「捕鯨問題に関する建設的な議論のためのダイアグラムの実践的研究」の版間の差分

提供: JSSD5th2022
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 1-1. 対立構造の整理
 
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 1-2. 情報収集と分類
 
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   1-2.1. 捕鯨の分類
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   1-2.3. 反論の収集と分類
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2. 調査:捕鯨問題に関する社会的主張の活動  
 
2. 調査:捕鯨問題に関する社会的主張の活動  

2022年10月27日 (木) 09:40時点における版

水田雅也 / 九州大学 芸術工学府
Masaya MIZUTA / Graduate School of Design, Kyushu University


Keywords: Whaling Issues, Discussion, Diagram


Abstract
The whaling issue is intertwined with many different types of issues, and there are multiple points of contention. There are books, websites, and infographics that organize this information, but they are sometimes difficult to understand intuitively, or they strongly reflect the producer's point of view, resulting in bias and emotional arguments. Therefore, the purpose of this study is to produce a diagram that enables a bird's-eye view of the whaling issue from multiple perspectives, thereby leading to constructive discussions.


背景と目的

捕鯨問題とは、捕鯨の是非に関する論争である。捕鯨問題は科学や政治、倫理といった様々な問題が絡みあっており、対立の論点も複数存在する。それらの情報が整理された書籍やWEBサイト、インフォグラフィックスは存在するが、直感的に理解しづらいものであったり、捕鯨賛成派や反対派等のように、制作者の視点が強く反映され、その結果バイアスがかかっていたりして、感情的な議論に陥ってしまうこともある。そこで、本研究では、捕鯨問題を複数視点から俯瞰的に理解できるダイアグラムを制作することで、建設的な議論を導くことを目的とする。なお、本発表においては、「捕鯨問題の論点を整理し、ダイアグラムに求められる条件を明らかにすること」を目的とする。

研究の方法

1. 捕鯨問題の論点整理  1-1. 対立構造の整理  1-2. 情報収集と分類    1-2-1. 捕鯨の分類    1-2-2. 立論の収集と分類    1-2-3. 反論の収集と分類

2. 調査:捕鯨問題に関する社会的主張の活動

2-1. ビラ配り
2-2. デモ行進
2-3. 路上パフォーマンス
2-4. 問題点

4. ダイアグラムの制作

5. 公開・検証

なお「2.情報収集と分類」と「3.ダイアグラムの製作」については同時に行なっていく。情報収集と分類については現時点では4つの項目に対して行なっているが、今後分類していくプロセスや、ダイアグラムの製作段階で、新たに必要だと思われた項目に関しては随時追加していく。

結果

対立構造の整理

捕鯨問題における主張の対立はどのような構造なのか整理する。まず、捕鯨問題における主張は「捕鯨肯定論」と「捕鯨否定論」の2つに分類できる。捕鯨肯定論は捕鯨に肯定的な主張で、捕鯨否定論は捕鯨に否定的な主張である。対立は主に捕鯨肯定論あるいは捕鯨否定論の立論に始まり、それに対する反論、さらにまたそれに対する反論、が続くといった構造である。 例えば図2のように捕鯨否定論が立論となる場合は、「クジラは絶滅に瀕しているから捕鯨に反対である」という立論に始まり、それに対する反論として「絶滅に瀕しているのは一部の種である」、さらにそれに対する反論として「捕鯨を続ければ種関係なくいずれ乱獲になる」、さらにまたそれに対する反論、が続くといったものである。

図1. 捕鯨否定論が立論となる場合の対立構造
図2. 捕鯨肯定論が立論となる場合の対立構造

情報収集と分類

1. 捕鯨の分類 捕鯨には様々な種類がある。捕鯨のどの部分に対する肯定論あるいは否定論なのかを明確にするために、まず捕鯨の分類を行う。捕鯨の分類には、「捕獲方法」での分類や「目的」での分類など、分類項目も複数存在する。主張によって言及する分類項目すら異なることもあるので、分類項目についても一つに定めず、複数の分類項目を設ける。

2. 立論の収集と分類 捕鯨肯定論・捕鯨否定論それぞれの立論を網羅的に収集し分類する。その際、立論の詳細や根拠となる統計データを調査し、それらの出典元も全て記録する。

3. 反論の収集と分類 立論に対する反論を網羅的に収集し分類を行う。その際、反論の詳細や根拠となる統計データを調査し、それらの出典元も全て記録する。

4. 出典元の分類 論の根拠となる情報や統計データにおいてもバイアスがかかっている場合がある。そこで、可能な限り中立性を保つために、情報やデータの出典元となる書籍や組織に対して、捕鯨賛成派か捕鯨反対派かを明らかにする。具体的には、「捕鯨賛成派」と「捕鯨反対派」と「不明」の3つに分類する。なお、捕鯨賛成派あるいは捕鯨反対派に分類した場合は、その文言とともに記録する。 ①捕鯨賛成派:捕鯨に賛成するとの文言が明らかに明記されている ②捕鯨反対派:捕鯨に反対するとの文言が明らかに明記されている ③不明:①と②のどちらでもない場合

考察

収集・分類した情報の視覚化を行いダイアグラムを製作する。現時点で生まれたダイアグラムのデザイン要件は以下である。 ①立論や反論、新たな事実などの情報の追加削除が容易であること(情報の中立性) ②分類項目の追加削除が容易であること(新たな切り口) ③検索が容易であること(検索性)

結論

ダイアグラムを活用した議論の場をつくり出し、そこで展開される議論を記録、分析することで図式化と場がどのように機能したのかを検証する。

参考文献・参考サイト

  • 森下丈二, et al. 捕鯨をめぐる対立の構造. 鯨研通信, 2018, 477: 11-17.
  • 佐久間淳子, et al. ドキュメンタリー映画 「The Cove」 がもたらしたもの: 2 本の反論映画でも見えてこない捕鯨問題の本質を探る. 応用社会学研究, 2018, 60: 251-271.
  • 河島基弘. 欧米で鯨が特別視される理由の批判的考察. 群馬大学社会情報学部研究論集, 2010, 17: 1-17.
  • 佐々木芽生. おクジラさまふたつの正義の物語. 第一刷,株式会社集英社,2017,283P, ISBN 978-4087816082