「デザイン表現におけるリアリティの創出手法の研究」の版間の差分

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; 李効典 / 九州大学 統合新領域学府
 
; 李効典 / 九州大学 統合新領域学府
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==背景と目的==
 
==背景と目的==
 プロダクトデザインやインテリアデザインのような立体デザインの分野において,レンダリングやスケッチはまだ存在しないアイデアや造形をシミュレーションしたり,第三者にイメージさせたりするために活用されてきた。そのためには,デザイン表現における「真実」を写すリアリティの手法の研究が必要である。通常,人々が理解しているリアリティは外観上の類似性である。すなわち,リアリティがあればあるほど,虚構の制作物の外観が実物の外観と似ていることになる。しかし,外観上の類似性だけで,リアリティという概念をうまく説明することはできない。ゆえに,外観の類似性以外,心理上のリアリティも欠かせないと考えられる。心理的なリアリティを実現するには,多角的な側面からリアリティを探ることが必要であると考えられる。
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  以上の研究背景により,本研究はデザインに活用されているレンダリングの心理面に焦点を当て,観者をリアリティと思いさせるために,研究を行う。要素の明確化,プロトタイプの検証,手法の導出,3点は研究目的とする。
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プロダクトデザインやインテリアデザインのような立体デザインの分野において,レンダリングやスケッチはまだ存在しないアイデアや造形をシミュレーションしたり,第三者にイメージさせたりするために活用されてきた。そのためには,デザイン表現における「真実」を写すリアリティの手法の研究が必要である。通常,人々が理解しているリアリティは外観上の類似性である。すなわち,リアリティがあればあるほど,虚構の制作物の外観が実物の外観と似ていることになる。しかし,外観上の類似性だけで,リアリティという概念をうまく説明することはできない。ゆえに,外観の類似性以外,心理上のリアリティも欠かせないと考えられる。心理的なリアリティを実現するには,多角的な側面からリアリティを探ることが必要であると考えられる。
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以上の研究背景により,本研究はデザインに活用されているレンダリングを見る時の観者の感性面に焦点を当て,リアリティを感じさせる要素を明らかにし,プロトタイプに取り込むことを本研究の目的とする。
  
 
==研究の方法==
 
==研究の方法==
  
 CGは絵画の創造性と写真の写実性,両方の属性を含むと考えられるので。本研究は,最初,絵画と写真に関する先行研究を踏まえ,芸術作品におけるリアリティのあり方及び仕組みを調査により,リアリティの源である理論や要素を抽出する。そして,その理論や要素を基づき,CGを使って,デザインに関連するプロトタイプの図を作成する。次は,作成したプロトタイプについて,リアリティ創出の有効性を検証する実験を着手する。検証結果によって,デザインにおけるリアリティを生み出す理論や要素の有効性を確認する。最後は有効であると検証された理論や要素を使って,新なデザイン表現手法を導出する。<ref>九産花子, 2017, デザイン学研究 XXX巻X号 pp.XX-XX, 日本デザイン学会</ref>。
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1.まずはリアリティの定義を調査し,その定義から調査対象を選択する。
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2.CGは絵画が持つイマジネーションと写真が持つ写実性の両方の属性を含むと考えられる。絵画と写真に関する先行研究を踏まえ,芸術作品におけるリアリティのあり方及び仕組みを調査する
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3.そこからリアリティの源となる理論や要素を抽出する。
  
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4.理論や要素をベースにし,パラメータを設定する。
  
==調査の概要==
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5.パラメータにより,プロトタイプを作成する。
  
芸術作品におけるリアリティの表現手法を調査するために,複数のビジュアルな芸術ジャンルを取り上げ,作品の中に具体的な表現手法に対して,調査を実施する。本稿では,主に西洋絵画,東洋絵画などを対象にし,絵画作品の中のリアリティの部分を体現する要素を抽出する。
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==調査の結果==
  
==調査対象の選定==
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===リアリティの定義===
  
ルネサンス以降,西洋絵画は遠近法と解剖学の知識を用いることで,「リアリティ」の再現を目指してきた。しかし,19世紀に,ルイ・ダゲールが写真を発明し,写真技術が普及するとともに,絵画における「リアリティ」の再現機能は写真に取ってかわられた。以後,絵画は「リアリティ」をそのまま再現することから離れ,「リアリティ」から独立した表現を目指し,多様な芸術ジャンルが生まれた。1960年代と1970年代前半のアメリカとイギリスでは,と呼ばれる写実主義が現れた。「写実」とは事物の実際のままをうつすことである。スーパーリアリズムは,写真をプロジェクターでキャンヴァス上に投影して転写する手法を採用したが,その作品は,写真のもつ写実性の土台の上に,アーティストの創造性を備え,写真の写実性を超えたリアリティを生み出した。
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まずはリアリティの定義を明確にしておく必要がある。日本語国語大辞典によると,「リアリティ」は①現実,実在②現実性,真実らしさとある。①の意味は,本当に存在していることである。この場合,リアリティは真実と意味が近い。②の意味は,実在するか否かに限らず,心理的に感じるリアリティである。つまり,虚構,真実を問わず,人にそれが真実であると思わせることができればよい。あるいは,それが真実ではないと分かっても,説得力があれば,リアリティがあると言える。この①と②は同じくリアリティの意味であるが,芸術作品の表現対象には,実在しないものが多いので,本稿が主に②の意味を取り上げ,議論を行う。
  
もう1つの「リアリティ」を表現可能の手法はコンピューターグラフィックス(CG)である。20世紀60年代になると,最初のコンピューターグラフィックス(CG)の技術とみられたSketchPadSystemが開発された。70年代以降,陰面消去法やスムーズシェーディング手法,Z-Buffer法のような現代のCGの基礎となるような技術が開発されてきた。デザイン分野への応用は80年代以降である。日本の国内でも企業がデザイン分野への活用を目的としCGシステムを開発しており,「日本ビクター」や「アイ・オー・データ機器」といった企業からもデザインシステム,CGアニメーションシステムが発売されていた。海外では,映画「トロン」においてCGが採用されたほか,映像制作の現場には欠かせないAdobe社の画像加工ソフト「Photoshop」,ドローソフト「Illustrator」が発表された。数十年の発展を経って,今のCG技術は写真の効果を完全に再現することが可能である。
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===芸術作品中のリアリティ===
いま目の前に事実として現れているもののことであるが,芸術の発展と技術の進歩によって,現代においてはリアリティの表現手法が多様化している。従って,本稿では,絵画,撮影,CGを対象として,調査行う必要があると考えられる。
 
  
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文学理論において,二つリアリティと関わるコンセプト”生活におけるリアリティ”と”芸術におけるリアリティ”がある。まず,生活におけるリアリティは客観的な角度から,描写対象に着目する。論述した。見えるもの,感じられるもの,触れるものしか描かない。特に,庶民の生活に身の回りの物やことを描写する。この意味で,芸術作品は,社会内の人々,出来事,および環境をできるだけ忠実に描写し,読者や観客がその作品が彼らの生活経験に関連していると感じることを意味する。
  
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芸術のリアリティとは画家の個人の内面の感情と客観的な現実の間には,辯証的かつ統一的な産物である。画家は現実社会を前提とした素材から出発し,その「芸術における真実」は「生活における真実」から派生する。それから,芸術家個人の美学的理想が作用し,生活の真実を抽出し,再加工し,最終的に芸術的なイメージを創造する。そして,この芸術家個人の適切と考える芸術的なイメージを通じて現実生活を反映しようとする。したがって,”芸術におけるリアリティ”は”生活におけるリアリティ”を超え,特定の歴史的な時代の社会生活の本質と法則をより集中的かつ深遠に反映することができる。
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===調査対象===
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ここで,西洋絵画史の近代絵画を主な対象にし,生活におけるリアリティを表現できる印象派,写実主義および,芸術におけるリアリティを表現可能なキュビスムと東洋絵画の水墨画,日本画を選択し,調査対象とする。
  
 
==考察==
 
==考察==
 西洋画と東洋画に関する調査から、リアリティという概念は単一の定義で正確に要約することが難しいことが明らかになった。たとえば、キュビスムの部分での論述では、リアリティが物体を全面的に表現できることと考えられている。一方、後の写実主義や印象派では、リアリティは身の回りの事物や見える、触れることができるものと定義されている。また、水墨画では、リアリティが生物の気韻を正確に表現する中に存在すると考えられている。絵画のジャンルによって,リアリティの在り方が異なることが分かった。
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西洋画と東洋画に関する調査から,リアリティという概念は単一の定義で正確に要約することが難しいことが明らかになった。たとえば,キュビスムの部分での論述では,リアリティが物体を全面的に表現できることと考えられている。一方,後の写実主義や印象派では,リアリティは身の回りの事物や見える,触れることができるものと定義されている。また,水墨画では,リアリティが生物の気韻を正確に表現する中に存在すると考えられている。絵画の画派によって,リアリティの在り方が異なることが分かった。 
  
 
==今後について==
 
==今後について==
 前述のリアリティの調査結果を踏まえ,以上のリアリティの要素を利用し,実験用のデザイン画像をプロトタイプとして作成する。次は,実験調査により,デザインの評価に対して,リアリティの要素の影響を把握する。最終は結果を基づき,デザインの表現手法を導出する予定である。
 
  
==脚注==
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以上の調査を通じて,抽出した要素を利用し,パラメータを調整し,複数の画像を作成したが,これらの要素が画像にどう影響を与えるか,今は未だ不明である。次の段階で,調査により,影響を解明する予定である。
<references />
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==参考文献・参考サイト==
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*佐々木和彦(1998)『映像のリアリティに関する理論的考察』,年報社会学論集1998,pp47-58
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*木村美奈子(2015)『描画におけるリアリティとは何か』,心理科学Vol.36 No.1,pp29-39
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*清水恭平(2015),『実在性の喚起と不在:絵画におけるリアリティ』,金沢美術工芸大学大学院
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*宮田一乗,笠尾敦司(2001),『CG表現と絵画表現:写実,印象,抽象』,人工知能学会誌Vol.16 No.4,pp567-572
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*大石和久(2013),『疾走する馬のイマージュ論再考』,The Japanese Society for Aesthetics,p82
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*PENG Liying(2015), The "Real" Concept of Courbet's Realistic Painting under Discussion
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*並木誠士(2009),画像のリアリティー-絵画史から,VISION Vol.21,No.4,pp227-231
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*松永拓己(2012),「画の六法」と写実についての一考察,熊本大学教育紀要人文科学No.61,pp193-203
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==参考文献・参考サイト==
 
*◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
 
*◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
 
*◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院
 
  
*◯◯◯◯◯ https://www.example.com (◯年◯月◯日 閲覧)
 
  
 
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2023年10月20日 (金) 12:14時点における最新版

李効典 / 九州大学 統合新領域学府
Li Xiaodian / Kyushu University Graduate School of Integrated Frontier Sciences


Keywords: Product Design, Visual Design, デザインの表現


Abstract
In recent years, the advancement of 3D computer graphics (3DCG) technology has made it possible to achieve almost the same level of realism in rendering as photographs. In design fields that heavily rely on rendering, many designers are striving for realism. The reason for this is that designers often have to convey their designs to others or present them when the actual physical objects may not yet exist, which necessitates the use of realism to enhance the quality of communication and approach closer to the real thing. Realism encompasses two attributes: authenticity and presence. Therefore, it is not just about the similarity in appearance but also the psychological realism that is important. The pursuit of expression that makes the viewer believe that the object is real is meaningful.


背景と目的

プロダクトデザインやインテリアデザインのような立体デザインの分野において,レンダリングやスケッチはまだ存在しないアイデアや造形をシミュレーションしたり,第三者にイメージさせたりするために活用されてきた。そのためには,デザイン表現における「真実」を写すリアリティの手法の研究が必要である。通常,人々が理解しているリアリティは外観上の類似性である。すなわち,リアリティがあればあるほど,虚構の制作物の外観が実物の外観と似ていることになる。しかし,外観上の類似性だけで,リアリティという概念をうまく説明することはできない。ゆえに,外観の類似性以外,心理上のリアリティも欠かせないと考えられる。心理的なリアリティを実現するには,多角的な側面からリアリティを探ることが必要であると考えられる。

以上の研究背景により,本研究はデザインに活用されているレンダリングを見る時の観者の感性面に焦点を当て,リアリティを感じさせる要素を明らかにし,プロトタイプに取り込むことを本研究の目的とする。

研究の方法

1.まずはリアリティの定義を調査し,その定義から調査対象を選択する。

2.CGは絵画が持つイマジネーションと写真が持つ写実性の両方の属性を含むと考えられる。絵画と写真に関する先行研究を踏まえ,芸術作品におけるリアリティのあり方及び仕組みを調査する

3.そこからリアリティの源となる理論や要素を抽出する。

4.理論や要素をベースにし,パラメータを設定する。

5.パラメータにより,プロトタイプを作成する。

調査の結果

リアリティの定義

まずはリアリティの定義を明確にしておく必要がある。日本語国語大辞典によると,「リアリティ」は①現実,実在②現実性,真実らしさとある。①の意味は,本当に存在していることである。この場合,リアリティは真実と意味が近い。②の意味は,実在するか否かに限らず,心理的に感じるリアリティである。つまり,虚構,真実を問わず,人にそれが真実であると思わせることができればよい。あるいは,それが真実ではないと分かっても,説得力があれば,リアリティがあると言える。この①と②は同じくリアリティの意味であるが,芸術作品の表現対象には,実在しないものが多いので,本稿が主に②の意味を取り上げ,議論を行う。

芸術作品中のリアリティ

文学理論において,二つリアリティと関わるコンセプト”生活におけるリアリティ”と”芸術におけるリアリティ”がある。まず,生活におけるリアリティは客観的な角度から,描写対象に着目する。論述した。見えるもの,感じられるもの,触れるものしか描かない。特に,庶民の生活に身の回りの物やことを描写する。この意味で,芸術作品は,社会内の人々,出来事,および環境をできるだけ忠実に描写し,読者や観客がその作品が彼らの生活経験に関連していると感じることを意味する。

芸術のリアリティとは画家の個人の内面の感情と客観的な現実の間には,辯証的かつ統一的な産物である。画家は現実社会を前提とした素材から出発し,その「芸術における真実」は「生活における真実」から派生する。それから,芸術家個人の美学的理想が作用し,生活の真実を抽出し,再加工し,最終的に芸術的なイメージを創造する。そして,この芸術家個人の適切と考える芸術的なイメージを通じて現実生活を反映しようとする。したがって,”芸術におけるリアリティ”は”生活におけるリアリティ”を超え,特定の歴史的な時代の社会生活の本質と法則をより集中的かつ深遠に反映することができる。

調査対象

ここで,西洋絵画史の近代絵画を主な対象にし,生活におけるリアリティを表現できる印象派,写実主義および,芸術におけるリアリティを表現可能なキュビスムと東洋絵画の水墨画,日本画を選択し,調査対象とする。

考察

西洋画と東洋画に関する調査から,リアリティという概念は単一の定義で正確に要約することが難しいことが明らかになった。たとえば,キュビスムの部分での論述では,リアリティが物体を全面的に表現できることと考えられている。一方,後の写実主義や印象派では,リアリティは身の回りの事物や見える,触れることができるものと定義されている。また,水墨画では,リアリティが生物の気韻を正確に表現する中に存在すると考えられている。絵画の画派によって,リアリティの在り方が異なることが分かった。 

今後について

以上の調査を通じて,抽出した要素を利用し,パラメータを調整し,複数の画像を作成したが,これらの要素が画像にどう影響を与えるか,今は未だ不明である。次の段階で,調査により,影響を解明する予定である。

参考文献・参考サイト

  • 佐々木和彦(1998)『映像のリアリティに関する理論的考察』,年報社会学論集1998,pp47-58
  • 木村美奈子(2015)『描画におけるリアリティとは何か』,心理科学Vol.36 No.1,pp29-39
  • 清水恭平(2015),『実在性の喚起と不在:絵画におけるリアリティ』,金沢美術工芸大学大学院
  • 宮田一乗,笠尾敦司(2001),『CG表現と絵画表現:写実,印象,抽象』,人工知能学会誌Vol.16 No.4,pp567-572
  • 大石和久(2013),『疾走する馬のイマージュ論再考』,The Japanese Society for Aesthetics,p82
  • PENG Liying(2015), The "Real" Concept of Courbet's Realistic Painting under Discussion
  • 並木誠士(2009),画像のリアリティー-絵画史から,VISION Vol.21,No.4,pp227-231
  • 松永拓己(2012),「画の六法」と写実についての一考察,熊本大学教育紀要人文科学No.61,pp193-203