日本の椅子デザインのアイデンティティについての研究
- 髙木敬太 / 九州大学 芸術工学府
- KEITA TAKAKI / Kyushu University
Keywords: Product Design, Chair Design, vernacular
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- Abstract
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背景と目的
家具は体の延長であり、社会との関係を持つプロダクトである。多木は『ものの詩学』(1)で「所作や姿勢といった、家具を介した身体と社会の関係」を表す道具であると述べている。また社会の関係には、ヴァナキュラーな地域的性格も含まれると考えられる。平田ら(2)は時代性や社会背景とともに、地域性と家具との関係に言及しているが、具体的な「日本的」、「北欧風」といった、特定の国や地域「らしさ」について、その内容を明確に定義している研究は見られない。そこで本研究では、家具デザインのアイデンティティとしてヴァナキュラーな性格に着目し、日本的なアイデンティティの印象の要因を探る。具体的には家具デザインの中でも、特徴的な椅子デザインを対象とする。日本的な印象と北欧的な印象との比較調査を行うことで、日本的な椅子を評価する際の指標を見出し、客観的な判断基準を示すことを目的とする。
研究の方法
文献調査において、質的調査手法を用い、椅子のヴァナキュラーな性質と関係の深いプロパティを抽出し、日本的な家具と北欧的な家具を比較することで、両者のプロパティおよびディメンションの違いを比較する。その後フィールド調査を行い、それぞれのプロパティと個々のディメンジョンの関係性をインタビューによって調査する。最後に、専門家の評価によって、調査から得られた判断基準の妥当性および今後の活用に関して考察を行う。
文献調査
プロパティの抽出を行う既往研究の調査と抽出されたプロパティを用いた主要文献の調査に分かれる。
既往研究の調査
既往研究の調査では、椅子のヴァナキュラーな性質と関係するプロパティを抽出することを目的とした。椅子のヴァナキュラーな性質は複数の異なる観点から捉えられている。例えば豊口勝平は、人間工学的な視点から日本人が使う椅子はどうあるべきかを考え、形而工房のアームチェアをデザインした(3)。今井、林 韓燮は日本住宅のモデュールや視点の高さから家具を評価している(4)(5)。萩原は「ストーリーのある50の名作椅子」(6)の中で、剣持勇の籐丸椅子について「丸みを帯びたおおらかな造形」から「日本独自の美意識」が感じられると評した。椅子に施された装飾的な紋様と地域性との関係に言及した例もある(7)。岡田らは起居様式を中心とした日本人の生活様式の観点から日本の椅子を評価した(8)。森岡らは家具デザインに影響を与える要因として気候風土に言及している(9)。デザイナーである熊野亘、二俣公一、中村拓志は新たなジャパニーズモダンの椅子をデザインする際に、工業的および手工芸的技術、日本人と木との関係に着目した(10)。森谷延雄は色によって椅子に東洋の雰囲気を表現しようと試みた(3)。 以上の記述から、身体性、空間性、造形、紋様、生活様式、天候、気温、気候環境、材料、表面素材、技術、色の計10個のプロパティを抽出した。
主要文献の調査
既往研究の調査で抽出したプロパティの評価を目的とし、Good Design Award 2012~2021の10年間の受賞作品、雑誌「室内」に1997年~2006年の10年間で掲載された椅子、「近代椅子コレクション ムサビのイス」に収録される346脚の椅子、デンマークデザイン賞受賞作品、スウェーデンデザイン賞受賞作品について調査を行った。具体的には、上記の文献から、特定の国や地域を出して椅子のデザインについて述べた記述を抽出し、既往研究の調査で抽出した10個のプロパティに「その他」を加えた11項目に分類した。 結果を図1のグラフに示す。文献からは合計256個の記述が見つかった。そのうち196個の記述が既往研究の調査で抽出したプロパティによって分類され、60個はその他に分類された。その他の項目については、根拠を示すことなく「~らしい」と述べているものと、既往研究の調査で抽出した10個以外のプロパティに関するものが含まれているが、後者に関しては今後分類および考察を行う。最も記述が多いのが造形、次に同数で材料と技術、その後生活様式、空間性、表面素材、身体性、同数で紋様と色、次に気候環境と続き、この順で椅子のヴァナキュラーな性質と関係が深いと考えられる。さらにそれぞれの記述を事実に即するものと印象を介するものに分類すると、身体性、空間性、気候環境、技術は事実、づいて述べられ、表面素材は印象に基づいて述べられることが分かった。造形、紋様、色の項目に関しては事実と造形の両方が存在する。この3項目の中で、事実に含まれた記述の全てが、伝統的な造形様式、伝統紋様、伝統色といった歴史的な事実を根拠としてヴァナキュラーな性質を述べたものだった。 次に、日本と北欧の比較のため、全体の結果から日本のみ、北欧のみをそれぞれ取り出して分析を行った。 図2に結果を示す。日本についての記述が178個、北欧についての記述が32個見られた。両者の顕著な違いとして、日本については身体性、空間性、生活様式の記述が一定数存在する一方で、北欧では見られないことが挙げられる。身体性は小柄な日本人の体格、空間性は日本の住宅モデュール、生活様式は床座や畳の文化という背景が関係していると考えられる。 全体の中で記述量が多く、かつ日本と北欧の両者に共通して一定数の記述がある造形、材料、技術の項目に対しては、今後ディメンションの違いを明確にする必要がある。 このうち材料と技術の項目に関しては事実に即するもので、追加の文献調査によりディメンションの違いを明確にすることができると考える。しかし造形については、伝統的な様式に関するもの以外は印象の範疇で、文献調査のみで明確にするのは困難であるため、インタビュー調査を行う。
インタビュー調査
文献調査の中で造形を根拠に「日本らしい」または「北欧らしい」と評価された椅子から8脚を選定し、図4のような用紙を用いてインタビュー調査を行う。具体的には、8脚の椅子を比較して、日本的な椅子から北欧的な椅子に並べさせた上で、判断の根拠を聞き出す。
まとめ
文献調査を通して、椅子のヴァナキュラーな性質を構成する指標として、身体性、空間性、造形、紋様、生活様式、気候環境、材料、表面素材、技術、色の10個のプロパティを抽出し、その中でも造形、材料、技術は特にヴァナキュラーな性質と関係が深いことが分かった。 また日本と北欧の比較を通して、身体性、空間性、生活様式については日本的な椅子を論じる場合のみに関係することが分かり、プロパティの違いを見ることができた。
今後の展望
今後は、造形、材料、技術の3つのプロパティについて、追加の文献調査及びインタビュー形式での印象調査を通して日本と北欧を比較することでディメンションの違いを明らかにする。得られた結果より、日本的な家具を評価する際の客観的な判断基準を生成する。
参考文献・参考サイト
- ◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
- ◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
- ◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院
- ◯◯◯◯◯ https://www.example.com (◯年◯月◯日 閲覧)