「福祉におけるソーシャルインクルージョンのデザイン」の版間の差分

提供: JSSD5th2021
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(研究方法)
(はじめに)
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専門家などによる多様性やソーシャルインクルージョンへの意識が徐々に高まっている。<br>しかし、現在 社会において福祉の対象者とみなされる人への意識や認識には差別化や区別化を図ることが重んじられている傾向があり、考え方や概念の浸透・伝播の面での課題を感じる。<br>
 
専門家などによる多様性やソーシャルインクルージョンへの意識が徐々に高まっている。<br>しかし、現在 社会において福祉の対象者とみなされる人への意識や認識には差別化や区別化を図ることが重んじられている傾向があり、考え方や概念の浸透・伝播の面での課題を感じる。<br>
そこで、本研究では社会全体へソーシャルインクルージョンのアプローチをする手段を抽出する事を目的とし研究を進めている。<br>
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そこで、本研究では社会全体へソーシャルインクルージョンのアプローチをする手段を抽出することを目的とし研究を進めている。<br>
 
個人を通して社会を見つめる事は多様な価値観を見出すことができるのではないかという仮説に基づき、<br>個人をグループ化する事で'''「価値観の結束」'''='''「社会のバイアス」'''を調査できるかと考えた。
 
個人を通して社会を見つめる事は多様な価値観を見出すことができるのではないかという仮説に基づき、<br>個人をグループ化する事で'''「価値観の結束」'''='''「社会のバイアス」'''を調査できるかと考えた。
 
  
 
==研究方法==
 
==研究方法==

2021年10月23日 (土) 16:57時点における版

-「個人に着目した包摂型福祉へのアプローチ」 -


久保穂果 / 福岡県立博多青松高等学校 
尾方義人 / 九州大学 芸術工学研究院 


Keywords: Social Inclusion , Welfare, Big Five  


はじめに

専門家などによる多様性やソーシャルインクルージョンへの意識が徐々に高まっている。
しかし、現在 社会において福祉の対象者とみなされる人への意識や認識には差別化や区別化を図ることが重んじられている傾向があり、考え方や概念の浸透・伝播の面での課題を感じる。
そこで、本研究では社会全体へソーシャルインクルージョンのアプローチをする手段を抽出することを目的とし研究を進めている。
個人を通して社会を見つめる事は多様な価値観を見出すことができるのではないかという仮説に基づき、
個人をグループ化する事で「価値観の結束」「社会のバイアス」を調査できるかと考えた。

研究方法

今回、個人に着目するため、個人の性格特性を分析することで個人の性格特性を分析することでアプローチした。
そこで、心理学の分野で利用されているビッグファイブを簡素化した、ショートビッグファイブを用いてアンケートを実施した。
アンケート調査は、自身で作成した、福祉に関するアンケート(属性として年齢含む)とショートビッグファイブで計20問の質問を行い、192件の有効回答を得ることができた。
ショートビッグファイブ・・・性格特性(5因子)において、1~7の数値で分析する方法。
10項目(1因子につき2項目ずつ)の質問に対し、当てはまらないと思うものに“1”に近い数値、当てはまると思うものに“7”に近い数値を選択してもらうことで、量的に分析・集計する。

アンケート結果と考察

アンケート結果と考察を3つ紹介する。

図1

 

①reasonable accommodation と福祉の既成概念

Q.福祉と聞いて思い浮かぶ言葉で近いものを選んでください。(複数選択可)

では、(趣旨)合理的配慮の語源である reasonable accommodation のそれぞれの単語の意味から熟語を8つ作成した。
図1のように、合理的配慮の趣旨を伝播する言葉として、「理解力」や「適応」及び類義語を 用いるとよい事が分かった。



図2

②認知的不協和・適応機制と性格特性

性格特性(外向性)× Q.あなたが感じる苦手・不得意なものに抱くイメージとして、
近いものを選択してください。

では、図2のように、 「克服」を選択する人は、若干だが外向性が低く、 「逃避」を選択する人は、外向性が高い事が分かる。
この結果から、障害や障壁に対して「克服」を強要するのではなく、 性格特性に応した支援方法でアプローチをすることでより個人の特性に合わせた支援を実現できるのではないかと感じた。



図3

③インクルーシブの意識と年齢

属性(年齢)× Q.社会生活を行っていく上で、支援される側と支援する側に分けて関わる必要性を

どのくらいの割合で感じますか。(数字スケールで8段階の選択形式)

では、10歳代は、「分けるべきではない」に近い「3」の割合が多かったことから、 年齢によってインクルーシブ社会への意識が異なる事が分かった。
10歳代から20歳代へのアプローチよりも、30歳代以上へのアプローチを行っていくことで社会全体のソーシャルインクルージョンへの意識が高まると考えた。



さらに分析を進める事で、新たな福祉へのアプローチの手段を抽出し伝播への貢献を行いたいと思う。 

引用文献

引用文献:清水裕士 (2016 ). フリーの統計分析ソフトHAD:機能の紹介と統計学習・教育,研究実践における利用方法の提案  メディア・情報・コミュニケーション研究, 1, 59-73.

小塩真司・阿部晋吾・カトローニ ピノ (2012). 日本語版Ten Item Personality Inventory (TIPI-J)作成の試み パーソナリティ研究, 21, 40-52.