「琳派を表現するUIデザイン研究」の版間の差分
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− | + | 琳派作品の解説から抽出した具体的な表現特徴を類似するものでまとめ、5つに分類した。分類した表現特徴と工芸のものづくりの特徴を照らし合わせることによって、5つの表現特徴それぞれについて意図を類推し、デザイン手法を導出した。表現特徴、意図、デザイン手法を図2にまとめた。「表現特徴」は琳派の絵画や工芸品のみの特徴であるが、「デザイン手法」は普遍的な特徴であり、工業製品やUIデザインで使える表現である。 | |
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==考察== | ==考察== | ||
− | + | 琳派の特徴は、工芸品を制作する際の制約や使用環境などの条件があるなかで、自然や動植物などを美しく表現するための工夫から生まれたと考えられる。<br> | |
− | + | 現時点でUIデザインガイドラインの調査は進行中であるが、琳派の表現に関する調査で明らかになった5つのデザイン手法のうち、「面と線に抽象化」「アイコン化」「コントラストで主題を強調」の3つは全ての画面に共通する要素のUIデザインに活用でき、「内と外を繋ぐ立体意識」「無限の空間意識」の2つは画面の遷移やスクロールなどの操作を伴うUIデザインに活用できると考えられる。 | |
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==まとめ== | ==まとめ== | ||
− | + | 工芸のものづくりの調査と琳派の表現特徴の調査から、琳派のデザイン手法を導出した。今後は琳派のデザイン手法についてさらに精査していくとともに、UIデザインガイドラインの調査を進め、琳派のデザイン手法をUIに応用したデザイン事例を制作し、検証する。 | |
==注および参考文献== | ==注および参考文献== |
2022年10月27日 (木) 17:48時点における最新版
- 宇山明穂 / 九州大学大学院 芸術工学府
- UYAMA Akiho / Kyushu University Graduate School of Design
Keywords: Rinpa, Japanese Aesthetic, User Interface Design
- Abstract
- The purpose of this study is to identify design methods that express the "Rinpa" aesthetic in user interface design. Focusing on the relationship between Rinpa painters and crafts, I investigated the method of craft making and compared Rimpa works with those of other schools of the same period. I clarified the expressive characteristics and intentions of the Rinpa works. Based on this, I will create and verify user interface design cases expressing the Rinpa.
背景と目的
近年、日本の工業製品の国際競争力が低下してきている中、日本の貴重な資源である日本の美意識を工業製品やサービスにおけるユーザーインターフェース(以下、UI)に活用することで、日本の独自性を発揮し、他国と差別化できると考える。本研究では、日本の代表的な美意識の中でも海外からの認知度が高く、日本の装飾主義を鮮明にあらわした「琳派」に焦点を当て、ユーザーと製品・サービスの接点であるUIデザインで「琳派」の美意識を表現するためのデザイン要件を明らかにすることを目的とする。
研究方法
研究対象
琳派は、桃山時代の俵屋宗達に始まり、元禄期の尾形光琳、文化文政期の酒井抱一へと展開したもので、絵画のみならず染織や蒔絵などの工芸をも包含して、日本の近世絵画史上広く、華やかに展開した[1]。俵屋宗達は町衆たちを相手に絵や美しい紙製品を売る「絵屋」の主人、本阿弥光悦は京都で刀の鑑定や研磨を生業にする家の生まれ、尾形光琳と尾形乾山は「雁金屋」という高級呉服店の息子であり[2]、琳派の作品・画家たちは工芸と関係が深いと言われている。本研究では、琳派を表現するUIのデザイン手法を導出するにあたり、工芸のものづくりに着目した。工芸の作り方や考え方を調査したうえで、琳派の作品の特徴を調べることで、琳派の表現特徴がどのような意図でなされたのかを明らかにできると考える。また、UIに一貫性を確立させるために作られるデザインガイドラインを参考にし、UIの視覚表現の要素を明らかにすることで、琳派の表現特徴と意図を用いたUIの事例を制作できると考える。
研究の流れ
琳派の表現を説明する際には「装飾性」「簡素化」「大胆な構図」などと言われる[3]が、そのように説明される具体的な表現と意図を明らかにし、デザイン手法として一般化しなければ、UIデザインに応用できない。その手がかりとして、先行研究により、琳派の作品は工芸の影響を受けていると言われていることに着目した。そこで、工芸のものづくりについて文献と制作現場を調査し、琳派の作品に多い「屏風」「扇」「硯箱」「陶器」の工芸品の作り方や考え方を明らかにした。
次に、琳派の作品の具体的な表現特徴を抽出し、分類した。美術品の評価については専門的な知識が必要なため、専門家の評価・意見を参考にすることが望ましい。そのため、調査対象は東京国立博物館、京都国立博物館で行われた琳派展[4][5]に共通して展示された作品から選出し、作品解説から特徴を抽出した。類似した特徴をまとめて分類したのち、工芸のものづくりの特徴と照らし合わせることで、その表現特徴がどのような目的のために施されたのか推察した。ここで明らかにした表現特徴と意図から、琳派の美意識を表現するデザイン手法を導出した。
結果
「屏風」「扇」「硯箱」「陶器」4種類の工芸品の作り方と考え方を、工芸のものづくりの特徴として図1にまとめた。
琳派作品の解説から抽出した具体的な表現特徴を類似するものでまとめ、5つに分類した。分類した表現特徴と工芸のものづくりの特徴を照らし合わせることによって、5つの表現特徴それぞれについて意図を類推し、デザイン手法を導出した。表現特徴、意図、デザイン手法を図2にまとめた。「表現特徴」は琳派の絵画や工芸品のみの特徴であるが、「デザイン手法」は普遍的な特徴であり、工業製品やUIデザインで使える表現である。
考察
琳派の特徴は、工芸品を制作する際の制約や使用環境などの条件があるなかで、自然や動植物などを美しく表現するための工夫から生まれたと考えられる。
現時点でUIデザインガイドラインの調査は進行中であるが、琳派の表現に関する調査で明らかになった5つのデザイン手法のうち、「面と線に抽象化」「アイコン化」「コントラストで主題を強調」の3つは全ての画面に共通する要素のUIデザインに活用でき、「内と外を繋ぐ立体意識」「無限の空間意識」の2つは画面の遷移やスクロールなどの操作を伴うUIデザインに活用できると考えられる。
まとめ
工芸のものづくりの調査と琳派の表現特徴の調査から、琳派のデザイン手法を導出した。今後は琳派のデザイン手法についてさらに精査していくとともに、UIデザインガイドラインの調査を進め、琳派のデザイン手法をUIに応用したデザイン事例を制作し、検証する。