ネットスーパーにおけるサービスの研究

提供: JSSD5th2020
2020年10月16日 (金) 10:43時点における劉群 (トーク | 投稿記録)による版 (商品情報の収集について)
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- A Study on Services in online supermarkets -


劉群 / 九州大学 大学院芸術工学府
LIU Qun / Graduate School of Design, Kyushu University
田村良一/ 九州大学 大学院芸術工学研究院
TAMURA Ryoichi / Faculty of Design, Kyushu University

Keywords: Online supermarket, Consumer awareness, Usage process 


Abstract
In recent years, online supermarkets have become a growing business in japan that is attracting a lot of attention. Because of the feature of same-day delivery, it has raised hopes that it can be used to support the underprivileged. However, the rate of use is still low, leaving many of them unable to make a profit. Designing services to satisfy a more diverse range of consumers is an important issue. In this study, we compared user awareness and the current state of services to find out the gap between them.



背景と目的

 近年、日本国内のネットスーパーの市場は拡大し続け、飲食市場の成長維持や社会インフラの整備などの点で注目されている。[1]一方、利用者の利用意欲は高いが、実際の利用率はまだ低い水準である。[2]これまで利用者の意識に関する調査は多くされていたものの、現状として各ネットスーパーは利用者の意識に対する対応や利用上の異同についての研究はまだなされていない。

 そこで本研究では、今後のネットスーパーのあり方を考えるための端緒として、ネットスーパーに対する利用者の意識に関する先行調査をもとにネットスーパーの評価に関係する項目(以下、評価項目)を抽出し、現状のネットスーパーの特徴を整理した。

研究の方法

①ネットスーパーの利用プロセスの分類。

②ネットスーパーの利用に関する先行調査に基づく利用プロセスごとにみた評価項目の抽出と整理。

③主要なネットスーパーを対象とした抽出した評価項目に基づく考察。

利用プロセスの分類について

 日本のネット通販の代表である「楽天市場」の利用ガイド[3]とネットショッピングの方法の関連記事[4]を参考として、「商品を検索、閲覧、商品情報を確認し、意思決定を行う段階(以下、商品情報の収集)」、「商品の購入、支払いを行う段階(以下、購入の手続き)」、「注文後、商品が届くまでの段階(以下、商品の配達)」の三つの利用プロセスに分類することにした。

評価項目の抽出

調査対象とした資料

 以下に示す3種類の資料を選定し、評価項目を抽出することとした。

 資料A:プレシニア・シニアのネットショッピングに関する実態調査[5]

 資料B:ネットスーパーに関する意識調査[6]

 資料C:2020年5月総合EC・ネットスーパー利用動向調査[7]

調査項目

図1:調査項目のまとめ

 資料Aから36個、資料Bから21個、資料Cから29個の合計86個の評価項目を抽出することができた。

抽出された合計86個の評価項目について、利用プロセスの観点から再整理した。その結果、図1に示すとおり、商品情報の収集では「品揃えの豊富さ」、「商品検索の方法」、「商品の見せ方」、「商品価格の表示」、「口コミの有無」の5項目、購入の手続きでは「注文の時間帯」、「注文方法」、「決済方法」、「ポイントの有無」、「セキュリティ保証」の5項目、商品の配達では「配達の時間帯」、「配達料金」、「配達商品の制限」、「配達状況の確認」、「受け取りの対応」の5項目の合計15項目に整理することができた。

なお、「サイトの信頼性」、「交通の配慮」、「人間関係」などの19個の評価項目については、3つのプロセスに当てはめてることができないと判断し、上記の分類から除くことにした。




調査

調査対象

図2:サービスの一覧

 即日配達できる32個のネットスーパーサービス(以下、サービス)を対象として調査を行った。調査対象としたサービスを図2に示す。




調査の結果

商品情報の収集について

 品揃えの豊富さについては、3000点から17万点まで幅広い差が見られ、そのうち26のサービスの取扱商品数は1万点以下であった。ネット限定商品を揃っているサービスは6個で、それ以外のサービスでは実店舗の商品から一部を選んで出品していることがわかった。

 商品検索については、ほとんどのサービスは「おすすめ商品」と「商品特集」の形で商品を推奨するが、「商品ランキング」の導入は楽天西友とラッキー&パントリーネット2社だけである。また利用者がサイトで商品を閲覧する時、チエックした商品の履歴を提示するの機能はトキネットしか採用していない。また、検索機能のデザインについて、最も一般的な形は「カテゴリー検索」と「フリーワード入力」を合わせた仕様になっている。注目キーワードの提示や価格帯絞りなどの機能も有する検索はわずか数サービスしか採用していない。

図5:商品説明のまとめ

 商品の見せ方はECサイトにおける非常に重要なところと考えられる。図5で示すように全体的に商品の説明が少ないことがわかった。商品のイメージ写真一枚と説明文一言のサービスが多い。生鮮食品について産地を明記するサービスが多く、それ以外の説明項目は賞味期限、原材料、栄養成分、アレルゲン、製造者、レシピ、取扱方法、配達方法がある。楽天西友ネットスーパー、アマゾンフレッシュ、MrMAXネットスーパー、YAOKOネットスーパー、阪急キッチンエールとラッキー&パントリーネットは商品説明が最も詳しいサービスである。

 商品価格については税抜き価格と税込価格それぞれ明示することが主流である。また価格が一つだけの場合、税抜きか税込か判断することが難しいと考えられる。

 最後、口コミ機能については、ネットスーパーでは道入率はまだ低い。32サービスのうち4サービスのみがレビュー機能を道入している。




注文の手続きについて

 注文時間については、ネット注文は24時間できるサービスが27個、それ以外のサービスは毎日一定時間のメンテナンス時間を設けている。

 注文方法については、高齢者を配慮した電話注文やFAX注文は、それぞれ6サービスと4サービスが道入している。

 決済方法については図6でまとめている。代金引換とクレジットカード二つの組み合わせが主流のやり方で、それ以外に口座振替は6サービスも使われている。キャッシュレスと携帯決済などの支払い方法はAmazonのみ導入しており、各社では支払い方法について保守の傾向が見られている。

 ポイントについては、計12サービスが自社のポイント制度を道入しているが、実店舗ではポイント制度を設けているがネットスーパーでは使えないサービスがいつくか見られた。

 最後、セキュリティーに関しては、利用者の不安を解消するため、9サービスがトップページにSSL暗号通信の説明をつけている。




商品の配達について

 配達時間について、最短配達時間では各サービスの差別が少なく、基本3時間から5時間の間で届くことができる。また、買い物の融通性を配慮し、配達時間の指定可能時間は三日間以内が多く、一週間から二週間先まで指定できるサービスも存在する。

 配達料金について、基本料金の半数以上は300円から500円までの間にあり、300円以下のサービスはわずか4個しかない。またほとんどのサービスは一定金額買い上げすると配達料金が割引また無料になる仕組みになっている。そして月頻度の使い放題プランはライフネットスーパー、イズミヤ楽楽マーケットと楽ねっと三つのサービスは現在つかっている。それと似て、ナフコ不二屋宅配便とトー屋ネット宅配便の2サービスでは会費を支払うことで配達が無料になるサービスがある。全体的見ると配達の料金が高く、そして上昇する傾向が見られる。

 配達商品について、出荷先は基本近くの店舗からである。また一回の配達につき重量制限は設けていないが、注文金額制限は存在する。

 配達状況について、基本は業者サイトから番号で調べられるが、利用者が不在の時の連絡が連絡票だけで、即時できる情報の伝達が見られていない。

図6:配達時間一覧表

 受け取りについて、当日の配達時間は図6で示しているように、一つの配達時間帯は2〜3時間枠のサービスが多く、そして配達便数について、大手のサービスでは多くの時間帯で配達が可能な仕組みになっている。それ以外の地域のサービスにとって、ヤマトを採用する以外に一日4便を保つが限界で、前後の配達便の間で空白時間が生じている現象がわかった。また一つ時間枠内のさらなる詳しい時間指定ができない状態である。




まとめ

 ネットスーパーは、既存スーパーのオムニチャネルとして発展していくと思われているが、現時点ではまだリアル店舗の付属のような特性が強い。

 商品情報収集の段階では、実際ネットスーパーで揃っている商品はリアル店舗と全く同じか一部を選定しており、ネットスーパーならではの商品や体験がまだ整備されていない。

 注文手続きの段階では、ネットスーパーではポイントが利用できないの事例やキャッシュレス決済なども導入されず現状から保守的傾向が感じられた。

 商品配達の段階では、物流の人件費などのコストの上昇と利用者側の柔軟な対応が大きな課題である。

 以上のように、現時点でのネットスーパーは、消費者にとって止むを得ずの時使う手段の一つで、消費者が楽しく過ごせるサービスまでに成熟化していなく、差別化がこれからのサービスの発展の肝心である。今後の課題として、外国の先進事例調査や、利用者による事例の評価などを行うことが必要であろう。

脚注

  1. 矢野経済研究所,2020年版 食品の通信販売市場~コロナショックとサブスク拡大で見直される食品EC~ https://www.yano.co.jp/market_reports/C62105700 (2020年10月4日 閲覧)
  2. 日本政府金融公庫:平成28年度下半期消費者動向調査,https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_170308a.pdf (2020年10月5日 閲覧)
  3. 楽天市場ご利用ガイド https://event.rakuten.co.jp/beginner/ (2020年8月17日 閲覧)
  4. ネットショッピングの方法 http://netshopingguide.com/howto (2020年8月17日 閲覧)
  5. 株式会社アスマーク,プレシニア・シニアのネットショッピングに関する実態調査 https://www.asmarq.co.jp/data/ex201911senior-shopping/ (2020年8月30日 閲覧)
  6. 株式会社プラネット,ネットスーパーに関する意識調査 https://www.planet-van.co.jp/news/info/1272 (2020年8月30日 閲覧)
  7. MMD研究所,2020年5月総合EC・ネットスーパー利用動向調査 https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1867.html (2020年9月6日 閲覧)


参考文献・参考サイト

総務省行政評価局(2020)買物弱者対策に関する実態調査 結果報告書

川辺信雄(2011)ネットスーパーの生成と発展,早稲田商学,429,23-78

髙橋郁夫(2016)イノベーターとしてのネットスーパー:業態ロイヤルユーザーの分析から見た特徴と課題,マーケティングジャーナル,36(2),5-20