水族館教育における子どもの学習体験のあり方に関する研究
- 徐 徳恵 / 九州大学
- XU DEHUI / KYUSHU University
Keywords: Service Design
- Abstract
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背景と目的
近年、水族館の多様化が進んでいる。都会の中心で水中世界を体感できる水族館や、インスタレーションなどを取り入れたアート志向の水族館、地域独自の生物を展示しそのエリアの海を再現した水族館など、展示内容や手法が多岐に渡っている。それに伴い水族館の役割や目的も多様化しており、現在日本動物園水族館協会によって、①種の保存②調査・研究③レクリエーション④環境教育の4つの役割が位置付けられている(1)。 また近年の情報化・高齢化に伴い、今日の博物館は一様に生涯学習機関としての役割を担っている。水族館は博物館に含まれるが、博物館を歴史的に捉えると、第一世代を資料の保存、第二世代を資料の公開、現在の第三世代を参加・体験を基軸とした世代として分類するものがある(2)。環境教育や保全教育の重要性が増しており、体験を交えたワークショップやイベントなどの教育活動の取り組みも増えてきている。さらに水族館は博物館の中でも、その地域独自の水生生物を取りあげたり気候や地形の特徴を再現したりするなど、地域との関係が深く、地域間・多世代の教育や交流の拠点として大きく期待されている。 しかし、現在多くの生活者にとって水族館は「休日に遊びに行く場所」である。商業施設やレジャー施設が併設されているなど複合施設となっている館も多く、エンターテイメント施設としての認識が大きいため、教育や保全の役割が社会に浸透していないということが課題として挙げられる。また水槽に併設されている解説版が読まれていなかったり、体験型のプログラムが不十分であったりするなど水族館側の課題も多い。 そこで、本研究では水族館の役割の中でも環境教育に着目する。その中でも、近年、子どもの自然体験の活動の場が減少していること(3)や、未来の社会を担う存在であることに焦点を当て、研究対象を子どもとする。水族館教育における子どもの学習体験の現状を調査し、環境教育の目的や評価手法を明らかにする。そして子どもの水族館との関わり方や学習体験のあり方をデザインする際の要件を抽出することを目的とする。
研究の方法
図に示す。
調査
水族館・自然環境施設の職員3名に対してビデオ会議ツールのZOOMを使用してヒアリング調査を行った。水族館教育の実態を明らかにし、職員の認識や現状の教育における課題を把握することを目的として、水族館の教育活動の理想や現状について尋ねた。 また、
結果と考察
今回ヒアリング調査を行った各職員は、水族館全体の意識と関わらず、教育活動に対する問題意識を持っており、伝えたい内容としては大きく「環境と保全の問題」であることが分かった。来場者に対して対話による教育活動を行う際は、専門用語を使わないことや理解しやすい例えを用いて表現することを心がるなど、教育活動の工夫や意識が見られた。マンネリ化を防ぐための企画や教材のアップデートも少しずつ行っているようだが、今後の課題として挙げられている。また、教育活動で最も重視している点は、興味を持ってもらうための対話やふれあいなどの体験活動であると捉えており、それが将来的な集客の向上にも繋がってくると考えていることが明らかになった。 しかし実際に職員と来場者との対話は、興味を持って尋ねてきた人の質問に答える形で行われていたり、年に数回のイベントの際に体験や対話を行ったりするなどその機会は十分にあるとは言えない。質問の際は親子連れの親が子どもの代わりに質問するケースが多いことや、人を介在する事例の多くは触れ合いなどの体験に偏っており、知識の普及には至っていないことから、興味をきっかけとした知識の理解に結び付いていない来場者が多いのではないかと推測される。また、それが環境や保全の問題を現実のものとして捉え、自分ごと化して考えられていないことにも繋がっているのではないかと考えられる。
まとめ
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脚注
参考文献・参考サイト
- 日本動物園水族館協会「日本動物園水族館協会の4つの役割」
https://www.jaza.jp/about-jaza/four-objectives
- 全国大学博物館学講座協議会西日本部会編(2012)『新時代の博物館学』芙蓉書房出版
- 内閣府(2013)「平成25年版 子ども・若者白書」
- 日本動物園水族館協会の教育事業推進委員会(2002)「動物園・水族館における学習方法・実践・普及に関する調査研究」
- 小玉敏也(2020)「動物園・水族館を活用したESDにおける連携体制の研究」
- 大橋裕太郎 有澤誠(2008)「文化施設における新しいエデュテイメント環境の開発」