次代のファブ施設のあり方について
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- 張 端壮 / 九州大学大学院 芸術工学府
- CHO Tanso / Department of Design Strategy, Graduate School of Design, Kyushu University
Keywords: Social Design, Future Design, Fabrication Laboratory, STEAM
- Abstract
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背景と目的
近年3Dプリンタやレーザーカッターをはじめとしたデジタルファブリケーション機器の高性能化、低価格化、小型化により、一般市民の個人によるものづくりが可能になった。2015年に総務省情報通信政策研究所がまとめた「ファブ社会の基盤設計に関する検討会報告書」では、デジタルファブリケーション機器の普及により、「インターネット環境を前提とした、新たなものの企画・設計・生産・流通・販売・使用・再利用が前景化する社会」になると言われており、これまでものづくりに携わっていなかった人々が参画することが期待されている。そのような個人によるものづくりを支援する場として、デジタルファブリケーション機器が設置されたファブ施設がある。日本最初のファブ施設として、ファブラボが鎌倉市とつくば市に設立された2011年からファブ施設は全国的に増加し、2018年には191件になった。しかし利用者の伸び悩み、採算性の問題からその数は減少し、2021年には132件にまで減少した。そこで本研究では、現在のファブ施設の運営における課題と社会がファブ施設に求めている役割を調査し、次代のファブ施設のあり方を提案する。
研究の方法
- 調査①:現在ファブ施設が抱えている課題と今後の展望について明らかにするためにファブ施設運営者に向けてアンケート調査を行なった。
- 調査②:ファブ施設が抱える課題がどのようにして生まれたのかを明らかにするために開設から現在に至るまでの軌跡についてインタビュー調査を行った。
- 調査③:現在ファブ施設がどのようなビジネスモデルで運営されているのかを明らかにするために、事例調査を行った。
- 調査④:STEAM教育においてファブ施設及びデジタルファブリケーションが現在どのように活用されているのかを明らかにするために文献調査、事例調査を行った。
結果
- 結果①:「今後のあり方」についてはファブ施設は地域に根づき、ボトムアップ式に出来上がっているものなので、各々のファブ施設によってあり方が異なる。
- 結果②:開設当初はデジタルファブリケーション機材が珍しく、機材を使用したい人や情報を求める人が訪れ、収益はユーザーの利用料と受託製作の報酬が半分ずつを占めていたが、現在はユーザー数が減少し、収益の大部分が受託製作になっている。ユーザー数が減少した原因は3つある。1つ目は機材が大学や企業など必要な場所に整備され、社会に浸透したこと。二つ目はユーザー自身作りたいものが思いつかないため定着しないこと。3つ目はものづくりをすることに意味を見いだせないことだ。
- 結果③:現在のファブ施設は行政が行なっているものと民間が行なっているものがある。ファブ施設は「インキュベーション型」「公共複合施設型」「工作工房型」「工作工房型」「ホームセンター型」「デザイン・設計事務所型」「製造業型」「コンサルティング・機材販売型」「学習塾型」「大学型」「スペース型」の11のビジネスモデルに分類することができた。民間のファブ施設でユーザーの利用料のみで運営している施設は非常に少ない。
- 結果④:「GIGAスクール構想」(文部科学省)の実現を想定した「未来の教室」(経済産業省)では、EdTech(デジタル技術を活用した教育サービスや技法)による「学びの自律化・個別最適化」と「学びの探求化・STEAM化」の二つを教育における二つの基本コンセプトとしている。
考察
学校の部活動が民間のスポーツクラブに移管したように、学校の探求・プロジェクト型学習を行う教室が民間のファブ施設に移管されることになると思われる。
まとめ
移管される場合に生じる課題や移管された場合にファブ施設に求められるコンテンツや運営者の役割について追調査を行いたいと思う。
脚注
参考文献・参考サイト
- 浅野大介(2021) 教育DXで「未来の教室」をつくろう 学陽書房
- マッシモ・メニキネッリ (2020) ファブラボの全て ビー・エヌ・エヌ新社
- 総務省 (2015) ファブ社会の基盤設計に関する検討会報告書
- 未来の教室実証事業 https://www.learning-innovation.go.jp/ (2022年10月19日 閲覧)