「デザイン初学者が臨む「運ぶ」から着想したデザイン」の版間の差分
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===1年春学期必修科目:デザインリテラシー基礎=== | ===1年春学期必修科目:デザインリテラシー基礎=== | ||
芸術工学部の学生を指導する18名の教員が分担して担当する。 | 芸術工学部の学生を指導する18名の教員が分担して担当する。 | ||
− | 芸術工学の共通基盤として、芸術工学がいかなる価値を実現しているかを学び、デザイン応用力を支える基礎的なリテラシーを形成する。(シラバスより抜粋) | + | 芸術工学の共通基盤として、芸術工学がいかなる価値を実現しているかを学び、デザイン応用力を支える基礎的なリテラシーを形成する。(シラバスより抜粋)<br> |
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まず、各自「運ぶ」から連想される言葉を抽出したのち、ブレインストーミングを行った。ここでは、デザインリテラシー基礎の授業と同様にオンライン付箋共有ツールを用いた。それぞれの考える「運ぶ」に関わる言葉を共有することで発想を整序し、そこから見られる傾向の分析や、授業時との比較を行った。<br> | まず、各自「運ぶ」から連想される言葉を抽出したのち、ブレインストーミングを行った。ここでは、デザインリテラシー基礎の授業と同様にオンライン付箋共有ツールを用いた。それぞれの考える「運ぶ」に関わる言葉を共有することで発想を整序し、そこから見られる傾向の分析や、授業時との比較を行った。<br> | ||
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===テーマ設定=== | ===テーマ設定=== | ||
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+ | それぞれが提案した全24案の中から有用性の観点から3つの案を選び、アイデアを具体化した。3つの提案の概要を以下に示す。<br><br> | ||
+ | '''①『カラーナンバーズ』'''[[ファイル:Kiyama カラーナンバーズ.jpg|サムネイル]]<br> | ||
+ | 特定の商品を色と名前で呼べるようにすることで生理用品の持ち運びに関わる問題を改善し、さらに利便性を向上させた。<br> | ||
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+ | いかに問題を解決しているか:一目では生理用品と分からないシンプルな見た目で、男性店員にも持っていきやすく、人目も気にならない。また、色と番号で呼べるので誰かに買ってきてもらう際に必要な商品情報を伝えやすく、緊急時においても、必要な用品の種類を躊躇いなく言える。<br> | ||
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+ | 焦点を当てた問題:周期が安定しない10代の時期はいつ生理が始まるかわからないが、A 生理用品を持ち運ぶと荷物が増える、B 生理がきていることがわかるポーチを持ち歩くことに対する羞恥心がある、C 経血で汚れる、といった問題がある。<br> | ||
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+ | いかに問題を解決しているか:いつもタオル生地のストラップに生理用品を入れておくことで、急な生理にも対応でき、経血の汚れもタオルで拭くことができる。また、生理用品を持ち運ぶことに対する羞恥心が薄れ、余計な荷物を減らすことができる。 | ||
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2021年11月10日 (水) 12:14時点における最新版
- 木山祥花/ 九州大学 芸術工学部
- 加藤愛/ 九州大学 芸術工学部
- 川口菜穂/ 九州大学 芸術工学部
- 三宅佑太朗/ 九州大学 芸術工学部
- 武田遥/ 九州大学 芸術工学部
- 中野紗良/ 九州大学 芸術工学部
- 樋口一葉/ 九州大学 芸術工学部
- 迫坪知広/九州大学大学院芸術工学研究院
Keywords: Product Design, Visual Design,運ぶ,生理用品
目次
背景
デザイン初学者とは
ここでは、デザインを学び始めたばかりの九州大学芸術工学部芸術工学科インダストリアルデザインコース1年生である発表者のことを指す。
1年春学期必修科目:デザインリテラシー基礎
芸術工学部の学生を指導する18名の教員が分担して担当する。
芸術工学の共通基盤として、芸術工学がいかなる価値を実現しているかを学び、デザイン応用力を支える基礎的なリテラシーを形成する。(シラバスより抜粋)
2021年度は対面、遠隔授業での併用となった。
「運ぶ」に関するデザインを考える
先述したデザインリテラシー基礎において、インダストリアルデザインコースの簡易演習として次のような演習が行われた。
1.演習内容の説明・解説(5分)
2.「運ぶ」から連想される言葉をできるだけたくさん抽出(15分)
3.デザイン対象を考える(5分)
4.文章ベースのコンセプト作成(15分)
5.自らのコンセプトに従って「運ぶ」をデザイン(描写)(25分)
6.他の受講者と互いの成果物を見せ合い意見交換(5~10分)
今回はこの演習を通しての気づきや経験を踏まえ、新たに7名で同じ流れに沿って「運ぶ」から着想したデザインの提案を行った。
「運ぶ」から着想したデザインの提案
「運ぶ」を考える
まず、各自「運ぶ」から連想される言葉を抽出したのち、ブレインストーミングを行った。ここでは、デザインリテラシー基礎の授業と同様にオンライン付箋共有ツールを用いた。それぞれの考える「運ぶ」に関わる言葉を共有することで発想を整序し、そこから見られる傾向の分析や、授業時との比較を行った。
発想を整理すると、
・乗り物からの派生が多い
・新型コロナウイルスに関連する言葉が多い
・SNS等、情報系の発想が多い
・災害に関する言葉が多い
・ジェンダーに関する繊細な話題にも触れられている
等の気づきが得られた。
テーマ設定
得られた気づきをもとに、新たなデザイン提案のためのテーマ決めを行った。話し合いの結果、発表者の世代で今活発に議論されている、「生理用品を運ぶ」をテーマとして設定した。
「生理用品を運ぶ」3つの提案
それぞれが提案した全24案の中から有用性の観点から3つの案を選び、アイデアを具体化した。3つの提案の概要を以下に示す。
①『カラーナンバーズ』
特定の商品を色と名前で呼べるようにすることで生理用品の持ち運びに関わる問題を改善し、さらに利便性を向上させた。
焦点を当てた問題:パッケージが目立つものが多く、持ち運ぶことや男性店員のレジに持っていくことに抵抗を感じる人が多い。また、現状使用者以外の知識の薄さにより、代理での購入が難しくなっている。
いかに問題を解決しているか:一目では生理用品と分からないシンプルな見た目で、男性店員にも持っていきやすく、人目も気にならない。また、色と番号で呼べるので誰かに買ってきてもらう際に必要な商品情報を伝えやすく、緊急時においても、必要な用品の種類を躊躇いなく言える。
②『いつも安心を持ち歩くストラップ』
いつも持っているぬいぐるみのストラップの中に丸まったナプキンが一つ入れることができる。また、チャックを開けて広げるとハンカチになる。
焦点を当てた問題:周期が安定しない10代の時期はいつ生理が始まるかわからないが、A 生理用品を持ち運ぶと荷物が増える、B 生理がきていることがわかるポーチを持ち歩くことに対する羞恥心がある、C 経血で汚れる、といった問題がある。
いかに問題を解決しているか:いつもタオル生地のストラップに生理用品を入れておくことで、急な生理にも対応でき、経血の汚れもタオルで拭くことができる。また、生理用品を持ち運ぶことに対する羞恥心が薄れ、余計な荷物を減らすことができる。
③『流せるナプキン』
経血で汚れる部分をトイレに流すことのできる素材を用いて作った生理用ナプキン。
焦点を当てた問題:訪問先の家庭においてナプキンを交換する際には、使用済みナプキンを自宅へ持ち帰らなければならない。また、自宅に帰るまで使用済みナプキン持ち歩く必要があるため、訪問先の家主や他の人に対して引け目を感じながら過ごすことになる。
いかに問題を解決しているか:経血で汚れる部分をトイレに流せるため、自宅へ持ち帰る必要がなくなる。また、生理中に他人の家に宿泊等をする際の申し訳ないという心理的不安を軽減することができる。