「商店街を取り巻くコミュニティとその役割の変遷」の版間の差分

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2022年10月20日 (木) 00:17時点における版

- 熊本県八代市 本町・通町商店街を事例に -


桑原 温乃 / 九州大学大学院 統合新領域学府 ユーザー感性学専攻
Kuwabara Atsuno / Kyushu University Graduate School of Integrated Frontier Sciences


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Abstract
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背景と目的

商店街は単なる個店単独の経営だけでなく、個店同士の関わりや商店街全体で共同の活動を行いながら維持されてきた。全国各地の商店街は、1962年の商店街振興組合法の制定により、各事業者の発展を目指し、個店同士が協同して経済事業を行うことを目的として、組合を立ち上げ、活性化事業に取り組んできた。しかし、全国的に商店街は衰退の一途を辿っている。空き店舗の増加や各個店の経済力の低下はコロナ禍により追い討ちがかかり、補助金等の行政支援も削減され、商店街組織への収入は激減している。さらには、商店主の高齢化により、商店街組織の経営や事業の担い手が不足している。このような状況に対し、商店街組織は商店街の維持と活性化のため、自走できる事業や人員の確保のため、新たな組織の編成や地域の若者の取り込みに力を入れている。そのように形成されるコミュニティは、商店街の活動の可能性を広げる一方で、構成員が流動的である。また、新たな担い手に依存し、属人的な経営になりがちである。商店街組織が抱える課題の打開策として、若者をはじめとする外部主体の協力を仰ぎ、既存の組織の枠組みにとらわれない経営をしていくことは有効であると考えられる。しかし、その活動の前提には、商店街に根ざした商店街組織の構成員による基盤の維持が不可欠である。そのため、商店街組織が活動し続ける組織であるための仕組みづくりを検討する必要がある。 既存研究の多くは、商店街組織の基本特性を明らかにすることや、商店街組織の活動の比較やその要因を検討することに焦点が当てられている。また、商店街組織とは別に、時代や活動状況に伴い、任意で立ち上がる仲間型組織等が重要な役割を果たす可能性について示唆されてきた。しかし、商店街に関わる組織やその活動が維持されていく上で重要な、組織と商店街の当事者たち、すなわち組織の構成員や個店の経営者の相互作用に関する検討が必ずしも行われていない。 そこで本研究では、熊本県八代市の本町商店街および通町商店街の振興組合とその他の組織構成とその活動の変遷を調査する。その上で、商店街組織の存在と活動が商店街の当事者たちに与えてきた影響について検討する。本研究は、属人的な傾向になりつつある商店街の事業に対して、より多くの当事者たちの活動を促し、組織活動を維持するための条件を提示することを目指す。


研究の方法

 まず、本町・通町商店街に関連する組織が設立された経緯と、これまでの活動状況と構成員について、定款や事業報告書、議事録等の文献調査を行う。それにより、組織そのものやその活動の変遷を把握する。また、組織活動と商店街そのものの変化の関連について調査する。 文献調査により組織変遷の全体像を把握した上で、組織の存在や活動が当事者、すなわち商店主や組織の構成員にもたらした行動や心情、人間関係の変化等について、インタビュー調査で追調査を行う。それらをもとに、商店街組織と当事者の相互作用を考察し、今後の組織活動を維持するための条件を検討する。


文献調査の結果

本町・通町商店街は熊本県八代市の中心商店街である。2018年まちなか活性化協議会タウンマネージャー事業説明会資料によると、本町商店街の店舗数は144店舗で、内47店舗が空き店舗である。(通町商店街についてはデータなし。) 本町・通町商店街の組織については、まず、商店街振興組合法の制定による流れから、本町一丁目商店街振興組合、本町二丁目商店街振興組合、本町三丁目商店街振興組合、通町商店街振興組合の4組合が設立された。4組合の設立時期や4組合に区分された経緯については、現在正確な情報源を調査中である。2004年には、4組合の連合会として、八代中心市街地活性化協議会が組織され、定期的な会合が開かれ、中心市街地の活性化について論議が行われるようになった。その後、2007年に八代市中心市街地活性化基本計画が認定され、その計画期間を終えた2012年に八代中心市街地活性化協議会はまちなか活性化協議会として再編された。現在は、4組合とまちなか活性化協議会を主軸としながら、おかみさん会やまちなか活性化協議会青年部をはじめとする、新たな団体が設立され、協同しながら活性化事業が行われている。さらに、組合あるいは協議会が主催するイベント事業において、その実働部隊が組織内外から集められ、プロジェクトチームを組織した事例がいくつか存在する。特に2011年以降、高校生を中心に、商店街活動に外部からの参加を募る事例が増加している。(これらの任意団体については、設立経緯が明示された資料が見つかっていないため、インタビュー調査の中で追調査を行う必要がある。)


文献調査の考察

現在も主軸となっている4組合と協議会は、法律や計画の制定の流れを受けてその受け皿として設立されている。しかし、その後の事業実施の過程においては、任意団体を立ち上げ、実働を委ねるケースも珍しくない。特に2011年頃以降からはその傾向が顕著である。この変化が活動量の増加によるものである場合は増加した要因を、活動量に大きな変化はなく、内部組織の人材・人員不足によるものである場合はその中で内部の人材が担うべき役割を追究することで、組織活動の維持につながる条件を見出し得ると考えられる。


まとめと今後の展望

文献調査により、本町・通町商店街は全国の商店街の事例にも多くあるように、法律や計画の制定に伴って組織編成を行ってきた。その中でも、自主事業や独自で任意団体の立ち上げなどを行ってきた。その自主的あるいは新しい取り組みに至る背景に、組織の役割と活動の特性があるのではないかと推察できる。 今後は、4組合の構成員を中心とし、先に述べた変遷のポイントや組織活動に立ち会ってきた当事者たちへインタビュー調査を行う。インタビュー調査に組織変遷のポイントにおける当事者たちの認識や行動、心情、商店街全体の様子を把握し、そこから組織が変化しながらも活動の維持をしていくために必要な条件を検討することを目指す。


引用・参考文献・参考サイト

<引用文献> 畢 滔滔(2006)「商店街組織におけるインフォーマルな調整メカニズムと組織活動−千葉市中心市街地商店街の比較分析−」日本商業学会『流通研究』第9巻第1号 熊本県八代市(2007)「八代市中心市街地活性化基本計画」 まちなか活性化協議会タウンマネージャー(2018)「まちなか活性化協議会タウンマネージャー2018年事業説明会資料」

<参考文献> 濵 満久(2008.10)「商店街振興組合法の制定とその意義」名古屋大学総合研究所、Discussion Paper No.78 安倉 良二(2007)「愛媛県今治市における中心商店街の衰退と仲間型組織による再生への取り組み一「今治商店街おかみさん会」の活動を中心に一」経済地理学年報 第53巻 pp.173−197