中国における宅配便の包装廃棄物回収の現状と消費者の意識についての研究

提供: JSSD5th2020
2020年10月5日 (月) 15:53時点における金楽琦 (トーク | 投稿記録)による版
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金楽琦/九州大学芸術工学府
JIN leqi / Graduate School of Design, Kyushu University
池田美奈子/九州大学芸術工学府
IKEDA Minako / Graduate School of Design, Kyushu University

Keywords: Reverse logistics, Consumer conscious and behavior, Express packaging waste

Abstract



目的と背景

 宅配便は流通と消費の増加を促し、現代のサービス産業の中で重要な位置を占めている。近年、特に中国においてはeコマースの急速な発展とともに、宅配便のニーズが高まっている。中国の郵便局からの報告を見ると、2010年の宅配便の件数は23.4億件にだったが、2019年には600億件に伸びている。さらに、中国における「独身の日」という24期間限定のショッピングフェスティバルやCOVID-19下の特別な状況においては、特にネット通販商品の大量生産・包装材料の大量使用と廃棄が発生する。中国環境保護協会たちは、「2018年中国の宅配便包装廃棄物の特徴と管理現状の報告」[1]によると、中国の宅配便包装廃棄物の排出量は2010年の61万トンから2018年の1303万ンに増えた。宅配便包装材料廃棄による炭素排出量の割合は、埋め立て処分段階での排出が9.79%で、焼却処分段階での排出が6.68%である。また処分段階でかかる費用も増え、138.13万トンの宅配便包装廃棄物を埋め立てるためにかかった費用は9.74億元に上っている。環境汚染と処理費用の増大を前に宅配便の包装廃棄物の問題は深刻である。したがって、この問題を解決するためには、拡大生産者責任を課す政策や法律が2016年から次々と施行されている。しかし、2019年中国の郵便局[2]は宅配便サービス満足度の調査を行い、32.6%の消費者が包装廃棄物を普通のゴミとして廃棄していることが示されている。また、10.9%の消費者はリサイクル包装材料を使用しておらず、包装材料がリサイクルできることも知らない。すなわち、フォワードロジスティクスにおいては多くの政策と法律を通して企業の生産プロセスを変える試みがなされているものの、リバースロジスティクスにおいては、主要な対象者である消費者の宅配便包装材料の回収の理解が不足し行動に結びついていない現状がある。
 以上の背景を踏まえて、本研究ではリバースロジスティクの性質と消費者の宅配便包装廃棄物の回収意識・行動を研究対象として、両方から包装廃棄物回収についての関係性を調査し課題を抽出する。課題を分析し、消費者の回収意識や行動を向上さる有効な方策を提示することを目的とする。

研究の方法

 まず文献調査よリリバースロジスティクのモデルと性質を調査する。日本と海外の既往研究を調査する。これらの調査からリバースロジスティクの特徴と定義をまとめて、いくつの要素を抽出する。
 次に、宅配便包装廃棄物を研究対象として抽出した要素を組み合わせて分析する。
 次、消費者の行動・心理・意欲・環境意識など、宅配便包装廃棄物回収に関わる消費者の行為を文献調査して、消費者のニーズ・態度などを明らかにする。
 リバースロジスティクの性質と消費者の回収意識・行動から包装廃棄物回収についての関係性を調査し課題を抽出して、消費者に環境意識や回収行動などをアンケート調査を行う。
 以上の調査とアンケートに基づいて、消費者の回収意識や行動を向上させるために有効な方策を提示する。

結果

 リバースロジスティクスについて
 リバースロジスティクスは商品の返品のために存在しているが、現在は宅配便包装廃棄物の回収にも使われている。リバースロジスティクスの特徴として、Rogers&Tibben-Lembke[3]は、「Gatekeeping」、「処理プロセス時間の制御」、「情報システム」、「Centralized Return Centers」、「ゼロリターン」、「 Remanufacture とRefurbishment」、「AssetRecovery」、「交渉」、「ファイナンシャル・マネジメント」、「アウトソーシング」を挙げている。尹[4]は「短中距離の輸送が多いこと」、「小さい輸送ロット」、「時間的に急がない物流」、「リサイクルなどの処理施設への集中型の輸送形態」、「販売のための物流と異なり営業上の秘密が少ないこと」、「欠品問題がある」、「リードタイムの制約がない」の7つの特性を挙げた。表現は異なるが、両者の内容はほぼ同じであることから、本研究では「輸送」、「時間」、「情報」、「価値」の4つの特徴に着目し、消費者の回収意識・行動と宅配便包装廃棄物の性質を分析する。

 宅配便包装廃棄物について
 まず「静脈資源」の定義を示す。細田[5]は、使用済みの製品・部品・素材などのモノを静脈資源とし、あらゆる資源,あらゆる製品・部品・素材は多かれ少なかれ資源性と潜在汚染性という性質を持ち合わせており、グッズ性とべッズ性という経済的な性質もある。したがって、消費者や廃棄物処理業者のようなステークホルダーが静脈資源の性質をある程度決めている。宅配便包装廃棄物にも静脈資源としての性質が当てはまる。廃棄物処理業者に比べて、消費者は政策や法律の制約が少ないため、宅配便包装廃棄物の行先は消費者の行動によるところが大きい。したがって、消費者の宅配便包装廃棄物問題の回収とリサイクルに対する認識が大事である。

 消費者について
 消費者は宅配便の最終利用者と宅配便廃棄物の行き先の最初決定者であるため、彼らの廃棄物回収意識・行動を調査する必要がある。西尾[6]は、「資源循環を推進するために、法律や規制によって排出/利用主体に制約を与えるだけでなく、消費者の価値観やライフスタイルを環境保全・資源循環型へと変化させることが不可欠である」とした。なお、太田ら[7]は、「消費者の環境意識は非常に高いが、その意識の高さが実際の消費者の行動に結びついていないという結果」が得られた。すなわち、一般の製品利用者は、環境問題に対する具体的行動についての知識が乏しく、環境意識よりも経済性や手間に関わる意識を優先している可能性がある。これが研究の背景にある中国の消費者の行動力の低下の原因となるかもしれない。これらの要因を探ることが今後のアンケート調査の目的となる。

結論と今後の展望

 リバースロジスティクスは複雑なモデルであり、有効なモデルを検討するためにはさらなる文献調査が必要である。その上で、「輸送」、「時間」、「情報」、「価値」という4つの視点から、宅配便包装廃棄物に対する消費者の回収行為と意識について調査研究を行う。


脚注

[1].2018年中国の宅配便包装廃棄物の特徴と管理現状の報告、 [2] [3] [4] [5] [6] [7]

参考文献・参考サイト