「中国における宅配便の包装廃棄物回収の現状と消費者の意識についての研究」の版間の差分

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(調査結果)
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 本発表では、リバースロジスティクスに関する文献調査によりその性質を明らかにし、得られた視点を提示する。
 
 本発表では、リバースロジスティクスに関する文献調査によりその性質を明らかにし、得られた視点を提示する。
  
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==調査結果==
 
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'''リバースロジスティクスについて'''<br>
 
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2020年10月16日 (金) 13:37時点における版



金楽琦/九州大学芸術工学府
JIN leqi / Graduate School of Design, Kyushu University
池田美奈子/九州大学芸術工学研究院
IKEDA Minako / Faculty of Design, Kyushu University
Keywords: Reverse logistics, Consumer conscious and behavior, Express packaging waste

Abstract
With the development of e-commerce, online shopping has become more frequent. Mass production of commodities, mass consumption and mass waste of materials have become social issues in this world. Especially China. This research improves consumers' recycling behavior through research on reverse logistics and consumers' environmental protection and recycling consciousness.



背景と目的

 宅配便は流通と消費の増加を促し、現代のサービス産業の中で重要な位置を占めている。近年、特に中国においてはeコマースの急速な発展とともに、宅配便のニーズが高まっている。中国の郵便局からの報告を見ると、2010年の宅配便の件数は23.4億件だったが、2019年には600億件に伸びている。さらに、中国における「独身の日」という24期間限定のショッピングフェスティバルやCOVID-19下の特別な状況においては、特にネット通販商品の大量生産、包装材料の大量使用と廃棄が発生する。中国環境保護協会の『2018年中国の宅配便包装廃棄物の特徴と管理現状の報告』[1]によると、中国の宅配便包装廃棄物の排出量は2010年の61万トンから2018年の1303万ンに増えた。宅配便包装材料廃棄による炭素排出量の割合は、埋め立て処分段階での排出が9.79%で、焼却処分段階での排出が6.68%である。また処分段階でかかる費用も増え、138.13万トンの宅配便包装廃棄物を埋め立てるためにかかった費用は9.74億元に上っている。環境汚染と処理費用の増大を前に宅配便の包装廃棄物の問題は深刻である。この問題を解決するためには、拡大生産者責任を課す政策や法律が2016年から次々と施行されている。しかし、2019年中国の郵便局[2]による宅配便サービス満足度の調査では、32.6%の消費者が包装廃棄物を普通のゴミとして廃棄していることが示されている。また、10.9%の消費者はリサイクル包装材料を使用しておらず、包装材がリサイクルできることも知らない。すなわち、フォワードロジスティクスにおいては多くの政策と法律を通して企業の生産プロセスを変える試みがなされているものの、リバースロジスティクスにおいては、主要な対象者である消費者の宅配便包装材の回収に対する理解が不足し行動に結びついていない現状がある。
 以上の背景を踏まえて、本研究ではリバースロジスティクスの性質と消費者の宅配便包装廃棄物の回収意識・行動を研究対象として、フォワードとリバースの両方のロジスティクスの両面から包装廃棄物回収における関係性を調査し課題を抽出する。課題を分析し、消費者の回収意識や行動を向上さる有効な方策を提示することを研究全体の目的とする。

研究の方法

 国内外の既往研究、文献により、リバースロジスティクスのモデルと性質を調査し、リバースロジスティクスに含まれる要素と課題を整理する。次に、宅配便包装廃棄物を対象として、リバースロジスティクスの視点から分析する。次に、宅配便包装廃棄物回収に関わる消費者の行動、心理、意欲、環境意識に関する文献調査を行い、消費者のニーズ、態度を整理し、仮説をたてる。さらに、 リバースロジスティクスの性質と消費者の回収意識・行動の観点から、アンケート調査を通じて包装廃棄物回収における両者の関係を明らかにする。以上の調査に基づいて、消費者の回収意識や行動を向上させるために有効な方策を提示するのが研究の目的である。  本発表では、リバースロジスティクスに関する文献調査によりその性質を明らかにし、得られた視点を提示する。

調査結果

リバースロジスティクスについて
 リバースロジスティクスは、元々は商品の返品のために存在するロジスティクスだったが、現在は宅配便包装廃棄物の回収にも使われている。リバースロジスティクスの特徴として、Rogers&Tibben-Lembke[3]は、「Gatekeeping」「処理プロセス時間の制御」「情報システム」「Centralized Return Centers」「ゼロリターン」「 Remanufacture とRefurbishment」「AssetRecovery」「交渉」「ファイナンシャル・マネジメント」「アウトソーシング」を挙げている。尹[4]は「短中距離の輸送が多いこと」「小さい輸送ロット」「時間的に急がない物流」「リサイクルなどの処理施設への集中型の輸送形態」「販売のための物流と異なり営業上の秘密が少ないこと」「欠品問題がある」「リードタイムの制約がない」の7つの特性を挙げた。表現は異なるが、両者の内容はほぼ一致していることから、本研究では「輸送」「時間」「情報」「価値」の4つのキーワードを抽出し、それぞれの特徴に着目し、消費者の回収意識・行動と宅配便包装廃棄物の性質を分析する。


宅配便包装廃棄物について
 まず「静脈資源」の定義を示す。細田[5]は、使用済みの製品・部品・素材などのモノを静脈資源とし、あらゆる資源,あらゆる製品・部品・素材は多かれ少なかれ資源性と潜在汚染性という性質を持ち合わせており、グッズ性とべッズ性という経済的な性質があると述べた。静脈資源の性質をは、消費者や廃棄物処理業者のようなステークホルダーによってある程度決められる。宅配便包装廃棄物にも静脈資源としての性質が当てはまる。廃棄物処理業者に比べて、消費者は政策や法律の制約が少ないため、宅配便包装廃棄物の行先は消費者の自発的な行動に左右されるところが大きい。したがって、消費者の宅配便包装廃棄物問題の回収とリサイクルに対する認識が重要となる。


消費者について
 消費者は宅配便の最終利用者であり、リバースロジスティクスにおける宅配便廃棄物の行き先の最初の決定者であるため、彼らの廃棄物回収意識・行動を調査する必要がある。西尾[6]は、「資源循環を推進するために、法律や規制によって排出/利用主体に制約を与えるだけでなく、消費者の価値観やライフスタイルを環境保全・資源循環型へと変化させることが不可欠である」とした。なお、太田ら[7]は、「消費者の環境意識は非常に高いが、その意識の高さが実際の消費者の行動に結びついていない」と結論づけた。すなわち、一般の製品利用者は、環境問題に対する具体的行動についての知識が乏しく、環境意識よりも経済性や手間を解消意識を優先している可能性がある。これが研究の背景にある中国の消費者の行動力の低下の原因となっている可能性がある。これらの要因を探ることが今後のアンケート調査の目的となる。

調査結果と今後の展望

 リバースロジスティクスのモデルの調査から、「輸送」、「時間」、「情報」、「価値」という4つの視点を抽出した。しかし、リバースロジスティクスは複雑なモデルであり、宅配便廃棄物回収の有効なモデルを検討するためにはさらなる文献調査が必要である。今後は、追加の調査を経て宅配便回収廃棄物回収に有効なモデルの仮説を提示し、宅配便包装廃棄物に対する消費者の回収行為と意識についてのアンケート調査を実施して、モデルを検証する。


脚注

[1]中国環境保護協会、2018年中国の宅配便包装廃棄物の特徴と管理現状の報告、2018
[2]中国郵便局、2019年中国における宅配便の満足度アンケート、2019
[3]Rogers D.S. and Tibben-Lembke R.“An examination of reverse logistics practices”, Journal of Business Logistics, Vol.22, No.2, pp.129-148. 2001
[4]尹鍾進、静脈物流に関する研究の動向と課題、Vol.12 No.3 2009
[5]細田衛士、循環型社会における適正な静脈物流の構築、廃棄物資源循環学会誌,Vol.21, No.4, pp.205-214, 2010
[6]西尾チヅル、消費者の環境認知とコミュニケーション、オフィス・オートメーション Vol.24,No.2、2003
[7]太田賢祐、前田剛志、田浦俊春、消費者の価値創造行動に着目した循環型社会形成、pp.33-36、2003

参考文献・参考サイト