「メガネの問題点から見る制約条件の重要性について」の版間の差分
(ページの作成:「- サブタイトルがある場合はここに記載 - <!-- 以下の赤字表記部分は、ご確認後に消去して下さい --> <span style="color:red;">'''注…」) |
(→参考文献) |
||
(2人の利用者による、間の28版が非表示) | |||
1行目: | 1行目: | ||
− | |||
− | + | ; 奥野梨奈 / 京都女子大学 家政学部 | |
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
+ | ''Keywords: Constraint, Structure, Glasses Design'' | ||
− | |||
− | |||
− | |||
+ | ==はじめに== | ||
+ | 近年, 発想法においてデザイン思考が注目を集めている. 自由な発想を行った後それらのアイデアをまとめ, 形にする, 「発散」と「収束」を繰り返す手法である[1]. しかし, それは本当に良い方法なのだろうか. 様々な制約に囲まれて過ごしている我々は, 制約条件から逃れることは不可能である. したがって, 初めに制約条件を十分に検討した上で, アイデアの発想に取り組むべきなのではないだろうかと考える. 今回はそのことを調査するべく, 制約条件に関するアンケートを行い, 分析をした. | ||
− | |||
− | + | ==本研究の目的== | |
− | + | 制約条件を十分に検討してから, 構造を形成することの重要性を明らかにする. | |
+ | |||
+ | |||
+ | ==方法== | ||
+ | 本研究ではメガネを取り上げ, | ||
+ | |||
+ | ①メガネの問題点があるとすれば、何だと考えるか?<br> | ||
+ | ②どういう形状であれば①の問題を解決することができるか? | ||
+ | |||
+ | 以上2点を10~60代の男女32名に回答してもらった. ①の質問でメガネの制約条件を抽出し, ②の質問でメガネの理想的な構造を抽出することを意図している. | ||
+ | |||
+ | |||
+ | ==結果== | ||
+ | ①と②の回答の項目でそれぞれ同じような意味を持つ要素同士をグループ化し, 直接影響行列を作ってISM(Interpretive Structural Modeling)を行った. 結果は以下の通りである. ①(図1)の構造図を見ると, 「メガネの耐久性に関する問題」を起点に, 「メガネとのフィット性」から「メガネをかけることによる疲労感」へ続き, 「メガネをかけることによる印象の変化」と「メガネの使いづらさに関する問題」の2方向に分岐している. ②(図2)の階層構造図を見ると, 「個人に合わせる」を起点に, 「素材の改善」へと向かっているものと, 「形状、意匠の改善」から「重量の改善」へと続いているものがある. | ||
+ | |||
+ | <Gallery> | ||
+ | File:RinaOkunoFig01.png|thumb|left|200px|図1.①の構造図 | ||
+ | File:RinaOkunoFig02.png|thumb|right|200px|図2.②の構造図 | ||
+ | </Gallery> | ||
+ | |||
+ | ==考察== | ||
+ | 構造図に注目すると, 「メガネとのフィット性」と「個人に合わせる」が上位に位置することから, 『自分に合うかどうか』が重要で, それこそが現状のメガネに足りない要素であることが分かる. もしも制約条件を厳密に設定してメガネのデザインを行っていれば, 今回のアンケート結果に見られたメガネに対する不満は少なかったのではないだろうか. 以上のことから, モノやコトの構造を形成する際は, あらかじめ制約条件を明確にすることが重要だと考える. | ||
− | |||
{{clear}} | {{clear}} | ||
<br> | <br> | ||
− | == | + | ==参考文献== |
− | + | [1] 石川俊祐:HELLO, DESIGN 日本人とデザイン, pp112-113, 幻冬舎, 2019 | |
<br> | <br> | ||
<br> | <br> | ||
− | |||
− |
2021年11月10日 (水) 12:16時点における最新版
- 奥野梨奈 / 京都女子大学 家政学部
Keywords: Constraint, Structure, Glasses Design
はじめに
近年, 発想法においてデザイン思考が注目を集めている. 自由な発想を行った後それらのアイデアをまとめ, 形にする, 「発散」と「収束」を繰り返す手法である[1]. しかし, それは本当に良い方法なのだろうか. 様々な制約に囲まれて過ごしている我々は, 制約条件から逃れることは不可能である. したがって, 初めに制約条件を十分に検討した上で, アイデアの発想に取り組むべきなのではないだろうかと考える. 今回はそのことを調査するべく, 制約条件に関するアンケートを行い, 分析をした.
本研究の目的
制約条件を十分に検討してから, 構造を形成することの重要性を明らかにする.
方法
本研究ではメガネを取り上げ,
①メガネの問題点があるとすれば、何だと考えるか?
②どういう形状であれば①の問題を解決することができるか?
以上2点を10~60代の男女32名に回答してもらった. ①の質問でメガネの制約条件を抽出し, ②の質問でメガネの理想的な構造を抽出することを意図している.
結果
①と②の回答の項目でそれぞれ同じような意味を持つ要素同士をグループ化し, 直接影響行列を作ってISM(Interpretive Structural Modeling)を行った. 結果は以下の通りである. ①(図1)の構造図を見ると, 「メガネの耐久性に関する問題」を起点に, 「メガネとのフィット性」から「メガネをかけることによる疲労感」へ続き, 「メガネをかけることによる印象の変化」と「メガネの使いづらさに関する問題」の2方向に分岐している. ②(図2)の階層構造図を見ると, 「個人に合わせる」を起点に, 「素材の改善」へと向かっているものと, 「形状、意匠の改善」から「重量の改善」へと続いているものがある.
考察
構造図に注目すると, 「メガネとのフィット性」と「個人に合わせる」が上位に位置することから, 『自分に合うかどうか』が重要で, それこそが現状のメガネに足りない要素であることが分かる. もしも制約条件を厳密に設定してメガネのデザインを行っていれば, 今回のアンケート結果に見られたメガネに対する不満は少なかったのではないだろうか. 以上のことから, モノやコトの構造を形成する際は, あらかじめ制約条件を明確にすることが重要だと考える.
参考文献
[1] 石川俊祐:HELLO, DESIGN 日本人とデザイン, pp112-113, 幻冬舎, 2019