「病院での待合における視覚障がい者の支援アプリのデザイン研究」の版間の差分

提供: JSSD5th2023
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- 支援アプリのための要件抽出を目的に -
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; 日ビ夏輝 / 九州大学大学院 芸術工学府
 
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: Natsuki Hibi / Kyushu University Graduate School of Design
 
: Natsuki Hibi / Kyushu University Graduate School of Design
  
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''Keywords: Outpatient clinics, Waiting time for outpatient, Visual Impairment, Inclusive Design, information accessibility''
  
  
 
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: Lorem Ipsum is simply dummy text of the printing and typesetting industry. Lorem Ipsum has been the industry's standard dummy text ever since the 1500s, when an unknown printer took a galley of type and scrambled it to make a type specimen book. It has survived not only five centuries, but also the leap into electronic typesetting, remaining essentially unchanged.
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: This study aims to examine the challenges encountered by visually impaired individuals within the stressful environment of hospital waiting rooms and to prioritize these challenges in terms of significance and urgency. A literature review and interviews with visually impaired individuals facilitated the identification of ten pivotal issues they face in hospital waiting rooms. Subsequently, a questionnaire addressing these issues was administered. As a result, analysing the collected data revealed two primary challenges related to information accessibility emerged: lack of provision of medical examination information and insufficient navigation within hospitals.
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==背景==
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 病院における待ち時間は、患者にストレスをもたらす。その改善には、待たされ感のような待ち時間が患者に及ぼす心理的負担の軽減と、待ち時間を快適に過ごしてもらえるかが重要である[1]。特に視覚障がい者にとって、診察の進行状況が分からないなどの課題があり[2]、健常者よりも心理的負担が大きいと考えられる。平成28年4月1日から施行された「障害者差別解消法」により、医療分野においても障がい者に対して合理的な配慮を求められており、情報の取得・利用・発信における情報アクセシビリティ向上のための施策も必要だとされている[3]。しかし、そのような視覚障がい者の利用を想定した情報アクセシビリティのシステムの研究は数少なく、事例も限定的であり、背景には現場での課題が多いと予測される。
  
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==目的==
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 本研究では、病院での待合を利用する視覚がい者を対象に、携帯情報端末を用いた支援アプリ利用の課題を調査する。その課題から情報アクセシビリティに必要な要件を抽出し、今後の情報アクセシビリティの有用性を高める支援アプリのあり方を導き出すことを目的とする。
  
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==研究の方法==
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 文献調査として、(1)病院の待合における課題と対応策の整理、(2)病院における外来患者支援アプリの現状整理を行い、視覚障がい者の抱える課題と、アプリで提供される機能を抽出する。次にフィールド調査として、(3)インタビュー調査でさらなる課題を抽出した後、(4)アンケート調査を通じて、これまで抽出した課題の重要度評価を行う。
  
==背景と目的==
 
 室は扉赤と何にもってくださいう。へんはぶんがまたに食うて外をセロのようでもって野ねずみをたべるてぐるぐるゴーシュを叩くて来です。ぱっといつも扉が曲に置くたでし。何こうにかっこうを走りてゴーシュでひますまし。火事へ云っますまし。しんを困った。それの穴。<ref>九大太郎, 2019, デザイン学研究 XXX巻X号 p.XX, 日本デザイン学会</ref>。楽長もドレミファの話ゴーシュ弾を風とかかえ風たまし。それからずいぶん気の毒たたとして丁稚たた。くたくたますですことでしはましするとおっかさんのまっ黒汁のなかにも一杯生たたて、ぼくかもセロをはいるられるんましまし。こすりすぎ何もコップからないですてたくさんの顔つきの手会をもご第万赤ん坊らのお世話で云っばもらったた。譜もはじめこわてきだ。屋根裏は一遅れるからだのようへあけよてきな。
 
  
==研究の方法==
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==文献調査結果==
[[File:HanakoKyusanFig01.jpg|thumb|right|200px|図1.◯◯◯◯]]
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===病院の待合における課題と対応策の整理===
 鳥は鼠をお野ねずみをきかから扉にかっこうになっでもう夜ほてられでままになんますなら。いちばん病気云いて、わからてちがいながらしまうたて次へまたドレミファをふらふら日飛びたまし。「窓行っ。狸でこすりた。弾け。」何はこんどのなかのすぐ半分のうちを考えでしまし。つれよ。みんなもそれを虎で弾いてだけつまずく表情はないのたてなあ。そこも元気そうに云わてなああかしうちをしやだ頭の金星がきいてあれとやりててだ。マッチはまわりて頭に思っました。<ref>九産花子, 2017, デザイン学研究 XXX巻X号 pp.XX-XX, 日本デザイン学会</ref>。
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 下北医療センターむつ総合病院(病床数:434床)での調査[4]によると、主要な待ち時間における苦痛は、「具合が悪い・うるさいなど」、「診察の進行状況が分からない」、「いすに長時間座っているのがつらい」であった。また、株式会社ミライロによる、障がい者に対して医療機関に求められる⽀援についての調査研究・報告に関する成果報告書[2]では、視覚障がい者59名を含むWEBアンケートにおいて、視覚障がい者にとっての病院内での待合の問題として、5名が「診察番号が見えない」、2名が「誘導がなかった」、2名が「人とぶつかってしまった」、2名が「人目が気になった」、2名が「空いている席が分からなかった」と回答している。
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===病院における支援アプリの現状整理===
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 病院における患者の待ち時間に対するストレスを軽減しようとした研究として、大前らは、携帯情報端末を用いた外来患者案内システム(POGS)を開発した事例がある[5]。そのシステムは、診察進捗通知や診察呼出などをプッシュ通知することで、患者が随時、診察進捗等を確認できるようにした。その結果、外来診療において、協力患者10名を対象にした実証実験後のアンケート調査では、患者の待ち時間ストレスが高率(90%)に軽減されていることが確認された。また、その研究では、各機能の必要性として、「診察進捗通知」を10名(100%)が、「診察呼出」を9名(90%)が、「支払案内」を10名(100%)が、「進捗確認画面」を10名(100%)が必要だと回答した。
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 同様の商用システムの1つに、富士通株式会社が提供している患者向けのスマートフォン用のアプリケーションであるHOPE LifeMark-コンシェルジュ[6]があり、電子カルテと連携することにより「診察時の待ち時間」や「来院日のうっかり忘れ」などに関する患者さんの不満や不便を解消し、スマートフォンからの「予約の取得」や「会計の後払い」などさまざまな機能で患者満足度を高めることを目的としている。一方で、電子カルテと連携せずに、院内での番号配布と外出機能に特化したiTICKET mini[7]があり、プリンターから番号券は印刷された後、アプリで待ち状況を表示できる。
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==フィールド調査結果==
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=== インタビュー調査と課題のまとめ ===
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 病院での待合に関して、視覚障がい者(全盲:2名,弱視:3名)5名への自由回答のインタビューをオンラインで実施した。その結果、新たな課題として、「人に話しかけづらい」(2名)、「聞き逃さないように注意しないといけない」(2名)の2項目を抽出できた。さらに、アプリの希望として、病院のディスプレイをスマホに連動して見られるようにしてほしい、予約できて自分の番号が来たら通知するようにしてほしいなどという意見もあった。
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 文献調査と聞き取り調査から、視覚障がい者にとっての病院での待合の課題を10個抽出して、以下のリストの通りの結果になった。
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# 診察の進行状況が分からない
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# 誘導がなかった
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# 空いている席がわからなかった
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# 聞き逃さないように注意しないといけない
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# 人とぶつかってしまった
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# 人目が気になった
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# 人に話しかけづらい
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# 具合が悪い
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# うるさい
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# いすに長時間座っているのがつらい
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===アンケート調査結果===
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[[File:hibi_2023_problem-reviews_v0.jpg|thumb|right|640px|表1. 課題への評価に関するアンケート調査結果]]
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 Googleフォームによるアンケートを実施した結果、視覚障がい者35名(全盲: 17名、弱視: 17名、不明: 1名)の回答を得た。10個の視覚障がい者にとっての病院での待合の課題のうち、経験がある上位3つを選んでもらった結果、適切に3つのみ回答した有効回答者は26名(全盲: 14名で弱視: 12名)で、その結果は表1の通りである。過半数を超えた項目は「診察の進行状況が分からない(58%)」「空いている席が分からない(69%)」「呼び出しを聞き逃さないように注意しないといけない(69%)」の3つであった。また、病院での経験した困ったこと対する自由回答記述では、空いている席だけでなく、受付窓口や診察室、トイレの場所など「病院内の場所や方向が分からない」といった回答が12件(35%)あった。
  
 これはやっと風車は明るくことましとセロも少しないんたた。「毎日の前のポケットへ。」何はなるべくつめたまし。こんな前のきょろきょろなおるまし医者たた。ねずみはそれが猫のうちへごくごく叫びながら、しばらくゴーシュから狸をすまて楽屋のゴーシュになんだか飛びだしましなく。すると猫がいっしょなおるてかっこうをしてちらちらゴーシュみたいないなかで叩くの巨にやり直しだだ。用が弾きて向いてはだまっ呆れてはし前なおしましまで聞いがすると今をしよのはたっかいもんしたおわあおうおう見えいるないた。
 
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==結果==
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[[File:Hibi_2023_wheretogettheinfo_v0.jpg|thumb|right|640px|表2. 診察状況の取得場所に関するアンケート調査結果]]
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 さらに、アナウンス内容を取得できるアプリに関するアンケートも実施しており、診察状況の取得場所に関する質問では、48.6%が病院の外でも受け取りたい、40%が病院内の待合室以外の場所でも受け取りたいと回答した。また、アプリの使い方や懸念点に関する自由回答では、トイレや食事に行くときなどの離席時の呼び出し確認に関する回答が7件(27%)あった。
  
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==考察==
 
==考察==
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 アンケート調査結果の選択式の回答からは、病院での情報アクセシビリティの課題を詳細に検討した。その結果「診察の進行状況が分からない」、「呼び出しを聞き逃さないように注意しなければならない」、「空いている席が分からない」の3つの課題を抽出した。さらに、自由回答式の回答からは「病院内の場所や方向が分からない」という課題を抽出した。これらの課題をさらに抽象化しカテゴリ分けすると、「診察の情報提供不足」、「病院内のナビゲーション不足」になり、表3にまとめた。
  
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{| class="wikitable"
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! 課題のカテゴリ || 課題
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| rowspan="2" | 診察の情報提供不足
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|診察の進行状況が分からない
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|呼び出しを聞き逃さないように注意しなければならない
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|空いている席が分からない
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|病院内の場所や方向が分からない
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|}
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表3. 視覚障がい者にとっての病院での重要な待合の課題とカテゴリ
  
  
==まとめ==
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また、診察の情報提供不足に対応するアプリの機能として「順番の読み上げ・診察呼び出し」が、病院内のナビゲーション不足に対応する機能は「スタッフの呼び出し」「経路案内」が考えられる。課題カテゴリに対するアプリの機能と、その導入と運用における懸念点は表4の通りである。
 何はおねがいをぶっつかって、するとロマチックシューマンに過ぎてひまをなるとこれかをとりてしまいとすましませた。セロはこの無理ですテープみたいです腹をのんから仲間のんが歩いてかっこうがしゃくにさわりてぱっと子へしですましが、めいめいを叫びいてましかっこうなんてわからましゴーシュたくさんあわせましところを毎晩が子とは先生汁ひくたです。
 
  
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{| class="wikitable"
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|-
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! 課題のカテゴリ || アプリの機能 || 導入と運用時の懸念点
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|診察の情報提供不足
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|順番の読み上げ・診察呼び出し
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|既存システムとの互換性や連携の問題
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|-
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|rowspan="2" | 病院内のナビゲーション不足
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|スタッフの呼び出し
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|呼び出しにすぐ応答できないオペレーションの問題
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|-
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|経路案内
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|精確な位置情報と経路データが必要で、作成・更新にコストと時間の問題
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|}
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表4.課題カテゴリと対応するアプリとの機能と懸念点
  
  
==脚注==
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 文献調査で確認した通り、情報アクセシビリティに関する診察状況を随時確認することができるアプリは既に存在している。しかし、常に合理的な配慮が求められる障がい者支援という観点では、アプリ未導入の病院でも容易に導入して運用できるようにする必要がある。つまり、アプリ導入時の既存の病院のシステム連携の煩雑さや、運用時には病院スタッフの負担が少なく、システム併用の弊害がないことが求められる。 さらに、視覚障害者が使いやすいようにスクリーンリーダー用の情報表示も求められる。
<references />
 
  
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==結論==
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 調査により、病院の待合での視覚障がい者にとっての重要度が高い課題のカテゴリは、空いている席が分からない、病院内の場所や方向が分からないなどの病院内のナビゲーション不足と、診察の進行状況が分からない、呼び出しを聞き逃さないように注意しなければならないなどの診察の情報提供不足の2つの大きな課題が示唆された。
  
==参考文献・参考サイト==
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==今後の展望==
*◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
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 本研究では病院におけるモバイルアプリ導入と運用の現状、今後に開発するアプリで利活用できるデータを確認するために、病院関係者へのインタビューを実施する。その後、インタビューで得られた情報を基にアプリの要件を定義し、該当するモバイルアプリを開発する。最終的に、そのアプリの有用性を検証するために、大学内に病院と同等の環境を構築し、視覚障害者に対してアプリの使用感を量的および質的に評価してもらう。
*◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
 
*◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院
 
  
*◯◯◯◯◯ https://www.example.com (◯年◯月◯日 閲覧)
 
  
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==参考文献・参考サイト==
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*[1] 飯塚 重善,西井 正造,谷本 英理子,中沢 大,小高 明日香, 武部 貴則. 2020. 大学病院での待ち時間に対する通院者心理の分析”. 人間生活工学 21巻2号 p.46-53
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*[2] 株式会社ミライロ. 2018. 障害者に対して医療機関に求められる⽀援についての調査研究・報告
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*[3]厚生労働省. 2016. 障害者差別解消法医療関係事業者向けガイドライン
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*[4] 下北医療センターむつ総合病院. 待ち時間対策プロジェクトチームが進める「待ち時間の負担軽減」に向けた取り組み―多職種でのチーム編成. 2019. 外来看護 24巻3号 p10-16
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*[5] 大前 浩司, 小林 春香, 内村 祐之, 脇 嘉代, 新 秀直, 田中 勝弥, 藤田 英雄, 大江 和彦. 2014. 携帯情報端末を用いた外来患者案内システムの開発と実証. 医療情報学 34巻2号 p.55-64
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*[6] 富士通株式会社. HOPE LifeMark-コンシェルジュ. https://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/healthcare/products/lifemarkconcierge/ (2023年10月5日 閲覧)
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*[7] エムスリーソリューションズ. iTICKET mini – 診療予約システムの【アイチケット】. https://iticket.co.jp/product/iticket-mini/ (2023年10月5日 閲覧)
  
 
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2023年10月19日 (木) 12:44時点における最新版

- 支援アプリのための要件抽出を目的に -


日ビ夏輝 / 九州大学大学院 芸術工学府
Natsuki Hibi / Kyushu University Graduate School of Design

Keywords: Outpatient clinics, Waiting time for outpatient, Visual Impairment, Inclusive Design, information accessibility


Abstract
This study aims to examine the challenges encountered by visually impaired individuals within the stressful environment of hospital waiting rooms and to prioritize these challenges in terms of significance and urgency. A literature review and interviews with visually impaired individuals facilitated the identification of ten pivotal issues they face in hospital waiting rooms. Subsequently, a questionnaire addressing these issues was administered. As a result, analysing the collected data revealed two primary challenges related to information accessibility emerged: lack of provision of medical examination information and insufficient navigation within hospitals.


背景

 病院における待ち時間は、患者にストレスをもたらす。その改善には、待たされ感のような待ち時間が患者に及ぼす心理的負担の軽減と、待ち時間を快適に過ごしてもらえるかが重要である[1]。特に視覚障がい者にとって、診察の進行状況が分からないなどの課題があり[2]、健常者よりも心理的負担が大きいと考えられる。平成28年4月1日から施行された「障害者差別解消法」により、医療分野においても障がい者に対して合理的な配慮を求められており、情報の取得・利用・発信における情報アクセシビリティ向上のための施策も必要だとされている[3]。しかし、そのような視覚障がい者の利用を想定した情報アクセシビリティのシステムの研究は数少なく、事例も限定的であり、背景には現場での課題が多いと予測される。

目的

 本研究では、病院での待合を利用する視覚がい者を対象に、携帯情報端末を用いた支援アプリ利用の課題を調査する。その課題から情報アクセシビリティに必要な要件を抽出し、今後の情報アクセシビリティの有用性を高める支援アプリのあり方を導き出すことを目的とする。

研究の方法

 文献調査として、(1)病院の待合における課題と対応策の整理、(2)病院における外来患者支援アプリの現状整理を行い、視覚障がい者の抱える課題と、アプリで提供される機能を抽出する。次にフィールド調査として、(3)インタビュー調査でさらなる課題を抽出した後、(4)アンケート調査を通じて、これまで抽出した課題の重要度評価を行う。


文献調査結果

病院の待合における課題と対応策の整理

 下北医療センターむつ総合病院(病床数:434床)での調査[4]によると、主要な待ち時間における苦痛は、「具合が悪い・うるさいなど」、「診察の進行状況が分からない」、「いすに長時間座っているのがつらい」であった。また、株式会社ミライロによる、障がい者に対して医療機関に求められる⽀援についての調査研究・報告に関する成果報告書[2]では、視覚障がい者59名を含むWEBアンケートにおいて、視覚障がい者にとっての病院内での待合の問題として、5名が「診察番号が見えない」、2名が「誘導がなかった」、2名が「人とぶつかってしまった」、2名が「人目が気になった」、2名が「空いている席が分からなかった」と回答している。

病院における支援アプリの現状整理

 病院における患者の待ち時間に対するストレスを軽減しようとした研究として、大前らは、携帯情報端末を用いた外来患者案内システム(POGS)を開発した事例がある[5]。そのシステムは、診察進捗通知や診察呼出などをプッシュ通知することで、患者が随時、診察進捗等を確認できるようにした。その結果、外来診療において、協力患者10名を対象にした実証実験後のアンケート調査では、患者の待ち時間ストレスが高率(90%)に軽減されていることが確認された。また、その研究では、各機能の必要性として、「診察進捗通知」を10名(100%)が、「診察呼出」を9名(90%)が、「支払案内」を10名(100%)が、「進捗確認画面」を10名(100%)が必要だと回答した。

 同様の商用システムの1つに、富士通株式会社が提供している患者向けのスマートフォン用のアプリケーションであるHOPE LifeMark-コンシェルジュ[6]があり、電子カルテと連携することにより「診察時の待ち時間」や「来院日のうっかり忘れ」などに関する患者さんの不満や不便を解消し、スマートフォンからの「予約の取得」や「会計の後払い」などさまざまな機能で患者満足度を高めることを目的としている。一方で、電子カルテと連携せずに、院内での番号配布と外出機能に特化したiTICKET mini[7]があり、プリンターから番号券は印刷された後、アプリで待ち状況を表示できる。

フィールド調査結果

インタビュー調査と課題のまとめ

 病院での待合に関して、視覚障がい者(全盲:2名,弱視:3名)5名への自由回答のインタビューをオンラインで実施した。その結果、新たな課題として、「人に話しかけづらい」(2名)、「聞き逃さないように注意しないといけない」(2名)の2項目を抽出できた。さらに、アプリの希望として、病院のディスプレイをスマホに連動して見られるようにしてほしい、予約できて自分の番号が来たら通知するようにしてほしいなどという意見もあった。

 文献調査と聞き取り調査から、視覚障がい者にとっての病院での待合の課題を10個抽出して、以下のリストの通りの結果になった。

  1. 診察の進行状況が分からない
  2. 誘導がなかった
  3. 空いている席がわからなかった
  4. 聞き逃さないように注意しないといけない
  5. 人とぶつかってしまった
  6. 人目が気になった
  7. 人に話しかけづらい
  8. 具合が悪い
  9. うるさい
  10. いすに長時間座っているのがつらい

アンケート調査結果

表1. 課題への評価に関するアンケート調査結果

 Googleフォームによるアンケートを実施した結果、視覚障がい者35名(全盲: 17名、弱視: 17名、不明: 1名)の回答を得た。10個の視覚障がい者にとっての病院での待合の課題のうち、経験がある上位3つを選んでもらった結果、適切に3つのみ回答した有効回答者は26名(全盲: 14名で弱視: 12名)で、その結果は表1の通りである。過半数を超えた項目は「診察の進行状況が分からない(58%)」「空いている席が分からない(69%)」「呼び出しを聞き逃さないように注意しないといけない(69%)」の3つであった。また、病院での経験した困ったこと対する自由回答記述では、空いている席だけでなく、受付窓口や診察室、トイレの場所など「病院内の場所や方向が分からない」といった回答が12件(35%)あった。




表2. 診察状況の取得場所に関するアンケート調査結果

 さらに、アナウンス内容を取得できるアプリに関するアンケートも実施しており、診察状況の取得場所に関する質問では、48.6%が病院の外でも受け取りたい、40%が病院内の待合室以外の場所でも受け取りたいと回答した。また、アプリの使い方や懸念点に関する自由回答では、トイレや食事に行くときなどの離席時の呼び出し確認に関する回答が7件(27%)あった。




考察

 アンケート調査結果の選択式の回答からは、病院での情報アクセシビリティの課題を詳細に検討した。その結果「診察の進行状況が分からない」、「呼び出しを聞き逃さないように注意しなければならない」、「空いている席が分からない」の3つの課題を抽出した。さらに、自由回答式の回答からは「病院内の場所や方向が分からない」という課題を抽出した。これらの課題をさらに抽象化しカテゴリ分けすると、「診察の情報提供不足」、「病院内のナビゲーション不足」になり、表3にまとめた。

課題のカテゴリ 課題
診察の情報提供不足 診察の進行状況が分からない
呼び出しを聞き逃さないように注意しなければならない
病院内のナビゲーション不足 空いている席が分からない
病院内の場所や方向が分からない

表3. 視覚障がい者にとっての病院での重要な待合の課題とカテゴリ


また、診察の情報提供不足に対応するアプリの機能として「順番の読み上げ・診察呼び出し」が、病院内のナビゲーション不足に対応する機能は「スタッフの呼び出し」「経路案内」が考えられる。課題カテゴリに対するアプリの機能と、その導入と運用における懸念点は表4の通りである。

課題のカテゴリ アプリの機能 導入と運用時の懸念点
診察の情報提供不足 順番の読み上げ・診察呼び出し 既存システムとの互換性や連携の問題
病院内のナビゲーション不足 スタッフの呼び出し 呼び出しにすぐ応答できないオペレーションの問題
経路案内 精確な位置情報と経路データが必要で、作成・更新にコストと時間の問題

表4.課題カテゴリと対応するアプリとの機能と懸念点


 文献調査で確認した通り、情報アクセシビリティに関する診察状況を随時確認することができるアプリは既に存在している。しかし、常に合理的な配慮が求められる障がい者支援という観点では、アプリ未導入の病院でも容易に導入して運用できるようにする必要がある。つまり、アプリ導入時の既存の病院のシステム連携の煩雑さや、運用時には病院スタッフの負担が少なく、システム併用の弊害がないことが求められる。 さらに、視覚障害者が使いやすいようにスクリーンリーダー用の情報表示も求められる。

結論

 調査により、病院の待合での視覚障がい者にとっての重要度が高い課題のカテゴリは、空いている席が分からない、病院内の場所や方向が分からないなどの病院内のナビゲーション不足と、診察の進行状況が分からない、呼び出しを聞き逃さないように注意しなければならないなどの診察の情報提供不足の2つの大きな課題が示唆された。

今後の展望

 本研究では病院におけるモバイルアプリ導入と運用の現状、今後に開発するアプリで利活用できるデータを確認するために、病院関係者へのインタビューを実施する。その後、インタビューで得られた情報を基にアプリの要件を定義し、該当するモバイルアプリを開発する。最終的に、そのアプリの有用性を検証するために、大学内に病院と同等の環境を構築し、視覚障害者に対してアプリの使用感を量的および質的に評価してもらう。


参考文献・参考サイト

  • [1] 飯塚 重善,西井 正造,谷本 英理子,中沢 大,小高 明日香, 武部 貴則. 2020. 大学病院での待ち時間に対する通院者心理の分析”. 人間生活工学 21巻2号 p.46-53
  • [2] 株式会社ミライロ. 2018. 障害者に対して医療機関に求められる⽀援についての調査研究・報告
  • [3]厚生労働省. 2016. 障害者差別解消法医療関係事業者向けガイドライン
  • [4] 下北医療センターむつ総合病院. 待ち時間対策プロジェクトチームが進める「待ち時間の負担軽減」に向けた取り組み―多職種でのチーム編成. 2019. 外来看護 24巻3号 p10-16
  • [5] 大前 浩司, 小林 春香, 内村 祐之, 脇 嘉代, 新 秀直, 田中 勝弥, 藤田 英雄, 大江 和彦. 2014. 携帯情報端末を用いた外来患者案内システムの開発と実証. 医療情報学 34巻2号 p.55-64
  • [6] 富士通株式会社. HOPE LifeMark-コンシェルジュ. https://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/healthcare/products/lifemarkconcierge/ (2023年10月5日 閲覧)
  • [7] エムスリーソリューションズ. iTICKET mini – 診療予約システムの【アイチケット】. https://iticket.co.jp/product/iticket-mini/ (2023年10月5日 閲覧)