「中国人と日本人のテーマパーク消費行動の比較」の版間の差分
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;王 京/明治大学大学院経営学研究科聴講生 | ;王 京/明治大学大学院経営学研究科聴講生 |
2022年10月27日 (木) 17:38時点における版
- 王 京/明治大学大学院経営学研究科聴講生
- Wang Jing/Meiji University
- 磯野 誠/公立鳥取環境大学経営学部教授
- Makoto Isono/ Tottori University of Environmental Studies
Keywords:National Culture, Collectivism, Uncertainty Avoidance, Acceptance of Others' Recommendations, Novelty Seeking
- Abstract
- Consumers' behavior is known to be influenced by the culture they belong. This research focuses on national culture influencing consumption behavior and aimed to compare Chinese and Japanese consumption behavior regarding theme parks. Based on the Hofstade (1983)'s four-dimensional model of national culture, hypotheses were set on the differences between Chinese and Japanese consumption behavior regarding theme parks. Implication regarding the management on theme park business is offered based on the finding.
背景と目的
少子高齢化や本格的な国際交流の進展にあって、日本国政府は、観光を、今後の日本の経済を支える重要な産業の一つとして位置づけている。観光産業は様々な分野から構成されるが、その中でも、娯楽・サービス業に含まれるテーマパーク・遊園地産業は、主要なものとして位置づけられる(総務省 2013)。
テーマパーク・遊園地は、各種遊戯施設により娯楽を提供する場所、あるいは文化、歴史、科学などに関する特定のテーマに基づき施設全体の環境づくりを行う場所とされる(経済産業省 2017)。テーマパーク産業は、海外顧客、特に中国本土からの訪日観光客によって支えられてきた面が大きい。
中国人顧客のテーマパーク消費を考える時、まず必要となることの一つとして、日本人顧客との消費傾向の違いを理解することが挙げられる。国文化の違いは、人の消費傾向の違いとなって現れる。日中文化の違いが理解できれば、日本人顧客のテーマパーク消費傾向の知見をもとに、中国人顧客の消費傾向を推測し、中国人顧客の好みやニーズに適合したサービスなどを企画できるようになるからである。そこで本研究は、日本の観光産業の発展に貢献すべく、テーマパーク消費における日中顧客の消費傾向の違いについての理解を試みる。
研究方法
国レベルの文化と属する人の価値観や行動の関係の説明を試みる一連の研究があるが、その中でもHofstede (1983)による国民文化の4次元モデルは、消費者行動研究に応用されてきた。Hofstede (1983)による国民文化の4次元モデルの中で、個人対集団主義次元は、個人志向あるいは集団志向の程度を指す。不確実性回避次元は、不確実な状況、曖昧で未知の状況に対して脅威を感じ、避けようとする程度を指す。そのHofstede(1983)をもとにして、中国人顧客と日本人顧客のテーマパークについての消費行動の違いについて、次のような仮説を導いた。
- 仮説1:中国人は、日本人よりもより、集団主義にある。
- 仮説2:テーマパーク消費の際に、より集団主義にあれば、より他者からの推奨を受け入れる。
- 仮説3:中国人は、日本人よりもより、不確実性を受け入れる。
- 仮説4:テーマパーク消費の際に、より不確実性を受け入れる傾向にあれば、より新奇性を求める。
研究結果
本仮説は、アンケート調査により検証された。アンケート調査は、2021年6月23日から7月5日にかけて、日本国内およびオンラインにて実施された。回収された全アンケートから無記入や欠損値があるものを除いた有効回答は、合計284部となった。回答から作られたデータベースを統計解析した結果、仮説1と仮説4は支持された。仮説2は部分的に支持された。仮説3は支持されなかった。
考察
仮説1と仮説3の検証結果より、確かに、中国人は、日本人よりもより、集団主義にあることがいえる。一方、中国人は、日本人よりもより、不確実性を受け入れる傾向にあるとはいえない。
仮説2は部分的に支持された。仮説1検証結果と併せて考えれば、中国人は日本人よりもより集団主義にあり、それ故に、他者からの推奨をより受け入れやすいといえる。このことから、テーマパークのマーケティングにおいて、中国人顧客に対しては、特に彼らの準拠集団に訴求することが効果的であろうことが示唆される。
仮説4は支持された。Hofstede(1983)に従えば、中国人と日本人は、不確実性に対する対処の仕方について異なる価値観を持つはずであるが、仮説3検証結果はそれを支持しなかった。このことは、このHofstede(1983)の知見の中国人と日本人の価値観の差の理解への応用については慎重でなくてはならないことを意味する。しかしながら仮説4の結果からは、中国人であろうと日本人であろうと、不確実性を受け入れる傾向にあれば、新奇性を求めるであろうことがいえる。
まとめ
本研究から得られた知見は次のようにまとめることができる。Hofstede(1983)が主張したように、中国人は、日本人よりもより、集団主義にある。それ故に、他者からの推奨を受け入れやすい。また、Hofstede(1983)の主張とは異なり、中国人が、日本人よりもより、不確実性を受け入れる傾向にあるとはいえない。また、中国人であろうと日本人であろうと、不確実性を受け入れる傾向にあれば、新奇性を求めるであろうことがいえる。
本研究からの知見をもとにすれば、次がいえる。まず、Hofstede(1983)が提示した国文化の4次元モデルの、テーマパークを対象としたマーケティング実務への応用は、慎重でなくてはならないであろう。今回の調査では、中国人は日本人よりもより集団主義にあることは支持されたものの、中国人は日本人よりもより不確実性を受け入れる傾向にあることは支持されなかった。より集団主義にあれば、より他者からの推奨を受け入れやすいことから、中国人顧客に向けては、より彼らの準拠集団に訴求したマーケティングが効果的であることが示唆される。一方、不確実性を受け入れる傾向にあれば、より新奇性を求める傾向にあることが示されたが、それ以前に中国人が日本人よりもより不確実性を受け入れる傾向は見受けられなかった以上、中国人が日本人よりもより、新奇性を求める傾向にあるか否かは、本調査結果の限りにおいてはいえない。
参考文献・参考サイト
- Hofstede, G. (1983) Cultures and Organizations: Software of The Mind, 3rd ed., McGraw-Hill, (岩井紀子・岩井八郎(訳)(2013)『多文化世界-違いを学び未来への道を探る』有斐閣.)
- 経済産業省(2017)『平成29年特定サービス産業実態調査』1-9.
- 佐藤和(2015)「アジアにおける企業文化の比較研究に向けて:対欧米とは異なった分類軸の必要性」『三田商学研究』58(2),87- 98.
- 総務省(2013)『日本標準産業分類(平成25年10月改訂)-分類項目名の大分類N生活関連サービス業,娯楽業』1-16.