「幟旗製造の端材・廃材を活用したデザイン」の版間の差分

提供: JSSD5th2023
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==背景と目的==
 
==背景と目的==
 のぼり旗製造において、大量に発生する端材や廃材の処理は深刻な課題の一つである。のぼり旗製造では印刷開始までの余剰分の生地やのぼり旗の裁断で発生する生地が端材となる。またのぼり旗の継ぎ目にある生地を裁断する際も他では使用できない廃材が生まれる。のぼり旗の布素材には主にトロマットやポンジと呼ばれる生地が使用されるが、これらは化学繊維のポリエステル100%が原料であるため、産業廃棄物として処理されていることが課題である。こうした資源の有効活用について。SDGsの視点から持続可能な形で目指すことが求められている。従って、本研究では産学連携でこれらの端材や廃材を活用するための商品開発を試みた。その目的は、SDGsの取り組みに関するデザインの研究モデルについて実証的に明らかにすることである。<ref>本研究は</ref>
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 のぼり旗製造において、大量に発生する端材や廃材の処理は深刻な課題の一つである。のぼり旗製造では印刷開始までの余剰分の生地やのぼり旗の裁断で発生する生地が端材となる。またのぼり旗の継ぎ目にある生地を裁断する際も他では使用できない廃材が生まれる。のぼり旗の布素材には主にトロマットやポンジと呼ばれる生地が使用されるが、これらは化学繊維のポリエステル100%が原料であるため、産業廃棄物として処理されていることが課題である。こうした資源の有効活用について。SDGsの視点から持続可能な形で目指すことが求められている。従って、本研究では産学連携でこれらの端材や廃材を活用するための商品開発を試みた。その目的は、SDGsの取り組みに関するデザインの研究モデルについて実証的に明らかにすることである<ref>本研究では2022年4月から2023年3月にかけて筆者のゼミナール(広島経済大学)とのぼり旗製造メーカーの株式会社ポップジャパンが協働で商品開発と販売を行なった。</ref>
  
 
==研究の方法==
 
==研究の方法==

2023年10月10日 (火) 19:36時点における版

宮地英和 / 広島経済大学 メディアビジネス学部
Hidekazu Miyaji / Hiroshima University of Economics

Keywords: Product Design, Visual Design, Industry-Academia Collaboration, Community of Practice, SDGs


Abstract
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背景と目的

 のぼり旗製造において、大量に発生する端材や廃材の処理は深刻な課題の一つである。のぼり旗製造では印刷開始までの余剰分の生地やのぼり旗の裁断で発生する生地が端材となる。またのぼり旗の継ぎ目にある生地を裁断する際も他では使用できない廃材が生まれる。のぼり旗の布素材には主にトロマットやポンジと呼ばれる生地が使用されるが、これらは化学繊維のポリエステル100%が原料であるため、産業廃棄物として処理されていることが課題である。こうした資源の有効活用について。SDGsの視点から持続可能な形で目指すことが求められている。従って、本研究では産学連携でこれらの端材や廃材を活用するための商品開発を試みた。その目的は、SDGsの取り組みに関するデザインの研究モデルについて実証的に明らかにすることである[1]

研究の方法

図1.端材や端材に関する研修会
図2.試作品の検証

 本研究では次のプロセスに従って商品開発を行なった。
1.キックオフミーティング

 本研究では、まず筆者のゼミナールとのぼり印刷企業による合同キックオフミーティングを実施し、研究テーマと目的、進行予定、役割分担などの説明を行なった。またのぼり旗製造の工場見学と印刷の過程で生まれる端材や廃材に関する研修会を行なった(図1)。

2.環境分析と調査
商品
 開発に向けて企業の強みと顧客価値の視座から外的環境や内的環境における環境分析を行なった。またSDGsの取り組みを行なっている競合他社の商品の価格、形状、機能などの情報を比較・分析するポジショニングマップやターゲット層を具体化するためのペルソナ設定、仮想の顧客を想定したシナリオ分析などを用いて分析調査を行なった。

3.企画

これまでの知見をもとに商品のコンセプトについて考察し、のぼり旗製造の端材・廃材を活用したデザインの企画書を作成した。研究発表会では、「ワッペン」「防犯ブザーカバー」などの様々な案が提案された。

4.試作と検証

企業と協議した結果、「マスクストラップ」「お守りキーホルダー」「ビブス」について試作品を製作した。そして、ユーザビリティの視点からそれらのデザインについて検証を行ない、商品化に向けて何度も修正を加え最終的な形状とデザインを決定した(図2)。


結果

図3.身につけるポップな交通安全グッズ

 SDGsの取組みの一環として、筆者のゼミナールとのぼり旗メーカーの株式会社ポップジャパンがのぼり旗製造から出る端材や廃材を活用した新商品を開発した。とくに製造工程で出る端材の中から、ピンクや黄色といった蛍光色の生地に着目し、夜間にはその視認性の高さが発揮される商品を企画した。試作品の検証を何度も行なった結果、「身につけるポップな交通安全グッズ」をテーマとして蛍光の「マスクストラップ」「お守りキーホルダー」「ビブス」などを開発した(図3)。これらの商品化に際し、商品のデザイン案の企画だけでなく、販促計画にも取り組み、自分たちでレイアウトした大型ショッピングモール内の店舗ブースで店頭販売を行なった。


考察

 企画の初期段階では、のぼり旗製造から出る様々な端材や廃材の活用について様々なアイデアが提案された。しかし、端材や廃材から商品化するには生産コストや開発費などの課題から実現化が厳しいものも多くあった。そこで企画のテーマをそれらの中でも特徴的な蛍光色の生地を利用した交通安全のための商品に設定することで、商品開発の方向性を明確化した。その結果、方向性が明らかになったことで機能性や耐久性、安全性の観点からよりシンプルでユーザビリティに配慮した商品を開発することができた。また試作品の検証を通じて、品質向上や顧客満足度の向上のために問題点を話し合い、改善点を考えることでより良いデザインとなった。


まとめ

図4.商品化と店頭販売

 本研究では、筆者のゼミナールと地元企業による産学連携によって、SDGsの視点からのぼり旗製造の端材・廃材を活用したデザインの企画から商品開発まで行った。キックオフミーティングを兼ねた企業説明と工場見学を実施し、グループワークで商品開発の環境分析やポジショニング・ニーズの検証・ターゲット層について調査した。また、それらの知見をもとにコンセプト・アイデアの視覚化による新商品の企画から試作品の検証までを行なった。そして、最終的には、身につけるポップな交通安全グッズとして、「マスクストラップ」「お守りキーホルダー」「ビブス」の商品化と店頭販売を行ない、SDGsの取り組みに関するデザインの研究モデルについて明らかにした(図4)。

 企画の段階では、グループごとに様々な企画を提案したが、生産コストなどの課題から商品化を見送られたアイデアもあり、産業廃棄物を活用した商品開発の難しさについて再考する機会となった。しかし、このような産学連携によるSDGsの取り組みは、将来の地域社会に貢献する人材の育成につながるはずである。企業にとっても、若者の柔軟な発想と感性から生まれる斬新なアイデアを得るだけでなく、学生や研究者との交流により新たな知見を得ることができ、自社の人材育成にもつながるだろう。地元企業と研究機関が実践共同体として連携することで、地域経済の発展と振興にも貢献する可能性がある。


脚注

  1. 本研究では2022年4月から2023年3月にかけて筆者のゼミナール(広島経済大学)とのぼり旗製造メーカーの株式会社ポップジャパンが協働で商品開発と販売を行なった。