんどであった。「立場」や「タイミング」について多くばらつきが見られた。独特な評価項目として、「企業のより多くの求職者の獲得」、「求職者の緊張がほぐれる」、「移り映えのための用意」、などが得られた。
考察
いずれの行為についても移動の手間や費用の削減、自宅にいることによる精神的な余裕が利点となっていると考えられる。遠隔ツール利用によるデメリットとして音声の聴き取りづらさがあるが、講義においてはむしろ聞き取りやすいという項目が多く、相手との本来の距離感によっては、コミュニケーションが促進されることが考えられる。
また、遠隔における飲み会などの砕けた場面では発言しにくいという項目が上がったが、授業や説明会といったフォーマルな場ではむしろ周囲を気にせず発言しやすいという項目が多かった。よって遠隔による精神的な距離感が、かえってコミュニケーションを活性化させる可能性があることが分かる。行為ごとの分類のばらつきの違いから、
まとめ
遠隔でのコミュニケーションが、条件次第で特徴が異なることが分かった。今後の研究では、詳細な評価項目の分類と、実際の評価の関係を明らかにし、遠隔における対人行動を行う上での指針を得ることとする。