「救急対応を想定した学校保健の在り方に関する研究」の版間の差分

提供: JSSD5th2023
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; Abstract
 
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: In Japanese national university campuses during holidays, there is limited availability of healthcare facilities, and the situation makes it difficult for patients to have an urgent medical care or a suitable place for recovery. This poses accessibility issues to healthcare. Therefore, I studied on the current situation of regulations and operations of healthcare services in Japanese national universities. As a result, in major national universities, campus healthcare services were deemed almost unavailable, and external agency contacts were provided as solutions.  
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: In Japanese national university campuses during holidays, there is limited availability of healthcare facilities and services, and the situation makes it difficult for patients to have an urgent medical care or a suitable place for recovery. This poses accessibility issues to healthcare. Therefore, I studied on the current situation of regulations and operations of healthcare services in Japanese national universities. As a result, in major national universities, campus healthcare services were deemed almost unavailable, and external agency contacts were provided as solutions.  
  
  
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==研究の方法==
 
==研究の方法==
 文献調査として、急病時に必要となる医療施設・サービスについて、国立大学における現状を把握するために、大学の保健管理の規則や大学生の施設・サービス利用実態を調査する。その結果から休日のキャンパスで安心して勉学に励むことができる休日の医療アクセシビリティデザインを考察する。<br>
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 文献調査として、急病時に必要となる医療施設・サービスについて、国立大学における現状を把握するために、大学の保健・健康管理業務の規則や大学生の施設・サービス利用実態を調査する。その結果から休日のキャンパスで安心して勉学に励むことができる休日の医療アクセシビリティデザインを考察する。<br>
  
 
==調査対象==
 
==調査対象==
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==結果==
 
==結果==
 
===大学の保健・健康管理業務の規則について===
 
===大学の保健・健康管理業務の規則について===
大学は学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に基づき学校として分類され、その保健管理等の安全確保の取り決めは学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)によって定められている。同法第七条では、健康診断、健康相談、保険指導、救急処置その他保健に関する措置を行うための施設として、保健室の設置が求められている。また同法第十条では、学校は、救急処置を行う際は必要に応じて学校所在地域の医療機関その他機関との連携に努めるよう定められている。さらに同法第二十三条第四項に基づき、「学校には、学校医を置くものとする」とされ、学校医の基本的職務として「学校医は、学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する」ことが示されている。<br>
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 大学は学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に基づき学校として分類され、その保健管理等の安全確保の取り決めは学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)によって定められている。同法第七条では、健康診断、健康相談、保険指導、救急処置その他保健に関する措置を行うための施設として、保健室の設置が求められている。また同法第十条では、学校は、救急処置を行う際は必要に応じて学校所在地域の医療機関その他機関との連携に努めるよう定められている。さらに同法第二十三条第四項に基づき、「学校には、学校医を置くものとする」とされ、学校医の基本的職務として「学校医は、学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する」ことが示されている。<br>
 
また学校保健法(昭和三十三年法律第五十六号)および学校保健法施行令(昭和三十三年政令第百七十四号)の規定に基づき、および同法の規定を実施するため、保健管理業務の具体的な取り決めについて学校保健安全法施行規則(昭和三十三年文部省令第十八号)が定められている。同規則第二十二条には、学校医の職務執行の準則として以下が示されている。<br>
 
また学校保健法(昭和三十三年法律第五十六号)および学校保健法施行令(昭和三十三年政令第百七十四号)の規定に基づき、および同法の規定を実施するため、保健管理業務の具体的な取り決めについて学校保健安全法施行規則(昭和三十三年文部省令第十八号)が定められている。同規則第二十二条には、学校医の職務執行の準則として以下が示されている。<br>
 
 1)学校保健計画および学校安全計画の立案に参与すること<br>
 
 1)学校保健計画および学校安全計画の立案に参与すること<br>
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===保健センターの利用実態===
 
===保健センターの利用実態===
国立大学保健管理施設協議会<sup>1</sup>によると、約43万人の学生が在籍する57大学において1年間に述べ約13万人が保健管理センターを利用しており、利用目的別では診断書や紹介状発行などの保健サービスの利用が43.6%、その他呼吸器系、怪我、消化器系とメンタル、皮膚をはじめとする一般診療が56.4%を占めるとされる。また学部新入生に限ると、単純計算では在籍者の約27%が保健センターを利用していたとも示されている。
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 国立大学保健管理施設協議会<sup>1</sup>によると、約43万人の学生が在籍する57大学において1年間に述べ約13万人が保健管理センターを利用しており、利用目的別では診断書や紹介状発行などの保健サービスの利用が43.6%、その他呼吸器系、怪我、消化器系とメンタル、皮膚をはじめとする一般診療が56.4%を占めるとされる。また学部新入生に限ると、単純計算では在籍者の約27%が保健センターを利用していたとも示されている。
  
 
==まとめ==
 
==まとめ==
 
 国立大学における保健管理の実態について調査し、下記のことが明らかになった。<br>
 
 国立大学における保健管理の実態について調査し、下記のことが明らかになった。<br>
①救急対応を含む保健管理業務は保健室及び学校医が担当する。<br>
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 1) 救急対応を含む保健管理業務は保健室及び学校医が担当する。<br>
②休日・時間外の保健管理について言及した法・規則はない。<br>
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 2) 休日・時間外の保健管理について言及した法・規則はない。<br>
③対象の国立大学では、休日・時間外の診療に対応していない。ただし、一部の大学では、ホームページにて緊急連絡先や近隣医療機関の検索サービスのリンクを掲載している。<br>
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 3) 対象の国立大学では、休日・時間外の診療に対応していない。ただし、一部の大学では、ホームページにて緊急連絡先や近隣医療機関の検索サービスのリンクを掲載している。<br>
 全調査対象校において、学内の保健管理施設・サービスが休日・時間外には対応不可能とされており、またその対応策として、外部機関の連絡先への誘導が散見されたことから、休日の国立大学内には利用可能な医療施設・サービスが極端に少ない特徴があることが示唆された。以上のような実態から、近隣病院や市区町村との連携体制や学内連絡網の確立・周知、学校構成員への救急対応方法と緊急連絡先に関する教育が重要になると考える。
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 4) 保健センターの利用目的の5割以上が診療であり、保健センターは学生の健康管理にとって重要な役割を果たしている。<br><br>
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 また全調査対象校において、学内の保健管理施設・サービスが休日・時間外には対応不可能とされており、またその対応策として、外部機関の連絡先への誘導が散見されたことから、休日の国立大学内には利用可能な医療施設・サービスが極端に少ない特徴があることが示唆された。以上のような実態から、近隣病院や市区町村との連携体制や学内連絡網の確立・周知、学校構成員への救急対応方法と緊急連絡先に関する教育が重要になると考える。
  
 
==展望==
 
==展望==
国立大学保健センター側へのアンケート調査とヒアリング調査を通して各校の取り組み実態と課題について明らかにし、全国の国立大学に応用可能な休日の医療アクセシビリティデザインの提案と検証を実施したい。
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 国立大学保健センター側へのアンケート調査とヒアリング調査を通して各校の取り組み実態と課題について明らかにし、全国の国立大学に応用可能な休日の医療アクセシビリティデザインの提案と検証を実施したい。
  
 
==参考文献・参考サイト==
 
==参考文献・参考サイト==
 
1. 国立大学法人保健管理施設協議会.(2015). 学生の健康白書2015.
 
1. 国立大学法人保健管理施設協議会.(2015). 学生の健康白書2015.

2023年10月12日 (木) 16:55時点における最新版

- 休日のキャンパス内における医療アクセシビリティに着目して -


山崎賢太郎 / 九州大学大学院 芸術工学府
Kentaro YAMAZAKI / Kyushu University Graduate School of Design

Keywords: Service Design, Inclusive Design, Healthcare, Welfare


Abstract
In Japanese national university campuses during holidays, there is limited availability of healthcare facilities and services, and the situation makes it difficult for patients to have an urgent medical care or a suitable place for recovery. This poses accessibility issues to healthcare. Therefore, I studied on the current situation of regulations and operations of healthcare services in Japanese national universities. As a result, in major national universities, campus healthcare services were deemed almost unavailable, and external agency contacts were provided as solutions.



背景

 本研究は、筆者の大学構内で発作を起こした体験から着想を得た。休日の大学は利用可能な医療設備やサービスが少なく、救急対応や横になって回復を待つための休息が難しいのが現状で、医療へのアクセシビリティに課題がある。大学生に関する研究は、社会環境や生活環境の変化から不安定になりやすい身体的・精神的健康を課題とした先行研究が多い一方、その具体的な対応策の一つである休日の医療アクセシビリティについての研究した事例は数少ない。これらの背景から、持病患者などの多様な学生が、学校で安心・安全に過ごせるようにするための休日の医療アクセシビリティの在り方を考察したいと考えた。

目的

 本研究では、インクルーシブデザインの視点から、大学構内における医療施設・サービスについて、休日の急病時の施設・サービスを対象に研究を行う。国立大学における急病時の施設・サービスを比較分析することで、休日の医療アクセシビリティについて現状を把握することを目的とする。

研究の方法

 文献調査として、急病時に必要となる医療施設・サービスについて、国立大学における現状を把握するために、大学の保健・健康管理業務の規則や大学生の施設・サービス利用実態を調査する。その結果から休日のキャンパスで安心して勉学に励むことができる休日の医療アクセシビリティデザインを考察する。

調査対象

 全国の国立大学に共通する課題の抽出にあたり、北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の 7 校を調査対象とする。選定理由は、地理的に分散しているため全国的な特性を得やすいこと、歴史・規模・体制・学力など多様な観点で共通点が多いことである。

結果

大学の保健・健康管理業務の規則について

 大学は学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に基づき学校として分類され、その保健管理等の安全確保の取り決めは学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)によって定められている。同法第七条では、健康診断、健康相談、保険指導、救急処置その他保健に関する措置を行うための施設として、保健室の設置が求められている。また同法第十条では、学校は、救急処置を行う際は必要に応じて学校所在地域の医療機関その他機関との連携に努めるよう定められている。さらに同法第二十三条第四項に基づき、「学校には、学校医を置くものとする」とされ、学校医の基本的職務として「学校医は、学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する」ことが示されている。
また学校保健法(昭和三十三年法律第五十六号)および学校保健法施行令(昭和三十三年政令第百七十四号)の規定に基づき、および同法の規定を実施するため、保健管理業務の具体的な取り決めについて学校保健安全法施行規則(昭和三十三年文部省令第十八号)が定められている。同規則第二十二条には、学校医の職務執行の準則として以下が示されている。
 1)学校保健計画および学校安全計画の立案に参与すること
 2)学校の環境衛生に関する必要な指導と助言
 3)健康相談
 4)保健指導
 5)定期健康診断および臨時健康診断
 6)その事後措置に基づく疾病予防の処置等
 7)感染症および食中毒に関する指導・助言および予防処置
 8)校長の求めにより救急処置に従事すること
 9)区市町村教育委員会および学校の設置者の求めによる就学時の健康診断、職員の健康診断に従事すること
 10)その他、学校健康管理に関する指導(健康教育を含む)に従事すること
またこれらの職務に従事した際は、必ずその活動の概要を学校医執務記録簿に記入し学校長へ提出することが示されている。

国立大学の保健センターの運営実態

 対象大学の保健センターのホームページから、救急・応急に関わる業務に着目して、各校の保健・健康管理業務の運営実態について調査した(表1)。

表1. 対象大学の保健管理業務の運営時間と救急対応について
大学名 担当組織の名称 対応受付時間 救急・応急等に関する記載 不在時や時間外の対応に関する記載
東京大学 東京大学 保健・健康推進本部 保健センター 平日9:00~16:30 「応急処置」に対応,「急患については問い合わせてください」 記載なし
京都大学 京都大学 環境安全保健機構 産業厚生部門 健康管理室 平日8:30~12:00, 13:00~17:00 「軽微なケガや熱傷等で初期対応が可能な範囲で応急手当または応急処置を行います」,「従来より医師待機による救急体制にはありません」 「不在で急ぐ場合は、連携している施設部環境安全保健課保健衛生掛(16-2400)へ」連絡を推奨
東北大学 東北大学保健管理センター 平日9:00~11:30, 13:00~16:15 記載なし. 記載なし.ただし「仙台市救急・休日当番医」のホームページへのハイパーリンクを記載
九州大学 九州大学 キャンパスライフ・健康支援センター 健康相談室 平日9:00~17:00 記載なし 「休日夜間の診療は行っておりませんので、県内の救急医療体制をご利用下さい(福岡市の救急医療)」とし,福岡市の医療機関検索支援ページへのハイパーリンクを記載
北海道大学 北海道大学保健センター 平日8:30~17:00 「からだの不調や症状についての相談ができ、外傷などの応急処置や近隣の医療機関への紹介などを行っています」,「応急として3日分のくすりの処方ができます」 記載なし.ただし「近隣の医療機関について(札幌市)お問い合わせ」先として「#7119」を記載
大阪大学 大阪大学 キャンパスライフ健康支援・相談センター 平日9:00~12:00, 13:00~17:00 記載なし 「当センターでは、休日夜間の診療及び相談は行っておりません。休日夜間の診療や近隣の医療機関については大阪府医療機関情報システムをご利用ください」,「大阪府医療機関情報システム」へのハイパーリンクを記載,「メンタル緊急連絡先」の時間外は「119番」を推奨
名古屋大学 名古屋大学 総合保健体育科学センター 保健管理室 平日10:00~11:30, 13:30~16:00 記載なし 記載なし

保健センターの利用実態

 国立大学保健管理施設協議会1によると、約43万人の学生が在籍する57大学において1年間に述べ約13万人が保健管理センターを利用しており、利用目的別では診断書や紹介状発行などの保健サービスの利用が43.6%、その他呼吸器系、怪我、消化器系とメンタル、皮膚をはじめとする一般診療が56.4%を占めるとされる。また学部新入生に限ると、単純計算では在籍者の約27%が保健センターを利用していたとも示されている。

まとめ

 国立大学における保健管理の実態について調査し、下記のことが明らかになった。
 1) 救急対応を含む保健管理業務は保健室及び学校医が担当する。
 2) 休日・時間外の保健管理について言及した法・規則はない。
 3) 対象の国立大学では、休日・時間外の診療に対応していない。ただし、一部の大学では、ホームページにて緊急連絡先や近隣医療機関の検索サービスのリンクを掲載している。
 4) 保健センターの利用目的の5割以上が診療であり、保健センターは学生の健康管理にとって重要な役割を果たしている。

 また全調査対象校において、学内の保健管理施設・サービスが休日・時間外には対応不可能とされており、またその対応策として、外部機関の連絡先への誘導が散見されたことから、休日の国立大学内には利用可能な医療施設・サービスが極端に少ない特徴があることが示唆された。以上のような実態から、近隣病院や市区町村との連携体制や学内連絡網の確立・周知、学校構成員への救急対応方法と緊急連絡先に関する教育が重要になると考える。

展望

 国立大学保健センター側へのアンケート調査とヒアリング調査を通して各校の取り組み実態と課題について明らかにし、全国の国立大学に応用可能な休日の医療アクセシビリティデザインの提案と検証を実施したい。

参考文献・参考サイト

1. 国立大学法人保健管理施設協議会.(2015). 学生の健康白書2015.