即興演劇の創作プロセスの研究

提供: JSSD5th2021
2021年10月21日 (木) 00:38時点における木竹広賢 (トーク | 投稿記録)による版 (研究の背景)
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-フレームの構築のプロセスに着目 -


木竹広賢/ 九州大学大学院 ユーザー感性学専攻

Keywords: improvisation,collaborative,frame 


研究の背景

  • 即興演劇の定義

即興演劇とは「シナリオがない演劇」である。その場で出てきた アイデアを、俳優同士が互いに受け入れ合いながら、言葉やジェスチャーといったコミュニケーションを介して、 協力しながら場面を創らなくてはならない (中小路・絹川, 2015)
即興劇とはキーワードだけを決めて、役者たちがその場で協働して物語を創作する芝居(半田2014)
と定義されている。
当研究においては、「役者が、脚本や設定がない中でお互いに影響を与え合いながら即興でシーンを作っていく演劇」と定義する。

  • 先行研究の状況

「インプロ」はプロからアマまで演劇界の幅広い層にムーブメントを引き起こしたにもかかわらず、その創立者キース・ジョーンズによる著作の翻訳版その他いくつかの教則本などを除けば、即興そのものはその効果について学術的に書かれた文献はほとんどないといってよい。(ベアーテ・ヴォンデ2007)
「創造性」「多様性」「失敗を恐れない」などをキーワードとした、個人の創造性、教育やビジネスへの応用などを目的とした研究・実践がなされているもののシーンが作られていくプロセス自体についての研究は少ない。

  • 先行研究

sawyer「Improvisational Cultures: Collaborative Emergence and Creativity in Improvisation」
 即興劇が作られるプロセスを3段階に分けている。
   ① pairpart
話者たちが話者交代によって前話者からの影響を受け対話を進めていく過程
   ② collaborative emergence
その連続した対話から相互作用的に物語のframeがうまれる。それは役者一人に還元することはできず、協働的に創られる過程
   ③ downward causation
役者はframeから影響を受けて、新しく対話を進めていく過程

 *フレームとは:そのシーンにおける設定を明確にすにある。

研究目的

本研究では、sawyerの先行研究に基づき、フレームが作られる過程の分析と観察を行う。
フレームの構築の過程と方法を明確にすると同時に、その後のストーリー構築(downward causation)のプロセスにおけるその影響について考察を行う。
このことで即興演劇におけるフレーム構築のプロセスとその後のシーンへの影響を明確にすることを目的とする。

研究方法

当研究では、役者がセリフにより表現したことから、即興演劇の創作プロセスを分析する。
セリフに限定するため身体的な表現の影響を受けずらいオンラインにて2人の演者が行う5分以内のシーンに限定した分析を行う。
そして、シーンについては、
おはよう、こんにちは、こんばんは、ただいま、おかえり、ありがとう、ごめんなさい、すみません、おめでとう、失礼します、久しぶり、元気、お疲れ様です。
というフレームへの影響が少ない一般的な挨拶を2人のうち1人がすることから始めることとした。

・フレームの分類方法 フレームとは:そのシーンにおける設定を明確にするもの。「事実」を決めるもの
フレームの分類
外的事実:時間、天候、場所、背景、
内的事実:登場人物のキャラクター、関係性、ステータス、キャラクターの動機

考察

オンラインにて合計8シーンを演じてもらいフレームの設定についての分析を行った。
 フレームの設定は、シーンの方向性を限定する効果がある。
 初心者の場合には、フレームの設定がないpairpartが続く傾向にある。
 内的事実については初心者と比較し中級者以上においてより多く出現している。
 相手の内的要因を決定するセリフがなされた場合には、相手の創造性を制限している可能性がある。
  内的事実のフレームの決定を自身が行う場合と相手が行う場合には、その後のシーンにおいて差が生じている可能性があるためこのことについてさらに分析、考察を進めていく必要がある。






外部リンク