メディアの相互作用を用いた対話のデザインの可能性

提供: JSSD5th2022
2022年10月17日 (月) 16:23時点における田中瑛 (トーク | 投稿記録)による版
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- ここにサブタイトルを記載 -


注)

田中 瑛 / 九州大学 大学院芸術工学研究院
Akira TANAKA / Kyushu University
尾方 義人 / 九州大学 大学院芸術工学研究院
Yoshito OGATA / Kyushu University
福間 慎一 / 株式会社西日本新聞社
Shinichi FUKUMA / The Nishinippon Shimbun
井関 隆行 / 株式会社西日本新聞社
Takayuki ISEKI / The Nishinippon Shimbun


Keywords: Citizen-centered Design, Social Inclusion, Media, Deliberation

Abstract
This study examined what conditions the interaction among media can activate citizens' deliberation through the workshop. In this workshop, while the facilitator spoke to participants as an authentic self to help their subjectification, the participants anonymously shared their feelings, opinions and experiences and dialogized in writing online. As a result, many participants felt comfortable speaking about their affairs because they were anonymous and facilitators called. But in addition, as a task, we need to examine what attributes and relationships affect this dialogue by altering conditions.


背景と目的

 近年,様々な文化的な実践においてメディアの活発な利用と民主化が進み,誰もがメディア実践に関与するようになった。これまで,女性,障害者,労働者などの少数者や立場の弱い人々の抱える多様な問題が「私事」として公共的な領域から排除される傾向が批判され(Fraser 1997),より多様な立場や意見に基づき対話を行い,意思決定を行う「熟議民主主義」(Deliberative democracy)が検討されてきた(Young 2000)。具体的には,自分自身の経験や問題意識を安心して打ち明け,共同で検討し,新たな合意を形成するような対話の空間が求められ,「ミニ・パブリックス」など,小規模な熟議を政策決定に反映させる仕組みも,経験的に検証されてきた(田村 2017)。こうした熟議を考える際に重要な論点が,参加者の主体化をどのように促すかであり,そのためには他者による呼びかけが不可欠であることも論じられてきた(Butler 1997=2012)。こうした背景を踏まえて,本研究では,どのような呼びかけとメディア環境が市民が声を上げる上で重要であるのかを検証し,メディアを活用し,周縁化される声を活性化する,小さな対話の空間の設計を提案する。

研究の方法

 本研究では,九州大学大学院芸術工学府の授業「デザイン・シビック」でメディア・ワークショップ(以下、WS)を実施し,受講者(大学院生)が参加した。西日本新聞社の読者参加型企画「あなたの特命取材班」の成立経緯や工夫をヒアリングし,これを参考にWS用のメディア環境を考案した。この環境は,地方自治体やNPO法人におけるヒアリングなど,幅広いシチュエーションでの活用を念頭に置き,既存のメディア・ツールを組み合わせて実装可能なものとした。まず,送り手側については,自分自身を等身大の存在として積極的に自己開示し,信頼を得ることが相手の自己開示を促す上で有効だと考え,対面もしくはオンライン会議ツール「Zoom」を用いて口頭で呼びかける。他方で,受け手側は,発話に際しての心理的安全性を確保するために,オンラインホワイトボード「Miro」に匿名の状態でログインしてもらい,書き言葉で自分自身の経験や意見を述べたり,他の参加者と対話する。そして,2022年6月23日,実際にファシリテーター(20代男性・教員)と受講者が合計1時間のWSを実施した。冒頭15分をWSの趣旨説明,残りの45分を対話の時間とした。話題の設定についても,ファシリテーターと参加者の共通性と異質性を考慮に入れ,「大学生活におけるジェンダー不平等」について対話を重ねた。



考察・結論

 結果的に,書き言葉による匿名のコミュニケーションは参加者の心理的安全性を担保し,多くの参加者から「発言しやすい」というコメントを得られた。また,ファシリテーターによる呼びかけが発言のしやすさに影響したとのコメントも得られた。他方で,こうした参加のしやすさが,ファシリテーター自身の能力や参加者との関係性に依存しており,属人的だとの意見も見られた。今回のWSの場合,ファシリテーターと参加者の間に,年齢や,前提としている認識や環境の差がなく,等身大の対話相手として位置づける上で好条件だった。そのため,様々な属性や経験,語り方を擁するファシリテーターに代替した場合にどのような変化が見られるのかを検証し,呼びかけ方についてはより汎用性の高い方法を模索することとしたい。

脚注


参考文献・参考サイト

  • ◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
  • ◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
  • ◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院