「インスタグラムにおけるフォトインフォト(重ね合わせ写真)の特徴」の版間の差分

提供: JSSD5th2022
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(考察)
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「現在と現在(いま、ここ)の重ね合わせ」の⼀例では、「現在と現在(いま、ここ)の重ね合わせ」とは、その場で写真を撮影してからその写真と背景を重ねて撮ったり、スマートフォンのディス
 
「現在と現在(いま、ここ)の重ね合わせ」の⼀例では、「現在と現在(いま、ここ)の重ね合わせ」とは、その場で写真を撮影してからその写真と背景を重ねて撮ったり、スマートフォンのディス
プレイに目の前の光景を表示させて、その画像が表示されたディスプレイと背景を重ね合わせて撮る撮影方法。
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プレイに目の前の光景を表示させて、その画像が表示されたディスプレイと背景を重ね合わせて撮る撮影方法だ。
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第三の分類に関する一つの足がかりとなると期待できるものに大山顕(2020)がある。大山(2020:151)は、フォトインフォトという言葉は用いていないものの、人間の視覚認識と写真の遠近法の違いを踏まえた写真の現実味に関する考察の中で、写真の中に写真が写った写真を題材に論じている。大山が身につけているライフログカメラが自動的に写した写真に、大山がスマートフォンをもち写真を撮影した瞬間があり、これはまさにフォトインフォトの構図である。大山(2020:150-2)は、ライフログカメラ37と「自分がスマートフォンを使って意図的に撮った」(大山 2020:150)写真とを比較して、このライフログカメラが自動的に撮影した写真の方に「現実味」を感じると述べ、それをゲーム画面と比較しながら論じている。
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この写真に現実味を感じる理由について大山(2020:150-2)は、自分の前に見る主体が置かれることで現実を感じるのではないかと述べている。そして、「視点」の観点から見ると、同種の構図が三人称視点シューティングゲームであるサードパーソン・シューティングゲーム(Third-person shooter、以下TPSと略記)39の画面に見られると指摘している。TPSの画面では、キャラクターがゲーム画面に表示され、プレイヤーはキャラクターの背後からの視点で場面を見ながらゲームをすすめていく。東浩紀(2007:173)はこの視点をプレイヤー視点と名付けているが、このようなTPSだけではなくフォトインフォトという撮影者を背後から撮影するという撮影方法にも当てはまると思われる。フォトインフォトが行われ始めた背景には、ゲームの分野に限らずこの10年ほど40でプレイヤー視点が一般化してきたことが関係している可能性があるが、この詳細な検討については今後の課題としたい。
 
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2022年10月20日 (木) 14:01時点における版

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注)

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福浦友香 / 北海道大学 大学院教育推進機構オープンエデュケーションセンターCoSTEP 
Yuka Fukuura / Communication in Science and Technology Education and Research Program, Hokkaido University 

Keywords: Visual Communication, Photo in Photo, Instagram, Media Design 


Abstract
Lorem Ipsum is simply dummy text of the printing and typesetting industry. Lorem Ipsum has been the industry's standard dummy text ever since the 1500s, when an unknown printer took a galley of type and scrambled it to make a type specimen book. It has survived not only five centuries, but also the leap into electronic typesetting, remaining essentially unchanged.



背景と目的

 2010年に登場したインスタグラムは、毎月世界10億以上のアクティブアカウントにより利用され、1日に共有される写真の枚数は500億枚(2019年7月現在)と報じられている。インスタグラムユーザーは、他のユーザーが投稿した写真から「インスタ映え」や「インスタジェニック」なものや場所を探したり、自らもインスタ映えするような写真の撮影に工夫を凝らしている。
 本研究ではインスタグラムで2014年頃から広まってきたPhoto in Photo(以下「フォトインフォト」)という、あらかじめ撮影した写真や写真撮影の画面を背景や被写体に重ね合わせることで写真の中に写真を写すという特殊な構図の写真撮影を研究対象とする。フォトインフォトは一見すると写真の中の写真が画像編集ソフト等で加工されたもののようにも見えるが、実際にはモノとしての写真(画面に表示された写真もしくはスマートフォンの画面に表示された画像)を現実の風景や建物などと実際に重ね合わせて撮影されている。

研究の方法

図1.◯◯◯◯

フォトインフォトについて扱う研究は少ないが、写真の中に写真について言及した研究がある。写真の中に写真が写っているという現象については、前川(2020:125-8)がSusan Sontag(1977=1979)の『写真論』の表紙を事例として言及しているものが挙げられる。前川(2020:125-8)が言及している表紙とは、写真に手を添えた男性と女性が写ったダゲレオタイプのことであり、この男性と女性は、複数の子どもと女性が映った写真の中の写真の縁に手をそえている。前川(2020:125-8)は、写真の余白となる縁や被写体の視線に焦点を当てて論じており、写真の中の写真をフォトインフォトとは明示していない。しかし、この写真に手をかける男女の写真は、写真の中に写真が写っているという点においてフォトインフォトに属している。
Manovich(2017=2018)の研究の中で明示的には取り上げていないが、デザイン写真として分類し提示しているインスタグラムユーザーのサンプル写真 [1]や「インスタグラムのような」画像として選ばれた写真の中の一枚 [2]にフォトインフォトが含まれている。
本研究では、ビジュアル・コミュニケーションにおける写真の特徴はどのようなものがあるか、ということを明らかにするために、フォトインフォトの発端をまとめ、写真内容に基づいて「重ね合わせ」にどのようなタイプがあるのかを質的に整理する。




結果

フォトインフォトの発端には、シーンフレーミング(Sceneframing)やフィルモグラフィー(FILMography)、フィルムブイエスロケー ション(film vs. location)という2012年から2013年にかけて行われ始めた写真撮影がある。このような写真撮影は、写真の中の写真をドラマや映画のシーンとし、それらが撮影されたロケ地で重ね合わせて行われている。 シーンフレーミングは、フィルム・インドゥースト・ツーリズムの一環として行われている。 本研究では、このようなドラマや映画などのシーンとそれが撮影された場所のフォトインフォトをシーンフレーミングとして統一して呼ぶ。
重ね合わせに使われている写真がフィルム写真であるか、もしくはスマートフォンやタブレットなどの画面に表示されたデジタル写真かを区別せず整理を行った。 フォトインフォトの写真の重ね合わせに注目した結果、フォトインフォトは「虚構と現実の重ね合わせ」、「過去と現在の重ね合わせ」、「現在と現在(いま、ここ)の重ね合わせ」の三つのタイプに分けることができるということがわかってきた。

考察

フォトインフォトは、背景や被写体に写真を重ね合わせるという構図上の特徴の他に、ほとんどの場合、写真の中に印刷された写真やスマート フォンを持つ「手」が写り込んでいるという特徴がある。Manovich(2017=2018:118)は、デザイン写真の特徴の一つに「身体の一部だけが映されている」と指摘したが、フォトインフォトはまさにその典型的な事例と考えられる。そこで、フォトインフォトを「デザイン写真」に属する事例として仮定し議論を進めることとする。
まず第一の「虚構と現実の重ね合わせ」とは、シーンフレーミングにみられるドラマや映画といった物語の世界とそれが撮影された現実が重ね合わせられていることだ。第二の重ね合わせとは、「過去と現在の重ね合わせ」である。これは過去に撮影された写真が現在を背景として撮影されたものである。そして、第三の分類である「現在と現在(いま、ここ)の重ね合わせ」というのは、まずその場で写真を撮影してからその写真と背景を重ねて撮ったり、スマートフォンのディスプレイに表示されている撮影画面とその背景を重ね合わせて撮る撮影方法である。
「虚構と現実の重ね合わせ」の⼀例ではスマートフォンに表示された、『007スカイフォール』でDaniel Craig演じるJames BondとBenWhishaw演じるQがロンドンのナショナル・ギャラリーのJoseph Mallord William Turnerの絵の前で待ち合わせをする場面が写っている。シーンが実際に撮影されたナショナル・ギャラリー展示室34 のジョセフ・ライトとトマス・ゲインズバラの絵を背景として、映画のシーンと重ね合わせて撮影されている。
「過去と現在の重ね合わせ」の⼀例では、「過去と現在の重ね合わせ」とは、現在を背景として過去に撮影された写真が撮影されたものである。 写真の中の写真は雪だるまと⼈が写っており、季節は冬である。一方、重ね合わされている場所は雪の降っていない時期に撮影されている。
「現在と現在(いま、ここ)の重ね合わせ」の⼀例では、「現在と現在(いま、ここ)の重ね合わせ」とは、その場で写真を撮影してからその写真と背景を重ねて撮ったり、スマートフォンのディス プレイに目の前の光景を表示させて、その画像が表示されたディスプレイと背景を重ね合わせて撮る撮影方法だ。
第三の分類に関する一つの足がかりとなると期待できるものに大山顕(2020)がある。大山(2020:151)は、フォトインフォトという言葉は用いていないものの、人間の視覚認識と写真の遠近法の違いを踏まえた写真の現実味に関する考察の中で、写真の中に写真が写った写真を題材に論じている。大山が身につけているライフログカメラが自動的に写した写真に、大山がスマートフォンをもち写真を撮影した瞬間があり、これはまさにフォトインフォトの構図である。大山(2020:150-2)は、ライフログカメラ37と「自分がスマートフォンを使って意図的に撮った」(大山 2020:150)写真とを比較して、このライフログカメラが自動的に撮影した写真の方に「現実味」を感じると述べ、それをゲーム画面と比較しながら論じている。
この写真に現実味を感じる理由について大山(2020:150-2)は、自分の前に見る主体が置かれることで現実を感じるのではないかと述べている。そして、「視点」の観点から見ると、同種の構図が三人称視点シューティングゲームであるサードパーソン・シューティングゲーム(Third-person shooter、以下TPSと略記)39の画面に見られると指摘している。TPSの画面では、キャラクターがゲーム画面に表示され、プレイヤーはキャラクターの背後からの視点で場面を見ながらゲームをすすめていく。東浩紀(2007:173)はこの視点をプレイヤー視点と名付けているが、このようなTPSだけではなくフォトインフォトという撮影者を背後から撮影するという撮影方法にも当てはまると思われる。フォトインフォトが行われ始めた背景には、ゲームの分野に限らずこの10年ほど40でプレイヤー視点が一般化してきたことが関係している可能性があるが、この詳細な検討については今後の課題としたい。

まとめ

脚注

  1. softwarestudies.com , Instagram designed photos montage,(Retrieved May 1 5 2020, https://www.flickr.com/photos/culturevis/27064111290/sizes/k/).
  2. softwarestudies.com , 03-09c,(Retrieved May 1 5 2020,https://www.flickr.com/photos/culturevis/36412735021/in/album- 72157684967892204/).


参考文献・参考サイト

  • ◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
  • ◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
  • ◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院

前川修,2016,「デジタル写真の現在」『美学芸術学論集』(12):6-33. ⎻⎻⎻⎻,2019,『イメージを逆撫でする⎻⎻写真論講義理論編』東京大学出版会. ⎻⎻⎻⎻,2020,『イメージのヴァナキュラー⎻⎻写真論講義実例編』東京大学出版会. Manovich, Lev, 2017, Instagram and Contemporary Image,(久保田晃弘・きりとりめでる共訳・編著,2018,『インスタグラムと現代視覚文化論⎻⎻レフ・マノヴィッチのカル チュラル・アナリティクスをめぐって』ビー・エヌ・エヌ新社.)