「台灣・憲光二村の再活用に関する研究」の版間の差分

提供: JSSD5th2021
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2017年から筆者が学生を連れて憲光二村へ見学して以来、地域との協力関係を構築し始めるとともに教育現場でのさらなる活用を模索し始めた。
 
2017年から筆者が学生を連れて憲光二村へ見学して以来、地域との協力関係を構築し始めるとともに教育現場でのさらなる活用を模索し始めた。
 
2020年桃園眷村文化節において行ったマレーシア華人新村の発信活動において、2016年度より行われている「台灣・憲光二村の再活用」の取り組みの継続と共に、将来台湾で初の移民博物館の開設することを目標に、これまでに集積された資源・知見を生活空間においても活用し、異文化の交流を促進していく提案を行うことを目的とした。
 
2020年桃園眷村文化節において行ったマレーシア華人新村の発信活動において、2016年度より行われている「台灣・憲光二村の再活用」の取り組みの継続と共に、将来台湾で初の移民博物館の開設することを目標に、これまでに集積された資源・知見を生活空間においても活用し、異文化の交流を促進していく提案を行うことを目的とした。
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=== 3.マレーシア華人新村と憲光二村 ===
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マレーシアでは1949年に畢礼斯計画を実施し、辺鄙な森林に住む住民を特定の範囲に集中させ華人新村を形成。自由な出入りを制限し、1960年まで厳格な軍事管理を実施した。台湾の眷村は、英植民地政府が高圧的に監視している収容式生活のそれとは対照に、軍隊の家族を集中的に世話するものの、いずれも非自発的な移住空間で、両方とも歴史と文化的景観で、複雑な歴史と時代の感情を反映している。
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憲光二村は1968年に建設、加えて1974年にマンション式四階建ての家が建てられ居住空間としての機能を失ったのち、1996年歴史建築に指定された。長年の整理を経て、2016年から管理事務所、2019年に台湾眷村資源センターを設置とソフト面での整備を行い、歴史の継承と外部との交流を促進するプラットフォームを構築している。将来的に台湾での初めての移民博物館を立ち上げる予定である。
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== 二、考察 ==
 
== 二、考察 ==
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<small>(2021 年10 月17 日、参加者:マレーシアと台湾の学生10名)</small>  
 
<small>(2021 年10 月17 日、参加者:マレーシアと台湾の学生10名)</small>  
  
== 三、マレーシア華人新村と憲光二村 ==
 
マレーシアでは1949年に畢礼斯計画を実施し、辺鄙な森林に住む住民を特定の範囲に集中させ華人新村を形成。自由な出入りを制限し、1960年まで厳格な軍事管理を実施した。台湾の眷村は、英植民地政府が高圧的に監視している収容式生活のそれとは対照に、軍隊の家族を集中的に世話するものの、いずれも非自発的な移住空間で、両方とも歴史と文化的景観で、複雑な歴史と時代の感情を反映している。
 
憲光二村は1968年に建設、加えて1974年にマンション式四階建ての家が建てられ居住空間としての機能を失ったのち、1996年歴史建築に指定された。長年の整理を経て、2016年から管理事務所、2019年に台湾眷村資源センターを設置とソフト面での整備を行い、歴史の継承と外部との交流を促進するプラットフォームを構築している。将来的に台湾での初めての移民博物館を立ち上げる予定である。
 
  
== 四、成果と課題 ==
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== 三、成果と課題 ==
 
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[[ファイル:桃園眷村文化節における発信活動.jpg|サムネイル]]
 
=== 1.地域貢献 ===
 
=== 1.地域貢献 ===

2021年10月21日 (木) 16:00時点における版

- 桃園眷村文化節におけるマレーシア華人新村の発信活動を中心に -

==報告==

憲光二村の位置.jpg

筆者は事例研究、校外教育、インタビューと訪問とそれに基づいた企画の提案などを通じ、授業と地域社会を結び付け、長年にわたって実績と協力体制を築いていく過程で、地域と教育現場との相互的な関係を構築することを目指している。本研究は2020年マレーシアの学生が眷村の一つである憲光二村を見学した際に彼らの母国における同様の施設である華人新村と共通点を感じ、異文化交流の機会にしようと働きかけを行い、それを桃園眷村文化節において実践した事例である。つまり、憲光二村を対象とした研究活動におけるUSRの新たな実践により学生の知識をアウトプットすることで問題の共有と解決を図っていく事、および地域社会に貢献することにより大学の社会的責任を促進していくことを目指した。 この研究による要点として以下の3つが挙げられる:

  1. イノベーション:桃園市文化局と憲光二村の管理事務所は学生による10チームの企画提案を、問題発見(Discover)、提案(Develop)、伝達(Deliver)の指標で評価を行った。実際、フリーマーケットの開催、遊び道具の設置、ご当地グルメの提供といった三つのテーマを融合させた提案が採用され新しい空間を生み出した。
  2. 異文化交流:憲光二村でマレーシア華人に関する発信を行うことで台湾における眷村という視点から彼らの変遷を見つめられると同時に台湾での移民歴史も振り返ることができ融合的かつ効果的な交流ができる。
  3. 地域貢献とUSR:学生が夏休みを利用し眷村文化に関するイベントを企画し、新学期で実行するという形で実習を実施することで、地場産業への理解や実務力の向上を図る。

本研究ではこのように大学と地域が一体となった実践を通じて、「移動・交流・体験」価値の再定義に向けた学びの環境を構築していくことを考察する。


黄淑芬/ 銘傳大学 観光学部休憩学科 


Keywords:憲光二村 Military Police Honor 2nd Village、華人新村Malaysian Chinese New Village,、PBL Problem-based Learning,


目次

一、背景と目的

大学との位置関係と構造.jpg

1. 背景

台湾のその特殊な歴史により整備された居住空間である眷村は、陸海空、憲兵、公職人員及び自力眷村に分類され、それぞれが独特な価値と貴重な記憶を持っている。桃園市は2001年から眷村の活性化と蓄積された貴重な経験を後世に生かすために、桃園眷村文化節を催すこととなった。 2016年憲光二村管理事務所が設置された以来、毎年桃園眷村文化祭では、近隣の各小学校において小中学校の児童を中心に眷村の人々の生涯を伝えていく移動展覧会、「キャンパス巡回展」の普及に努めてきた。2018年からは高校、短大と大学にその対象を拡大し、「行動物語箱」、「夢工場」といった活動を通じて中学校から短大までの学生に総合学習の機会と夏休みの実習を提供している。こうして、憲光二村は若者たちの参加と創作によって、活気が溢れ、新たな展開を見せている。

2. 目的

2017年から筆者が学生を連れて憲光二村へ見学して以来、地域との協力関係を構築し始めるとともに教育現場でのさらなる活用を模索し始めた。 2020年桃園眷村文化節において行ったマレーシア華人新村の発信活動において、2016年度より行われている「台灣・憲光二村の再活用」の取り組みの継続と共に、将来台湾で初の移民博物館の開設することを目標に、これまでに集積された資源・知見を生活空間においても活用し、異文化の交流を促進していく提案を行うことを目的とした。

3.マレーシア華人新村と憲光二村

マレーシアでは1949年に畢礼斯計画を実施し、辺鄙な森林に住む住民を特定の範囲に集中させ華人新村を形成。自由な出入りを制限し、1960年まで厳格な軍事管理を実施した。台湾の眷村は、英植民地政府が高圧的に監視している収容式生活のそれとは対照に、軍隊の家族を集中的に世話するものの、いずれも非自発的な移住空間で、両方とも歴史と文化的景観で、複雑な歴史と時代の感情を反映している。 憲光二村は1968年に建設、加えて1974年にマンション式四階建ての家が建てられ居住空間としての機能を失ったのち、1996年歴史建築に指定された。長年の整理を経て、2016年から管理事務所、2019年に台湾眷村資源センターを設置とソフト面での整備を行い、歴史の継承と外部との交流を促進するプラットフォームを構築している。将来的に台湾での初めての移民博物館を立ち上げる予定である。


二、考察

展示計画.jpg

「マレーシア華人新村の発信活動」を重点テーマとし、以下の視点を中心に実践活動を行った。 ① 歴史、言い伝えなどから憲光二村とマレーシア華人新村の実態を調査し整理・言語化した。 ② 憲光二村とマレーシア華人新村の食、子供遊びなどの文化活動を構想し実施した。 ③ 憲光二村において、マレーシア華人新村に関する情報を効果的にまとめ、展示を実施した。 実施内容は以下のとおりである。 

  • 憲光二村と見学と調査の打ち合わせ

(2020 年5月18 日、参加者:先生と大学生5名)

  • 憲光二村の見学と聞き取り調査

(2020 年6月1 日、参加者:10組に分けての大学生60名) 憲光二村管理事務所より、①眷村の歴史について②憲光二村の歴史について、③今までの工夫について、④空間の活用について等の聞き取りを行った。

  • ・企画のプレゼンと評価

(2020 年6 月23 日、参加者:大学生等60 名) 見学と調査にて得られた知見より、最終提案を行うこととした。憲光二村スタッフ三名が銘伝大学まで足を運び十組の提案を聞き評価をした。

  • ・夏休みの展示計画の準備

(参加者:台湾工芸研究発展中心、桃園市文化局、憲光二村、筆者、マレーシアの留学生) プレゼンの提案を基にして、憲光二村管理事務所と筆者は、台湾工芸研究発展中心、桃園市文化局の協力で展示計画を構想した。

  • ・食の交流活動の試作と評価

(2020年09月21 日、参加者:大学生54名+マレーシア学生14名)

  • 展覧会の展示場と交流活動の会場を準備

(2020年09月21 日~10月8日、参加者:マレーシア学生14名)

  • 2020年桃園眷村文化節の開幕式

(2021 年10月9日、参加者:マレーシア学生14名)

  • 2020年桃園眷村文化節のイベント

(2021 年10 月17 日、参加者:マレーシアと台湾の学生10名)


三、成果と課題

桃園眷村文化節における発信活動.jpg

1.地域貢献

異文化の交流としてのマレーシア華人新村の発信活動は、憲光二村を活用した新たな展開の可能性を提示するとともに、地域との協働により、大学・企業・自治体・関係団体で協働的に実践教育を行い、今後、より憲光二村の移民博物館への活用に寄与できると考えられる。これから、筆者も引き続き大学・企業・自治体・関係団体で協働的に地域に根差した実践教育を展開することで地域も若者たちの参加と創作によって活気が溢れ、新たな展望が期待される。

2.教育・研究面

実際に現地に赴き、五感を駆使し地域生活の実態を明らかにし、文献等に記載されていないものを学ぶことができた。現地調査で地域住民に聞き取り調査を兼ねて、得られた情報に基づいてデザン提案を行う(情報伝達)ことにより、コミュニケーション能力が高められた。また、提案を行い、地域の方と一緒に検討し、その場でフィードバックをもらうことで、より実現可能性の高いデザイン提案を仕上げることができた上に、大学教育と地方知識を結び付け、地域のブランド力向上に貢献した。

3.まとめ

留学生など異なったバックグラウンドを持つ学生は、憲光二村と触れ合うことにより、より多くの感情と温度を注ぐ提案にことができる。憲光二村という対外的、社会的空間の中で自主性をもって活動に取り組むことは教員と学生が自分の役割を発見、理解、実行することにも繋がる。自分自身を見つめ直し、新たな地域実践から深く体験する:コミュニティは最高の教室であること。





外部リンク