独立出版(ZINE)への参加に関する研究

提供: JSSD5th2020
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- 日本における中国人留学生を対象として -


鹿可二 / 九州大学大学院芸術工学府
Keni LU / Graduate School of Design, Kyushu University
杉本美貴 / 九州大学大学院 芸術工学研究院
Yoshitaka SUGIMOTO / Faculty of Design, Kyushu University


Keywords: Zine, guidebook 


Abstract
In recent years, "Zine" have become popular among young people. Zine or fanzines are non-professional, unofficial publications produced by enthusiasts of a particular cultural phenomenon (e.g., literary or musical genres) for the enjoyment of others with the same interests. In this study, we promote the concept of zines to Chinese students in Japan, identify the challenges of participating in zines in Japan, and provide design suggestions to facilitate their participation.


背景と目的

 近年、若者の間で「ZINE」というものが流行っている。zineまたはファンジン、リトルプレスとは、特定の文化現象(文学や音楽のジャンルなど)の愛好家が、同じ関心を持つ他の人に楽しんでもらうために制作する非専門的で非公式な出版物のこと。中国でのZINEの人気は欠落している。日本のZINEの雰囲気はとても自由で活発。中国人留学生の中には、ZINEとは何かを理解した上で、日本でZINE制作や、ZINE交流を参加したいという人も多いようである。
 形の自由度が高く、手法やアプローチのバリエーションが豊富なZINEは、作り手の幅を広げてくれる。しかし、あまりにも自由すぎるとジンの制作が難しく、制作方法が不明制作方法が不明瞭になってしまう。
 本研究では、日本の中国人留学生にZINEを参加しやすくするため、デザイン提案を提出ため、要件を明らかにと目的とする。

研究方法

 中国人留学生がZINEに参加しやすくする要件を明らかにするために、フィールドワーク、インタビューと文献調査をする。まずZINEや独立出版の概念を先行研究からまとめる。その次、ZINEの創作者、出版者、販売者にインタビュして、ZINEの制作・流通の現状と課題を調査して、zineをつくるのプロセスをまとめる。同時に文献調査をして、独立出版(ZINE)の現状や、ZINEのこれからの可能性と他の類似産業の情報を調査する。ZINEの制作や配布に必要なものを把握して、最後にデザイン案を提出して、検証と評価を行う。

フィールド調査

インタビュー

 インタビューの対象は中国で活動しているZINEのデザイナーと創作者。
 インタビューの内容はzinester(ZINEの作者)として、ZINEをつくる上で気になること。ZINEをつくるという点では、メルボルンでは中国と比べて何か違う?プロモーターとして、気になること。オフラインでの繋がり(同じ街での顔出し交流のようなもの)とZINEの関係。ZINEには評価基準があるのか?
 結果を整理して、結論はZINEはグローバルな文化が、国によってZINEに参加する要件は違う、zineの創作中は課題がある、日本でZINEが発売される機会があればやってみたいと判明した。プロのデザイナーとして、印刷工芸の特性を十分に知らなかったり、現地工場のブッキングの仕方がわからなかったりといった課題もあると結論づけられた。

アンケート調査

 創作者と創作意欲のある人を対象にしたアンケート調査がインターネットで実施されていた。アンケートでは、ZINEに対する認知、ZINEへの参加意欲、創作者が抱える問題点、経験者が抱える問題点などを中心に調査した。
 分析では、ターゲット(創作者と創作意欲のある人)のZINEの認知度が低く、半数にとどまっている。zineとは何かを簡単に理解した上での参加意欲は7割近くと高い。ZINEに参加する上での問題点としては、アクセスができない、グラフィック処理が苦手、著作権の問題などが考えられる。
 図1は調査結果のまとめ。

図1:アンケート調査結果

日本ではZINEの調査

 「ZINEはグローバルな文化が、国によってZINEに参加する要件は違う。」の原因で、中国人留学生が日本語を知っても,日本でわからないものを調査が必要。
 日本で販売されているZINEのガイドブックを中国人の視点から読み、考察し、日本と中国ZINEのやり方の違いや、国の違いからZINEに参加する際の問題点などを探ってみた。ほかの中国人留学生と意見を合わせて、ガイドブックを見てもわからないところを整理した。印刷会社への委託方法や、地元の書店から情報を得る方法、委託販売の方法などは、外国人の視点から見ると問題がある。
 図2は日本における問題のまとめ。

図2:日本における問題更新

ガイドブックの調査

 ガイドブック(guidebook)は特定のイベントや施設などについての案内や説明を記した書物や小冊子。
 教科書式の専門書と違って、ガイドブックは初心者向けで、内容はより簡単で、分かりやすく、操作しやすい。各種ガイドブックを検索すると、ガイドブックの多くはテーマ説明、操作指導、問題と解答などの部分から構成されている。分かりやすいように、ガイドブックは多くの図解と読みやすい説明文を使用している。
 本研究の主なターゲットは未経験者と初心者ので、最終提案はガイドブックの形になる。

結論

調査結果

 ターゲットのZINE認知度を高める余地はまだあり、ターゲットの参加意欲は高いが、実際にZINEを作って活動に参加するまでには課題が多い。一方で、中国留学生は日本社会の基本的な慣習をある程度理解していても、日本でのzineへの参加には様々な問題がある。

要件

 日本にいる中国人留学生がzineに参加しやすくするための要件について、二種類の情報を提供するが必要。 ZINEを知るために「ZINEの説明」とZINEをやるために「ZINEの作り方の説明」。  「ZINEの説明」では、ターゲットがzineに興味を持ち、さらにZINEを参加してもらうために、zineの魅力を説明することを目的として。「ZINEの作り方の説明」は、これからzineを作ってみようと思っている人が、zineを作り始める際の参考になるように、また、その過程で困ったことがあれば、助けになる。


「ZINEの説明」
zineとは何か:定義、種類、歴史と起源、中国と日本の現状
zineの魅力:なぜZINEをするのか、ZINEの意味、他の方のZINEの例

「ZINEの作り方の説明」
着想:内容、コンセプト、構成、形
コンテンツ:コンテンツ収集、テキスト編集、画像編集
レイアウト:日本語フォントの問題、簡単なグラフィックデザイン、ps/ai/idエクスポート方法
印刷製本:予算、オンデマンド/オフセット、デジタル印刷/レトロ印刷、特殊工芸、日本で印刷のプロセス、リゾグラフ/スクリーン印刷、DIY製本
流通:書店委託、個人販売、フェア参加
用語の日中対照

 以上のような説明をすることで、ターゲットはZINEの制作や交流に参加しやすくなる。


今後の方針

 ツールの機能と普及の容易さをバランスとるの必要性を考えて、実体・デジタルな二ヶ国語のガイドブックを制作することを決めた。
 提案のガイドブックを試作する。中国人留学生の間で検証、評価を行う。


参考文献・参考サイト

  • 黃思慈:Zine,台湾における独立出版物の発展と概要,2013
  • Punk in the Library. Zine collection curator Josh Jubinsky delivers notes from the underground and spreads the D.I.Y. gospel in the process.John E. Citrone
  • 田维莎:国内外のインディー出版の概要,2016
  • 薛天宠:スタンドアロンプレゼンテーション--独立出版の現状、成り立ち、精神,2017
  • lightning編集部:別冊Lightning Vol.143 ZINE入門[雑誌]2015
  • 玄光社:クリエイターのためのZINEのはじめ方,2015
  • Wikipedia:ガイドブック https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF (2020年10月3日 閲覧)



プレゼンテーション動画


https://youtu.be/gKPVGY_4EEs