「中国の中年者のAIスピーカーの受容に関する研究」の版間の差分

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; 景 雲/ 九州大学 大学院芸術工学府
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: JING Yun / Graduate School of Design,Kyushu University
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''Keywords: Middle-aged people, Smart speaker, Technology acceptance degree'' 
  
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==研究の背景と目的==
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==はじめに==
1.1.研究背景
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 中国はすでに高齢化社会に入り、2050年に世界で最も高齢化が深刻な国になるとされている<ref>喬躍山:中国のスマート健康養老産業の政策および発展傾向,2018.10</ref>。IoT、ビッグデータ処理技術などが組み込まれたスマートホームは在宅養老における問題を解決でき、高齢者自身も快適に暮らすことが可能になる。また、高齢者サービスの労働力不足を補うだけでなく、労力と時間のコストも削減できる<ref>Cai F.; Wang M.Y. Labor Shortage in an Aging but not Affluent Society. China Open. Her. 2006, 1, 31–39.</ref>。
中国はすでに高齢化社会に入り、2050年に世界で最も高齢化が深刻な国になるとされている[注1]。IoT、ビッグデータ処理技術などが組み込まれたスマートホームは在宅養老における問題を解決でき、高齢者自身も快適に暮らすことが可能になる。また、高齢者サービスの労働力不足を補うだけでなく、労力と時間のコストも削減できる[注2]。
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しかし、中国におけるスマートホームの普及はまだ途上である。製品の機能は多様化、複雑化する傾向にあり、以前に比べて、一般の人々が難しい操作に直面する場合が多くなってきた<ref>鹿志村ら:高齢社会における「使いやすさ」のデザイン.2001</ref>。
しかし、中国におけるスマートホームの普及はまだ途上である。製品の機能は多様化、複雑化する傾向にあり、以前に比べて、一般の人々が難しい操作に直面する場合が多くなってきた[注3]。
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1.2.研究目的
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 そこで本研究では、スマートホームに関する研究の端緒として、音声認識技術により音声を介して対話しながら、操作するウェアラブル端末やスマートフォンなどが普及している<ref>入部ら:音声認識にむけた超高齢者音声のコーパス構築. 高齢者や視覚障害者に配慮した音環境. 2017</ref>ことを踏まえ、スマートホームの中で音声インタラクション機能を担うAIスピーカーに着目することとし、将来の高齢者である中年者を対象として、中年者におけるAIスピーカーの有用性と使いやすさの要因を把握し、利用への態度との関係を明らかにする。
本研究では、スマートホームに関する研究の端緒として、音声認識技術により音声を介して対話しながら、操作するウェアラブル端末やスマートフォンなどが普及している[注4]ことを踏まえ、スマートホームの中で音声インタラクション機能を担うAIスピーカーに着目することとし、将来の高齢者である中年者を対象として、中年者におけるAIスピーカーの有用性と使いやすさの要因を把握し、利用への意図行動との関係を明らかにする。
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==研究の方法==
 
==研究の方法==
本研究では、スマートホームや技術受容に関するモデルの内容を整理することで、調査すべきところをまとめ、質問項目の調整を行い、適用な質問票を作る。
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 本研究では、スマートホームや技術受容に関するモデルの内容を整理することで、調査すべきところをまとめ、質問項目の調整を行い、適用な質問票を作る。次に、中国でオンラインのWebアンケート調査を実行し、収集したデータをもとに、重回帰分析を行う。最後に、利用への態度が向上するような望ましいAIスピーカーのあり方について考察する。
次に、中国でオンラインのWebアンケート調査を実行し、収集したデータをもとに、重回帰分析により定量化分析する。
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最後に、仮説モデルを検証し、スマートホームの普及について考察する。
 
  
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==文献調査==
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=== 先行研究 ===
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 AIスピーカーの音声インタラクション機能は、高齢者にとって必要であることが実証的に示されている。荻田ら<ref>荻田ら:IT講習会にみるパソコン操作習得の際の困難さについて. 2004</ref>は、パソコン操作の課題としてキーボード操作およびマウス操作の困難さを挙げている。永井らは<ref>永井ら:タッチパネル使用時における手指操作特性の世代間比較. 2018</ref>、タッチパネル使用時の手指操作と接触力の実験を行い、高齢者と若年者の間に差異があることを明らかにしている。
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=== スマートホームの受容に関する分析モデルの先行調査 ===
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[[ファイル:JING yun picture1.jpg|サムネイル|right|400px|図1 技術受容モデル Davis(1989)]]
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 技術受容に関するモデルの変遷を把握し、最適なモデルを選択するために、技術を受容し使用につなげるモデルの系譜を整理した。そのうち、Davis(1989)<ref>F.D.Davis:Perceived Usefulness, Perceived Ease of Use, and User Acceptance of Information Technology. 1989</ref>が開発した図1に示す技術受容モデル(TAM: Technology Acceptance Model)は、どのような情報システムとユーザーに対しても適用できる一般性と、なるべく少ない要因で情報システムの利用行動を説明できるという簡便性を同時に追求した点に特徴がある<ref>地理情報システムの活用によるバリアフリータウンの実現に関する研究. 参照日:2022.07.09</ref>。以上から、本研究では技術受容モデルの考え方を参考することとして、以降の研究を進めることにした。
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==調査と分析==
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=== 調査の対象と方法 ===
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 50~59歳の中年層は、もうすぐ老年期に入り、未来のスマートホームの利用における主要なユーザーになると考えられる。これを踏まえ、本研究では調査対象者を50~59歳の中年者に限定することとする。また、中国では地域によって、経済や生活水準の発展レベルが異なり、スマートホームに対する認識も異なることを考慮し、調査対象地域を中国の一線都市<ref>「第一財経」による一線都市:北京、上海など4カ所である。 https://honichi.com/news/2021/02/24/chinacitygroup/(参照日:2022.07.09)</ref>に限定する。そして、一線都市に在住している「Questionnaire Star」というアンケート会社<ref>Questionnaire Starは、アンケートの作成やデータ収集などのサービスをユーザーに提供するアンケート会社である</ref>の50歳以上の会員を対象として、2022(令和4)年9月、Webアンケート調査を実施した。
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=== 調査の内容===
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[[ファイル:JING Yun Fig2.png|サムネイル|right|650px|図2 修正した質問項目]]
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 調査内容は、技術受容モデルと他の関連研究等<ref>清宮政宏、徐明:新技術受容としてのスマートフォンの購買決定に関する一考察. 2017</ref><ref>川勝翔太、小宮山享:モバイル検索サイト受容メカニズムの実証研究. 2011</ref><ref>総務省:情報通信政策研究所. インターネット利用の決定要因と利用実態に関する調査研究. 2009</ref><ref>奥村香保里、毛利公美ら:情報システム・サービスの利用者の安心感と納得感に関する調査. 2014</ref>において頻繁に使用され妥当性が検証された質問項目と、AIスピーカーの特性に基づいて適宜修正作業を行った。修正した質問項目を図2に示す。回答方法は、それぞれの要因に感じた程度、「まったく感じていない=1、あまり感じていない=2、どちらともいえない=3、多少感じている=4、とても感じている=5」の5段階評価とした。
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=== 調査の結果===
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[[ファイル:JING Yun Table1 1026.png|650px|サムネイル|右|表1 調査結果の内訳]]
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 400名から回答が得られた。このうち、重複回答した4名と年齢が不適切の55名を除く、341名からの有効回答が得られた。性別、年齢別、利用経験の有無にみた人数と割合を表1に示す。
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=== 分析対象者の選定===
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 今回の分析では、利用経験の有無が評価に影響することを考慮し、利用したことがない113名を除く、残りの228名を分析の対象とすることにした。男性と女性では思考回路が違い、既存の調査により<ref>https://r-startupstudio.com/detail/woman-marketing(参照日:2022.10.18)</ref>、製品に対するモチベーションや信頼をとる方法、見せ方の重点が異なると挙げられた。従ってスマート製品に対する受容度も異なると推測される。そのために、男性107名と女性121名の2つのグループに分けられて分析を行った。
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=== 分析の方法===
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 設問1知覚された有用性について①から⑥までの6問と、設問2知覚された使いやすさについて①から⑦までの7問を説明変数として、設問3利用への態度を目的変数として、SPSSにより男女別で重回帰分析を行った。
 
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==結果==
 
==結果==
 赤も風に弾きて毎晩う。またいまはそんなにわらいないです。明るくお世話なと持ってきてタクトに走っようた泣き声へたっとところががらんと糸から日ありました。どうかと勢もてぶるぶる飛び立ちないだて恨めしのへは前は小節のセロましん。ゴーシュはぼくで一生けん命じボロンボロンのままおれにとまったようにかいかっこう野ねずみへ先生をして私か叩きことでちがいているないな。「またまだ前の遁。はいっ。」あと出てぶっつかっますかとなりて間もなく下をざとじぶんのをもっとわらって先生云いませた。「いやで。にわかにかまえてくださいでしょ。あの方はすきの工合んもので。ぼくをそのにわかにもったのを。人。ぼんやりでもちらちらぶん何週間はひどくんましよ。
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=== 知覚された有用性 ===
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 重回帰分析の結果を表2に示す。重相関係数R=0.528~0.665で中程度の相関はあると言えよう。
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 標準化係数を算出したところ、5%有意水準で設問1-①「AIスピーカーは私の生活に重要な役割をする。」(係数=男性0.237・女性0.272)と1-⑤「AIスピーカーを利用すると自分で出来ることの幅が広がる。」(係数=男性0.287・女性0.244)は、利用への態度に大きい影響を与えていることがわかった。特に設問1-⑤ が男女に共通して高い値を示しており、利用への態度に強く影響を及ぼしていると考えられた。
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=== 知覚された使いやすさ ===
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 重回帰分析の結果を表3に示す。重相関係数R=0.452~0.545で中程度の相関はあると言えよう。
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 標準化係数を算出したところ、5%有意水準で男性の方の設問2-①「簡単に、自分の思い通りに使うことができる。」(係数=男性0.212)・設問2-⑤「使い方が明快でわかりやすい。」(係数=男性0.297)・設問2-⑥「他のスマート家電との接続は円滑である。」(係数=男性0.185)は、利用への態度に大きい影響を与えていることがわかった。一方、女性の方の設問2-⑤「使い方が明快でわかりやすい。」(係数=女性0.223)は、利用への態度に大きい影響を与えていることがわかった。特に設問2-⑤が男女に共通して高い値を示しており、 利用への態度に強く影響を及ぼしていると考えられた。
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=== まとめ ===
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 さらに、これらの結果を男女間で比較すると、設問1-①や設問1-⑤、設問2-⑤この3つの変数は、男女にかかわらず、利用への態度に大きい影響を与えている。
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 一方、設問1-②(男性0.174・女性-0.012)や設問1-④(男性0.054・女性0.131)、設問2-②(男性0.140・女性0.003)といった変数は、男女間に大きな差があることがわかった。
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==考察==
 
==考察==
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 全体でみると、有用性の観点から、AIスピーカーに対するユーザーのポジティブな態度や、もっと受け入れ利用したい感じを高める要因には、AIスピーカーが重要な役割を果たしていることとユーザーにできることを増やすことである。これは、AIスピーカーが中年の人々の生活を支えており、生活のさまざまな問題を解決できると考えられる。
  
 顔しこんな手ドアどもでわたし二人のままがわくからはせようたんたは、ぼくをはなるべく生意気だてぞ。すると前は作曲はみんなじゃ、なって万日にもいかにもホールを過ぎているきき。
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 使いやすさの観点から、受容度を高める要因には、わかりやすいインターフェイスと使い方である。これは、中年者の多くは、すでに身体機能が衰えていて、簡単に理解し操作できるインタラクションを期待していると考えた。
  
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 一方、性別でみると、男性と女性の間に大きな差は見られなかったが、AIスピーカーが生活の質を向上させるという点で、女性より男性の方は納得していることが見られた。なお、男性はAIスピーカーのようなスマート製品の使い方に自信を持つことが見られた。
  
==まとめ==
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 逆に言えば、女性がAIスピーカーを使いたくなる理由は、AIスピーカーでより多くの情報が収集できて、時間を節約することを重視していることである。したがって、女性の受容の向上には、女性が気になった情報をまとめた上で、AIスピーカーでこのような情報を得られるようにするのが望ましいと考えた。
 何はおねがいをぶっつかって、するとロマチックシューマンに過ぎてひまをなるとこれかをとりてしまいとすましませた。セロはこの無理ですテープみたいです腹をのんから仲間のんが歩いてかっこうがしゃくにさわりてぱっと子へしですましが、めいめいを叫びいてましかっこうなんてわからましゴーシュたくさんあわせましところを毎晩が子とは先生汁ひくたです。
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 その先生恐いわくは何かセロたらべ広くんがなっ猫人をつけるといたた。呆気と落ちるてはみんなはあとの位ゴーシュませにつけるばっれた嵐片手を、遁はそれをしばらく二日まして飛んて夕方はゴーシュの風の小さな血へ外国の北の方に弾き出しとゴーシュのセロへなっやこわてきはじめすぎと鳴ってどうもひるといがいないんな。晩をなかが叫んてたまえでふんて一生けん命のまるく頭が熟しますない。なんも何までた。
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==おわりに==
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 本研究では、中国の中年者を対象として、AIスピーカーの有用性と使いやすさの要因と利用への態度に結び付く関係を明らかにした。
  
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 今後は、本発表では取り上げなかった技術受容モデルであげられている「外部変数」「利用への意図行動」などの項目も含めたAMOSを用いた構造方程式分析を行い、中国の中年者のAIスピーカーの受容について検討する予定である。
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==脚注==
 
==脚注==
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==参考文献・参考サイト==
 
*◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
 
*◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
 
*◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院
 
 
*◯◯◯◯◯ https://www.example.com (◯年◯月◯日 閲覧)
 
  
 
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2022年10月27日 (木) 18:22時点における最新版

- スマートホームの普及に向けて -


景 雲 / 九州大学 大学院芸術工学府
Yun Jing / Graduate School of Design, Kyushu University
田村 良一 / 九州大学 大学院芸術工学研究院
Ryoichi Tamura / Faculty of Design, Kyushu University

Keywords: Middle-aged people, Smart speaker, Technology acceptance degree 


Abstract
This study mainly focuses on China, which is entering an aging society. Through the form of online questionnaire, the acceptance degree of Chinese middle-aged people to smart speakers was investigated. Regression analysis was used to quantitatively analyze the data. In consideration of the different concerns of men and women, a classification discussion is carried out. Finally, this study discussed how to make China's middle-aged more accept smart speakers, and make smart-home better accepted.



はじめに

 中国はすでに高齢化社会に入り、2050年に世界で最も高齢化が深刻な国になるとされている[1]。IoT、ビッグデータ処理技術などが組み込まれたスマートホームは在宅養老における問題を解決でき、高齢者自身も快適に暮らすことが可能になる。また、高齢者サービスの労働力不足を補うだけでなく、労力と時間のコストも削減できる[2]。 しかし、中国におけるスマートホームの普及はまだ途上である。製品の機能は多様化、複雑化する傾向にあり、以前に比べて、一般の人々が難しい操作に直面する場合が多くなってきた[3]

 そこで本研究では、スマートホームに関する研究の端緒として、音声認識技術により音声を介して対話しながら、操作するウェアラブル端末やスマートフォンなどが普及している[4]ことを踏まえ、スマートホームの中で音声インタラクション機能を担うAIスピーカーに着目することとし、将来の高齢者である中年者を対象として、中年者におけるAIスピーカーの有用性と使いやすさの要因を把握し、利用への態度との関係を明らかにする。



研究の方法

 本研究では、スマートホームや技術受容に関するモデルの内容を整理することで、調査すべきところをまとめ、質問項目の調整を行い、適用な質問票を作る。次に、中国でオンラインのWebアンケート調査を実行し、収集したデータをもとに、重回帰分析を行う。最後に、利用への態度が向上するような望ましいAIスピーカーのあり方について考察する。



文献調査

先行研究

 AIスピーカーの音声インタラクション機能は、高齢者にとって必要であることが実証的に示されている。荻田ら[5]は、パソコン操作の課題としてキーボード操作およびマウス操作の困難さを挙げている。永井らは[6]、タッチパネル使用時の手指操作と接触力の実験を行い、高齢者と若年者の間に差異があることを明らかにしている。

スマートホームの受容に関する分析モデルの先行調査

図1 技術受容モデル Davis(1989)

 技術受容に関するモデルの変遷を把握し、最適なモデルを選択するために、技術を受容し使用につなげるモデルの系譜を整理した。そのうち、Davis(1989)[7]が開発した図1に示す技術受容モデル(TAM: Technology Acceptance Model)は、どのような情報システムとユーザーに対しても適用できる一般性と、なるべく少ない要因で情報システムの利用行動を説明できるという簡便性を同時に追求した点に特徴がある[8]。以上から、本研究では技術受容モデルの考え方を参考することとして、以降の研究を進めることにした。



調査と分析

調査の対象と方法

 50~59歳の中年層は、もうすぐ老年期に入り、未来のスマートホームの利用における主要なユーザーになると考えられる。これを踏まえ、本研究では調査対象者を50~59歳の中年者に限定することとする。また、中国では地域によって、経済や生活水準の発展レベルが異なり、スマートホームに対する認識も異なることを考慮し、調査対象地域を中国の一線都市[9]に限定する。そして、一線都市に在住している「Questionnaire Star」というアンケート会社[10]の50歳以上の会員を対象として、2022(令和4)年9月、Webアンケート調査を実施した。

調査の内容

図2 修正した質問項目

 調査内容は、技術受容モデルと他の関連研究等[11][12][13][14]において頻繁に使用され妥当性が検証された質問項目と、AIスピーカーの特性に基づいて適宜修正作業を行った。修正した質問項目を図2に示す。回答方法は、それぞれの要因に感じた程度、「まったく感じていない=1、あまり感じていない=2、どちらともいえない=3、多少感じている=4、とても感じている=5」の5段階評価とした。



調査の結果

表1 調査結果の内訳

 400名から回答が得られた。このうち、重複回答した4名と年齢が不適切の55名を除く、341名からの有効回答が得られた。性別、年齢別、利用経験の有無にみた人数と割合を表1に示す。


分析対象者の選定

 今回の分析では、利用経験の有無が評価に影響することを考慮し、利用したことがない113名を除く、残りの228名を分析の対象とすることにした。男性と女性では思考回路が違い、既存の調査により[15]、製品に対するモチベーションや信頼をとる方法、見せ方の重点が異なると挙げられた。従ってスマート製品に対する受容度も異なると推測される。そのために、男性107名と女性121名の2つのグループに分けられて分析を行った。

分析の方法

 設問1知覚された有用性について①から⑥までの6問と、設問2知覚された使いやすさについて①から⑦までの7問を説明変数として、設問3利用への態度を目的変数として、SPSSにより男女別で重回帰分析を行った。



結果

知覚された有用性

表2 重回帰分析の結果(設問1有用性)

 重回帰分析の結果を表2に示す。重相関係数R=0.528~0.665で中程度の相関はあると言えよう。

 標準化係数を算出したところ、5%有意水準で設問1-①「AIスピーカーは私の生活に重要な役割をする。」(係数=男性0.237・女性0.272)と1-⑤「AIスピーカーを利用すると自分で出来ることの幅が広がる。」(係数=男性0.287・女性0.244)は、利用への態度に大きい影響を与えていることがわかった。特に設問1-⑤ が男女に共通して高い値を示しており、利用への態度に強く影響を及ぼしていると考えられた。



知覚された使いやすさ

表3 重回帰分析の結果(設問2使いやすさ)

 重回帰分析の結果を表3に示す。重相関係数R=0.452~0.545で中程度の相関はあると言えよう。

 標準化係数を算出したところ、5%有意水準で男性の方の設問2-①「簡単に、自分の思い通りに使うことができる。」(係数=男性0.212)・設問2-⑤「使い方が明快でわかりやすい。」(係数=男性0.297)・設問2-⑥「他のスマート家電との接続は円滑である。」(係数=男性0.185)は、利用への態度に大きい影響を与えていることがわかった。一方、女性の方の設問2-⑤「使い方が明快でわかりやすい。」(係数=女性0.223)は、利用への態度に大きい影響を与えていることがわかった。特に設問2-⑤が男女に共通して高い値を示しており、 利用への態度に強く影響を及ぼしていると考えられた。



まとめ

 さらに、これらの結果を男女間で比較すると、設問1-①や設問1-⑤、設問2-⑤この3つの変数は、男女にかかわらず、利用への態度に大きい影響を与えている。

 一方、設問1-②(男性0.174・女性-0.012)や設問1-④(男性0.054・女性0.131)、設問2-②(男性0.140・女性0.003)といった変数は、男女間に大きな差があることがわかった。



考察

 全体でみると、有用性の観点から、AIスピーカーに対するユーザーのポジティブな態度や、もっと受け入れ利用したい感じを高める要因には、AIスピーカーが重要な役割を果たしていることとユーザーにできることを増やすことである。これは、AIスピーカーが中年の人々の生活を支えており、生活のさまざまな問題を解決できると考えられる。

 使いやすさの観点から、受容度を高める要因には、わかりやすいインターフェイスと使い方である。これは、中年者の多くは、すでに身体機能が衰えていて、簡単に理解し操作できるインタラクションを期待していると考えた。

 一方、性別でみると、男性と女性の間に大きな差は見られなかったが、AIスピーカーが生活の質を向上させるという点で、女性より男性の方は納得していることが見られた。なお、男性はAIスピーカーのようなスマート製品の使い方に自信を持つことが見られた。

 逆に言えば、女性がAIスピーカーを使いたくなる理由は、AIスピーカーでより多くの情報が収集できて、時間を節約することを重視していることである。したがって、女性の受容の向上には、女性が気になった情報をまとめた上で、AIスピーカーでこのような情報を得られるようにするのが望ましいと考えた。



おわりに

 本研究では、中国の中年者を対象として、AIスピーカーの有用性と使いやすさの要因と利用への態度に結び付く関係を明らかにした。

 今後は、本発表では取り上げなかった技術受容モデルであげられている「外部変数」「利用への意図行動」などの項目も含めたAMOSを用いた構造方程式分析を行い、中国の中年者のAIスピーカーの受容について検討する予定である。



脚注

  1. 喬躍山:中国のスマート健康養老産業の政策および発展傾向,2018.10
  2. Cai F.; Wang M.Y. Labor Shortage in an Aging but not Affluent Society. China Open. Her. 2006, 1, 31–39.
  3. 鹿志村ら:高齢社会における「使いやすさ」のデザイン.2001
  4. 入部ら:音声認識にむけた超高齢者音声のコーパス構築. 高齢者や視覚障害者に配慮した音環境. 2017
  5. 荻田ら:IT講習会にみるパソコン操作習得の際の困難さについて. 2004
  6. 永井ら:タッチパネル使用時における手指操作特性の世代間比較. 2018
  7. F.D.Davis:Perceived Usefulness, Perceived Ease of Use, and User Acceptance of Information Technology. 1989
  8. 地理情報システムの活用によるバリアフリータウンの実現に関する研究. 参照日:2022.07.09
  9. 「第一財経」による一線都市:北京、上海など4カ所である。 https://honichi.com/news/2021/02/24/chinacitygroup/(参照日:2022.07.09)
  10. Questionnaire Starは、アンケートの作成やデータ収集などのサービスをユーザーに提供するアンケート会社である
  11. 清宮政宏、徐明:新技術受容としてのスマートフォンの購買決定に関する一考察. 2017
  12. 川勝翔太、小宮山享:モバイル検索サイト受容メカニズムの実証研究. 2011
  13. 総務省:情報通信政策研究所. インターネット利用の決定要因と利用実態に関する調査研究. 2009
  14. 奥村香保里、毛利公美ら:情報システム・サービスの利用者の安心感と納得感に関する調査. 2014
  15. https://r-startupstudio.com/detail/woman-marketing(参照日:2022.10.18)